オプションのネットプットプレミアムとは?意味・計算方法・見方の注意点を忖度なく解説

ICHIZEN Capitalのイチ押しポイント!
- ネットプットプレミアムには、まったく違う2つの意味があります。どちらの話をしているのかで、読み方が正反対になります。
- ①市場全体の指標:プットに払われた金額から受け取られた金額を引いた純額(フローの偏り)
- ②自分の建玉の純額:複数のオプションを組んだとき、差引きでいくら払ったか/受け取ったか
- 計算そのものは引き算だけで、難しい数式は出てきません。正なら持ち出し、負なら受取りです。
- ベアプットスプレッドの実例では、支払100円-受取40円=ネット60円(1枚あたり60,000円の持ち出し)
- 損益分岐点は「高い方の権利行使価格-ネットプレミアム」で、9,500円-60円=9,440円になります
- 急拡大しても「下落確定」のサインにはなりません。むしろ売り手に吸収され、反発の起点になる場面があります。
- ICHIZEN Capitalは2026年6月8日のnoteで、最大値まで膨らんだNet Put Premiumを反発上昇シナリオの根拠として提示しました
- その後の7月の記事では「見事に吸収される展開」として、過熱が消化されていく過程を追跡しています
- 日本の投資家には、指標を読む前に制度面の壁があります。ここを伏せている解説記事が少なくありません。
- データの本場であるDeribitは、日本を制限対象地域として明示しています
- 暗号資産デリバティブの利益は現行制度では雑所得・総合課税で、住民税を含めると最大55%の負担になり得ます
木田 陽介この言葉でつまずく方の大半は、実は用語ではなく「どっちの話か」で迷っています。市場の空気を測る指標として使うのか、自分の建玉の持ち出しを数えるのか。先にそこを分けてしまえば、あとは引き算が残るだけです。


監修 木田 陽介
株式会社ICHIZEN HOLDINGS 代表取締役
2016年から仮想通貨トレードを開始。2017年に株式会社CoinOtakuを共同で創業。同年CoinOtakuの代表に就任。2020年に東証二部上場企業に6億円でM&A。bitgetの月間取引高で世界4位を獲得。2025年にCoinOtaku代表を退任し、同年5月に株式会社ICHIZEN HOLDINGSの代表取締役に就任。
オプションのネットプットプレミアム(Net Put Premium)とは?基本情報
ネットプットプレミアムとは、プットオプションのやり取りで生じたプレミアムを差引きして、純額いくらになったかを表す考え方です。「ネット(net)」は純額、つまり相殺した後の残りを指します。プレミアムはオプションの価格そのものですから、その出入りを合計して残った額が、ネットプットプレミアムということになります。
ここで注意すべき点があります。この言葉は、市場全体のフローを測る指標として使われる場合と、自分が組んだ戦略の収支を表す場合の、2つの文脈で登場するのです。同じ言葉でありながら、見ている対象も、読み取れる意味もまったく異なります。この切り分けを飛ばすと、指標の話をしているのに自分の損益の話だと勘違いする、といったすれ違いが起こります。
なお、プレミアムの構造そのもの(本質的価値と時間的価値の内訳や、価格を動かす要因)については、オプション取引のプレミアムとは?で詳しく整理しています。本記事は、その一段先にある「差引きした純額をどう読むか」に絞って解説していきます。
| 名称 | ネットプットプレミアム/Net Put Premium/純プットプレミアム |
| 基本の意味 | プットのプレミアムを差引きした純額(ネット=相殺後の残り) |
| ①指標としての意味 | 市場全体でプットに支払われた総額-受け取られた総額。フローがプット側にどれだけ偏ったかを表す(※1) |
| ②戦略としての意味 | 複数のオプションを組んだときの、支払プレミアム合計-受取プレミアム合計(※2) |
| 符号の読み方 | 正=デビット(純支払・持ち出し)/負=クレジット(純受取) |
| 日本語の近い概念 | JPXの「ネット・オプション価値の総額」=買い建玉の価値総額-売り建玉の価値総額(※3) |
| 主なデータ提供元 | Glassnode等。原データはDeribit・OKX・Bybit・Binance等の取引所(※1) |
| 誤解されやすい点 | 急拡大=下落確定ではない。売り手に吸収されて反発する場面がある |
ネットプットプレミアムの「2つの意味」を先に切り分ける
この用語を検索した方が最初に知るべきなのは、定義そのものよりも「どちらの意味で使われているか」を見分ける方法です。文脈さえ分かれば、あとの計算は引き算に過ぎません。2つの意味を順に見ていきましょう。
- ①市場のフロー指標:他人がプットにいくら払ったかを集計したもの
- ②自分の建玉の純額:組んだ戦略で差引きいくら払った/受け取ったか
- 見分け方:主語が「市場」なら①、「自分のポジション」なら②
①市場全体のフロー指標としてのネットプットプレミアム
1つ目は、市場参加者がプットに投じた資金の偏りを測る指標としての使い方です。Glassnodeは、オプションのプレミアム関連指標として「Put Premium Paid(プットを買うために支払われた総額)」と「Put Premium Received(プットを売って得られた総額)」を区別して提供しており、行使価格別の内訳を「支払われたプレミアムから受け取られたプレミアムを引いた純額」として定義しています(※1)。
この純額がプラス方向に大きく振れているとき、市場ではプットを買う側に資金が傾いていることになります。下方向へのヘッジ需要か、弱気方向への思惑か、いずれにせよ「誰かがコストを払ってでも下落に備えた痕跡」が金額として積み上がった状態です(※1)。対象はビットコインやイーサリアムなどで、原データはDeribitをはじめとする各取引所から集計されています。
集計の際に鍵となるのが、テイカー(taker)という考え方です。Glassnodeは、テイカーを「価格改善を待たずに即座に約定させるため、スプレッドを払う意思がある参加者」と説明しています(※1)。待てずに払ったという事実そのものが、その参加者の切迫感を映すという理屈になります。
実務では、買いと売りの判定を約定価格の位置で機械的に振り分けます。フロー分析を提供するTradyticsは、ネットプレミアムを「(コール買い+プット売り)-(コール売り+プット買い)」と定義し、アスク以上での約定を「買い」、ビッド以下での約定を「売り」として扱うと明記しています(※2)。集計の定義は提供元ごとに差があるため、数字を比べるときは同じ定義同士で並べる必要があるでしょう。
②組んだ戦略の純プレミアムとしてのネットプットプレミアム
2つ目は、自分が複数のオプションを同時に売買したときの、収支の差引きです。オプションを1つ買って1つ売れば、片方で支払いが発生し、もう片方で受取りが発生します。その差額こそが、実際に口座から出ていく(あるいは入ってくる)金額になります(※12)。
日本の市場にも、同じ発想の概念が用意されています。日本取引所グループ(JPX)の用語集にある「ネット・オプション価値の総額」は、買いオプション価値の総額から売りオプション価値の総額を差し引いた金額と定義されています(※3)。呼び方は違っても、相殺して純額を見るという考え方は共通しています。
符号の意味も押さえておきましょう。差引きが支払い超過ならデビット(純支払)、受取り超過ならクレジット(純受取)と呼びます。デビットなら最初に払った額が最大損失の目安となり、クレジットなら受け取った額が最大利益の目安になります。この対称性が、戦略設計の出発点になるのです。
ネットプットプレミアムの計算方法と損益分岐点
ここからは②の意味、つまり自分の建玉の純額を実際に計算していきます。使う演算は引き算だけで、対数も分布も出てきません。基本の式は次のとおりです。
ネットプレミアム = 支払プレミアムの合計 - 受取プレミアムの合計
正(プラス)=デビット(純支払)/負(マイナス)=クレジット(純受取)
※各プレミアムは「価格 × 取引単位 × 枚数」で金額に換算します
日経225オプションでの具体例(ベアプットスプレッド)
プットを2つ組み合わせる代表例が、ベアプットスプレッドです。松井証券が公開している解説では、日経平均が10,000円の局面で「9,500円のプットを100円で1枚買い、9,000円のプットを40円で1枚売る」という組み方を例示しています(※5)。日経225オプションの取引単位は1,000倍ですので、金額に直すと次のようになります。
| 項目 | 内容 | 金額 |
|---|---|---|
| 買い(支払) | 9,500円プット × 100円 × 1,000 | -100,000円 |
| 売り(受取) | 9,000円プット × 40円 × 1,000 | +40,000円 |
| ネットプレミアム | 100円-40円=60円 × 1,000 | -60,000円(デビット) |
| 最大損失 | 日経平均が9,500円以上で終わった場合 | 60,000円 |
| 最大利益 | 日経平均が9,000円以下で終わった場合 | 440,000円 |
| 損益分岐点 | 9,500円 - 60円 | 9,440円 |
この表で最も重要な行が、ネットプレミアムの60,000円です。プットを買っただけなら100,000円の持ち出しでしたが、別のプットを売ることで40,000円を回収し、負担を6割に圧縮できています。そのかわり、9,000円より下で得られるはずだった利益は放棄することになります。コストと上限を交換したわけです。
損益分岐点の式も確認しておきましょう。プット買い単体であれば「権利行使価格-プレミアム」が分岐点になります(※4)。スプレッドの場合は、そのプレミアムの部分がネットプレミアムに置き換わり、9,500円-60円=9,440円が分岐点となります。ネットプレミアムを圧縮できていれば、それだけ分岐点は手前に寄ってくるのです。
暗号資産オプションではBTC建ての換算が挟まる
暗号資産オプションでは、ここに一段だけ余計な手順が加わります。Deribitのようなインバース型のオプションでは、プレミアムも損益もBTC建てで決済されるためです(※6)。円やドルで完結する日経225とは、この点が決定的に違います。
Deribitの解説例を見てみましょう。権利行使価格9,000ドルのプットを0.2 BTCで買い、満期時の価格が8,000ドルだったケースが挙げられています(※6)。本質的価値は1,000ドルですが、これをBTCに直すには満期時の価格で割る必要があり、1,000ドル÷8,000ドル=0.125 BTCとなります。支払った0.2 BTCを差し引くと、結果は0.075 BTCのマイナスです。
つまり権利行使価格を下回ってITMになったにもかかわらず、BTC建てでは損失で終わるという現象が起こります(※6)。ドル建ての感覚のままネットプレミアムを差引きすると、ここで計算が合わなくなります。暗号資産オプションを扱うときは、換算の一手間を必ず挟んでください。
フロー指標としてのネットプットプレミアムの読み方
①の意味に戻り、市場の指標としての読み方を整理します。ネットプットプレミアムが教えてくれるのは「予想」ではなく「実際に払われた金額」です。誰がいくら払ったかという事実の集計であり、その先に何が起きるかを保証するものではありません。
この指標が拡大するのは、たいてい価格が下げている最中です。下落に驚いた参加者がプットを買い、その支払いが積み上がることで純額が膨らみます。同時にプット側のIVも押し上げられ、プットの価格が相対的に割高になっていきます。IVスマイルのカーブが下値側だけ持ち上がるのは、この局面です。
ここで見落とされがちなのが、プレミアムには必ず受け取っている相手がいるという当たり前の事実です。買い手が殺到しているということは、その割高になった価格で売っている参加者が同じだけ存在します。指標が示すのは需給の偏りであって、片側だけの意思ではありません。
したがって実務では、単独で見ずに他の指標と重ねる必要があります。恐怖の度合いを測るDVOL、建玉の分布を示すOI、そして売り手の取り分の源泉であるボラティリティリスクプレミアムと併せて読むことで、はじめて偏りの意味が立体的に見えてきます。
ネットプットプレミアムの注意点・よくある誤解
この指標は直感的に見える分だけ、誤読も起こりやすいと言えます。特に「急拡大=下落確定」という短絡は、実際の値動きにたびたび裏切られてきました。読み取れることと読み取れないことを、はっきり分けておきましょう。
- プット側にどれだけの資金が、実際に払われたか(金額としての事実)
- その偏りが、どの行使価格帯に集中しているか
- 偏りが前日・前週と比べて拡大しているか、縮小しているか
- 買い手が待てずにスプレッドを払ったかどうか(テイカーの切迫感)
- この先に下落が起こるかどうか(指標は予言ではなく痕跡の集計です)
- 最終的に誰がそのポジションを保有しているか(約定の位置だけでは確定できません)
- ヘッジ目的なのか投機目的なのか(金額の集計からは動機まで分かりません)
- 複数レッグの戦略の一部かどうか(定義によってはスプレッドを除外して集計しています)
4つ目は特に見落とされがちです。先述のTradyticsの定義では、ネットプレミアムはスプレッドを除外して集計すると明記されています(※2)。同じ「ネットプレミアム」という名前でも、提供元によって何を含め何を外すかが違うのです。数字を根拠にするなら、その定義を先に確認しておきましょう。
もう1つ、約定価格による買い/売りの判定はあくまで機械的な推定に過ぎません。アスクで約定したという事実は分かっても、その参加者が新規に買ったのか、既存の売り建玉を閉じたのかまでは判別できないのです。約定の位置だけで最終的な保有者やその意図を断定することは避けるべきでしょう。
ICHIZEN Capitalの視点|「拡大」ではなく「吸収」で読む
ICHIZEN Capitalは、自社のnoteでビットコインのオプションデータを継続的に分析してきました。その中でネットプットプレミアムは、拡大した瞬間ではなく「吸収されていく過程」にこそ意味がある指標として扱っています。ここが、一般的な解説記事との最大の違いです。
2026年6月8日のnoteは、その考え方が最もはっきり出た回でした。タイトルは「直近最大値まで膨らんだNet Put PremiumとIV Termバックワーデーションが示す反発上昇シナリオ」です(※10)。プット側のプレミアムが最大値まで膨らんだという事実を、弱気の裏付けではなく反発上昇シナリオの根拠として提示しています。
同記事では、下落トレンドの開始と呼応してネットプットプレミアムが急増した局面を「極めて過熱した弱気の動き」と表現しています(※10)。そのうえで、一方的な増加はプット側のIVが実態より割高に跳ね上がっている状態を意味すると整理しました。過熱は、それ自体が反転の燃料になり得るという読み筋です。
実際にその後、下値支持帯への接触から反発が入ると、積み上がっていた山は決済フローとオプション価値の減少によって消化されていきました(※10)。7月の記事では「ネットプットプレミアムは見事に吸収される展開」として、この過程が追跡されています(※11)。恐怖が価格になり、その価格を誰かが回収していく——この循環が、指標の実像です。



プットのプレミアムが膨らんだときほど、それを売りたい人が出てきます。期近のIVが跳ね上がった局面は、売り手にとってはプレミアムを回収する好機になりますからね。だから「膨らんだ=落ちる」ではなく、「膨らんだものが吸収され始めたか」を見る。順番が逆なんです。
7月9日の記事では、この吸収の担い手をボラティリティショート勢と捉えています(※11)。下落を恐れた参加者がプットを買う一方で、高まったIVを利用して期近のプットを売り、プレミアムを回収していた可能性が指摘されています。満期が近いオプションほど時間価値の減少が速いため、売り手にとって条件が揃いやすいという構造です(※11)。
ただし、この読み方は断定ではありません。約定データから最終的な保有者を確定することはできず、あくまで市場構造からの推定に留まります。同記事もプットIV・ネットプットプレミアム・DVOLのピークアウトを確認することが重要だと結論づけており、拡大した瞬間に逆張りせよとは述べていません(※11)。確認を待つという規律が、この指標の使い方の核心と言えるでしょう。
日本の投資家が先に確認すべき、制度面の2つの壁
指標の読み方以前に、日本の投資家には確認しておくべき制約があります。この点に触れずにDeribitのデータだけを紹介する記事が多いのですが、実務では入口の話が先に来ます。
1つ目は、アクセスの問題です。ネットプットプレミアムの主要な原データはDeribitに由来しますが、Deribitは公式の制限対象地域(Restricted Jurisdictions)に日本を挙げており、日本に居住する方はプラットフォームを利用できないとしています(※9)。データを読むことと、その市場で取引できることは別問題だと理解しておく必要があります。
2つ目は税制です。現行制度では、暗号資産デリバティブ取引の利益は雑所得として総合課税の対象となり、株式やFXのような申告分離課税は適用されません(※7)。税率は所得税5〜45%に住民税10%が加わるため、負担は最大で55%に達し得ます(※7)。損益通算や繰越控除の扱いも、申告分離課税の商品とは異なります。詳細は暗号資産の税金の記事で整理しています。
この点は今後変わる可能性があります。令和8年度税制改正大綱では、一定の要件を満たす暗号資産について申告分離課税へ移行する方針が示されました(※7)。ただし対象となる「特定暗号資産」の定義は2026年7月時点で明確になっておらず、施行時期も金融商品取引法の改正を前提とした見通しに留まります(※7)。海外取引所のオプションが対象に含まれるかは、現時点では確定していません。税務の判断は必ず最新の一次情報と専門家の確認を経てください。
\オプション・デリバティブを1つの口座で/
よくある質問
- ネットプットプレミアムとは何ですか?
プットオプションのプレミアムを差引きした純額のことです。使われ方は2つあり、1つは市場全体でプットに支払われた総額から受け取られた総額を引いた指標、もう1つは自分が組んだ戦略の支払と受取の差額を指します。Glassnodeは行使価格別の内訳を「支払われたプレミアムから受け取られたプレミアムを引いた純額」と定義しています。文脈がどちらかを先に確認すると、読み違いを防げます。
- ネットプレミアムはどうやって計算しますか?
「支払プレミアムの合計-受取プレミアムの合計」で計算します。各プレミアムは価格に取引単位と枚数を掛けて金額に直します。結果が正なら口座から出ていくデビット(純支払)、負なら入ってくるクレジット(純受取)です。日経225オプションであれば取引単位は1,000倍ですので、ネット60円のポジションは60,000円の持ち出しになります。
- プットオプションのプレミアムとは何ですか?
プットオプション(売る権利)そのものの価格です。買い手はこのプレミアムを支払って権利を得て、売り手は受け取るかわりに、権利行使に応じる義務を負います。プレミアムは本質的価値と時間的価値で構成され、原資産の価格・ボラティリティ・残存期間などによって変動します。構造の詳細はプレミアムの解説記事で扱っています。
- プット売りではプレミアムをいつ受け取れますか?
売建てを約定した時点で受け取ります。ただし受け取った時点で利益が確定するわけではありません。権利行使に応じる義務は満期まで残り続けるため、その後の値動き次第で受取額を上回る損失が発生し得ます。受取プレミアムは「確定した利益」ではなく「最大利益の上限」だと理解しておくべきでしょう。
- プット売りで大損することはありますか?
あります。プット売り単体の場合、受け取れる利益は最初のプレミアムが上限である一方、損失は権利行使価格まで価格が下がるにつれて拡大します。利益は限定、損失は大きくなり得るという非対称な形です。損失側に上限を設ける方法の1つが、より下の行使価格のプットを買って組み合わせるスプレッドで、この場合はネットプレミアムの分だけ受取が減ります。
- ベアプットスプレッドの損益分岐点はどう求めますか?
「高い方の権利行使価格-ネットプレミアム」で求めます。松井証券が示す例では、9,500円のプットを100円で買い、9,000円のプットを40円で売った場合、ネットプレミアムは60円ですので、損益分岐点は9,500円-60円=9,440円となります。このとき最大損失は60,000円、最大利益は440,000円です。
- ネットプットプレミアムが急拡大したら売るべきですか?
いいえ、急拡大それ自体は売りの根拠になりません。この指標が示すのは「プットに実際に払われた金額」という事実であり、将来の下落を予言するものではないためです。ICHIZEN Capitalは2026年6月8日のnoteで、最大値まで膨らんだNet Put Premiumをむしろ反発上昇シナリオの根拠として扱いました。拡大した瞬間ではなく、プットIVやDVOLがピークアウトしたかどうかを確認する方が実務的です。
- オプションのプレミアムが高くなる要因は何ですか?
ボラティリティの上昇と、満期までの残存期間の長さが代表的な要因です。将来の変動幅が大きいと見込まれるほど、権利が価値を持つ可能性が高まるため価格は上がります。ビットコインのプレミアムが株価指数と比べて高くなりやすいのは、ボラティリティが高いことが背景にあります。下落局面でプット側のプレミアムだけが跳ね上がるのも、この仕組みによるものです。
- 日本からDeribitで暗号資産オプションを取引できますか?
できません。Deribitは公式の制限対象地域(Restricted Jurisdictions)に日本を挙げており、日本に居住する方によるプラットフォームの利用を認めていません。ネットプットプレミアムの原データの多くはDeribit由来ですが、データを参照することと、その市場で取引できることは別問題です。指標の勉強を始める前に、この前提を確認しておきましょう。
- 暗号資産オプションの利益にかかる税金はどうなりますか?
現行制度では雑所得として総合課税の対象となり、株式やFXのような申告分離課税は適用されません。所得税5〜45%に住民税10%が加わるため、負担は最大55%に達し得ます。令和8年度税制改正大綱では一定の暗号資産を申告分離課税へ移行する方針が示されましたが、対象となる「特定暗号資産」の定義や施行時期は2026年7月時点で確定していません。実際の申告は最新の一次情報と専門家の確認を経て判断してください。
まとめ
ネットプットプレミアムとは、プットのプレミアムを差引きした純額を指す言葉であり、市場全体の指標としての意味と、自分の建玉の収支としての意味の2つを持ちます。読み違いの多くは、この2つが混ざることで起こります。どちらの話をしているのかを最初に確認するだけで、理解の見通しは大きく変わるでしょう。
計算そのものは「支払-受取」の引き算に過ぎません。ベアプットスプレッドの例では、100円払って40円受け取ればネット60円、金額にして60,000円のデビットとなり、損益分岐点は9,440円へと手前に寄ります。ネットプレミアムを圧縮できれば、それだけ勝てる範囲が広がるかわりに、得られる利益の上限も削れるという交換が成立しています。
指標として読むときに最も重要なのは、これが予言ではなく痕跡の集計だという点です。プットに資金が殺到したという事実は、同じだけの金額を受け取った売り手がいたという事実と表裏一体になっています。ICHIZEN Capitalが「拡大」ではなく「吸収」に注目してきたのは、この循環こそが値動きの実像だからです。膨らんだ瞬間に飛びつくのではなく、プットIVやDVOLがピークアウトしたかを確認する規律が求められます。
そして日本の投資家にとっては、指標の読み方の前に制度の確認が要ります。原データの本場であるDeribitは日本を制限対象地域としており、暗号資産デリバティブの利益は現行制度では最大55%の総合課税の対象です。データが読めることと、その市場で戦えることは別だという前提を押さえたうえで、指標を道具として使いこなしていきたいところではないでしょうか。
参考文献
※1 Glassnode Research「Introducing Options Premium & Taker Flow Analytics」(2025年10月2日)
※2 Tradytics「How are Net Premiums calculated?」
※3 日本取引所グループ(JPX)用語集「ネット・オプション価値の総額」
※4 知るぽると(金融広報中央委員会)「やさしいデリバティブ 3-4 オプション取引の損益」
※5 松井証券「バーティカル・ベア・プット・スプレッド」
※6 Deribit Insights「Option Profit & Loss Calculation Examples」
※7 大和総研「暗号資産取引に20%の申告分離課税導入へ」(2026年2月6日)
※8 国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱い及び計算書について」
※9 Deribit Support「Restricted Jurisdictions」
※10 ICHIZEN Capital note「【6/8】直近最大値まで膨らんだNet Put PremiumとIV Termバックワーデーションが示す反発上昇シナリオ」(2026年6月8日)
※11 ICHIZEN Capital note「【7/9】期間別HV順イールド先延ばし×7/17OPEX OI構造によるガンマを主軸としたレンジ上限〜下限行き来シナリオ」(2026年7月9日)
※12 uTrade Algos「What is net options premium and how is it calculated?」
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