オプションのホイール戦略とは?仕組み・やり方・必要資金と日本での税金・暗号資産まで図解で解説

オプション取引のホイール戦略とは|仕組み・やり方・日本の税金まで図解

ICHIZEN Capitalのイチ押しポイント!


  • ホイール戦略はCSP(プット売り)とカバードコールを繰り返す「プレミアム回収マシン」
    • 安く買いたい価格でプット売り→割り当てられたらカバードコール→売却後またプット売りの循環
    • 米国では「Triple Income Strategy」とも呼ばれるが、正体は”儲ける”より”下落に強くしながら現金を回す”守りの戦略
  • 「年率15〜20%」の通説は要検証。長期バックテストでは買い持ちに劣後する
    • SPYの長期検証ではホイール約11%<買い持ち約13.6%。ただし最大下落は-15%対-24%でホイールが浅い
    • 真価は「高いリターン」ではなく「ドローダウン(下落)を抑えて現金を回せる」点にある
  • 日本の個人は「市場×ブローカー×税金」で手取りが激変する
    • 国内かぶオプ(SBI)は申告分離課税20.315%、米国株・暗号資産は雑所得で最大55%
    • 米国発の戦略を日本で回すなら、税率20%か55%かが銘柄選び以上に効いてくる
  • 暗号資産でも実行可能だが、構造的に株式版を完全再現できない
    • DEXのDeriveなどは差金決済(USDC)で「現物を仕込む」流れにならず、配当という第3の収入もない
    • IVが高くプレミアムは大きいが、その分リスクも桁違い。ポジションサイズ管理が生命線
木田 陽介

ホイール戦略は米国リテールで大人気の手法ですが、日本語の情報は「米株」か「暗号資産」か「動画」ばかりで、”日本の自分が円建て・税金込みでどう回すか”が抜けがち。この記事はそこを図解と数値で埋めます。そして通説の「年率15〜20%」も鵜呑みにせず、長期検証の実データで正直に検証します。

木田 陽介
(株)ICHIZEN HOLDINGS

代表取締役

この記事の執筆者/監修者

2016年から仮想通貨トレードを開始。2017年に株式会社CoinOtakuを共同で創業。同年CoinOtakuの代表に就任。2020年に東証二部上場企業に6億円でM&A。bitgetの月間取引高で世界4位を獲得。2025年にCoinOtaku代表を退任し、同年5月に株式会社ICHIZEN HOLDINGSの代表取締役に就任。

監修 木田 陽介
株式会社ICHIZEN HOLDINGS 代表取締役

2016年から仮想通貨トレードを開始。2017年に株式会社CoinOtakuを共同で創業。同年CoinOtakuの代表に就任。2020年に東証二部上場企業に6億円でM&A。bitgetの月間取引高で世界4位を獲得。2025年にCoinOtaku代表を退任し、同年5月に株式会社ICHIZEN HOLDINGSの代表取締役に就任。

目次

ホイール戦略(Wheel Strategy)とは?基本情報

ホイール戦略とは、キャッシュ・セキュアード・プット(CSP)とカバードコールを交互に繰り返し、プレミアム(オプション料)を継続的に回収するオプション取引戦略です。日本では「ターバイカバコホイール戦略」とも呼ばれ、大阪取引所(JPX)の学習コンテンツでも紹介されています(※1)。

名前の由来は、CSP→株式取得→カバードコール→株式売却→再びCSP、という流れが「車輪(Wheel)」のように循環することにあります。まずは全体像を1枚の図でつかみましょう。

ホイール戦略|4ステップの循環 プレミアムを 回収し続ける 1 CSP(プット)を売る 現金担保でプット売り→プレミアム受取 2 アサイン→株を取得 下落で権利行使→割安で100株取得 3 カバードコールを売る 保有株にコール売り→プレミアム受取 4 コール行使→株を売却 上昇で売却益+プレミアム→①へ戻る ※ プット/コールが行使されなければ、プレミアムを受け取って同じステップを繰り返す(=回し続ける)
図:ホイール戦略の4ステップ循環。プット売りとカバードコールでプレミアムを回収し続ける。

米国では「Triple Income Strategy」とも呼ばれ、プット売りプレミアム・コール売りプレミアム・保有中の配当金という3つの収入源を同時に狙える点が特徴です。ただし後述するように、この戦略の本質は「大きく儲ける」ことより「下落を抑えながら現金を回す」ことにあります。

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項目内容
戦略名ホイール戦略(Wheel Strategy)/ターバイカバコホイール戦略
構成要素キャッシュ・セキュアード・プット(CSP)+ カバードコール
収入源プット売りプレミアム・コール売りプレミアム・配当金(株式の場合)
適した市場環境レンジ相場〜緩やかな上昇相場
本質高リターンより「下落耐性(ドローダウンの浅さ)」で価値を出す守りの戦略
必要資金(株式)最低5,000ドル〜、意味のある収入には25,000ドル以上
対象資産個別株・ETF・暗号資産(BTC/ETHオプション)
難易度中級(CSPとカバードコールの理解が前提)

ホイール戦略の仕組み|4ステップの循環

ホイール戦略は4つのステップで構成されます。1周が終わるとまたステップ1に戻り、車輪のように回し続けるのが基本です。各ステップで受け取るプレミアムと、その損益の形を図で確認しながら進めましょう。

4ステップの全体像
  • ステップ1:キャッシュ・セキュアード・プット(CSP)を売る
  • ステップ2:プットが行使されたら株式を取得
  • ステップ3:カバードコールを売る
  • ステップ4:コールが行使されたら株式を売却、ステップ1に戻る

ステップ1:キャッシュ・セキュアード・プット(CSP)を売る

まず、保有したいと思える銘柄のプットオプションを、現在価格よりやや低い行使価格(OTM)で売ります。行使されて100株を買い取ることになっても対応できる現金を口座に確保しておく——これが「キャッシュ・セキュアード」の意味です。プット売りの時点でプレミアムを受け取れます。

満期までに株価が行使価格を下回らなければ、オプションは消滅し、受け取ったプレミアムがそのまま利益になります。その場合はステップ1に戻り、新たなプットを売ります。プット売りの損益は次のような形です。

① キャッシュ・セキュアード・プット(プット売り)の損益 株価 → 損益 0 最大利益=受取プレミアム 行使価格 損益分岐点(=実質取得コスト) 株価↓=含み損 (塩漬けリスク)
図:CSP(プット売り)の損益。最大利益は受取プレミアム、株価が下がるほど含み損。損益分岐点=実質取得コスト(行使価格−プレミアム)。

ステップ2:プットが行使されたら株式を取得

株価が行使価格を下回って満期を迎えると、プットが行使(アサイン)され、行使価格で100株を買い取る義務が発生します。ただし、すでにプレミアムを受け取っているため、実質的な取得コストは「行使価格 − 受取プレミアム」になります。

たとえば行使価格50ドルのプットを1.50ドルで売った場合、実質取得コストは48.50ドルです。これは「もともと欲しかった株を割安で仕込めた」状態であり、ホイール戦略のメリットの一つです。

ステップ3:カバードコールを売る

株式を保有したら、次は保有株に対してコールオプションを売ります(カバードコール)。行使価格は取得コスト以上、かつOTMに設定するのが基本です。ここでもプレミアムを受け取れます。コールが行使されなければプレミアムを受け取って再度カバードコールを売り、保有中は配当も受け取り続けます。カバードコールの損益は次の形です。

② カバードコール(保有株+コール売り)の損益 株価 → 損益 0 利益はここでキャップ(上昇益を放棄) 取得コスト コール行使価格 損益分岐点 株価↓は含み損 (急落はカバー不可)
図:カバードコール(保有株+コール売り)の損益。上昇益はコール行使価格でキャップ。下落は受取プレミアム分だけクッションされるが、急落はカバーしきれない。

ステップ4:コール行使で株式を売却 → ステップ1に戻る

株価が行使価格を上回って満期を迎えると、コールが行使されて100株を行使価格で売却します。売却益+プレミアム+配当が手元に残ります。株式がなくなったら再びステップ1に戻り、CSPを売って次のサイクルを回します。

この一連の流れを繰り返すことで、相場が大きく動かなくてもプレミアムと配当で収益を積み上げていく——これがホイール戦略の基本メカニズムです。

「年率15〜20%」は本当か?”守りの戦略”としての実力を検証

ホイール戦略は「毎月プレミアムで年率15〜20%の不労所得」といった触れ込みで紹介されがちです。しかし、この数字を鵜呑みにするのは危険です。ここでは通説を、長期のバックテスト結果に照らして正直に検証します。

公開されているSPY(S&P500連動ETF)の長期検証の一例(2010〜2025年・現金担保プットを1%下、カバードコールを3%上で回す設定)では、ホイール戦略の年率リターンは約11%で、単純な買い持ち(約13.6%)に劣後しました。一方で、最大ドローダウン(下落率)はホイール約-15%に対し買い持ち約-24%と、ホイールのほうが下落は浅く済んでいます。

SPYの長期検証:ホイールは「リターンで負け・下落で勝つ」 (2010〜2025年・現金担保プット−1%/カバードコール+3%の一例) 年率リターン 最大ドローダウン(浅いほど良い) 11.0% ホイール 13.6% 買い持ち -15.1% ホイール -23.9% 買い持ち リターンは買い持ちに劣後 下落耐性はホイールが上 → ホイールの本質は「大きく儲ける」ではなく「下落を抑えながら現金を回す」守りの戦略。
図:SPYの長期検証の一例。ホイールはリターンで買い持ちに負ける一方、最大ドローダウンは浅い。真価は”守り”にある。

つまりホイール戦略の本質は「大きく儲ける」ことではなく、「下落を抑えながら現金(プレミアム)を回し続ける」守りの戦略だということです。「年率15〜20%」はプレミアム利回りを単純年換算した理想値であり、暴落でアサインされた含み損を差し引いた”実質”はもっと控えめになります。この現実を理解したうえで、「安定した現金回収と下落耐性」を目的に据えるなら、ホイールは非常に理にかなった戦略です。

日本の個人はどう回す?市場×ブローカー×税金の意思決定

ホイール戦略は米国リテール発祥の手法で、日本語の解説も米国株か暗号資産に偏りがちです。しかし日本の個人にとって最初の分かれ道は「どの市場で回すか」——そしてそれによって税率が20%にも55%にもなるという点です。銘柄選びより先に、ここを設計する必要があります。

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市場主なブローカー税制(利益)取引単位向いている人
国内株オプション(かぶオプ・日経225)SBI証券 など申告分離課税20.315%(先物等と通算・3年繰越可)日経225・個別株税で最も有利。日本株中心で回したい人
米国株オプションmoomoo証券・IB証券・サクソバンク証券雑所得(総合課税)最大55%100株単位銘柄が豊富。米株文化の本場だが税は重い
暗号資産オプションSBI VCトレード(国内)・Derive(DEX)雑所得(総合課税)最大55%1BTC等ボラ最大・配当なし。上級者向け

見落とされがちですが、税率の差は銘柄選び以上にリターンを左右します。同じ利益でも、国内かぶオプなら手取りは約80%、米国株や暗号資産だと所得次第で約45%まで下がり得ます。「米国株でホイール」が定番でも、日本の個人にとっては国内かぶオプが税制面で圧倒的に有利という事実は押さえておきたいところです。税金の詳細は後半の章と仮想通貨の税金ガイドで解説します。

次に、1サイクルで実際にどうお金が動くのかを具体的な数字で見てみましょう。株価50ドルの銘柄を100株単位で回す、うまくいったケースの例です。

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ステップ行動キャッシュフロー
① CSP行使価格48ドルのプットを1.50ドルで売る(現金担保4,800ドル)+150ドル(プレミアム)
② アサイン株価が48ドルを下回り、100株を48ドルで取得実質取得コスト46.50ドル
③ カバードコール行使価格50ドルのコールを1.20ドルで売る+120ドル(プレミアム)
④ コール行使株価が50ドルを上回り、100株を50ドルで売却+350ドル(売却益=(50−46.50)×100)
合計1サイクル(数週間〜)+620ドル(投下4,800ドルの約13%)

これは「すべてが理想どおりに進んだ」1サイクルです。実際には②のアサイン後にさらに株価が下落すれば、③のカバードコールを取得コスト以上に設定できず、含み損を抱えたまま何サイクルもプレミアムで回収する展開になります。うまくいった時の数字だけでなく、崩れた時の展開まで想像できて初めて、この戦略を使いこなせます。

ホイール戦略に必要な資金と銘柄選び

ホイール戦略で最も重要なのは「どの銘柄に、いくらの資金で仕掛けるか」です。銘柄と資金の選定を誤ると、プレミアム収入ではカバーしきれない損失が発生します。

必要資金の目安

ホイール戦略はCSPの時点で100株分の現金担保が必要です。たとえば株価50ドルの銘柄なら5,000ドル(約75万円)、200ドルの銘柄なら20,000ドル(約300万円)が1ポジションあたりの担保として拘束されます。

実用的な目安としては、最低5,000〜10,000ドル(約75〜150万円)でスタートし、意味のある月次収入を得るには25,000ドル(約375万円)以上が推奨されます(※2)。25,000ドルあれば2〜4銘柄に分散しながらホイールを回せるため、1銘柄の急落リスクを分散できます。

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投入資金月間プレミアム収入の目安運用の現実感
10,000ドル(約150万円)70〜130ドル(約1〜2万円)学習・練習向き。1銘柄のみ
25,000ドル(約375万円)180〜300ドル(約2.7〜4.5万円)2〜3銘柄に分散可能。副収入として実感できる
100,000ドル(約1,500万円)700〜1,200ドル(約10〜18万円)本格運用。セクター分散も可能

上記は月利1〜3%をベースにした概算です。実際の収益はIV(インプライド・ボラティリティ)や銘柄の流動性、行使価格の選び方で大きく変動します。

銘柄選びの5つの基準

ホイール戦略の銘柄選びは「値下がりしても保有したい銘柄」を選ぶのが鉄則です。プレミアムの高さだけで選ぶと、急落時に塩漬けになるリスクがあります。以下の5つの基準で絞り込みましょう。

  1. 株価30〜300ドル帯:資金効率と分散のバランスが良い。5ドル未満の低位株はスプレッドが広く、ファンダメンタルズも不安定
  2. オプションの流動性が高い:売買のスプレッドが狭く、約定しやすい銘柄を選ぶ。S&P500構成銘柄やメジャーETF(SPY・QQQ・IWMなど)が代表例
  3. 配当がある:保有期間中に配当を受け取れるため、プレミアムに加えた「第3の収入」になる
  4. ファンダメンタルズが健全:15〜20%下落しても長期で回復が期待できる大型株が最適。ミーム株や赤字企業は避ける
  5. 決算期を意識する:決算直後はIVが急落するため、決算をまたぐ期間のオプションはプレミアムが歪みやすい

ホイール戦略のメリット・デメリット

ここまでの仕組みと検証を踏まえ、ホイール戦略の長所と短所を整理します。ポイントは「方向性に賭けず、プレミアムと下落耐性で稼ぐ」という性格から、メリットとデメリットが表裏一体になっている点です。

ホイール戦略のメリット
  • 3つの収入源(プット売りプレミアム・コール売りプレミアム・配当)で複合的に収益を得られる
  • 相場が横ばい〜緩やかな上昇でも利益が出る(方向性に依存しにくい)
  • CSPにより実質的に「割安で株を仕込む」形になり、取得コストを下げられる
  • 下落局面のドローダウンが買い持ちより浅くなりやすい(守りに強い)
  • ルールが明確で再現性が高く、機械的に運用しやすい
ホイール戦略のデメリット・リスク
  • 株価が急落した場合、プレミアムではカバーしきれない含み損を抱える
  • カバードコール中に株価が急騰すると、利益がキャップされ大きな上昇益を逃す(強気相場では買い持ちに劣後)
  • 100株単位の現金担保が必要なため、資金拘束が大きい
  • 暴落相場では「CSPで高値掴み → カバードコールが機能しない」の悪循環に陥る
  • 売買タイミングの判断は裁量が入るため、完全な「放置運用」にはならない

最大のリスクは原資産の急落です。株価が20〜30%下落すると、受け取ったプレミアムでは補填できず、カバードコールの行使価格を取得コスト以上に設定できなくなります。この「塩漬け」を避けるためにも、銘柄選びの段階で「下がっても保有し続けたい銘柄」を選ぶ原則が重要です。逆に大きな上昇局面ではカバードコールで利益がキャップされ、買い持ちに劣後します。ホイール戦略は「爆発的なリターンより、安定的なプレミアム収入と下落耐性を重視する人に向く戦略」と言えます。

ホイール戦略の具体的なやり方|実践ステップ

ここでは米国株オプションを例に、ホイール戦略を実際に始める手順を解説します。日本の個別株オプション(かぶオプ)でも基本の流れは同じです。

手順1:証券口座を開設しオプション取引を有効化

まずオプション取引に対応した証券口座を開設します。米国株オプションならmoomoo証券・インタラクティブ・ブローカーズ(IB)・サクソバンク証券、日本の個別株オプション(かぶオプ)ならSBI証券が代表的です。口座開設時にオプション取引の承認(レベル1〜2)を申請します。CSPとカバードコールは「保守的な戦略」に分類されるため、承認のハードルは比較的低い傾向です。

手順2:銘柄を選定し、CSPの行使価格と満期を決める

前述の5つの基準で銘柄を選んだら、CSPの条件を決めます。行使価格はATM(現在値付近)から5〜10%下のOTMが基本で、満期は30〜45日が主流です。時間的価値の減衰(セータ)が加速するゾーンをうまく取る設計になっています。行使価格を深いOTMにするほどアサインされにくくなりますが、プレミアムも小さくなります。「この価格なら100株買って保有しても構わない」と思える水準を選ぶのが基本姿勢です。

手順3:アサインされたらカバードコールに切り替え

プットが行使されて100株を取得したら、その株に対してカバードコールを売ります。行使価格は実質取得コスト以上に設定するのが原則です。取得コスト以下で売ると差額が損失になるためです。満期はCSPと同じく30〜45日が一般的ですが、7〜14日の短期で回す手法もあります。短期のほうがプレミアムの時間単価は高くなりますが、管理の手間が増えます。

手順4:コール行使で売却 → サイクルを繰り返す

カバードコールが行使されて株式が売却されたら、売却代金で再びCSPを売ります。この一連のサイクルを繰り返してプレミアム収入を積み上げます。カバードコールが行使されない場合は、プレミアムを受け取ってそのまま次のカバードコールを売ります。保有中は配当も受け取れるため、コールが行使されない期間も「無駄」にはなりません

暗号資産(仮想通貨)でのホイール戦略

ホイール戦略は株式だけでなく、暗号資産のオプション取引でも実行可能です。ただし、ボラティリティ・流動性・決済方式が株式とは大きく異なるため、やり方をそのままコピーするだけではうまくいきません。

暗号資産オプションが取引できるプラットフォーム

注意したいのが取引の「場所」です。かつて主流だったDeribitやBybitは、日本の金融庁に未登録・日本市場から撤退といった事情で、日本の個人が実際に使うのは困難になっています。そこで現実的な選択肢となるのが、ウォレット接続で使える分散型取引所(DEX)と、国内規制内のサービスです(2026年8月時点)。

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プラットフォーム特徴対応銘柄
Derive(DEX)ウォレット接続でKYC不要の分散型オプション取引所(旧Lyra)。USDC決済のヨーロピアン、プット売り・カバードコールなど売り建ても可能BTC・ETH・SOL等
SBI VCトレード(国内)国内で暗号資産オプション(カバードコール・ターゲットバイイング)を提供BTC

中でもDeriveはKYC不要でウォレットからそのまま使える分散型オプション取引所(DEX)で、大手CEXが日本の個人を制限する状況でもアクセスできるのが利点です(※3)。ただし、①スマートコントラクトのリスクがある、②流動性(板の厚み)はまだ大手CEXに及ばない、③あくまで海外・自己責任、という点は理解しておく必要があります。国内で規制内に収めたいなら、SBI VCトレードがBTCのオプション(カバードコール・ターゲットバイイング)を提供しています。

株式との違いと注意点

暗号資産でホイール戦略を実行する場合、株式との違いを理解しておく必要があります。

  • ボラティリティが桁違い:BTC/ETHは1日で10%以上動くことも珍しくありません。CSPのプレミアムは高くなりますが、急落時の含み損もその分大きくなります
  • 100株単位ではない:暗号資産オプションは1BTC=1枚単位など、株式の100株ルールとは異なります。必要資金はBTC価格に直結します
  • 差金決済(USDC):DeriveなどのDEXやCEXのオプションはUSDCの現金決済のため、プット行使時に実際にBTCを受け取るのではなく差額が精算されます。「現物を保有してカバードコール」のフローとはやや異なります
  • 配当がない:暗号資産には配当がないため、ホイール戦略の「第3の収入源」がありません。収益はプレミアムのみに依存します
木田 陽介

暗号資産オプションでホイールを回す場合、株式の感覚そのままでは火傷します。BTC/ETHのボラティリティは株式の3〜5倍ある前提で、ポジションサイズを小さめに調整するのが生き残るコツです。

ホイール戦略の注意点|失敗しないためのポイント

ホイール戦略で退場しないために、特に押さえておきたい3点を整理します。いずれも「うまくいっている時」ではなく「崩れた時」に効いてくるポイントです。

この章の要点
  • 暴落時に「塩漬け」になるリスクの回避策
  • 行使価格と満期の選び方
  • ホイール戦略が向かない場面

暴落時の塩漬けリスクへの対処

ホイール戦略最大のリスクは、CSPでアサインされた後に株価がさらに下落し、カバードコールが機能しなくなることです。行使価格を取得コスト以上に設定できなくなると、プレミアムの小さいコールしか売れず、回復に長い時間がかかります。対処は、①急落リスクの低い大型株を選ぶ、②1銘柄に全資金を集中させない、③CSPの行使価格を深めのOTMにしてアサイン確率を下げる、の3つが基本です。「プレミアムを多く取りたい」誘惑に負けてATM付近のプットを売るのは、初心者が陥りやすい失敗パターンです。

行使価格と満期の選び方

多くのホイールトレーダーが採用するのは満期30〜45日・デルタ0.2〜0.3のOTMという組み合わせです。時間的価値の減衰が加速し始めるゾーンで、アサイン確率を適度に抑えながらプレミアムを確保できます。満期が長すぎると資金拘束が長引き、短すぎるとプレミアム単価が下がるうえに管理負担が増えます。まずは30〜45日で始め、慣れてから短期(ウィークリー)も試すのが堅実です。

ホイール戦略が向かない場面

強い上昇トレンドの市場では、ホイール戦略は買い持ちに劣後します。カバードコールの行使価格で利益がキャップされるためです。2020〜2021年のような急騰相場では、単純に保有し続けたほうがリターンは大きくなります。逆に暴落相場ではCSPが次々とアサインされて含み損が拡大します。ホイール戦略はレンジ相場〜緩やかな上昇相場で最も威力を発揮する戦略であり、相場環境を見極める判断力が求められます。

ICHIZEN Capitalの視点|暗号資産でホイールを回すリアル

ICHIZEN Capitalは暗号資産歴8年以上のメンバーで構成された事業者です。ここでは、暗号資産オプションの実分析を通じて感じるホイール戦略の現実的なポイントを整理します。

暗号資産のオプション市場はまだ発展途上です。株式のように銘柄が数千あるわけではなく、流動性のあるオプションは実質的にBTCとETHが中心。とくにDEX(Derive等)では満期やストライクによって板が薄く、意図した価格で約定しないことがあります。ホイールの前提である「好きな行使価格で機械的に回す」がやりにくいのです。

また、暗号資産オプションはUSDC等の差金決済が基本のため、株式のように「プット行使で現物を取得→カバードコール」という流れを完全には再現できません。「割安で仕込む」というホイールの旨味が、株式とは異なる形になります。配当という第3の収入もありません。

自社のオプション分析でも、大口が上値にカバードコールの売りを大量に置くことで、相場全体の上昇が構造的に抑えられる局面が観測されます。これはホイールの「カバードコール」側と同じ売りが市場規模で効いている状態で、個人がカバードコールを売る際にも「上値は重くなりやすい」という市場構造の理解につながります(※ヘッジフローが値動きを増幅・抑制し得る、という文脈での観察です)。

それでも暗号資産のIVは株式より遥かに高く、プレミアムの絶対額は大きくなります。高いプレミアムには相応のリスクが伴うため、ポジションサイズを厳格に管理することが大前提です。国内で規制内に収めたいなら、SBI VCトレードがBTCのカバードコール・ターゲットバイイング(CSPに相当)を提供しており、日本の枠組みでホイールに近い運用ができる選択肢です(※4)。

ホイール戦略の税金|市場で異なる課税に注意

ホイール戦略で得た利益には税金がかかります。課税方式は「どの市場でオプション取引をしたか」で大きく異なるため、前半の意思決定表と合わせて必ず押さえておきましょう。

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市場課税方式税率損益通算
国内株オプション(かぶオプ・日経225)申告分離課税20.315%先物・オプション等と通算可、3年繰越
海外株オプション(米国株等)雑所得(総合課税)最大55%(所得税45%+住民税10%)他の雑所得と通算可、繰越不可
暗号資産オプション雑所得(総合課税)最大55%暗号資産同士の損益通算可、繰越不可

国内の株式オプション(日経225・かぶオプ)は申告分離課税20.315%で、先物と損益通算でき3年繰越も可能です(※5)。一方、海外株オプションや暗号資産オプションの利益は「雑所得」として総合課税され、所得が高いほど税率が上がります。ホイール戦略は小さな利益を頻繁に積み上げるため、取引明細が煩雑になりがちです。DEX(Derive等)や海外プラットフォームを使う場合は、ウォレットの取引履歴・オンチェーン記録をもとにした損益計算が重要になります。詳しくは仮想通貨の税金ガイドを参考にしてください。

ホイール戦略を体系的に学びたい方へ

ホイール戦略は「プット売り」「カバードコール」「IV」「デルタ」「行使価格と満期の設計」など、複数の知識が噛み合って初めて機能します。米国発の断片的な情報を寄せ集めるより、体系的に学ぶ方が実践では圧倒的に近道です。ICHIZEN Capitalが運営する完全無料のトレードスクールでは、CSPやカバードコールを含むオプションの実践知識を基礎から学べます。

よくある質問

ホイール戦略の年利は本当に15〜20%ですか?

「年率15〜20%」はプレミアム利回りを単純に年換算した理想値です。公開されているSPYの長期検証では、ホイールの実績リターンは約11%で買い持ち(約13.6%)に劣後する一方、最大ドローダウンは-15%対-24%とホイールが浅く済みました。つまりホイールの真価は高リターンより「下落耐性」にあります。暴落相場では年間でマイナスになるリスクもあります。

日本の個人はどこでホイール戦略ができますか?

国内株オプション(かぶオプ・日経225)ならSBI証券、米国株オプションならmoomoo証券・IB証券・サクソバンク証券、暗号資産ならDEXのDerive(ウォレット接続・KYC不要)や国内のSBI VCトレードで可能です。税制は国内かぶオプが申告分離課税20.315%、米国株・暗号資産は雑所得(最大55%)と大きく異なるため、税率も含めて市場を選ぶのが重要です。

ホイール戦略はいくらから始められますか?

株式の場合、最低5,000ドル(約75万円)から始められます。ただし実用的な月次収入を得るには25,000ドル(約375万円)以上が推奨されます。暗号資産の場合はBTC価格に依存し、DEXのDeriveなどでは比較的小口から取引できるケースもあります。

ホイール戦略に適した銘柄は何ですか?

株価30〜300ドル帯で、オプションの流動性が高く、ファンダメンタルズが健全な大型株・ETFが適しています。SPY・QQQ・AAPL・MSFTなどが代表例です。ミーム株や低位株はリスクが高く推奨されません。「下がっても保有したい銘柄」を選ぶのが鉄則です。

ホイール戦略とカバードコールの違いは何ですか?

カバードコールは「すでに保有している株にコール売りをする」単体の戦略です。ホイール戦略はこれにCSP(プット売り)を組み合わせ、株の取得→売却→再取得のサイクルを繰り返す複合戦略です。ホイールはカバードコールを「部品」として含む上位概念にあたります。

暗号資産(仮想通貨)でもホイール戦略はできますか?

できます。ただしDeribitやBybitは日本の個人が使いにくいため、現実的にはDEXのDerive(ウォレット接続・KYC不要)や国内のSBI VCトレードが選択肢です。ボラティリティが株式の3〜5倍あり、USDC等の差金決済のため「プット行使で現物取得→カバードコール」を完全には再現できません。配当もなく収益はプレミアムのみ、DEXにはスマートコントラクトのリスクもあるため、ポジションサイズを小さめにする工夫が必要です。

ホイール戦略の利益に税金はかかりますか?

はい。国内株オプション(日経225・かぶオプ)は申告分離課税20.315%、海外株オプションや暗号資産オプションは雑所得として総合課税(最大55%)されます。年間20万円を超える利益がある場合は確定申告が必要です。

ホイール戦略で大損することはありますか?

あります。最大のリスクはCSPでアサインされた後の株価急落です。株価が30%下落した場合、受取プレミアム(通常2〜5%程度)では到底補填できず、含み損を抱えたまま長期間カバードコールを売り続ける状況になります。だからこそ「下がっても持ちたい銘柄」と資金分散が重要です。

まとめ|ホイール戦略は「下落に強い現金回収型」の手法

この記事のまとめ
  • ホイールはCSP→株取得→カバードコール→売却を回す複合戦略。本質は”儲け”より”下落耐性”
  • 「年率15〜20%」は理想値。長期検証では買い持ちに劣後、ただし下落は浅い(守りの戦略)
  • 日本の個人は市場選びで税率が20%(国内かぶオプ)か55%(米株・暗号資産)に激変する
  • 成否の鍵は「下がっても持ちたい銘柄」「資金分散」「相場環境の見極め」の3点

ホイール戦略は、CSP(プット売り)とカバードコールを循環させてプレミアムを回収する下落に強い現金回収型のオプション戦略です。「爆発的なリターン」を狙うものではなく、レンジ〜緩やかな上昇相場で、下落を抑えながら現金を回すのが得意分野。通説の「年率15〜20%」を鵜呑みにせず、”守りの戦略”として正しく位置づけることが第一歩です。

そして日本の個人にとっては、どの市場で回すか(=税率20%か55%か)が銘柄選び以上に効いてきます。仕組みを図で理解し、税金まで設計したうえで、まずは少額・国内から試すのが堅実です。基礎から体系的に学びたい方はオプション取引とは?、部品となる各戦略はカバードコールキャッシュ・セキュアード・プット(CSP)の解説もあわせてご覧ください。

参考文献

※1 大阪取引所(JPX)北浜投資塾「ターバイカバコホイール戦略」https://www.jpx.co.jp/ose-toshijuku/movie/kabuop/kabuop_2025_03.html
※2 Charles Schwab「Three Things to Know About the Wheel Strategy」https://www.schwab.com/learn/story/three-things-to-know-about-wheel-strategy
※3 Derive(分散型オプション取引所・旧Lyra)公式/ドキュメント(2026年8月時点)https://www.derive.xyz/
※4 SBI VCトレード「SBI暗号資産オプション」https://www.sbivc.co.jp/columns/content/lre5ypjzp
※5 国税庁「先物取引に係る雑所得等の課税の特例」https://www.nta.go.jp/
※6 moomoo証券コミュニティ「【オプション初心者向け】Wheel(ホイール)戦略とは?SPYで検証してみた」(長期バックテストの一例)https://www.moomoo.com/ja/community/

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