SBIの円ステーブルコインJPYSCとは?裏付けを日本国債で運用開始・改正資金決済法とJPYCとの違いを解説【2026年9月】

『忙しい人向け』ニュース要約
- SBIの円ステーブルコインJPYSCが、裏付け資産の一部(10億円)を日本国債で運用し始めました
- 2026年6月1日の改正資金決済法で「裏付けの最大50%を短期国債で運用可」になったのが背景です
- JPYSCは”信託型”で送金上限なし・法人/大口向け。個人向けのJPYCとは別物です
- 意味は「日本の円ステーブルコインも裏付けから利回りを得られる」こと。オンチェーン金融の土台づくりです
水野 倫太郎一見すると地味なIRですが、日本のステーブルコインにとっては節目のニュースです。これまで円ステーブルコインの裏付けは普通預金などで置いておくしかなく、発行体は利回りを得られませんでした。今回の一歩で、TetherやCircleが米国債で稼ぐのと同じ構造が日本でも可能になります。この記事では、何が起きたのかを一次資料で整理し、JPYCとの違いと「次に何が来るのか」まで踏み込みます。


監修 水野 倫太郎
株式会社ICHIZEN HOLDINGS 代表取締役
慶應義塾大学経済学部。2017年米国留学時にブロックチェーンと出会い、Web3の業界に足を踏み入れる。2018年には、日本有数の仮想通貨メディアCoinOtakuに入社。2019年には同社のCMOに就任し、2020年に東証二部上場企業とM&Aを行い、様々なクリプト事業を展開する。2022年に現在代表取締役社長を務めるICHIZEN HOLDINGSを立ち上げ様々なWeb3事業を手がける。複数のWeb3系事業に出資を行いながら有識者として活動。
何が発表されたのか|JPYSCが裏付けを日本国債で運用開始
SBI VCトレードとSBI新生信託銀行は2026年9月7日、円ステーブルコイン「JPYSC」の裏付け資産の一部を、日本国債で運用し始めたと発表しました。具体的には、JPYSCの裏付けとなる信託財産のうち10億円を、短期国債で運用開始したという内容です(※1)。発行者はSBI新生信託銀行、運用の指図(発行委託者)と流通を担うのがSBI VCトレードになります。
まず、いま出ている数字を押さえておきます。2026年9月7日時点で、JPYSCの発行残高は約201億円相当。これにSBI VCトレードが提供する「JPYSCレンディング」の申込分・約69億円相当を合わせると、規模は約270億円相当になります(※1)。国内の円ステーブルコインとしては、すでに存在感のある水準まで育っています。
| 項目 | 内容(2026年9月7日時点) |
|---|---|
| 発表日 | 2026年9月7日 |
| 発行者 | SBI新生信託銀行 |
| 発行委託者・流通 | SBI VCトレード |
| 今回の運用 | 裏付け信託財産のうち10億円を短期国債で運用開始 |
| JPYSC発行残高 | 約201億円相当 |
| JPYSCレンディング残高 | 約69億円相当 |
| 合計規模 | 約270億円相当 |
| 国債運用の上限 | 発行額の50%以下(3か月を超えない短期国債・定期預金) |
| 根拠法 | 2026年6月1日施行の改正資金決済法 |
一次資料として、SBI VCトレードの発表そのものを引用します。数値と主体はこの発表で確認できます。


なぜ今、国債で運用できるようになったのか|6月の法改正
この発表の前提には、制度の変更があります。2026年6月1日に施行された改正資金決済法によって、信託型ステーブルコインの裏付け資産を、発行額の50%を上限に短期国債などで運用できるようになりました。従来は、裏付けとなる資金を普通預金などの「要求払預貯金」で管理するのが原則で、国債での運用は認められていませんでした(※1)。今回のJPYSCの動きは、この解禁を実際に使った国内で最初の事例にあたります。
「50%まで」「3か月を超えない短期国債」という条件には理由があります。ステーブルコインは、利用者が「1円で返して」と言えばいつでも1円で償還できる必要があります。そのため裏付け資産は、値動きが小さく、すぐに現金化できるものに限られます。満期の短い国債(短期国債)は、価格の振れが小さく換金性も高いため、償還のための流動性を保ったまま運用に回せる——という発想です。全額を国債にせず上限を50%に抑えているのも、いつでも返せる備えを厚く残すためです。
- 従来:裏付けは普通預金などの要求払預貯金で管理が原則(運用不可)
- 2026年6月1日の改正後:発行額の50%を上限に、3か月以内の短期国債・定期預金で運用可
- 狙い:いつでも1円で返せる流動性を保ちつつ、裏付けを運用に回す
そもそもJPYSCとは?JPYCとの違い
JPYSC(ジェイピーワイエスシー)は、SBI新生信託銀行が発行する国内初の「信託型」円建てステーブルコインです。日本円と1対1で連動するよう設計された、資金決済法上の「第3号電子決済手段」にあたります(※1)。2026年6月に提供が始まった比較的新しいコインで、発行者(信託銀行)が裏付けとなる信託財産を管理・運用し、SBI VCトレードが発行委託者兼・電子決済手段等取引業者として流通を担う、という役割分担です。
ここで多くの方が気になるのが、先行する円ステーブルコイン「JPYC」との違いです。名前が似ていますが、両者は法的な作りも想定ユーザーも異なります。ざっくり言うと、JPYCは資金移動業者が発行する「個人でも使える」タイプ、JPYSCは信託銀行が発行する「送金上限がなく法人・大口に向く」タイプです。
| 項目 | JPYSC | JPYC |
|---|---|---|
| 発行体 | SBI新生信託銀行(信託銀行) | JPYC株式会社(資金移動業者) |
| 法的な型 | 信託型(第3号電子決済手段) | 資金移動業者型 |
| 送金・発行の上限 | 法定の金額上限なし | 1回あたり100万円 |
| 主な想定ユーザー | 法人・大口 | 個人も利用可 |
| 主な用途 | 企業間決済・大口の資金移動・海外送金・RWA決済 | 個人の決済・送金・NFT購入など |
この違いは、今回の国債運用のニュースとも関係します。JPYSCは大口の資金が集まりやすく、裏付けとなる信託財産の規模も大きくなりやすい設計です。その大きな裏付けを国債で運用できるようになったからこそ、「利回りを生む」インパクトが意味を持ちます。JPYCそのものの詳しい仕組みや買い方は、JPYCとは?日本初の円建てステーブルコインの解説記事もあわせてご覧ください。
何が変わるのか|「利回りを生むステーブルコイン」の意味
速報記事では「10億円を国債で運用」で終わりがちですが、本当の論点はその先です。今回の一歩で、日本の円ステーブルコインも「裏付け資産から利回りを得る」ことができるようになりました。これは発行体のビジネスモデルを大きく左右します。
海外を見ると分かりやすいです。世界最大級のステーブルコインを発行するTetherやCircleは、裏付けの大半を米国の短期国債(Tビル)で運用し、その利息を大きな収益源にしています。裏付けを預金で寝かせるだけでは、発行体は運用益を得られず、事業として続けにくいのが実情でした。今回の解禁で、日本の円ステーブルコインも同じ土俵に近づいたということです。
利用者側から見た意味も整理します。発行体が運用益を得られれば、発行の裏付けを維持しながら事業を継続しやすくなり、結果として円ステーブルコインの供給が増えやすくなります。円建てでオンチェーンに置ける「デジタルの円」が増えることは、国内外の送金や決済、後述するオンチェーン金融の土台になります。ただし、国債運用で得た利回りが利用者に直接分配されるという発表ではない点は、誤解しないよう押さえておいてください。
- 発行体が運用益を得られ、事業として継続しやすくなる
- 裏付けを維持したまま、円ステーブルコインの供給が増えやすい
- 円建てのオンチェーン決済(送金・RWA)の土台になる
- ※利回りが利用者へ直接分配される話ではない点に注意
次のシナリオ|オンチェーン外国為替とRWA決済へ
SBIはこの動きを、単発の運用改善ではなく、より大きな構想の一部として位置づけています。発表では、JPYSCの今後の展開として「国内外の送金・決済」「オンチェーン外国為替市場」「RWA(現実資産)・トークン化資産の決済」が挙げられています。(※1)いずれも、デジタルの円が金融インフラとして使われる未来を見据えたものです。
もう1つの注目点が、流通の場です。JPYSCは現状、SBI VCトレードの口座内での提供が中心で、パブリックチェーン上での本格流通は税務や法令の実務が整い次第とされています。今後、誰でも使えるパブリックチェーンへ広がれば、円建てのオンチェーン決済の裾野は一気に広がる可能性があります。今回の国債運用は、その前段として「裏付けをきちんと運用しながら規模を育てる」という地ならしの意味合いが強いと見ています。
このニュースは、値上がりを狙う「銘柄」の話ではなく、金融インフラが一段進んだという話です。個人がJPYSCを買って儲ける、という性質のものではありません。ただ、円ステーブルコインが利回りを得て持続的に発行できるようになることは、数年単位で見ればオンチェーンの円決済・RWA・海外送金の土台になります。SBIがこの領域で一歩ずつ実装を進めている点は、日本の暗号資産・金融のこれからを読むうえで押さえておく価値があります。速報の数字の裏で、制度と実装が静かに前進していることに注目したいところです。
JPYSCに関するよくある質問
今回のニュースに関連して、検索でよく調べられている疑問に結論から答えます。
JPYSCとは何ですか?
SBI新生信託銀行が発行する、国内初の「信託型」円建てステーブルコインです。日本円と1対1で連動するよう設計された、資金決済法上の第3号電子決済手段にあたります。発行体が裏付けの信託財産を管理し、SBI VCトレードが流通を担います。
今回のニュースは何が新しいのですか?
JPYSCの裏付け資産の一部(10億円)を、日本国債で運用し始めた点です。2026年6月1日施行の改正資金決済法で、信託型ステーブルコインの裏付けを発行額の50%まで短期国債などで運用できるようになり、それを国内で最初に実行した事例になります。
JPYSCとJPYCの違いは何ですか?
発行体と法的な型が違います。JPYCは資金移動業者が発行し1回100万円の上限がある個人向け、JPYSCは信託銀行が発行し送金の金額上限がない法人・大口向けです。用途もJPYCは個人の決済、JPYSCは企業間決済や大口の資金移動が中心になります。
JPYSCは個人でも買えますか?
JPYSCは法人・大口向けの設計で、現状はSBI VCトレードの口座内での提供が中心です。個人が値上がり益を狙って買うような銘柄ではなく、あくまで決済・送金のための「デジタルの円」という位置づけです。パブリックチェーンでの本格流通は、税務・法令の実務が整い次第とされています。
国債で運用して、ステーブルコインの価値は大丈夫ですか?
運用は「発行額の50%まで」「3か月を超えない短期国債」に限られています。短期国債は価格の振れが小さく換金性も高いため、いつでも1円で償還するための流動性を保ったまま運用できる設計です。全額を国債にせず上限を50%に抑えているのも、償還の備えを厚く残すためです。
国債運用の利回りは利用者に還元されますか?
今回の発表は、あくまで発行体が裏付け資産を国債で運用し始めたという内容で、利回りを利用者へ直接分配するという発表ではありません。発行体が運用益を得ることで、裏付けを維持しながら事業を継続しやすくなる、という位置づけで理解するのが正確です。
JPYSCはどんな用途に使われる予定ですか?
発表では、国内外の送金・決済、オンチェーン外国為替市場、RWA(現実資産)・トークン化資産の決済などが今後の展開として挙げられています。個人の投機対象ではなく、企業間や国境をまたぐ決済インフラとしての活用が想定されています。
この記事のまとめ
- JPYSCが裏付け10億円を日本国債で運用開始
- 6月の改正資金決済法(50%まで短期国債可)が背景
- JPYSCは信託型・上限なし・法人大口向け
- 意味は「利回りを生む円ステーブルコイン」
- 次はオンチェーンFX・RWA決済の土台に
JPYSCが裏付け資産の一部を日本国債で運用し始めたニュースは、2026年6月に施行された改正資金決済法という制度変更を土台にしています。これにより、日本の円ステーブルコインも裏付けから利回りを得られるようになり、発行体が事業として続けやすくなりました。TetherやCircleが米国債で稼ぐ構造に、円建てでも一歩近づいた形です。
JPYSCは個人が値上がりを狙う銘柄ではなく、送金や決済のための「デジタルの円」です。今後はパブリックチェーンへの展開や、オンチェーン外国為替・RWA決済といった用途が視野に入っています。派手さはありませんが、日本のオンチェーン金融の土台が着実に固まりつつある——そう捉えておくと、この先のニュースも読み解きやすくなります。
【参考文献】
(※1) SBI VCトレード「国内初※の信託型円建てステーブルコイン『JPYSC』、裏付け資産の一部で日本国債の運用を開始」2026年9月7日 https://www.sbivc.co.jp/newsview/p9lx_sf_x
(※2) SBIホールディングス「国内初の信託型円建てステーブルコイン『JPYSC』の提供開始に関するお知らせ」2026年6月 SBIホールディングス ニュースリリース
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