オンチェーン金融フォーラムの議事録が公開|省庁と有識者は何を語ったか。DEX・DeFiへの言及はなし【2026年10月】

「忙しい人向け」ニュース要約
- 金融庁が、2026年9月30日の「オンチェーン金融フォーラム」第1回の議事録を公表(2026年10月19日時点で掲載)
- 事務局の金融庁は、資料にない口頭の説明で、パブリック型の処理容量・手数料の懸念や、誤送信・不正取引の取消しと資金回収が困難になる可能性を自ら挙げた
- 省庁側の報告は、アジアとの官民対話(アジアデー2027は2027年2月)、公金給付へのステーブルコイン活用の検討、国債のオンチェーン研究会、日銀のサンドボックス、全銀協の検討会が中心
- 議事録にDEX・DeFi・ビットコインの言葉は出てこない。語られたのは銀行・国債・貿易・日銀などの決済インフラ
- 規制や制度の決定はなし。次は2027年初の第2回会合で、中間整理とロードマップを取りまとめる予定
※相場やニュースの日々の見方は、水野のX(@mizuno_ichizen)で発信中です。
水野 倫太郎議事録でも、決まったことはありません。
語られたのは各機関の取組と、有識者の注文です。


監修 水野 倫太郎
株式会社ICHIZEN HOLDINGS 代表取締役
慶應義塾大学経済学部。2017年米国留学時にブロックチェーンと出会い、Web3の業界に足を踏み入れる。2018年には、日本有数の仮想通貨メディアCoinOtakuに入社。2019年には同社のCMOに就任し、2020年に東証二部上場企業とM&Aを行い、様々なクリプト事業を展開する。2022年に現在代表取締役社長を務めるICHIZEN HOLDINGSを立ち上げ様々なWeb3事業を手がける。複数のWeb3系事業に出資を行いながら有識者として活動。


何が公開されたのか|第1回(2026年9月30日開催)の議事録
2026年9月30日の14時から15時に開かれた「AI時代を見据えたオンチェーン金融フォーラム」第1回の議事録が、金融庁のサイトに掲載されました(2026年10月19日時点)。会議は一般傍聴なしで、報道関係者が入室したのは大臣挨拶の場面だけです。冒頭で司会の安富暗号資産・ステーブルコイン課長が、議事録は出席者の確認を経て後日公表すると説明していました。
会議の枠組みや配布資料の中身は、前回の記事で整理しました。そこでは当日の発言が公表されていなかったため、触れられませんでした。本記事は、議事録で新しく分かった「誰が何を語ったか」に絞ります。
| 区分 | 発言した人 |
|---|---|
| 座長・大臣・副大臣 | 片山内閣府特命担当大臣(金融・座長、冒頭挨拶)、谷川内閣府副大臣(締めの挨拶) |
| 関係省庁等 | 金融庁(堀本資産運用・保険監督局長、飯塚審議官)、財務省(緒方国際局長、阿久澤理財局長)、デジタル庁(蓮井統括官)、日本銀行(神山理事)、全国銀行協会(黒澤企画委員長) |
| 有識者 | 宇井理人、大槻奈那、神田秀樹、鈴木智佳子、根本直子、野崎浩成、森下哲朗の7名が発言。翁百合は欠席で、意見書を事務局が読み上げ |
金融庁の問題意識|3つの観点と、オンチェーン決済の弱点
最初に堀本局長が、事務局として重視する観点を3つ挙げました。ここは説明資料にはなく、口頭だけで語られた部分です(局長自身が「資料にはないのですけれども」と前置きしています)。
| 観点 | 議事録での説明 |
|---|---|
| 1. 実際の取引と一体で発展 | 資産のトークン化による資産運用の高度化や、物流・商流と決済の連携による生産性の向上など、リアルなニーズに合うオンチェーン決済の発展を目指す |
| 2. オンチェーンとオフチェーンのベストミックス | 24時間使える即時決済で透明性やプログラム可能性の利点がある一方、デメリットも踏まえて、取引の性格ごとに対応する |
| 3. 安定性と安全性 | 決済基盤として信頼される安定性・安全性が必要。オンチェーン金融が発展した場合の金融システム全体への影響も考慮する |
目を引くのは2つ目で出てきたデメリットの内容です。局長は、パブリック型では処理容量の制約や手数料などの懸念があること、そして誤送信や不正取引の取消し、資金回収が困難になる可能性があることを、事務局の言葉として挙げました。オンチェーン推進の旗を振る側が、弱点を公式の場で口にした点は押さえておきたいところです。
省庁・日銀・全銀協の報告|何を、いつまでに進めるのか
議事の前半は、関係省庁等が順に取組を報告する時間でした。2026年7月21日の「成長投資を促進するための金融戦略」に書かれたフォローアップ項目に対応する形で、各機関が進捗を報告しました。
| 報告者 | 議事録で語られた内容 | 時期・備考 |
|---|---|---|
| 金融庁(飯塚審議官) | アジアの官民が集う新たな政策対話の枠組みを立ち上げる。第一歩として「アジアデー2027」を開く。ステーブルコインはG20・FSBの議論に貢献し、主要法域と規制・監督上の取扱いを調整する | アジアデー2027は2027年2月(議事録では「来年の2月」) |
| 財務省(緒方国際局長) | クロスボーダー送金・決済で大幅な迅速化やコスト削減が見込め、円の利便性向上につながる。日本はASEAN+3の共同議長国で、クロスボーダー・デジタル決済を重点課題としている | 2026年の議長国(議事録では「本年」) |
| デジタル庁(蓮井統括官) | ステーブルコインやトークン化預金を公金給付に使えるかを技術面から検討する。子育てや食料品など、使い道を限った給付が例。ステーブルコインの金銭に準じた利用の可否など、諸法令の扱いはこれから始まるAIデジタル改革推進会議で、省庁横断で検討する | 検討の段階。決定ではない |
| 財務省(阿久澤理財局長) | 国債のオンチェーン対応について、有識者による新しい研究会を10月に開始する | 第1回は2026年10月8日(財務省サイトで確認) |
| 日本銀行(神山理事) | 日銀当座預金をブロックチェーン上の幅広い決済に使うための技術検証として、DLT連携サンドボックスを進めている。BISと国際金融協会が主導するプロジェクト・アゴラにも参加している | 検証・参加の段階 |
| 全国銀行協会(黒澤企画委員長) | 銀行関係者が集中的に議論する検討会を全銀協の下に立ち上げた。次世代の銀行間決済基盤の役割や、幅広い金融機関が参加できる仕組みを協議する。銀行の非金融事業の在り方は、別の検討会で議論する予定 | 検討会は立ち上げ済み(議事録の表現) |
財務省の研究会は、財務省のサイトで第1回の開催(10月8日)が確認できます。議事録で予告された「10月開始」は、すでに動き出している状態です。国債のトークン化の論点は、国債のトークン化とはの記事で解説しています。
金融庁の報告では、決済高度化プロジェクト(PIP)の支援がこれまでに4件になったことも示されました。堀本局長は、4件目を「昨日29日に発表したばかり」と述べています。トレードワルツ社が、貿易関係書類のオンチェーン化と、3メガバンクが共同発行を予定するステーブルコインを連携させ、書類のやり取りと代金の支払いを連動させる実証実験です。


有識者の発言|7名の注文と、翁メンバーの書面意見
討議では、有識者が1人3分めどで発言しました。要旨を下の表にまとめます。発言はいずれも各メンバー個人の意見で、金融庁や政府の決定ではありません。
| メンバー | 発言の要旨 |
|---|---|
| 宇井理人 | 既存の決済インフラの信頼性を生かし、オンチェーンとのベストミックスを探る方針に賛成。インフラが整わないからユースケースが出ず、ユースケースが見えないからインフラが進まないという「鶏と卵」を、国が前に出て動かす意義は大きい。全体像は大きく描き、個別施策は素早く小さく始めて検証する |
| 大槻奈那 | 決済はどこかにボトルネックがあると進まないため、足並みを揃え、スケジュールを早く示してほしい。技術は決め打ちしない。成果の見える化が必要。過度なゼロリスク志向で使いにくくならないよう、ユースケースを第一に |
| 神田秀樹 | ベストミックスの最適解は日々動くムービングターゲット。AIにもオンチェーン金融にも、詐欺やマネロンなどの不正に使われる負の側面があり、未然に防ぐ仕組みに力を注ぐべき。市場に国境はないが、制度は国ごとに違うという落差を意識してほしい |
| 鈴木智佳子 | ブラックボックスになると、利用者に「信頼の空白」が生まれる。取引・本人確認・決済の流れを追える、監査や検証が可能な証跡を残す仕組みと、信頼を裏づけるフレームワークが必要。小さくても実ビジネスにつながるロードマップを |
| 根本直子 | 金利の正常化で、企業の待機資金を減らしたい、運用したいという需要が高まり、銀行にとっても流動性預金が希少になっている。余剰資金の圧縮や決済預金の獲得といった目に見える効果を示せば投資が進む。海外大手ではトークン化預金が実験から実用に進んでおり、日本が遅れると決済業務が海外に移るおそれがある |
| 野崎浩成 | 壁はレガシーシステムの完成度の高さと、ネットワーク効果。セキュリティトークンで最も進んでいる不動産STは、システムが未成熟な分野だから先行した。JPX主導のB-POSTは実装化の動きが見られず、ZEDIも利用が広がらない例。実験室の中で完結させないでほしい。日銀当座預金のトークン化は、恒久的な基盤として実効性が高い |
| 森下哲朗 | 産業界との対話が最重要で、3年後の夢のような話も語るべき。ユーザーが安心して使えることを常に意識する。基盤となる技術のうち、日本で確保すべき部分を精査する。データ利活用は金融が起点になって議論を進められる |
| 翁百合(欠席・意見書) | 中期のロードマップで各省庁・ステークホルダーが足並みを揃える。民間の競争を促しつつ、標準化など協調領域は全体最適で議論する。AIエージェントが正当な決済主体であることの認証や、アイデンティティの担保の在り方を検討する。SIMを活用した認証基盤を持つ通信キャリアなど、他分野の知見も参考に |
多くの発言に共通していたのは、技術の話より先に、誰がどんな場面で使うのかというユースケースと、使う人の信頼を問う点でした。野崎メンバーが挙げたB-POSTやZEDIのように、技術的に実現しても使う人が増えず広がらなかった例が、そのための警鐘として使われています。
議事録に出てこなかったこと|DEX・DeFi・ビットコインの言及はなし
議事録の本文を検索したところ、DEX、DeFi、ビットコイン、JPYC、USDC、税の語は、一度も出てきません(2026年10月19日時点の掲載ページで確認)。ウォレットも、デジタル庁が公金給付の検討に生かす知見として1回触れられただけです。個人の暗号資産に近い話題としては、神田メンバーが述べた、詐欺やマネロンなどへの悪用を未然に防ぐ仕組みづくりの必要性が挙げられる程度です。
一方、会議で配布された説明資料には、「DEX・DeFiやウォレット提供業者」が環境整備に係る研究会の検討項目として載っています。つまり、検討の対象ではあるものの、この日の会議で話されたのは、銀行預金・国債・貿易・日銀・公金給付といった決済インフラが中心でした。議事録に出てこないことは、検討されないという意味ではありません。DEXへの対応は研究会の場で扱われます。その方向性は前回の記事で整理しています。
決まったこと・まだ決まっていないこと
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 確定している | 次回は2027年初の第2回会合で、中間整理と官民連携のロードマップを取りまとめる(大臣挨拶・資料で明言)。財務省の国債オンチェーン研究会は、すでに10月8日に第1回が開かれた |
| 予定として示された | アジアデー2027(2027年2月)の開催。全銀協の検討会による、次世代の銀行間決済基盤の協議 |
| 検討段階で未確定 | ステーブルコイン・トークン化預金の公金給付への活用。ステーブルコインの諸法令上の扱い。日銀当座預金のオンチェーン対応の実装時期。規制・制度の具体的な内容 |
ICHIZEN Capitalの視点|暗号資産を持つ人は、この議事録をどう読むか
議事録から読み取れるのは、政府の「オンチェーン金融」が、ビットコインやDeFiの話というより、銀行預金・国債・ステーブルコインを使った決済インフラの話として進んでいる点です。直近のニュースではSWIFTのブロックチェーンによる24時間送金や円ステーブルコインJPYSCも、この流れの中にあります。



議事録に出てこないことと、検討されないことは別です。
DEX・DeFiの動きは、研究会の資料で確認できます。
もう1つは、事務局である金融庁自身が、パブリック型の弱点として誤送信の取消しの難しさなどを口にしたことです。これは規制の方向を示すものではありませんが、パブリックチェーン上で資産を動かす個人にとっては、送金先とネットワークの確認がそのまま自己責任になる、という前提を公の場で確認した形です。
追いかける先は、次の3つです。①DEX・DeFiを扱う「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」の配布資料、②2027年初の第2回会合の中間整理、③財務省の国債オンチェーン研究会の議事要旨。憶測より、一次資料で確認するほうが確実です。
よくある質問
オンチェーン金融フォーラムの議事録はどこで読めますか?
金融庁の公式サイトで公開されています。「審議会・研究会等」から「AI時代を見据えたオンチェーン金融フォーラム」に入ると、第1回(2026年9月30日開催)の議事録と、メンバー名簿・説明資料のPDFが読めます。本記事末尾の参考文献に、直接のリンクを掲載しています。
議事録でDEXやDeFiは話題になりましたか?
議事録の本文に、DEX・DeFiの語は出てきません。会議で話されたのは、ステーブルコイン、トークン化預金、国債のトークン化、日銀当座預金、公金給付など、決済インフラが中心でした。ただし説明資料には、DEX・DeFiやウォレット提供業者が環境整備に係る研究会の検討項目として載っています。
オンチェーン金融フォーラムで、規制は決まりましたか?
決まっていません。議事録は各機関の取組報告と有識者の意見で構成されており、規制や制度の決定は含まれません。方向性が文書になるのは、2027年初の第2回会合で取りまとめる中間整理とロードマップです。
次回の会合はいつですか?
2027年初に第2回を開き、中間整理と官民連携のロードマップを取りまとめる予定です。大臣挨拶でも、来年の初めに取りまとめたいと述べられています。
財務省の国債のオンチェーン対応の研究会は始まっていますか?
始まっています。議事録で財務省の阿久澤理財局長が「10月に開始」と述べており、財務省のサイトでは、第1回が2026年10月8日に開かれたと掲載されています。議事要旨と配布資料も同サイトで確認できます。
ステーブルコインを公金給付に使うことは決まったのですか?
決まっていません。デジタル庁は、ステーブルコインやトークン化預金を公金給付に活用できるかを、技術面から検討していくと述べた段階です。子育てや食料品など、使い道を限った給付が可能になる点が例として挙げられました。
日銀当座預金のオンチェーン対応は、いつ実現しますか?
実現時期は示されていません。議事録で日本銀行は、日銀当座預金をブロックチェーン上の幅広い決済に使うための技術検証として、DLT連携サンドボックスを進めていると説明しました。なお、2026年7月21日の金融戦略には、年内に論点整理と実現への道筋の検討状況をまとめると書かれています。
この議事録は、暗号資産を持つ個人に影響しますか?
今すぐ影響するものはありません。議事録に、個人の暗号資産の売買・保有・課税に関する発言は含まれていません。DEX・DeFiの扱いは別の研究会で検討される予定で、その動きは配布資料で確認できます。
議事録の発言は、金融庁や政府の方針ですか?
発言者によって位置づけが違います。金融庁や各省庁の報告は、各機関の取組や方針の説明です。有識者の発言は各メンバー個人の意見であり、政府の決定ではありません。
まとめ
- 金融庁が第1回フォーラム(2026年9月30日)の議事録を公表。決定事項はなく、次は2027年初の第2回会合
- 金融庁は口頭で、パブリック型の処理容量・手数料の懸念と、誤送信・不正取引の取消しの難しさを挙げた
- 省庁側の報告は、アジアとの官民対話、公金給付への活用検討、国債の研究会(10月8日に第1回)、日銀のサンドボックス、全銀協の検討会
- 有識者の発言は、ユースケースと信頼、スピード感に集中
- 議事録にDEX・DeFi・ビットコインの言及はなし。検討対象ではあるが、この日の中心は決済インフラ
前回の記事は「決まったことは何もない」という点が核でしたが、議事録を読んでも、この結論は変わりません。ただし、語られた中身から、政府のオンチェーン金融がどこに向かっているのかは、以前より具体的に見えてきました。中心にあるのは、銀行・国債・貿易といった企業間の決済であり、暗号資産の個人利用は周辺に位置づけられています。
次の節目は、2027年初の第2回会合です。それまでの間に、国債の研究会やDEX・DeFiの研究会の資料が出れば、方向性の手がかりになります。


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参考文献
・金融庁「「AI時代を見据えたオンチェーン金融フォーラム」(第1回)議事録」(2026年9月30日開催)
・金融庁「説明資料」(2026年9月30日・PDF)
・金融庁「「AI時代を見据えたオンチェーン金融フォーラム」について」(2026年9月25日)
・金融庁「AI時代を見据えたオンチェーン金融フォーラム」開催実績
・財務省「国債のオンチェーン対応に関する研究会」
※本記事は、金融庁が公表した第1回会合(2026年9月30日開催)の議事録と説明資料、財務省サイトの掲載情報に基づきます。発言は要約であり、各発言者個人の見解を含みます。議事録の語句検索は、2026年10月19日時点の掲載ページを対象にしています。記載した事項はいずれも検討段階であり、確定した規制ではありません。
※本記事は2026年10月時点の情報です。
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