オプションのdeep ITM(ディープITM)ショートコールとは?狙い・早期権利行使・踏み上げリスクを忖度なく解説【2026年最新】

ICHIZEN Capitalのイチ押しポイント!


  • deep ITMのショートコールは「時間価値で稼ぐ売り」ではない
    • プレミアムの大半が本質的価値で、時間価値がほとんど残っていないためセータ収益はごくわずか
    • デルタがマイナス1に近づき、値動きは実質的に先物ショートへ寄っていく
  • 米国株では早期権利行使(割当)が最大の論点になる
    • OCCは「ITMが深いほど、また満期が近いほど割当リスクが高まる」と明記しています(※4)
    • 配当落ち日の直前はショートコールの割当リスクが上がり、配当の支払い義務が生じます(※4)
  • 暗号資産と日経225では、その最大の論点が丸ごと消える
    • Deribitのオプションはすべてヨーロピアン式で、満期時にしか権利行使されません(※9)
    • 日経225も権利行使日はSQ日のみ。配当も存在せず、配当狙いの早期行使が起こりません(※8)
  • 2026年7月時点の損益は総合課税。20%分離課税は成立済みだが未適用
    • 国税庁FAQ2-12は、暗号資産の証拠金取引を申告分離課税の対象外と明記しています(※11)
    • 改正法は2026年3月31日に成立・公布済み。ただし海外取引所は対象外となる見込みです(※12※13)
木田 陽介

「ディープITM ショートコール」で検索しても、日本語では用語集の1〜2行の定義しか出てきません。戦略として正面から書いたページが、調べた限り事実上ゼロでした。ただこの売り方は、オプション売り=時間価値を稼ぐ、という一般的な理解が通用しない特殊な場所にあります。毎日BTCとゴールドのオプションフローを追っている立場から、狙いと落とし穴を忖度なく整理しました。

木田 陽介
(株)ICHIZEN HOLDINGS

代表取締役

この記事の執筆者/監修者

2016年から仮想通貨トレードを開始。2017年に株式会社CoinOtakuを共同で創業。同年CoinOtakuの代表に就任。2020年に東証二部上場企業に6億円でM&A。bitgetの月間取引高で世界4位を獲得。2025年にCoinOtaku代表を退任し、同年5月に株式会社ICHIZEN HOLDINGSの代表取締役に就任。

監修 木田 陽介
株式会社ICHIZEN HOLDINGS 代表取締役

2016年から仮想通貨トレードを開始。2017年に株式会社CoinOtakuを共同で創業。同年CoinOtakuの代表に就任。2020年に東証二部上場企業に6億円でM&A。bitgetの月間取引高で世界4位を獲得。2025年にCoinOtaku代表を退任し、同年5月に株式会社ICHIZEN HOLDINGSの代表取締役に就任。

目次

deep ITM(ディープITM)のショートコールとは?基本情報

deep ITMのショートコールとは、権利行使価格が原資産価格を大きく下回っているコールオプションを売る取引です。日本取引所グループの用語集も、コールで権利行使価格が対象商品の価格を大きく下回っている状態をディープ・イン・ザ・マネーと呼ぶ、と定義しています(※1)。

普通のコール売りと決定的に違うのは、受け取るプレミアムの中身でしょう。ATM付近のコールなら時間価値が厚く乗っていますが、深いITMではプレミアムのほとんどが本質的価値で占められます。売り手が受け取る「オプションらしい儲け」は、ほぼ残っていないのです。

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項目内容
ポジション権利行使価格が原資産価格を大きく下回るコールの売り
デルタ(売り手側)おおむねマイナス0.8〜マイナス1.0に近い水準
プレミアムの中身大半が本質的価値。時間価値はごくわずか
主な損益要因原資産の下落(デルタ)。セータ・ベガの寄与は小さい
最大利益受取プレミアムの範囲に限定
最大損失裸で売った場合は理論上無限(※10)
米国株での固有リスク早期権利行使(割当)。特に配当落ち前(※4)
暗号資産・日経225での扱いヨーロピアン式のため早期権利行使は発生しない(※8※9)

この表で最も誤解が多いのは、デルタと最大損失の組み合わせです。デルタがマイナス1に近いということは、原資産が1ドル上がれば約1ドル損をする状態を意味します。受け取れるプレミアムは限定されているのに、損失側だけが青天井で伸びていく非対称な形になっています。

なぜ時間価値のないコールを売るのか|3つの狙いと損益構造

検索意図の核はここでしょう。時間価値がほとんど無いのにコールを売る理由は、セータではなくデルタを取りにいくためです。言い換えると、deep ITMのショートコールはオプション売りの顔をした「下落狙いのポジション」だと整理できます。

狙い1:デルタでほぼ先物ショートと同じ値動きを作る

深いITMではデルタの絶対値が1に近づくため、売り手のポジションは原資産のショートとほぼ同じ挙動になります。原資産が下がればほぼ同額が利益になり、上がればほぼ同額が損失になるという、素直な方向性ポジションです。

ここに、わずかに残った時間価値の剥落が上乗せされます。金額としては小さいものの、下落方向の見通しが当たった場合には利益に少しだけ加算される構造になっています。

狙い2:ベガの影響が小さく、IVの上昇でやられにくい

オプションの売りで怖いのは、相場が動いた瞬間にIV(インプライド・ボラティリティ)が跳ね上がり、方向が当たっていてもベガで損をする展開でしょう。ベガはATM付近で最大となり、ITMやOTMへ離れるほど小さくなります。

deep ITMではベガが小さいため、IVが動いても評価損益への影響が限定的です。つまり、ボラティリティのノイズをできるだけ排除して、方向性だけを取りにいく設計が可能になります。IVの基礎はオプション取引のIV(インプライド・ボラティリティ)とはで整理しています。

狙い3:セータの逆説を理解しておく

ここが最も重要な論点です。一般に「オプションの売り=時間の経過が味方」と説明されますが、deep ITMのコール売りでは、その常識がほとんど成立しません。減っていく時間価値そのものが、最初から乗っていないからです。

そして、この「時間価値の薄さ」は同時に早期権利行使のリスクを最大化させます。時間価値が小さいほど、買い手にとって権利行使をためらう理由が消えていくためです。稼げるセータが無いことと、割当が飛んでくることは、同じコインの裏表だと捉えてください。セータの基本はオプションのセータ(θ)とはで解説しています。

ここまでの整理

deep ITMのショートコールは、セータを取る戦略ではなく、ベガのノイズを抑えながらデルタで下落を取る戦略です。オプション売りの一般論をそのまま当てはめると、判断を誤ります。

そもそも「deep ITM」はどこからか|定義には幅がある

この章の内容
  • 日本の公式な用語集は「大きく下回っている」としか言っておらず、数値基準を示していない
  • 米国には税法上の厳密な定義が存在するが、これは課税判定用でトレードの基準ではない
  • 実務で使われるデルタ基準は0.75〜1.0程度と幅があり、統一された正解は存在しない

日本の用語集は数値を示していない

日本取引所グループの用語集は、ディープ・イン・ザ・マネーを「権利行使価格が対象商品の価格を大きく下回っている(コール)」状態と説明しています(※1)。注目すべきは、ここに数値基準がまったく書かれていない点でしょう。

「大きく」がどの程度なのかは、取引所の公式定義としては示されていません。ITM・ATM・OTMの区分そのものはオプション取引のATM・ITM・OTMとはで詳しく整理しています。

米国の税法には厳密な定義がある(ただし課税判定用)

一方、米国の内国歳入法には「deep-in-the-money option」の定義が条文として存在します。権利行使価格が「lowest qualified bench mark」を下回るオプション、という定義です(※2)。ベンチマークの算定方法は財務省規則で細かく定められています(※3)。

ただしこれはクオリファイド・カバードコールの課税上の取扱いを判定するための定義であり、トレーダーが戦略を語るときの基準とは目的が異なります。日本の投資家がそのまま使う場面は、ほとんど無いと言えるでしょう。

実務のデルタ基準は0.75〜1.0でばらつく

実務では「デルタいくつからdeep ITMか」で語られますが、この基準は情報源によってデルタ0.75以上、0.90以上、ほぼ1.00と大きくばらついています。CBOEやOCCが数値で定義した公式基準は確認できませんでした。

参考までに、ICHIZEN Capitalが実際のオプションフローを分析した際、Deep ITM Callとして識別したポジションのデルタは0.825〜0.904の範囲でした(※14)。結局のところ単一の正解は無く、「デルタが1に近く、時間価値がほぼ消えている領域」と機能で捉えるのが実用的です。デルタの読み方はオプション取引のギリシャ指標(グリークス)とはで解説しています。

最大の論点は早期権利行使(割当)|ただし暗号資産では消える

英語圏でdeep ITMのショートコールを扱う記事は、ほぼ例外なく早期権利行使の話に多くの分量を割いています。しかしこの論点は、取引する市場によっては丸ごと存在しません。ここを切り分けずに翻訳記事を読むと、確実に誤解します。

米国株オプションはアメリカン式で、いつでも行使される

FINRAは、アメリカンタイプのオプションは契約期間中いつでも権利行使でき、ヨーロピアンタイプは満期直前の特定期間しか行使できない、と説明しています(※7)。米国の個別株オプションは前者にあたります。

そしてOCCは、割当リスクについて「オプションのITMが深くなるほど、また満期が近づくほど高まる」と明記しています(※4)。deep ITMのショートコールは、定義上この2つの条件に最も当てはまるポジションです。

配当落ち前に行使される理屈

OCCは、割当リスクがショートコールでは配当落ち日の直前に上昇する、とも述べています(※4)。理由は単純で、コールの買い手は権利行使して株式を保有しなければ配当を受け取れないためです(※5)。

買い手の判断材料は、残っている時間価値と受け取れる配当の大小です。時間価値より配当のほうが大きければ、権利行使したほうが合理的になります。deep ITMは時間価値が薄いため、この条件を満たしやすい状態にあります。割当を受けた売り手は株式を渡す義務に加え、配当の支払い義務まで負うことになるのです。

なお、割当先の決定についてOCCはランダムな手続きを用いると説明しています(※4)。「自分は大丈夫」と考える根拠はどこにもありません。

「ITMなら自動権利行使」は正確ではない

日本語の解説では「満期にITMなら自動的に権利行使される」と書かれることが多いものの、OCC自身はこの表現を否定しています。0.01ドル以上ITMであれば権利行使される取扱い(exercise by exception)を設けたうえで、次のように明記しているためです(※6)。

Because the right of choice is always involved in “exercise by exception,” exercise under these procedures is not, strictly speaking, “automatic.”

選択権は常に買い手側にあり、行使しない自由も残されています。あくまで「例外による行使」という初期設定であって、自動処理ではない、という整理でしょう。権利放棄の実務はオプション取引の権利放棄とはで扱っています。

暗号資産と日経225では、この論点が消える

ここが本記事で最も伝えたい部分です。Deribitのオプションはすべてヨーロピアン式で、満期時にしか権利行使されません(※9)。決済も現金決済のため、原資産を「持っていかれる」という概念自体が存在しないのです。

日経225オプションも同じ構造になっています。日本取引所グループの制度概要では、権利行使日はSQ日と定められており、満期日以外に権利行使される余地がありません(※8)。

さらに決定的なのが配当の不在でしょう。暗号資産には配当が無いため、配当キャプチャを目的とした早期行使の動機がそもそも生まれません。つまり暗号資産のdeep ITMショートコールでは、英語圏の記事が紙幅を割く早期権利行使という最大の論点が、二重の意味で無効化されます。

ただし誤解しないでいただきたいのは、これは「安全になった」という意味ではない点です。後述する踏み上げリスクはむしろ暗号資産のほうが激しく、消えたのは割当リスクだけだと理解してください。両タイプの違いはオプション取引のヨーロピアンタイプとはで整理しています。

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市場権利行使タイプ早期権利行使配当起因の行使
米国個別株オプションアメリカン式(※7)あり(ITMが深いほど高まる/※4)あり(配当落ち前/※4)
日経225オプション権利行使日はSQ日(※8)なしなし
暗号資産(Deribit)ヨーロピアン式(※9)なしなし(配当が存在しない)

注意点・よくある誤解

やりがちな誤解
  • オプションの売りだから時間の経過が味方になる、という思い込み。deep ITMでは時間価値がほぼ無い
  • プレミアムが高いから有利、という誤解。中身は本質的価値で、値上がりすればそのまま損失になる
  • ITMなら満期に自動で行使される、という説明。OCCは「自動ではない」と明確に否定している(※6)
  • ピン・リスクを心配する誤解。ピン・リスクはATM近辺の問題で、deep ITMではほぼ論点にならない

最大のリスクは踏み上げ

裸でコールを売った場合、理論上の損失は無限大です(※10)。松井証券も、コールの売りは相場が上昇した場合に損失が無限大になる可能性があると注意喚起しています(※15)。

deep ITMではこのリスクがさらに厄介になります。デルタがすでに1に近いため、上昇に対する損失がほぼ全額そのまま乗ってくるからです。OTMのコール売りのように「まだ距離がある」という緩衝が存在しません。

板の薄さとスプレッドの広さ

deep ITMの銘柄は取引が集中しにくく、板が薄くなりがちです。売買が成立しても、スプレッドの広さがそのままコストとして効いてきます。手仕舞いたい局面ほど不利な価格でしか約定しない、という事態も起こり得るでしょう。

この弱点への現実的な対処が、次章のプット・コール・パリティです。板の読み方はオプション取引の板の見方で扱っています。

証拠金は重い(日経225はVaR方式)

損失が無限になり得るポジションのため、証拠金の負担も相応に重くなります。日経225オプションの証拠金について、日本取引所グループは現在VaR方式で計算すると明記しています(※8)。SPAN方式と説明している古い記事が残っていますが、現行の方式はVaR方式です。

deep ITMカバードコールの正体|パリティで見ると別の戦略になる

現物を持ったうえでdeep ITMのコールを売る形は、deep ITMカバードコールと呼ばれます。厚い下値バッファと引き換えに上値をほぼ完全に放棄する形で、実質的には「現物を売ったのに近い」状態を作る手法です。

ここでプット・コール・パリティを当てはめると、この戦略の見え方が変わります。パリティから、カバードコールはショートプットと無リスク債券の組み合わせに分解できます(※19※20)。

コールが深いITMだということは、同じ権利行使価格のプットは深いOTMだということです。つまりdeep ITMカバードコールの損益構造は、遠いOTMプットを売った場合とほぼ等価になります。小さなプレミアムを淡々と受け取り、大きな下落が来たときだけ大きく損をする形です。

この見立ては、パリティの恒等式から導いた論理的な帰結であり、そう明言した公的資料を引用しているものではありません。ただ、実務的な含意は明確でしょう。板が薄くスプレッドの広いdeep ITMコールを売るより、流動性のある遠いOTMプットを売るほうが、同じ損益をより安いコストで作れる場面があります。合成ポジションの考え方はオプション取引の合成ポジション(シンセティック)とはで詳しく扱っています。

deep ITMコール売りを検討する前の確認
  • 狙いはセータではなくデルタか。時間価値を取りに来たなら、そもそも銘柄選択が誤っている
  • 同じ損益を、より流動性の高い遠いOTMプット売りや先物ショートで作れないか
  • 米国株なら配当落ち日を確認したか。残存時間価値が配当を下回っていないか
  • 上昇した場合の損失額を金額で試算したか。デルタ1に近い以上、緩衝はほぼ無い

ICHIZEN Capitalの視点|下落を取る道具として使う

ICHIZEN Capitalは、BTCやゴールドのオプションフローを日次で分析してきました。その中でdeep ITMのショートコールは、「プレミアムを稼ぐ売り」ではなく「下落を取りにいくベア戦略」の一つとして扱ってきました。教科書的な位置づけとは、意図的に異なる使い方です。

2026年7月6日の分析では、検討中のベアオプション戦略として「ベガニュートラルダイアゴナルプット戦略」と並べて「Deep ITM期近ショートコール戦略」を挙げています(※16)。狙いは、上値でコールIVが乗った局面を捉え、セータとベガの影響が小さい領域で方向性を取ることにあります(※17)。

「いつ売るか」がこの戦略のほぼすべて

同じ7月の分析では、同じ戦略について「現況でのDeep ITMショートコールはリスクが大きすぎる」と明確に見送る判断も示しています(※17)。有効な戦略だと考えていても、局面が整うまでは建てない、という立場です。

7月9日の分析では、その理由をこう整理しています。deep ITMのショートコールはプレミアムの剥落を狙える強力な戦略である一方、踏み上げリスクが非常に大きく、CTAのストップロスを巻き込んで一時的に急騰した場合、デルタの急変によって大きな含み損を抱える可能性がある、という内容です(※18)。

そのうえで置いている条件が、コールIVが過度に上昇し、踏み上げが一巡したと判断できる局面を待つ、というものです(※18)。上昇の途中で仕掛けるのではなく、IVのピークアウトと価格の失速を確認してからエントリーする、という順序を明確にしています。

木田 陽介

この戦略で一番怖いのは、方向が合っているのにタイミングだけ早くて退場することです。デルタが1に近いので、含み損の増え方が先物ショートとほぼ同じスピードになります。IVのピークアウトを待つのは臆病だからではなく、待たないと踏み上げに耐えられないからです。

OIやフローから断定はできない

付け加えておきたい前提があります。OIやフローのデータだけでは、その建玉の買い手と売り手のどちらが誰なのか、ディーラーがロングかショートかまでは確定できません。実際、当社の分析でも同額・同ストライクの往復について、手仕舞いか新規構築か解釈が分かれる、と留保を置いています(※14)。

大口のヘッジフローは相場の方向を増幅したり抑制したりし得る要因ではあるものの、価格をコントロールしていると断定できるものではありません。OIの読み方はオプションのOI(オープンインタレスト・建玉)とは、ガンマの影響はGEX(ガンマエクスポージャー)とはで整理しています。

暗号資産オプションの税金|2026年7月時点は総合課税

水野 倫太郎

「20%の分離課税になった」という話が広がっていますが、正確には法律は成立済みで、まだ適用が始まっていません。しかも対象は国内で登録された特定暗号資産に限られる見込みです。Deribitのような海外取引所を使っている方は、ここを取り違えると申告で事故ります。

水野 倫太郎
(株)ICHIZEN HOLDINGS

代表取締役

この記事の執筆者/監修者

慶應義塾大学経済学部卒。2017年米国留学時にブロックチェーンと出会い、Web3の業界に足を踏み入れる。2018年、仮想通貨メディアCoinOtakuに入社。2019年には同社のCMOに就任し、2020年に東証二部上場企業とM&Aを行い、様々なクリプト事業を展開。2022年に現在代表取締役社長を務めるICHIZEN HOLDINGSを立ち上げ様々なWeb3事業を手がける。複数のWeb3系事業に出資を行いながら有識者として活動。

監修 水野 倫太郎
株式会社ICHIZEN HOLDINGS 代表取締役

慶應義塾大学経済学部。2017年米国留学時にブロックチェーンと出会い、Web3の業界に足を踏み入れる。2018年には、日本有数の仮想通貨メディアCoinOtakuに入社。2019年には同社のCMOに就任し、2020年に東証二部上場企業とM&Aを行い、様々なクリプト事業を展開する。2022年に現在代表取締役社長を務めるICHIZEN HOLDINGSを立ち上げ様々なWeb3事業を手がける。複数のWeb3系事業に出資を行いながら有識者として活動。

deep ITMのショートコールで得た利益も、暗号資産のデリバティブ取引である以上は税務の扱いを外せません。2026年7月時点では、暗号資産の証拠金取引による所得は総合課税の雑所得です。国税庁のFAQ2-12は、次のように明記しています(※11)。

暗号資産の証拠金取引による所得については、租税特別措置法に規定する申告分離課税(先物取引に係る雑所得等の課税の特例)の適用はありませんので、総合課税により申告していただくことになります。

同じFAQは、暗号資産の証拠金取引がFXと同様に金融商品先物取引等には該当するものの、租税特別措置法の規定により申告分離課税の対象から除かれている、とも説明しています(※11)。FXと同じ枠に入りながら20.315%が使えない、という非対称がここにあります。

20%分離課税は成立済み。ただし適用はまだ先

令和8年度税制改正を盛り込んだ「所得税法等の一部を改正する法律」は、財務省の公表資料によれば2026年3月31日に成立・公布されています(※12)。暗号資産の20%申告分離課税は、この改正に含まれる内容です。

ただし適用開始は金融商品取引法等の改正の施行日の翌年1月1日以後とされており、2026年7月時点で施行日は確定していません。成立したことと、今年の申告に使えることは別の話です。

さらに重要なのが対象範囲でしょう。分離課税の対象は金融商品取引業者登録簿に登録された「特定暗号資産」とされ、これを対象とする暗号資産デリバティブ取引も含まれます(※13)。損失の3年間の繰越控除も認められる方向です(※13)。

裏を返すと、海外取引所やDEXでの取引は「特定暗号資産」から外れ、対象外となる可能性が残ります。Deribitでdeep ITMのショートコールを建てている場合、適用開始後も総合課税のままとなる余地がある、という理解が現実的です。国内の課税関係は仮想通貨の税金で詳しく整理しています。

なお税制は改正が続く領域のため、実際の申告にあたっては最新の情報と税理士への確認をおすすめします。

暗号資産オプションを扱う環境を整える

deep ITMのショートコールそのものはDeribitのようなオプション専門の場が中心になるものの、暗号資産デリバティブを扱うなら、現物や先物を含めた口座環境を先に整えておきたいところでしょう。

海外取引所Bitgetの紹介画像

Bitgetは現物・先物ともに流動性があり、暗号資産デリバティブの入口として使いやすい取引所です。ただしオプションの品揃えという点ではDeribitが中心である点は、忖度なく申し添えておきます。

まずは口座環境を整えるところから

公式サイトはこちら

よくある質問

ディープITMとは?デルタいくつからですか?

統一された数値基準はありません。日本取引所グループの用語集は「権利行使価格が対象商品の価格を大きく下回っている(コール)」状態とだけ定義しており、数値を示していません(※1)。実務ではデルタ0.75以上、0.90以上、ほぼ1.00など情報源によって幅があります。機能面では「デルタが1に近く、時間価値がほぼ消えている領域」と捉えるのが実用的です。

時間価値がほとんど無いのに、ディープITMのコールを売る意味はありますか?

あります。ただし狙いは時間価値ではありません。デルタがマイナス1に近いため、実質的に先物ショートに近い下落狙いのポジションを作れる点が目的です。ベガも小さいため、IVの変動に振られにくい形で方向性を取りにいけます。逆に言えば、セータ収益を期待して売るなら銘柄選択が誤っています。

ディープITMのコール売りは早期に権利行使されますか?

市場によります。米国の個別株オプションはアメリカン式のため、されます。OCCは割当リスクがITMが深くなるほど、また満期が近づくほど高まると明記しています(※4)。一方、Deribitの暗号資産オプションはすべてヨーロピアン式で満期時にしか行使されず(※9)、日経225も権利行使日はSQ日のみです(※8)。

配当落ち前にコールが権利行使されるのはなぜですか?

コールの買い手は、権利行使して株式を保有しなければ配当を受け取れないためです(※5)。OCCも、ショートコールの割当リスクは配当落ち日の直前に上昇すると説明しています(※4)。残っている時間価値より配当のほうが大きければ、行使したほうが合理的になります。ディープITMは時間価値が薄いため、この条件を満たしやすい状態にあります。

ディープITMのカバードコールは儲かりますか?最大利益はいくらですか?

最大利益は受け取ったプレミアムの範囲に限定され、上値の値上がり益はほぼ完全に放棄することになります。厚い下値バッファと引き換えに、実質的には現物を売ったのに近い状態を作る手法です。大きな下落が来ればバッファを突き抜けて損失が出るため、「安全に儲かる」性質のものではありません。

ディープITMのコール売りと、遠いOTMのプット売りはどちらが得ですか?

損益構造はほぼ同じです。プット・コール・パリティから、カバードコールはショートプットと無リスク債券に分解できます(※19※20)。コールが深いITMなら、同じ権利行使価格のプットは深いOTMです。したがって差が出るのは損益ではなくコストで、板が厚くスプレッドの狭いほうを選ぶのが実務的な判断になります。

ディープITMは板が薄くスプレッドが広いと聞きました。どう約定させればよいですか?

まず、同じ損益をより流動性の高い手段で作れないかを検討してください。パリティで等価になる遠いOTMプット売りや、先物ショートのほうが板が厚い場面は多くあります。それでもディープITMで建てる場合は、成行を避けて指値で分割し、スプレッドの内側を狙う運用が基本になります。手仕舞いたい局面ほど板は薄くなる点に注意が必要です。

裸のコール売りの証拠金はどれくらいかかりますか?

裸のコール売りは理論上の損失が無限大となるため(※10※15)、証拠金の負担は重くなります。日経225オプションの場合、日本取引所グループは証拠金をVaR方式で計算すると明記しています(※8)。SPAN方式と説明している解説記事が残っていますが、現行はVaR方式です。具体的な金額は建玉と相場状況で変動するため、証券会社の計算ツールで確認してください。

暗号資産オプションの利益は何所得ですか?20%の分離課税になったのではないですか?

2026年7月時点では、総合課税の雑所得です。国税庁FAQ2-12は、暗号資産の証拠金取引に申告分離課税の適用はないと明記しています(※11)。20%分離課税を含む改正法は2026年3月31日に成立・公布されていますが(※12)、適用は金融商品取引法等の改正の施行日の翌年1月1日以後で、施行日は未確定です。対象も「特定暗号資産」に限られ、海外取引所は対象外となる可能性があります(※13)。

まとめ

deep ITMのショートコールとは、権利行使価格が原資産価格を大きく下回るコールを売る取引です。日本取引所グループの用語集も数値基準は示しておらず、定義には幅がある点をまず押さえておきたいところです(※1)。

最も重要なのは、この売りが「時間価値で稼ぐ売り」ではないという一点でしょう。プレミアムの大半は本質的価値で、稼げるセータはほとんど残っていません。狙いはデルタであり、ベガのノイズを抑えて下落を取りにいく方向性ポジションだと理解すると、判断を誤りにくくなります。

そして市場ごとの切り分けが要になります。米国株では早期権利行使と配当キャプチャが最大の論点ですが(※4※5)、Deribitや日経225はヨーロピアン式で、その論点自体が存在しません(※8※9)。英語圏の記事をそのまま読むと確実に誤解する部分です。ただし消えたのは割当リスクだけで、踏み上げリスクは残り続けます。

ICHIZEN Capitalがこの戦略を検討する際も、有効性を認めつつ「現況ではリスクが大きすぎる」として見送る判断を示してきました(※17)。コールIVのピークアウトと価格の失速を確認してから建てる、という順序が生死を分けます(※18)。まずは保有を検討している建玉について、上昇した場合の損失を金額で試算するところから始めてみてはいかがでしょうか。

参考文献

※1 日本取引所グループ「用語集:イン・ザ・マネー(ITM)」(https://www.jpx.co.jp/glossary/a/26.html
※2 Cornell Law School LII「26 U.S. Code §1092 – Straddles」(https://www.law.cornell.edu/uscode/text/26/1092
※3 Cornell Law School LII「26 CFR §1.1092(c)-1 Qualified covered calls」(https://www.law.cornell.edu/cfr/text/26/1.1092(c)-1
※4 OCC / The Options Industry Council「Options Assignment FAQ」(https://www.optionseducation.org/referencelibrary/faq/options-assignment
※5 OCC / The Options Industry Council「Exercising Options」(https://www.optionseducation.org/optionsoverview/exercising-options
※6 OCC / The Options Industry Council「Options Exercise FAQ」(https://www.optionseducation.org/referencelibrary/faq/options-exercise
※7 FINRA「Trading Options: Understanding Assignment」(https://www.finra.org/investors/insights/trading-options-understanding-assignment
※8 日本取引所グループ「日経225オプション 制度概要」(https://www.jpx.co.jp/derivatives/products/domestic/225options/01.html)※権利行使日=SQ日・証拠金=VaR方式
※9 Deribit Insights「Cryptocurrency Call Options」(https://insights.deribit.com/education/cryptocurrency-call-options/
※10 楽天証券トウシル「オプション売りがハイリスクと言われる理由」(https://media.rakuten-sec.net/articles/-/5339
※11 国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」2-12 暗号資産の証拠金取引(令和7年12月)(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/virtual_currency_faq_03.pdf
※12 財務省「第221回国会における財務省関連法律」所得税法等の一部を改正する法律(成立・公布 令和8年3月31日)(https://www.mof.go.jp/about_mof/bills/221diet/index.html
※13 長島・大野・常松法律事務所「令和8年度税制改正大綱の概要」2025年12月25日(https://www.nagashima.com/publications/publication20251225-2/
※14 ICHIZEN Capital note「【3月10日】GLD$460サポートと、3/11満期$472-$475ピンニング意識」(https://note.com/ichizen_capital/n/nf38f064c24f1
※15 松井証券「オプション取引のリスク」(https://www.matsui.co.jp/fop/options/about/risk.html
※16 ICHIZEN Capital note「【7/6】7/17以降のAll expiry OIが示す下落シナリオ×上値からのダイアゴナルプット戦略について」(https://note.com/ichizen_capital/n/n7e5d69e4b4de
※17 ICHIZEN Capital note「【7/7】11/20満期で形成されたコールOI2台巨頭と下値のネガガン満期構造から確認する下落加速シナリオ」(https://note.com/ichizen_capital/n/n4993b8447a07
※18 ICHIZEN Capital note「【7/9】期間別HV順イールド先延ばし×7/17OPEX OI構造によるガンマを主軸としたレンジ上限〜下限行き来シナリオ」(https://note.com/ichizen_capital/n/n95c1292b0dfd
※19 Fidelity「Synthetic Options」(https://www.fidelity.com/bin-public/060_www_fidelity_com/documents/learning-center/Deck_Synthetic-options.pdf
※20 AnalystPrep「Put-Call Parity」(https://analystprep.com/cfa-level-1-exam/derivatives/put-call-parity/

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