DEX・DeFi規制はどうなる?金融庁の研究会が初会合|決定事項はゼロ、野村HDは「海外と同等」を要望

「忙しい人向け」ニュース要約
- 金融庁が2026年10月20日、「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」の令和8事務年度第1回を開催。座長は神田秀樹・東京大学名誉教授
- 論点は、ステーブルコイン・預金のトークン化、セキュリティトークン、DEX・DeFi、振替制度、証券決済の短縮化。事務局が示したのは3つの問いで、結論はまだない
- DEX・DeFiについて事務局資料が示したのは、2025年12月のWG報告の抜粋とFATFの3類型。新しい規制案は示されていない
- 野村HDは「日本は1ステップ遅れ」として10の課題を提示。DeFiやウォレットには、海外と同等の自由度の高い規制を求めた(業界の要望であり、決定ではない)
- 当日の議事録は未公表。本記事は、同日に金融庁が公表した配布資料に基づく
※相場やニュースの日々の見方は、水野のX(@mizuno_ichizen)で発信中です。
水野 倫太郎新しい規制が決まったわけではありません。
出てきたのは、論点の整理と、業界からの要望です。


監修 水野 倫太郎
株式会社ICHIZEN HOLDINGS 代表取締役
慶應義塾大学経済学部。2017年米国留学時にブロックチェーンと出会い、Web3の業界に足を踏み入れる。2018年には、日本有数の仮想通貨メディアCoinOtakuに入社。2019年には同社のCMOに就任し、2020年に東証二部上場企業とM&Aを行い、様々なクリプト事業を展開する。2022年に現在代表取締役社長を務めるICHIZEN HOLDINGSを立ち上げ様々なWeb3事業を手がける。複数のWeb3系事業に出資を行いながら有識者として活動。


何が起きたのか|金融庁「デジタル・分散型金融」研究会が令和8事務年度の初会合
2026年10月20日(火)の15時から17時、金融庁が「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」の令和8事務年度第1回を開きました。前回の記事で、約2年10か月ぶりに動く枠組みとして紹介した研究会の、最初の会合です。
研究会は、「AI時代を見据えたオンチェーン金融フォーラム」の下に置かれた、環境整備に係る研究会です。トークン化、ステーブルコイン、DEX・DeFiやウォレット提供業者について、制度の在り方を点検・検討します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会(令和8事務年度 第1回) |
| 日時・場所 | 2026年10月20日(火)15:00〜17:00、中央合同庁舎第7号館12階(オンライン併用) |
| 座長・メンバー | 座長の神田秀樹(東京大学名誉教授)を含む15名。弁護士、公認会計士、法学・経済学の研究者などで構成 |
| ヒアリング | 野村ホールディングス、Securitize Japan |
| オブザーバー | 全国銀行協会、日本証券業協会、資産運用業協会、信託協会、日本暗号資産等取引業協会、日本STO協会、預金保険機構、証券保管振替機構、日本取引所グループ、法務省、財務省、経済産業省、日本銀行 |
| 議事 | 開会、事務局説明、ヒアリング2社、討議、閉会 |
決まったことは何もない|事務局が示したのは3つの問い
事務局説明資料(53ページ)の最後に置かれた「ご議論いただきたい事項」は、次の3つです。規制の案ではなく、何から検討すべきかを委員に尋ねる問いです。
- イノベーションの促進や投資者保護の観点から、法制度上の課題として検討を優先すべき分野はあるか
- ステーブルコイン・預金のトークン化、セキュリティトークン、DEX・DeFi、振替制度について、今後どのような法的論点を検討すべきか
- トークン化やオンチェーン金融は証券決済の短縮化・高度化にもつながりうるが、検討で留意すべき点はあるか
つまり、この日の会合は「検討の出発点」でした。方向性が文書になるのは、フォーラムが2027年初に取りまとめる予定の中間整理です。次回の研究会の日程は、配布資料からは分かりません。
論点は5分野|ステーブルコインからDEX・DeFi、振替制度まで
事務局資料の構成は、総論と、5つの各論です。市場の動向として、世界のトークン化資産の累計発行額が2026年7月時点で350億ドルを超え、2033年には18.9兆ドルに達するとの試算があることも示されました。
| 分野 | 事務局資料のポイント |
|---|---|
| A ステーブルコイン・預金のトークン化 | 電子決済手段の定義(資金決済法2条5項)を1〜4号で整理。4号には、日本と同等の法制度がある外国の信託受益権が、2026年の府令改正で新たに加わった。国内では、JPYC(資金移動業型、2025年10月)とJPYSC(信託型、2026年6月)が発行済みで、3メガバンクは2026年度中に実取引を始める予定 |
| B セキュリティトークン | 金商法の「電子記録移転有価証券表示権利等」として整理。不動産STが発行の中心。民間コンソーシアムの提言として、投資信託法が券面発行を前提とするため、トークン化MMFのハードルが高いと紹介 |
| C DEX・DeFi | 2025年12月のWG報告の抜粋と、FATFのDeFi報告(2026年7月)の3類型を再掲(次の章で詳しく) |
| D 振替制度 | 日本は直接保有方式。DLT化では、責任主体・個人情報・振替手続の3つが課題。米DTCCは2026年10月にトークン化サービスを正式に始める予定で、日本は機関口座の開設が制限されているため、同じ形は現行法では難しい |
| E 証券決済の短縮化・高度化 | 海外のT+1化の動向と、国内の「T+1化に関する勉強会」の中間整理(2025年7月15日公表)を整理 |
「参考」として、2026年7月に公布された金融商品取引法・資金決済法の改正も載っています。暗号資産の取引規制を、資金決済法から金商法に移し、暗号資産交換業者を「暗号資産取引業者」に改めるものです。
DEX・DeFi|事務局が示したのは「これまでの整理」とFATFの3類型
DEX・DeFiに関する部分は、事務局資料の41〜43ページです。内容は、新しい規制案ではなく、既存の整理の再掲でした。
- DEXの構成要素のイメージ: 暗号資産の交換に必要な要素として、DEX本体、DEXアグリゲーター、接続するアプリ等のUI、アンホステッド・ウォレットを図で整理
- 2025年12月10日の暗号資産制度WG報告の抜粋: DEXには現状、明確な規制手法が確立されていない。一方、国内居住者向けにDEXへ接続するアプリ等のUIを提供する者には、説明義務と犯収法上の本人確認義務を含むAML/CFT対策を課すことを念頭に、まず実態把握を深める
- FATFの「DeFiに係る規制上の課題に関する報告書」(2026年7月): DeFiを、支配者の有無などで3つに分けて、規制対応を変えるよう提言


| 類型 | 支配者等 | 規制上の対応(FATFの提言) |
|---|---|---|
| ① 中央集権型 | 存在・識別可能 | 支配的な主体に、VASP規制(AML/CFTの観点から免許または登録の対象)を適用 |
| ② 支配者が容易に特定できない中央集権型 | 存在・識別が困難 | 原則、支配者を特定して①と同様に規制。特定できない場合は③と同様の措置 |
| ③ 真に分散型 | 存在しない | プロトコルへのAML/CFT措置の自主的な組み込みを奨励し、規制の接点として周辺サービス(UI等)に対策を求める |
ポイントは、FATFが「真に分散型」のDeFiについて、プロトコルではなく、UIなどの周辺サービスを規制の接点にすると提言していることです。日本のWG報告が、DEXに接続するUIの提供者に着目していたことと、考え方は重なります。ただし、日本でどうするかは、これからの議論です。
野村HD|「日本は1ステップ遅れ」と、10の課題
ヒアリングの1社目は、野村ホールディングス(デジタルアセット戦略推進部長)でした。資料では、米国はステーブルコインやトークン化預金が実用化段階にあるのに対し、日本は実証段階にとどまるとして、「1ステップ遅れ」と整理しています。そのうえで、実務・法制度の課題を10項目挙げました。
| # | 課題 | 要旨 |
|---|---|---|
| 1 | 振替法によるオンチェーン対応 | 国債や上場株などを、現行法を生かして早急にオンチェーン化する |
| 2 | グローバルなオンチェーン市場との平仄 | 国内独自の仕組みで、ガラパゴス化することを避ける |
| 3 | 金融機関向けの決済手段の確立 | 日銀当座預金や銀行預金のオンチェーン対応を急ぐ |
| 4 | スマートコントラクトによるサービス | DeFiには、海外に先んじた規制ではなく、海外と同等の自由度の高い規制を |
| 5 | ウォレットによるサービス | 秘密鍵を管理しない提供者に、過度な規制を設けない |
| 6 | 権利推定・善意取得 | 名簿の記録に権利推定効果を持たせる法整備 |
| 7 | 確定日付のデジタル化 | オンチェーンだけで完結できるように改正 |
| 8 | 海外SCと国内SCの発行要件の差 | 海外のSCは匿名の取引が利用拡大に寄与。国内のSCを海外で使うには同様の機能が必要 |
| 9 | 海外発行SCの利用制約 | 100万円超の保有・移転が制約になっており、大口取引を見据えて見直す |
| 10 | 金融機関のValidator機能 | 基盤の安定運用のため、国内の振替機関や金融機関が担うことが重要 |
DeFiとウォレットについては、資料の「目指すべき方向性」に、グローバルでの発展の方向性が定まった時点で、海外同様の規制を設ける、という考え方が書かれています。
Securitize Japan|パブリックチェーンを前提にした制度設計を提言
2社目のSecuritize Japanは、RWA(現実資産)のトークン化を手がける事業者です。資料では、同社が引用した数字として、RWAトークンの時価総額が2026年9月30日時点で約390億ドル、トークン化MMFが約147億ドル、トークン化株式が約32億ドルとしています。
日本への提言は、次の5点です。
- 分散型のトークン化モデルを想定した法律・制度の整備(証券保管振替機構の見直しを含む)
- 機関投資家品質のDeFiの利用を想定した法律・制度の整備
- 個人・法人におけるウォレットベースのモデルを、阻害しない制度設計
- 海外の制度・市場との相互運用性の確保
- パブリックブロックチェーンを前提とした制度設計を基本とすること
同社は、「国際的な互換性を欠く独自路線」は、時間とコストがかかるうえ、海外との差をさらに広げかねないとも述べています。なお、資料に出てくる米SECの措置(2026年9月17日採択のトークン化株式のオンチェーン取引に関する免除)などの海外の動きは、同社の資料の説明です。
ICHIZEN Capitalの視点|「要望」と「決定」は別物
今回の資料から読み取れるのは、事務局が、トークン化やステーブルコインと、DEX・DeFiを、同じ研究会の中で「並べて点検する」姿勢です。DEX・DeFiは、5つの分野の1つにすぎません。前回の記事で書いたとおり、「DeFiが規制される」と読むのは早すぎます。



事業者の要望と、政府の方針は別物です。
決まるのは、2027年初の中間整理からです。
野村HDとSecuritize Japanが求めた「海外と同等」「パブリックチェーン前提」は、ヒアリングでの要望です。委員の議論や、研究会の結論ではありません。議事録は未公表なので、討議でどんな意見が出たのかは、公表を待つ必要があります。
個人の投資家にとっては、今すぐ変わることはありません。DEXやウォレットの使い方は、今回の会合で変わっていません。追いかけるなら、次の3点です。①この研究会の議事録と配布資料、②2027年初のフォーラムの中間整理、③WG報告にあった、DEXに接続するUIの提供者への規制の行方です。直近のオンチェーン金融の動きは、フォーラムの議事録の記事や、国債のトークン化の記事でも整理しています。
よくある質問
「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」とは何ですか?
金融庁が設けた研究会で、座長は神田秀樹・東京大学名誉教授です。トークン化、ステーブルコイン、DEX・DeFiやウォレット提供業者について、制度の在り方を点検・検討します。2026年10月20日に、令和8事務年度の第1回が開かれました。
今回の会合で、DEX・DeFiの規制は決まりましたか?
決まっていません。事務局資料が示したのは、2025年12月のWG報告の抜粋と、FATFのDeFi報告(2026年7月)の概要で、新しい規制案はありません。規制の有無も内容も、これからの議論です。
研究会では、どんな議論がされましたか?
当日の議事録は、本記事の執筆時点で公表されていません。配布資料から分かるのは、事務局が3つの問い(検討を優先すべき分野など)を示し、野村HDとSecuritize Japanがヒアリングで説明したことです。委員の発言は、議事録の公表後に確認できます。
野村HDは、何を求めましたか?
配布資料には、実務・法制度の課題が10項目挙げられています。DeFiやウォレットには、海外に先んじた規制ではなく、海外と同等の自由度の高い規制を求めています。海外発行ステーブルコインの国内利用で、100万円超の保有・移転が制約になっている点の見直しも含まれます。
この研究会と、オンチェーン金融フォーラムは何が違いますか?
フォーラムは、関係省庁等で社会実装を進める枠組みで、座長は金融担当大臣です。研究会は、その下にある環境整備の担当で、制度の在り方を点検します。フォーラムは2027年初に、中間整理と官民連携のロードマップを取りまとめる予定です。
次回の研究会はいつですか?
配布資料からは分かりません。フォーラムの第2回は、2027年初に開かれる予定です。研究会の日程は、金融庁の開催実績のページで確認できます。
公金給付へのステーブルコイン活用は、この研究会の議題ですか?
事務局資料の体制図では、公金給付への活用は、フォーラム側の項目に置かれています。この研究会の検討対象は、トークン化・ステーブルコイン・DEX・DeFiなどです。公金給付の検討状況は、フォーラムの議事録の記事で整理しています。
ステーブルコインの送金には、上限があるのですか?
金融庁の資料(電子決済手段の発行者に対する主な規制)では、資金移動業者(第二種)が発行する場合は、送金上限が100万円とされています。信託会社が発行する場合も100万円で、超えるには業務実施計画の認可が必要です。信託銀行が発行する場合は、上限がありません。
資料や議事録は、どこで読めますか?
金融庁の公式サイトで公開されています。「審議会・研究会等」から、この研究会のページに入ると、名簿、事務局説明資料、野村HDとSecuritize Japanの資料がPDFで読めます。議事録は、公表され次第、同じページに掲載されます。本記事末尾の参考文献に、直接のリンクを掲載しています。
まとめ
- 2026年10月20日、金融庁の「デジタル・分散型金融」研究会が令和8事務年度の初会合を開催。決まったことはない
- 事務局は、検討を優先すべき分野などを尋ねる3つの問いを提示
- 論点は、ステーブルコイン・トークン化、ST、DEX・DeFi、振替制度、証券決済の5分野
- DEX・DeFiは、WG報告の再掲とFATFの3類型の紹介にとどまり、新しい規制案はなし
- 野村HDとSecuritize Japanは、海外と同等の規制やパブリックチェーン前提の制度設計を要望(業界の要望であり、決定ではない)
前回の記事で、規制の中身を最初に知れるのは、この研究会の配布資料になる可能性が高いと書きました。実際に出た資料は、新しい規制案ではなく、論点の整理と業界の要望でした。ここから先は、委員の議論と、2027年初の中間整理で、方向性が見えてきます。
次の節目は、研究会の議事録の公表と、フォーラムの中間整理です。それまでは、「要望」と「決定」を分けて、一次資料で確認するのが確実です。


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参考文献
・金融庁「「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」(令和8事務年度第1回)議事次第」(2026年10月20日)
・金融庁「資料2 事務局説明資料」(2026年10月20日・PDF)
・金融庁「資料1 メンバー等名簿」(2026年10月20日・PDF)
・野村ホールディングス「オンチェーン金融の現状と将来像」(資料3・2026年10月20日・PDF)
・Securitize Japan「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会 提出資料」(資料4・2026年10月20日・PDF)
・金融庁「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」開催実績
※本記事は、金融庁が2026年10月20日に公表した配布資料(事務局説明資料、メンバー等名簿、ヒアリング2社の資料)に基づきます。議事録は本記事の執筆時点で公表されておらず、当日の委員の発言は含みません。ヒアリング資料の内容は各社の見解で、金融庁や政府の方針ではありません。記載した制度は、いずれも検討段階のものを含み、確定した規制ではありません。
※本記事は2026年10月21日時点の情報です。
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