HODL1(旧クシム)がオンチェーン金融の開発を受注してストップ高|2,100万円の中身と業績への影響

「忙しい人向け」ニュース要約
- HODL1(旧クシム・2345)が10月27日、オンチェーン金融のシステム開発を受注
- 中身はスマートコントラクトの決済制御。受注額2,100万円、相手先は非開示
- 前期の売上26百万円に匹敵する規模。株価は当日ストップ高、翌日20%安
- 赤字と継続企業の注記は残る。見るのは受注が続くかどうか
※相場やニュースの日々の見方は、水野のX(@mizuno_ichizen)で発信中です。
水野 倫太郎「オンチェーン金融」が国策の言葉から、受注の品目になりました。
2,100万円という小ささが、逆にこの市場の現在地です。


監修 水野 倫太郎
株式会社ICHIZEN HOLDINGS 代表取締役
慶應義塾大学経済学部。2017年米国留学時にブロックチェーンと出会い、Web3の業界に足を踏み入れる。2018年には、日本有数の仮想通貨メディアCoinOtakuに入社。2019年には同社のCMOに就任し、2020年に東証二部上場企業とM&Aを行い、様々なクリプト事業を展開する。2022年に現在代表取締役社長を務めるICHIZEN HOLDINGSを立ち上げ様々なWeb3事業を手がける。複数のWeb3系事業に出資を行いながら有識者として活動。
何が起きたのか|10月27日正午、国内事業会社から2,100万円の受注を開示
- 相手先は国内事業会社1社。社名は先方の要望で非開示
- 受注額21百万円(税抜)、受注日10月27日
- 株価は77円→105円のストップ高、翌28日は84円に反落
2026年10月27日正午、東証スタンダード上場のHODL1(ホドルワン、証券コード2345)が、国内事業会社1社からシステム開発業務を受注したと適時開示しました。業務は「ブロックチェーン上のスマートコントラクトを用いた決済制御機能の設計・開発」で、受注金額は2,100万円(税抜)。相手先は先方の要望で社名非開示、資本・人的・取引関係のない第三者です。


株価は正午の開示を受けて後場にストップ高の105円まで買われ、前日比+40%で引けました。翌28日は84円(-20%)まで戻しています。10月20日以降は77円前後で出来高が1日5万〜20万株だったところに、27日は213万株、28日は162万株の商いが入りました。
| 日付 | 終値 | 前日比 | 出来高 |
|---|---|---|---|
| 10/23(木) | 77円 | 0.0% | 5.8万株 |
| 10/26(月) | 75円 | -2.6% | 5.1万株 |
| 10/27(火) | 105円 | +40.0%(ストップ高) | 213.1万株 |
| 10/28(水) | 84円 | -20.0% | 162.2万株 |
受注の中身|「条件を満たすまで資金を留保し、確認後に移す」決済制御
- 契約条件の履行が確認されるまで資金を留保する仕組み
- 資金決済と商流データの連動をプログラムで担保する
- 骨太方針2026の「オンチェーン金融」の定義に沿う領域と説明
開示によると、今回の業務は「契約条件の履行が確認されるまで資金を留保し、確認後にはじめて資金の移転が実行される制御」をスマートコントラクトで実装するものです。資金決済と商流データの連動をプログラムで担保する、オンチェーン金融の中核機能にあたるとHODL1は説明しています。仕組みを簡単に図にすると、次のようになります。
- 買い手が代金をスマートコントラクトに預ける資金は相手に渡らず、ブロックチェーン上のプログラムが預かった状態で止まる
- 契約の条件が満たされたかを確認する納品や検収などの商流データが条件を満たすまで、資金は留保されたまま(ここが今回の受注範囲)
- 確認できて初めて、資金が売り手へ移る人が振込を実行するのではなく、条件の確認をプログラムが判定して自動で移転する
出所:HODL1「システム開発業務の受注に関するお知らせ」(2026年10月27日)の説明をもとに作成(ICHIZEN作成)。実際の設計の詳細は非公開
HODL1は受注の経緯として、2026年7月に閣議決定された骨太方針2026に「オンチェーン金融の推進」が明記されたことを挙げています。同方針はオンチェーン金融を「ブロックチェーン上でステーブルコイン等による資金決済が商流・物流等のデータ管理とプログラムによって連動・一体化される金融」と定義しており、今回の領域はこの定義に沿うとしています。実務面では、円建てステーブルコインJPYCの流通や、大手銀行によるステーブルコインの共同発行に向けた実証を背景に挙げました。
なぜ2,100万円で開示するのか|前期の売上高26百万円に匹敵する規模
- 2025年10月期の連結売上高は26百万円。受注1件で同規模
- 売上計上は今期約8百万円、来期約13百万円に分かれる
- 第3四半期までの営業損失は3億円、継続企業の前提に注記
2,100万円は大企業なら開示に値しない金額ですが、HODL1にとっては違います。開示理由に「前連結会計年度(2025年10月期)の連結売上高26百万円に相当する規模」と明記されており、業績に重要な影響を及ぼすと判断しています。業務期間が決算期をまたぐため、売上は2026年10月期に約8百万円、2027年10月期に約13百万円に分けて計上される予定です。
| 項目 | 数値 | 備考 |
|---|---|---|
| 2025年10月期 連結売上高 | 26百万円 | 今回の受注額とほぼ同額 |
| 2026年10月期 第3四半期累計 売上高 | 59百万円 | 前年同期比+39百万円 |
| 同 営業損失 | 303百万円 | 前年同期は373百万円の損失 |
| 同 親会社株主に帰属する四半期純損失 | 347百万円 | 前年同期は1,054百万円の損失 |
| 第3四半期末 純資産 | 198百万円 | 利益剰余金の累積欠損は5,699百万円 |
| 継続企業の前提 | 重要事象等の注記あり | 中期計画では2027年10月期の解消を目標 |
| 自己保有のイーサリアム(9月末) | 20.292 ETH(時価約858万円) | 中期計画の目標は保有額300億円 |
数字が示すとおり、会社の規模はまだ小さく、赤字と継続企業の前提に関する注記が残っています。受注1件で財務が変わるわけではなく、重点領域と位置づける「オンチェーン金融」で実績が1つ付いたという位置づけです。
HODL1とは|旧クシム、資産流出を経て「イーサリアムカンパニー」に転換
- 旧クシム。2025年に旧経営陣による資産流出で既存事業を失う
- 中期計画「HODL&BUIDL 2028」でETH保有300億円・営業利益11億円を目標
- 2026年はStartale・Gauntlet・Babylonなど提携を積み上げ
HODL1は旧クシムで、2025年2月に旧経営陣が主要子会社(Zaifを運営していたZEDHDなど)を不適切に流用し、既存事業のほぼすべてを失いました。2025年4月の臨時株主総会で現経営陣が選任され、社名を「HODL1」に変更。イーサリアムを保有・運用する「HODL事業」と、Web3の開発・コンサルティングを行う「BUIDL事業」の2本柱で再建中です。2026年4月30日公表の中期経営計画「HODL&BUIDL 2028」は、2028年10月期にETH保有額300億円、売上高20億円、営業利益11億円を掲げ、新株予約権で約64億円の調達(うち約52億円をETH購入に充当)を発表しました。
ただし現時点のETH保有は20.292ETH(9月末・時価約858万円)で、目標との差は大きい段階です。一方のBUIDL事業では、2026年に入って提携を重ねています。
| 日付 | 動き |
|---|---|
| 2026年4月30日 | 中期経営計画「HODL&BUIDL 2028」と約64億円の資金調達を公表 |
| 5月12日 | 米GauntletのMorpho上Vaultで保有ETHの一部を運用する計画(Gauntlet発表) |
| 6月8日 | Startale Group(SBI・ソニー出資)と業務提携の基本合意。円ステーブルコイン関連の事業開発などを協議 |
| 7月22日 | ベルウッド・レコード創設者とのXR・ブロックチェーン共同事業で基本合意 |
| 10月2日 | ベルウッドグループと合弁会社Bellwood Jointを設立 |
| 10月22日 | Babylon Labsのビットコイン担保基盤(TBV)の国内パートナーに参画 |
| 10月27日 | オンチェーン金融のシステム開発を2,100万円で受注 |
市場の文脈|「オンチェーン金融」は国策の言葉から、受注の品目へ
- 骨太方針2026で初めて「オンチェーン金融」を明記
- 金融庁は9月にフォーラム、10月に研究会を始動
- 関連銘柄の文脈ではIIJ・TIS・Speee・GMOなどが先行
オンチェーン金融は2026年7月の骨太方針で初めて明記され、金融庁は9月30日にオンチェーン金融フォーラム、10月20日にデジタル・分散型金融の研究会を立ち上げました。株式市場では、トークン化預金のIIJや電算システム、ステーブルコイン基盤のTIS、三菱UFJ銀行に技術助言するSpeee(Datachain)、DCJPYのGMOインターネットグループなどが「関連銘柄」として語られています。
その中でHODL1の受注は、金額の小ささを含めて現在地を示しています。大手は銀行と組んで基盤を作る段階、小さな開発会社は事業会社の個別案件を2,000万円単位で受ける段階です。国策の言葉が、具体的な「決済制御機能の設計・開発」という品目で売上に変わり始めた、という見方ができます。
投資家が見るべき点|一過性の材料か、受注が続くか
- 株価は翌日に20%安。材料出尽くしの値動き
- 今期の売上寄与は約8百万円にとどまる
- 見るのは2件目以降の受注と、継続企業の注記の解消
27日のストップ高は、時価総額15億円前後の小型株に213万株の買いが集中した結果で、28日には84円まで戻しました。今期の売上寄与は約8百万円で、営業損失3億円の会社の損益を変える規模ではありません。評価が変わるとすれば、同じ領域で2件目、3件目の受注が続き、中期計画が目標とする2027年10月期の継続企業の注記の解消に近づくかどうかです。HODL1は開示で「本受注を同領域における実績として、引き続き事業機会の拡大に取り組む」としています。
ICHIZEN Capitalの視点|「オンチェーン金融」の実需は、まず決済制御から始まる
- 最初の実需はトークン発行でなく「条件付きの資金移転」
- 開発単価2,000万円台が、この市場の初期の相場観
- ETH保有300億円の計画は、受注とは切り離して見る
この受注で注目したいのは、事業会社が最初に金を払ったのが「トークンを発行する」ことではなく、「条件を満たすまで資金を止め、満たしたら動かす」という地味な機能だった点です。オンチェーン金融の実需は、商流とお金を結びつける決済制御から立ち上がる。骨太方針の定義どおりの順番で、最初の案件が出てきました。



トークン化より先に、エスクロー型の資金制御が売れる。
この順番は、海外のオンチェーン金融でも同じでした。
投資家の立場では、HODL1の「イーサリアムカンパニー」としての顔(ETH保有300億円の計画)と、開発会社としての顔(今回の受注)は切り離して見るのがよいと考えます。前者はETH価格と資金調達次第で、現状は約20ETHの保有にとどまります。後者は案件の積み上げで評価が決まり、2,100万円という単価がこの市場の初期の相場観を示しています。同じ「オンチェーン金融」でも、SBIと吉本興業のデジタル証券のように大手が組む案件とは、規模も時間軸も別物です。
決まっていることと、決まっていないこと
材料株として動いた銘柄なので、開示で確定している事実と、そうでないものを分けておきます。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 決まっている | 受注額2,100万円、受注日10月27日、業務内容(スマートコントラクトの決済制御)、売上計上の分割(今期約8百万円・来期約13百万円)、相手先は第三者の国内事業会社 |
| 非開示 | 相手先の社名と業種。使用するブロックチェーンや決済手段(ステーブルコインの種類など)。納期 |
| 今後変わりうる | 2件目以降の受注の有無。中期計画のETH調達の進捗(現状20.292ETH)。継続企業の前提に関する注記の解消時期(目標は2027年10月期) |
よくある質問
HODL1とはどんな会社ですか?
東証スタンダード上場(証券コード2345)の旧クシムです。2025年の旧経営陣による資産流出で既存事業を失い、現経営陣のもとでイーサリアムの保有・運用(HODL事業)とWeb3の開発・コンサルティング(BUIDL事業)に転換しました。2026年4月に中期経営計画「HODL&BUIDL 2028」を公表しています。
何を受注したのですか?
ブロックチェーン上のスマートコントラクトを用いた決済制御機能の設計・開発です。契約条件の履行が確認されるまで資金を留保し、確認後にはじめて資金を移転する制御を実装します。受注額は2,100万円(税抜)、相手先は国内事業会社1社で社名は非開示です。
なぜ2,100万円で適時開示するのですか?
2025年10月期の連結売上高が26百万円で、受注1件がその規模に相当するためです。HODL1は業績に重要な影響を及ぼすと判断して開示しました。売上は2026年10月期に約8百万円、2027年10月期に約13百万円に分けて計上される予定です。
株価はどう動きましたか?
10月27日は正午の開示後にストップ高の105円(前日比+40%)で引け、翌28日は84円(-20%)に反落しました。出来高は27日に213万株、28日に162万株で、直前の1日5万〜20万株から急増しています。時価総額は28日時点で約15.6億円です。
オンチェーン金融とは何ですか?
2026年7月の骨太方針2026で初めて明記された言葉で、ブロックチェーン上でステーブルコイン等による資金決済が、商流・物流等のデータ管理とプログラムによって連動・一体化される金融と定義されています。金融庁は9月にフォーラム、10月に研究会を立ち上げ、2027年初めに中間整理をまとめる予定です。
HODL1はイーサリアムをどれくらい持っていますか?
2026年9月末時点で20.292ETH、時価評価額は約858万円です(毎月初めに開示)。中期経営計画では2028年10月期にETH保有額300億円を目標とし、新株予約権で調達する約64億円のうち約52億円をETH購入に充てるとしています。
業績は黒字ですか?
赤字です。2026年10月期第3四半期累計の売上高は59百万円、営業損失303百万円、親会社株主に帰属する四半期純損失347百万円で、継続企業の前提に関する重要事象等の注記があります。純資産は198百万円、利益剰余金の累積欠損は5,699百万円です。
相手先はどこですか?
開示されていません。先方の要望で社名は非開示で、HODL1との間に資本関係・人的関係・取引関係のない国内事業会社とされています。使用するブロックチェーンや決済手段も公表されていません。
今後は何を見ればよいですか?
同じオンチェーン金融の領域で2件目以降の受注が出るか、中期計画が目標とする2027年10月期の継続企業の注記解消に近づくか、ETHの調達が進むか(毎月初めの保有状況の開示)の3点です。今回の受注だけで損益が変わる規模ではありません。
まとめ
- HODL1が10月27日、スマートコントラクトの決済制御を2,100万円で受注
- 前期売上26百万円に匹敵する規模。株価はストップ高の翌日に20%安
- 中身は「条件を満たすまで資金を留保して移す」オンチェーン金融の中核機能
- 赤字と継続企業の注記は残る。ETH保有は約20ETHで目標300億円とは隔たり
- 見るのは2件目以降の受注と、注記の解消への道筋
今回の受注は、金額としては小さくても、「オンチェーン金融」という国策の言葉が具体的な開発案件として売上に変わった例です。最初の実需がトークン発行ではなく、条件付きの資金移転という地味な決済制御だった点は、この市場の立ち上がり方を示しています。一方でHODL1は赤字が続き、ETH保有の計画も途上です。株価の一日の動きではなく、受注が続くかどうかで評価するのが現実的です。


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参考文献
・HODL1「システム開発業務の受注に関するお知らせ」(2026年10月27日・PDF)
・HODL1「暗号資産(イーサリアム)保有状況に関するお知らせ(2026年9月末時点)」(2026年10月5日・PDF)
・HODL1「2026年10月期 第3四半期決算短信」(2026年9月14日・PDF)
・HODL1「中期経営計画 HODL & BUIDL 2028」(2026年4月・PDF)
・HODL1「Startale Group Pte. Ltd.との業務提携に関する基本合意書締結のお知らせ」(2026年6月8日)
・Gauntlet「HODL1 selects Gauntlet vaults on Morpho for onchain yield」(2026年5月12日)
・株探「HODL1が後場S高、システム開発業務の受注を発表」(2026年10月27日)
・ザイ・オンライン「「オンチェーン金融」関連銘柄を紹介!」(2026年10月2日)
※本記事は2026年10月時点の情報です。受注の内容はHODL1の適時開示に基づき、相手先・使用チェーン・納期は非開示です。株価と出来高は株探の時系列データ(10月28日取得)によります。本記事は特定の株式の売買を推奨するものではありません。
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