SBIと吉本興業が合弁会社へ|デジタル証券(ST)の活用は?決まっていること・未定のこと

「忙しい人向け」ニュース要約
- SBIと吉本興業が、合弁会社の設立で基本合意(2026年10月14日発表)
- 合弁会社はSBIのセキュリティトークン(ST)基盤を使い、IP・コンテンツの新しい資金調達手法に取り組む
- ただしSTの種類・時期・対象・出資比率・設立時期は未発表。買える商品もまだない
- 1,000億円規模のSBIネオコンテンツファンドに、吉本興業HDが出資する
※相場やニュースの日々の見方は、水野のX(@mizuno_ichizen)で発信中です。
水野 倫太郎「デジタル証券で資金調達」は、発表の一文に入っているだけです。
決まったことと、まだ決まっていないことを、一次資料で分けて整理します。


監修 水野 倫太郎
株式会社ICHIZEN HOLDINGS 代表取締役
慶應義塾大学経済学部。2017年米国留学時にブロックチェーンと出会い、Web3の業界に足を踏み入れる。2018年には、日本有数の仮想通貨メディアCoinOtakuに入社。2019年には同社のCMOに就任し、2020年に東証二部上場企業とM&Aを行い、様々なクリプト事業を展開する。2022年に現在代表取締役社長を務めるICHIZEN HOLDINGSを立ち上げ様々なWeb3事業を手がける。複数のWeb3系事業に出資を行いながら有識者として活動。
何が発表されたのか|SBIHDと吉本興業HDが基本合意
2026年10月14日、SBIホールディングスは、吉本興業ホールディングス(以下、吉本興業HD)とエンターテインメント領域で戦略的業務提携を行うことで基本合意したと発表しました。発表の副題は「日本発のエンターテインメントIPを継続創出し、世界へ展開すべく合弁会社設立に合意」です。
IPは、映像・キャラクター・音楽などの知的財産のことです。吉本興業HDが持つIP・タレント資産・制作力と、SBIグループの資本・金融テクノロジーを組み合わせて、世界市場向けのコンテンツを作ることが目的です。発表の内容は、次の4つの柱で構成されています。
| 柱 | 発表された内容(要旨) |
|---|---|
| (1)合弁会社の設立 | 世界市場向けのオリジナルIPの企画・開発・投資。SBIのセキュリティトークン基盤とオンチェーン金融のノウハウを使った、新しい資金調達手法の創出にも取り組む |
| (2)SBIネオコンテンツファンドの活用 | SBIグループが組成する1,000億円規模のファンド。吉本興業HDが出資し、ファンドの投資や第三者のコンテンツホルダーとの連携でIPを開発する |
| (3)IP価値の最大化 | SBIの「ネオメディア生態系」と吉本の制作・興行基盤を連携。タレント活用、映像・デジタル制作、興行、グッズ、ゲームなどへ展開 |
| (4)地方創生 | 地域の文化・観光資源を活かした、海外向けコンテンツの企画・開発 |
この記事では、このうち、(1)に入っているデジタル証券(セキュリティトークン)の部分を中心に整理します。
一次資料の該当部分は次のとおりです。(1)と(2)の原文を、そのまま確認できます。


デジタル証券(ST)の部分で決まっていること
発表の中でSTに触れているのは、(1)の合弁会社の項目の1文だけです。原文の趣旨は次のとおりです。
- 合弁会社は、SBIグループのセキュリティトークン基盤と、オンチェーン金融のノウハウを活用する
- IP・コンテンツ領域での「新たな資金調達手法の創出」にも取り組む
つまり、決まっているのは「SBIのST基盤を使って、IP・コンテンツの資金調達の新しい方法を作る方向で取り組む」という方針です。「取り組みます」という表現にとどまっていて、何かを発行すると確定した書き方ではありません。
なお、発表の中に「デジタル証券」という言葉は出てきません。使われているのは「セキュリティトークン」です。両者は同じ種類のもので、日本では、デジタル証券と呼ばれることが多い言葉です。
まだ決まっていないこと(発表では未公表)
一方で、次の項目は、リリースに記載がありません。ニュースの見出しだけを見て、期待しすぎないための整理です。
| 項目 | 発表の記載 |
|---|---|
| 発行するSTの種類(社債・出資持分など) | 記載なし |
| STを発行する時期 | 記載なし |
| 対象になるIP・作品 | 記載なし |
| 募集の対象(個人か、機関投資家か) | 記載なし |
| 合弁会社の社名・出資比率 | 記載なし |
| 合弁会社の設立時期 | 記載なし |
したがって、現時点で、この提携に基づく投資商品は発表されていません。「吉本興業関連のデジタル証券を買える」という段階ではありません。



基本合意は、方向性を確認した段階です。
商品の中身は、これから決まっていくと見るのが自然です。
そもそもデジタル証券(セキュリティトークン)とは
セキュリティトークン(ST)とは、株式や社債、ファンドの持分などの権利を、ブロックチェーン上のトークンで表した有価証券です。デジタル証券と呼ばれることもあります。
ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)とは、法律上の位置づけが違います。STは、金融商品取引法で扱う「証券」にあたります。証券会社などを通じて売買され、発行する会社の財務状況や、投資対象の収益に応じて価値が決まります。
STの特徴は、権利の移転や管理をブロックチェーン上で行えることです。小口に分けて売りやすく、記録も電子的に残ります。
SBIはすでにST社債を手がけている(2026年2月に発表)
今回の「SBIのセキュリティトークン基盤」は、新しい構想ではありません。SBIホールディングスは、2026年2月20日に、同社として初めてのST形式の社債発行を準備していると発表しています。愛称は「SBI START債」です。
| 項目 | 発表の内容(2026年2月20日) |
|---|---|
| 名称 | SBIホールディングス第1回無担保セキュリティ・トークン(デジタル名義書換方式)社債。愛称はSBI START債 |
| 管理の仕組み | 証券保管振替機構(ほふり)の代わりに、BOOSTRYが主導するブロックチェーン「ibet for Fin」で、発行から期中管理、償還までを電子的に完結 |
| 売買する場所 | 大阪デジタルエクスチェンジが運営する私設取引システム(PTS)「START」。2026年3月25日から取り扱う予定(発表時点) |
| 特典 | 国内居住の個人・法人の取得者に、取得額に応じたXRPを付与(条件あり) |
つまり、SBIは、ST社債の発行と、個人が参加できる取引の場(PTS)での取り扱いまで、すでに具体的に進めてきました。吉本興業との合弁会社は、この仕組みをIP・コンテンツの資金調達に応用する構想だと読めます。なお、報道では2026年3月24日の発行・完売が伝えられていますが、発行結果の公式発表は、本記事では確認できていません。
吉本興業のWeb3の布石|2020年のNFTカードから今回まで
吉本興業がブロックチェーンに関わるのは、今回が初めてではありません。公開されている発表と報道を時系列で並べると、NFTを使ったファン向けの取り組みが2020年から続いてきたことが分かります。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2020年11月 | 「よしもとデジタルコレカ」を発売。紙のトレーディングカードの裏面のQRコードを読み取ると、NFTのデジタルカードを入手できる仕組み |
| 2022年3月19日 | 新版「FANYよしもとデジタルコレカ」を発売 |
| 2022年3月23日 | LINEのNFTマーケット「LINE NFT」(4月13日開始)で、吉本興業を含む17コンテンツと提携すると、運営のLVCが発表 |
| 2022年4月13日 | LINE NFTで限定NFT動画「よしもとNFTシアター」の販売を開始。芸人のコントをNFT用に撮り下ろし、3ネタ1セットで3,000円。2次流通では購入者が出品価格を決められる |
| 2022年5月13日 | Pocket RDと、タレントのアバター化とIPビジネスで共同展開すると発表(プロジェクト名「FANY X」)。アバターの管理にNFTを使うことを検討 |
| 2023年3月8日 | 「吉本新喜劇ギャグコレカ」の販売を発表(3月21日発売)。ギャグ100種類をNFT化したデジタルトレーディングカード |
| 2025年8月18日 | 数十億円規模のコンテンツファンドの組成を発表。AIなど先進技術を使った制作や、番組フォーマットの海外展開が目的(Web3・NFTへの言及はなし) |
| 2026年10月14日 | SBIとの戦略的業務提携に基本合意。セキュリティトークン基盤を使った資金調達の手法に取り組む方針 |
2020年から2023年にかけての約3年間で、吉本興業は、デジタルカード、NFT動画、タレントのアバターと、形を変えながら取り組みを発表してきました。しかも、2022年にはLINE NFTのような大手のマーケットにも、サービス開始時から参加しています。
吉本興業の担当者は、日経クロストレンドの取材に、早くからNFTに取り組んだ理由を、「吉本のIP(知的財産)と相性が良さそうだったから」という趣旨で説明しています。新しい技術を様子見するのではなく、自社のコンテンツに合う使い道を探して、実際に商品として出してきたことが分かります。
つまり、吉本興業は、Web3やブロックチェーンの領域に対する感度が高く、実際に活用してきた企業です。今回のSBIとの提携で、ST基盤を使った資金調達に取り組む方針が出てきたのも、その延長線上にあると見ることができます。ただし、これは年表から読み取れる流れについての、編集部の見方です。吉本興業が、過去のNFTの取り組みと今回の提携を、同じ戦略の一部と位置づけているかどうかは、発表には書かれていません。



吉本は、NFTの時代から、ブロックチェーンを使ったビジネスに手を出してきた会社です。今回の提携は、その経験が土台にあると見ています。
なぜIP・コンテンツとSTを組み合わせるのか(編集部の見方)
ここからは、発表の内容ではなく、編集部の見方です。発表に書かれていない部分を、考える材料として整理します。
映画やアニメ、ライブといったコンテンツは、制作に先にお金がかかり、回収は公開後です。従来は、製作委員会のような出資の仕組みで資金を集めてきました。STは、この「出資の権利」を小口に分けて、ブロックチェーン上で管理できる仕組みです。
そのため、STを使うと、出資の権利を小口に分けて、管理しやすくなる可能性があります。ただし、これはあくまで可能性の話で、発表には、募集の対象も方法も書かれていません。
一方で、見ておくべき点もあります。コンテンツへの出資は、作品がヒットするかどうかで、収益が大きく変わります。STにしても、元本が保証されるわけではありません。個人が対象になる場合は、商品の中身とリスクの説明を、そのつど確認する必要があります。
SBIネオコンテンツファンドとの関係
発表の柱(2)にある「SBIネオコンテンツファンド」は、正式名称を「SBIネオコンテンツ投資事業有限責任組合」といい、SBIグループが組成する1,000億円規模のファンドです。映像作品、興行・イベント、スポーツ、デジタルコンテンツなどを投資対象にします。
発表では、吉本興業HDがこのファンドに出資すること、そして、ファンドからの投資や、第三者のコンテンツホルダーとの連携で、国内外で展開できるIPの企画・開発を進めることが示されています。
注意したいのは、ファンドの活用(柱2)と、STを使った新しい資金調達(柱1)は、発表の中では別の項目として書かれている点です。ファンドがSTで資金を集める、とは書かれていません。両者の関係は、今後の発表を待つ必要があります。



ファンドとSTは、別々の項目です。
「1,000億円がSTで集まる」と読まないよう、注意したい点です。
この提携の背景にある、SBIの「ネオメディア」戦略
SBIグループは、2025年5月に、グループのメディア・エンターテインメント・マーケティング関連事業を統括するSBIネオメディアホールディングスを設立しました。IPプロダクション、タレントエージェンシー、イベント企画・運営などの会社と、資本業務提携やM&Aを進め、コンテンツへの投融資まで一気通貫で行う「ネオメディア生態系」を作る、と説明しています。
吉本興業HDは、1912年創業で、タレント・アスリートのマネジメント、劇場運営、テレビ番組・映像・音楽の制作・販売などを手がけています。今回の提携は、この「ネオメディア生態系」に、吉本興業HDの制作・興行基盤が加わる形です。
金融・ITとメディアを組み合わせるSBIの流れは、この提携で、デジタル証券という金融商品にも広がる可能性が出てきました。同じ「オンチェーン金融」の流れは、国債のトークン化でも進んでいます。詳しくは国債のトークン化の解説記事と、金融庁のオンチェーン金融フォーラムの記事をご覧ください。
個人投資家は何を確認すればよいか
現時点で、個人が取れる行動はありません。この提携に基づくSTは発行されていないため、買える商品がないからです。確認しておくと良いのは、次の3点です。
- 合弁会社の社名・出資比率・設立時期が発表されたか
- STを発行する場合の種類(社債・出資持分など)と、募集の対象が個人かどうか
- 商品が出た場合は、元本保証の有無、収益の仕組み、換金できる場所
得をするのは、商品が出たときです。発表の見出しに乗って「吉本のSTなら安全」と思い込まずに、中身で判断できます。最新の情報は、SBIホールディングスのニュースリリースで確認してください。
よくある質問
SBIと吉本興業は何を発表しましたか?
2026年10月14日に、エンターテインメント領域での戦略的業務提携について基本合意したと発表しました。合弁会社を設立し、世界市場向けのIPの企画・開発・投資を進めます。SBIのセキュリティトークン基盤を使った、新しい資金調達手法の創出にも取り組む方針です。
吉本興業のデジタル証券は買えますか?
いいえ、現時点では買えません。発表には、発行するSTの種類・時期・対象・募集の対象が書かれておらず、この提携に基づく商品は発表されていません。
デジタル証券(セキュリティトークン)とは何ですか?
株式や社債、ファンドの持分などの権利を、ブロックチェーン上のトークンで表した有価証券です。金融商品取引法で扱う証券にあたり、暗号資産(仮想通貨)とは別のものです。
デジタル証券と暗号資産(仮想通貨)は何が違いますか?
デジタル証券は、会社の財務や投資対象の収益を裏づけにした「証券」で、証券会社などを通じて売買します。暗号資産は、そうした裏づけとなる発行体の義務を持たない場合が多く、法律上の分類も異なります。
SBIと吉本興業の合弁会社はいつできますか?
設立時期は発表されていません。社名や出資比率も未公表です。発表は「基本合意」の段階で、詳細は今後の協議で決まります。
SBIネオコンテンツファンドとは何ですか?
SBIグループが組成する1,000億円規模の投資事業有限責任組合(通称:SBIネオコンテンツファンド)です。映像作品、興行・イベント、スポーツ、デジタルコンテンツなどを投資対象にします。今回、吉本興業HDが出資します。
SBIはセキュリティトークンを扱った実績がありますか?
はい。2026年2月に、SBIホールディングス初のST社債「SBI START債」の発行を発表しています。ブロックチェーン「ibet for Fin」で管理し、私設取引システム「START」で取り扱う予定と発表されました。発行結果の公式発表は本記事では確認できていないため、条件は同社の発表を確認してください。
吉本興業は過去にNFTを販売していましたか?
はい。吉本興業は、2022年4月にLINE NFTで「よしもとNFTシアター」(芸人のコント動画)を、2023年3月に「吉本新喜劇ギャグコレカ」(ギャグ100種類のデジタルカード)を発表しています。デジタルコレカは、報道によれば2020年11月から展開されています。
「基本合意」とは何ですか?正式な契約とどう違いますか?
基本合意は、提携の大きな方向性を確認した段階のことです。具体的な出資比率、役割分担、時期などは、今後の協議で詰めていくのが一般的です。今回のリリースにも、これらの詳細は載っていません。
まとめ|STの活用は「方針」、商品はこれから
- SBIと吉本興業が、合弁会社の設立で基本合意(2026年10月14日)
- STは「新しい資金調達手法の創出にも取り組む」という方針の段階
- 種類・時期・対象・出資比率・設立時期は未発表で、買える商品はない
- ファンド(1,000億円規模)とSTは、別の項目として書かれている
- 吉本は2020年からNFTカードや動画を展開。今回は「資金調達」へ広がる方向
今回の発表で確かなのは、SBIが自社のST基盤を、吉本興業とのIP・コンテンツの資金調達に使う方向で取り組む、という方針です。SBIはST社債に取り組んできたため、方針としての筋は通っています。ただし、何をいつ発行するのかは、まだ示されていません。
今後は、合弁会社の詳細と、STの具体的な中身が発表されるかが焦点です。続報は、SBIホールディングスのニュースリリースで確認してください。


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※1 SBIホールディングス「吉本興業ホールディングス株式会社との戦略的業務提携に向けた基本合意のお知らせ」2026年10月14日(https://www.sbigroup.co.jp/news/2026/1014_16660.html)
※2 SBIホールディングス「セキュリティ・トークン(ST)社債形式での個人投資家向け社債発行に関するお知らせ」2026年2月20日(https://www.sbigroup.co.jp/news/pr/2026/0220_16126.html)
※3 吉本興業「限定NFT動画『よしもとNFTシアター』」2022年4月13日、「吉本新喜劇ギャグコレカ」2023年3月8日(いずれもPR TIMES掲載のプレスリリース)、「コンテンツファンド組成のお知らせ」2025年8月18日(吉本興業)
※4 よしもとデジタルコレカの開始時期・LINE NFTへの参加・Pocket RDとの取り組みは、日経クロストレンド、CoinPost、TechCrunch Japan、gamebizの報道・掲載による
※本記事は、公表された事実の整理を目的としています。「編集部の見方」の部分は、発表に書かれていない内容についての考え方であり、今後の実現を保証するものではありません。
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