オプション取引の組み合わせ戦略とは?スプレッド・ストラドル全12種の仕組みと損益パターンを徹底解説

ICHIZEN Capitalのイチ押しポイント!
- オプションの組み合わせ戦略は「スプレッド」と「コンビネーション」の2系統に大別される
- スプレッド=同じ種類(コール同士 or プット同士)の売りと買いを組み合わせて損益を限定する戦略
- コンビネーション=コールとプットを組み合わせてボラティリティ(値動きの大きさ)に賭ける戦略
- 代表的な戦略は12種類、目的別に選ぶのが鉄則
- 上昇狙い=ブルスプレッド、下落狙い=ベアスプレッド、レンジ狙い=バタフライ・コンドル
- 大変動狙い=ストラドル・ストラングル、保有株のリスク軽減=カバードコール・プロテクティブプット
- 初心者はまず「損失限定」の組み合わせから始めるのが安全
- デビットスプレッド(買いスプレッド)は最大損失=支払いプレミアムに限定される
- 日経225ミニオプションなら1セット数万円〜の少額で組み合わせ戦略を実践可能
- プロの世界では組み合わせ戦略が「相場の方向を決める力」を持つ
- ビットコイン市場では大口のストラングル・カバードコールが価格レンジを形成する事例が多数
- ICHIZEN Capitalのオプション分析では、組み合わせ戦略の構築動向から相場の転換点を推測
木田 陽介オプションの醍醐味は「組み合わせ」にあります。単純な買いや売りだけでは相場の方向を当てる必要がありますが、組み合わせ戦略を使えば「方向は分からないが大きく動きそう」「このレンジに収まりそう」といった相場観を、損失を限定しながら収益に変えられます。ICHIZENでは実際のBTCオプション市場で大口投資家がどんな組み合わせを構築しているかを日々分析しており、その知見も含めて解説します。


監修 木田 陽介
株式会社ICHIZEN HOLDINGS 代表取締役
2016年から仮想通貨トレードを開始。2017年に株式会社CoinOtakuを共同で創業。同年CoinOtakuの代表に就任。2020年に東証二部上場企業に6億円でM&A。bitgetの月間取引高で世界4位を獲得。2025年にCoinOtaku代表を退任し、同年5月に株式会社ICHIZEN HOLDINGSの代表取締役に就任。
オプション取引の組み合わせ戦略とは?基本の考え方
オプション取引の組み合わせ戦略とは、複数のオプション(コール・プット)や原資産を同時に売買し、単独では実現できないリスク・リターン特性を作り出す投資手法です。「コンボ戦略」や「マルチレッグ戦略」とも呼ばれ、プロのトレーダーから機関投資家まで幅広く活用されています。
単独のオプション売買では「相場が上がるか下がるか」を当てる必要がありますが、組み合わせ戦略を使うと以下のような柔軟な相場観を収益に変えられます。
- 相場の方向は不明だが「大きく動きそう」→ ストラドル・ストラングル
- 「緩やかに上昇する」と見ているがコストを抑えたい → ブルスプレッド
- 「しばらくレンジ相場が続く」と予想 → アイアンコンドル・バタフライ
- 保有中の株式の下落リスクをヘッジしたい → プロテクティブプット・カバードコール
組み合わせ戦略の最大のメリットは、損失を事前に限定できる構造を作れる点にあります。単独のオプション売りでは理論上損失が無限大になり得ますが、反対ポジションを組み合わせることで最大損失を「支払ったプレミアムの差額」に固定できます。これにより、資金管理が格段にしやすくなるのです。
組み合わせ戦略の2大分類:スプレッドとコンビネーション
オプションの組み合わせ戦略は大きく「スプレッド」と「コンビネーション」の2系統に分類されます。この分類を理解しておくと、10種類以上ある戦略の全体像を見渡しやすくなります。
| 分類 | 定義 | 目的 | 代表的な戦略 |
|---|---|---|---|
| スプレッド | 同じ種類のオプション(コール同士 or プット同士)の買いと売りを組み合わせる | 損益の範囲を限定し、方向性に賭ける | ブルスプレッド、ベアスプレッド、バタフライ、コンドル、カレンダースプレッド |
| コンビネーション | 異なる種類のオプション(コールとプット)を組み合わせる | ボラティリティ(値動きの大小)に賭ける | ストラドル、ストラングル |
| カバード戦略 | 原資産(株式・先物)とオプションを組み合わせる | 保有資産のリスクヘッジ・収益強化 | カバードコール、プロテクティブプット |
スプレッド戦略はさらに、同一満期で権利行使価格を変える「バーティカルスプレッド」と、異なる満期のオプションを使う「ホリゾンタルスプレッド(カレンダースプレッド)」に細分されます。バーティカルスプレッドは最も基本的な組み合わせであり、初心者が最初に習得すべき戦略です。
スプレッド戦略|損益を限定する組み合わせ
スプレッド戦略は、同じ種類のオプションを「買い」と「売り」で組み合わせることで、利益も損失もあらかじめ決まった範囲に収める手法です。単独売りの無限損失リスクを回避しつつ、方向性やレンジの見通しを収益化できます。
- ブルスプレッド(上昇狙い)とベアスプレッド(下落狙い)の仕組み
- バタフライスプレッドとアイアンコンドル(レンジ狙い)
- カレンダースプレッド(時間差を利用する戦略)
- クレジットスプレッドとデビットスプレッドの違い
ブルスプレッド(ブルコールスプレッド)|緩やかな上昇を狙う
ブルコールスプレッドは、低い権利行使価格のコールを買い、高い権利行使価格のコールを売る戦略です。「緩やかに上昇する」と予想するときに使います。コール単体の買いに比べてコストが安く、最大損失は支払ったプレミアムの差額に限定されます。
| 項目 | ブルコールスプレッドの内容 |
|---|---|
| ポジション | 低い行使価格のコール買い + 高い行使価格のコール売り(同一満期) |
| 最大利益 | 行使価格の差 − 支払いプレミアム差 |
| 最大損失 | 支払いプレミアムの差額(限定) |
| 損益分岐点 | 低い行使価格 + 支払いプレミアム差 |
| 相場観 | 緩やかな上昇を予想 |
たとえば日経225オプションで行使価格38,000円のコールを買い、行使価格39,000円のコールを売るとします。支払いプレミアム差が300円なら、最大損失は300円×1,000倍=30万円に限定されます。日経平均が39,000円以上に上がれば最大利益(700円×1,000倍=70万円)を得られ、38,300円が損益分岐点です。
プットを使った「ブルプットスプレッド」でも同じ方向性のポジションが作れます。こちらは高い行使価格のプットを売り、低い行使価格のプットを買う構成で、エントリー時にプレミアムを受け取る(クレジット型)のが特徴です。
ベアスプレッド(ベアプットスプレッド)|下落局面で利益を狙う
ベアプットスプレッドは、高い権利行使価格のプットを買い、低い権利行使価格のプットを売る戦略です。ブルスプレッドの逆で、「緩やかに下落する」と予想するときに使います。
最大利益は「行使価格の差 − 支払いプレミアム差」、最大損失は「支払いプレミアム差」に限定されます。プット単体の買いよりもコストが安いため、下落ヘッジとしてもコスト効率が良い選択肢です。
コールを使った「ベアコールスプレッド」は低い行使価格のコールを売り、高い行使価格のコールを買う構成で、クレジット型(プレミアム受取)になります。相場の下落もしくは横ばいで利益が出るため、「上がらないだろう」という消極的な弱気見通しにも適しています。
バタフライスプレッド|レンジ相場で最大利益を狙う
バタフライスプレッドは、3つの権利行使価格のオプションを組み合わせ、「ある特定の価格帯に着地する」と予想するときに使う戦略です。損益図が蝶の羽のような形をすることからこの名がついています。
コールで構築する場合、低い行使価格のコール1枚買い・中間の行使価格のコール2枚売り・高い行使価格のコール1枚買いで組みます。満期時に原資産価格が中間の行使価格にぴったり着地すれば最大利益、両端の行使価格を超えると最大損失(支払いプレミアム)になります。
バタフライの魅力は損失限定でありながら、的中時のリターンが比較的大きい点です。ただし利益が出る価格帯が狭いため、精度の高い価格予測が求められます。3つのレッグ(脚)で構成されるため手数料が嵩む点も考慮が必要です。
アイアンコンドル|4本足でレンジ相場を狙う
アイアンコンドルは、ブルプットスプレッドとベアコールスプレッドを同時に組む、4つのレッグからなる戦略です。相場が「ある一定のレンジに収まる」と予想するときに使い、プレミアムを受け取って(クレジット型)エントリーします。
具体的には、低い行使価格のプット買い・やや低い行使価格のプット売り・やや高い行使価格のコール売り・高い行使価格のコール買いの4枚で構成されます。内側の2枚(売り)がプレミアムの源泉で、外側の2枚(買い)が損失をキャップします。
満期時に原資産が内側の売りの行使価格の範囲内にあれば、受け取ったプレミアムがそのまま利益になります。レンジを超えても損失は限定されるため、リスク管理がしやすく、安定収入を狙う中〜上級者に人気があります。
カレンダースプレッド|時間差で利益を狙う
カレンダースプレッドは、同じ権利行使価格・同じ種類のオプションで、期近(満期が近い)を売り・期先(満期が遠い)を買う戦略です。「ホリゾンタルスプレッド」とも呼ばれます。
期近オプションは期先よりもタイムディケイ(時間的価値の減少)が速いため、期近の売りが先に価値を失い、その差額が利益になります。原資産価格が行使価格付近で推移するとき、すなわちレンジ相場が最も有利です。
カレンダースプレッドはIV(インプライドボラティリティ)の期間構造にも影響を受けます。期先のIVが期近より高い「コンタンゴ」の状態で組むと有利で、逆の「バックワーデーション」では不利になりやすい点に注意が必要です。
クレジットスプレッドとデビットスプレッド|「受取型」か「支払型」か
バーティカルスプレッドはエントリー時のキャッシュフローで「クレジットスプレッド」と「デビットスプレッド」に分けられます。
| 比較項目 | デビットスプレッド(買い型) | クレジットスプレッド(売り型) |
|---|---|---|
| エントリー時 | プレミアムを支払う | プレミアムを受け取る |
| 最大損失 | 支払ったプレミアム差(限定) | 行使価格差 − 受取プレミアム(限定) |
| 最大利益 | 行使価格差 − 支払いプレミアム | 受け取ったプレミアム |
| 勝率の傾向 | 低め(方向性が当たる必要あり) | 高め(レンジ内に収まればOK) |
| 初心者向き度 | ◎(損失限定で分かりやすい) | ○(勝率は高いが管理が必要) |
初心者にはデビットスプレッドが適しています。最大損失が支払ったプレミアムに限定されるため、資金管理がシンプルです。一方、クレジットスプレッドは勝率が高い傾向にありますが、負けたときの損失がやや大きくなるため、損切りルールの設定が不可欠です。
コンビネーション戦略|ボラティリティに賭ける組み合わせ
コンビネーション戦略は、コールとプットという異なる種類のオプションを組み合わせます。相場が「どちらに動くか」ではなく、「大きく動くか動かないか」に賭ける点がスプレッドとの最大の違いです。
- ストラドル(ATMのコール+プット)の買いと売り
- ストラングル(OTMのコール+プット)の買いと売り
- 2つの戦略の使い分け基準
ストラドル|同一行使価格でコールとプットを同時売買
ストラドルは、同じ権利行使価格(ATM=現在値付近)のコールとプットを同時に買う(ロングストラドル)、または同時に売る(ショートストラドル)戦略です。
ロングストラドルは損益図がV字型になり、上にも下にも大きく動けば利益になります。最大損失はプレミアム合計に限定されるため、決算発表・金利発表・重要指標など、大きな値動きが予想される場面で有効です。一方、ショートストラドルは逆V字型で、レンジ相場ではプレミアムをまるごと得られますが、損失は理論上無限大です。
ストラドルの損益分岐点は「行使価格 ± プレミアム合計」の2点です。原資産がこの範囲を超えれば買い手の利益、範囲内に収まれば売り手の利益になります。
ストラングル|異なる行使価格でコールとプットを同時売買
ストラングルは、OTM(アウト・オブ・ザ・マネー)のコールとプットを同時に買う(または売る)戦略です。ストラドルとの違いは行使価格が異なる点で、プレミアムが安い代わりに損益分岐点が広くなります。
ロングストラングルはストラドルよりコストが低いため、「方向は分からないが相当大きく動きそう」というときに使います。ショートストラングルは利益が出るレンジが広い反面、レンジを超えたときの損失は無限大です。
| 比較項目 | ストラドル | ストラングル |
|---|---|---|
| 行使価格 | ATM(同一) | OTM(異なる) |
| プレミアム(コスト) | 高い | 低い |
| 損益分岐点の幅 | 狭い(少しの動きで利益) | 広い(大きな動きが必要) |
| 感度(デルタ変化) | 高い(ATMはデルタ変化が最大) | 低い |
| 向いている場面 | 「かなり動く」確信がやや高い | 「もし動けば大きい」が確信は低い |
カバード戦略|原資産とオプションの組み合わせ
カバード戦略は、株式や先物といった原資産の保有ポジションにオプションを被せる(カバーする)ことで、リスクヘッジや追加収益を狙う戦略です。機関投資家やETFが日常的に使う最も実用的な組み合わせの一つです。
カバードコール|保有株+コール売りで収益を上乗せ
カバードコールは、原資産を保有しつつ、その上値にコールオプションを売る戦略です。原資産の保有益に加え、コール売りのプレミアム(オプション料)を受け取ることで収益を上乗せします。
保有株が行使価格を超えて上昇した場合は、そこで利益が頭打ちになりますが、プレミアム分だけ取得コストが下がる効果があります。「大きな上昇は見込めないが、持ち続けたい」という局面で効力を発揮します。
近年では、カバードコール戦略をETFとして商品化した「カバードコールETF」が世界中で人気を集めています。S&P500やNASDAQ100に連動する原資産にコール売りを組み合わせ、高いインカム(分配金)を実現する仕組みです。
プロテクティブプット|保有株+プット買いで下落をヘッジ
プロテクティブプットは、原資産を保有しつつ、プットオプションを買うことで下落リスクをヘッジする戦略です。「保険をかける」イメージに最も近い組み合わせといえます。
原資産が下落しても、プットの行使価格が「床」として機能し、それ以下の損失は発生しません。コストはプレミアム分だけかかりますが、上昇余地は無限に残ります。決算発表前や相場急変が予想される局面で、ポジションを手放さずにリスクだけ限定したいときに有効です。



カバードコールとプロテクティブプットは「一番地味だけど一番使う」戦略です。派手さはないですが、長期で資産を持ちながらオプションを活用する王道。実際にICHIZENのBTCオプション分析でも、カバードコールETFのポジション動向が相場全体に影響を与える場面を何度も確認しています。
組み合わせ戦略の全体マップ|12種類を一覧比較
ここまで紹介した組み合わせ戦略を一覧で比較します。自分の相場観・リスク許容度・資金量に合った戦略を選ぶ際の参考にしてください。
| 戦略名 | レッグ数 | 相場観 | 最大損失 | 最大利益 | 難易度 |
|---|---|---|---|---|---|
| ブルコールスプレッド | 2 | 緩やかな上昇 | 限定 | 限定 | ★☆☆ |
| ベアプットスプレッド | 2 | 緩やかな下落 | 限定 | 限定 | ★☆☆ |
| ブルプットスプレッド | 2 | 下がらない | 限定 | 限定 | ★★☆ |
| ベアコールスプレッド | 2 | 上がらない | 限定 | 限定 | ★★☆ |
| バタフライ | 3 | 特定価格に着地 | 限定 | 限定 | ★★☆ |
| アイアンコンドル | 4 | レンジ内に収まる | 限定 | 限定 | ★★★ |
| カレンダースプレッド | 2 | 横ばい+IV変化 | 限定 | 限定 | ★★★ |
| ロングストラドル | 2 | 大きく動く | 限定 | 無限大 | ★★☆ |
| ロングストラングル | 2 | 非常に大きく動く | 限定 | 無限大 | ★★☆ |
| カバードコール | 原資産+1 | 横ばい〜緩やかな上昇 | 原資産の下落分 | 限定 | ★☆☆ |
| プロテクティブプット | 原資産+1 | 上昇だがヘッジしたい | 限定 | 無限大 | ★☆☆ |
| ホイール戦略 | 原資産+1 | 横ばい〜緩やかな上昇 | 原資産の下落分 | 限定 | ★★☆ |
ホイール戦略はCSP(キャッシュ・セキュアード・プット)とカバードコールを交互に繰り返す手法です。プット売りで株を取得し、取得後はカバードコールでプレミアムを得るサイクルを回します。
注意点|組み合わせ戦略で初心者が陥りやすい失敗
- レッグが増えるほど手数料が嵩み、利益を圧迫する
- 流動性の低い銘柄・行使価格ではスリッページが発生しやすい
- 片方のレッグだけ約定して「片足」状態になるリスクがある
- 証拠金計算が複雑になり、追証のリスクを見落としやすい
- 理論通りの損益にならない(早期行使・配当・金利変動の影響)
最も多い失敗は「手数料負け」です。アイアンコンドルのように4枚のオプションを使う戦略では、エントリーとエグジットで合計8回の約定が発生します。日経225オプションの手数料が1枚あたり数百円でも、往復で数千円のコストになります。受け取るプレミアムに対して手数料の比率が大きい場合、期待リターンがマイナスになることもあるのです。
「片足リスク」も見落としがちな落とし穴です。複数のレッグを同時に約定させたい場合は、証券会社のスプレッド注文(コンビネーション注文)機能を使いましょう。個別に発注すると、片方だけ約定して想定外のリスクが発生する恐れがあります。SBI証券・楽天証券・松井証券など主要ネット証券では、スプレッド注文に対応しています(※1)。
また、組み合わせ戦略を始める前に、必ず損益図(ペイオフダイアグラム)を自分で描いてみることを推奨します。最大利益・最大損失・損益分岐点の3つを正確に把握していなければ、ポジションの管理はできません。
ICHIZEN Capitalの視点|BTCオプション市場で見えた組み合わせ戦略の実態
教科書的な解説はここまでにして、実際のオプション市場で組み合わせ戦略がどう使われているかを、ICHIZENの一次分析から紹介します。
ICHIZEN Capitalでは、ビットコインETF(IBIT)やDeribitのBTCオプション市場を対象に、OI(建玉)・GEX(ガンマ・エクスポージャー)・ライブフローを日次で分析しています。この分析で繰り返し確認されるのが、大口投資家やオプションディーラーが組み合わせ戦略を使って「価格レンジを形成する」という現象です。
以下は、ICHIZEN Capitalが発行するnoteレポート(767記事・2020年〜2026年7月)の分析で確認された事例です。市場参加者の意図はOI・フロー・GEXからの推測であり、確定的な断定ではありません。
ショートストラングルによるレンジ形成
BTCオプション市場では、大口投資家が上値のコール売りと下値のプット売りを組み合わせた「ショートストラングル」を構築するケースが頻繁に確認されます。たとえばIBIT(ビットコインETF)のライブフローにおいて、上値の42ドル付近でコール売り、下値の38ドル付近でプット売りが同時に構築される場面が分析で確認されました。
この戦略の目的は、満期までに価格がこのレンジ内に収まることで、両方のプレミアムを獲得することです。結果として「上にも下にも行かせない」価格抑制の力学が働き、レンジ相場が形成されるのです。ヘッジフローが方向を増幅・抑制し得るメカニズムの典型例といえます。
カバードコールETFが相場に与えるインパクト
カバードコール戦略をETFとして商品化した機関投資家の動向も、組み合わせ戦略の実態を理解する上で重要です。ICHIZENの分析では、カバードコールETFが上値にショートコールを構築するフロー、そしてそのポジション解体(クローズ)に伴うディーラーのデルタヘッジ行動が、短期的な価格急騰のトリガーになり得ることが確認されています。
カバードコールETFのショートコールが決済されると、そのカウンターパーティであるディーラーはヘッジ用の先物ショートを買い戻す必要が生じます。このメカニズムが、イベント通過後の急騰を引き起こす要因の一つとなります。
ロングストラドルとガンマゲインの獲得
ATM付近でロングストラドルを構築し、デルタヘッジを繰り返すことで、価格変動のたびにガンマから利益を抽出する手法(ガンマスキャルピング)も確認されています。IBITの43.5ドル付近で大口がストラドル構築に高額のプレミアムを支払った事例では、ボラティリティの拡大そのもの以上に「ガンマゲイン」の獲得が狙いと推察されました。
これらの事例が示すのは、組み合わせ戦略は単に「教科書上の理論」ではなく、実際にプロが日常的に使い、相場の方向性やレンジ形成に影響を与えている現実です。個人投資家がオプション市場に参入する際にも、この「大口の組み合わせ戦略がどう動いているか」を意識することで、より精度の高い判断が可能になります。
よくある質問
オプション取引の組み合わせ戦略とは何ですか?
複数のオプション(コール・プット)や原資産を同時に売買し、単独では実現できないリスク・リターン特性を作り出す手法です。損失限定・レンジ収益・ボラティリティ収益など、目的に応じた柔軟なポジション構築が可能になります。代表的なものにスプレッド、ストラドル、カバードコールなどがあります。
スプレッドとコンビネーションの違いは何ですか?
スプレッドはコール同士またはプット同士の買いと売りを組み合わせる戦略で、損益の範囲を限定しつつ方向性に賭けます。コンビネーションはコールとプットという異なる種類のオプションを組み合わせる戦略で、ボラティリティ(値動きの大小)に賭ける点が最大の違いです。
初心者におすすめの組み合わせ戦略は何ですか?
デビットスプレッド(ブルコールスプレッドまたはベアプットスプレッド)が最も初心者向きです。最大損失が支払ったプレミアムの差額に限定されるため資金管理がシンプルで、2枚のオプションで構成されるため手数料も抑えられます。日経225ミニオプションを使えば少額から実践できます。
組み合わせ戦略に必要な資金はいくらですか?
デビットスプレッド(買い型)であれば、日経225ミニオプションで数万〜十数万円から可能です。通常の日経225オプションでは1セットあたり数十万円程度が目安です。売りを含む戦略(クレジットスプレッド・アイアンコンドル等)は証拠金が必要で、戦略構成やSPAN証拠金の計算により金額が変動します。
ブルスプレッドとベアスプレッドの違いは何ですか?
ブルスプレッドは相場の上昇を予想するときに使い、低い行使価格で買い・高い行使価格で売りを組みます。ベアスプレッドは相場の下落を予想するときに使い、高い行使価格で買い・低い行使価格で売りを組みます。いずれも損失は限定され、構造は鏡像の関係にあります。
アイアンコンドルとバタフライの違いは何ですか?
どちらもレンジ相場を狙う戦略ですが、構造が異なります。バタフライは3つの行使価格で3本のレッグを使い、特定の価格への着地を狙います。アイアンコンドルは4つの行使価格で4本のレッグを使い、より広いレンジに収まることを狙います。バタフライは的中時のリターンが大きく、アイアンコンドルは勝率が高い傾向があります。
ビットコイン(仮想通貨)でも組み合わせ戦略は使えますか?
使えます。Deribitなどの海外暗号資産オプション取引所でBTC・ETHのバニラオプションが取引可能で、ストラドル・ストラングル・スプレッドなど各種組み合わせ戦略を実行できます。BTCはボラティリティが高いためオプション戦略との相性が良い一方、税金は雑所得として総合課税される点に注意が必要です。
カバードコールは初心者でもできますか?
はい、カバードコールはオプションの組み合わせ戦略の中で最も初心者に適した手法の一つです。すでに保有している株式や先物に対してOTMのコールを売るだけの構成で、損益構造がシンプルです。ただし原資産の下落リスクは残るため、「長期保有する銘柄に対して使う」ことが前提条件になります。
組み合わせ戦略の損益分岐点はどう計算しますか?
戦略によって異なりますが、基本は「行使価格 ± ネットプレミアム」で求めます。ブルコールスプレッドなら「低い行使価格 + 支払いプレミアム差」が損益分岐点です。ストラドルは「行使価格 ± プレミアム合計」の2点、アイアンコンドルは「内側の売り行使価格 ± 受取プレミアム」の2点が損益分岐点になります。証券会社のシミュレーションツールで自動計算できるものもあります。
オプション取引の組み合わせで「片足」が約定しないリスクはありますか?
あります。複数のレッグを個別に発注すると、一方だけ約定して想定外のリスクにさらされる「レッグリスク」が発生します。これを防ぐには、証券会社のスプレッド注文(コンビネーション注文)機能を使って、複数のレッグを同時に発注してください。SBI証券・楽天証券・松井証券など主要ネット証券がこの機能に対応しています。
まとめ|組み合わせ戦略で「相場観を収益構造に変換する」
オプション取引の組み合わせ戦略は、スプレッド(同種オプションの売買で損益を限定)・コンビネーション(コールとプットでボラティリティに賭ける)・カバード戦略(原資産とオプションでリスクヘッジ)の3系統に大別されます。
初心者はまず、損失が限定されるデビットスプレッド(ブルコールスプレッド・ベアプットスプレッド)から始めるのが安全です。経験を積んだ段階でストラドル・ストラングルのボラティリティ戦略、さらにアイアンコンドルやカレンダースプレッドへとステップアップしていくのが王道のルートです。
組み合わせ戦略の本質は、自分の相場観を「損益構造」に変換することです。上がる・下がるだけでなく、「このレンジに収まる」「大きく動く」「横ばいが続く」といった多様な見通しを収益機会にできるのは、オプションならではの強みです。損益図を描き、リスクを把握し、手数料を考慮したうえで、自分に合った組み合わせを選んでみてください。
オプション取引の基礎から学びたい方は、オプション取引とは?仕組み・始め方を解説もあわせてご覧ください。個別の戦略についてはストラドル戦略の解説やクレジットスプレッドの解説も参考になります。
参考文献
1. 楽天証券「日経225オプション 投資戦略」https://www.rakuten-sec.co.jp/web/fop/special/option_guide/basic/
2. 東証マネ部!「オプションの投資戦略」https://money-bu-jpx.com/basic/derivatives/options/strategy/
3. 北浜投資塾(JPX)「デビットスプレッド戦略」https://www.jpx.co.jp/ose-toshijuku/column/putoption/05.html
4. 北浜投資塾(JPX)「クレジットスプレッドとコンドル」https://www.jpx.co.jp/ose-toshijuku/column/putoption/06.html
5. サクソバンク証券「バーティカルスプレッド戦略を理解する」https://www.home.saxo/ja-jp/learn/guides/options/understanding-the-vertical-spread-option-strategy
6. 北浜投資塾(JPX)「カレンダースプレッド」https://www.jpx.co.jp/ose-toshijuku/column/option-trading/04.html
※当サイトの情報は投資判断の参考となる一般的な情報提供を目的としており、特定の暗号資産(仮想通貨)への投資を勧誘するものではありません。オプション取引には元本を超える損失が生じるリスクがあります。最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。








