トークン化株式(オンチェーン株)の保有者が254万人に急増|30日で+155%の理由・牽引役・注意点を解説

この記事で伝えたいこと
- 株式をブロックチェーン上に写した「トークン化株式(オンチェーン株)」の保有者が254万人に急増。直近30日で+155%(出所:RWA.xyz・2026年9月時点)。
- ただし保有者数の急増に対し、オンチェーンの資産価値は横ばい。数の伸びと資金・実需の伸びは別物で、中身を読む必要があります。
- 牽引役はxStocks・Ondo・Robinhoodなどの提供拡大。24時間取引・小口化・DeFi連携に加え、SpaceXなど未上場株への需要が背景。
- 「株式そのもの」ではないものも多い。RobinhoodのOpenAI・SpaceXトークンはOpenAIが公式否認しており、議決権や株主の権利が無い商品もあります。
木田 陽介「保有者254万人」という見出しは強いですが、私が最初に見るのは”1人あたりいくら持っているか”です。数だけ増えて金額が動いていないなら、実需より話題先行のサインかもしれません。


監修 木田 陽介
株式会社ICHIZEN HOLDINGS 代表取締役
2016年から仮想通貨トレードを開始。2017年に株式会社CoinOtakuを共同で創業。同年CoinOtakuの代表に就任。2020年に東証二部上場企業に6億円でM&A。bitgetの月間取引高で世界4位を獲得。2025年にCoinOtaku代表を退任し、同年5月に株式会社ICHIZEN HOLDINGSの代表取締役に就任。
何が起きたのか|トークン化株式の保有者が254万人に急増
米国株やETFなどをブロックチェーン上に写した「トークン化株式(オンチェーン株)」の保有者が、過去最高の約254万人に達しました。RWA(現実資産のトークン化)の分析サイトRWA.xyzによると、直近30日で+155%、2026年に入ってからは約8か月で20倍超という急ピッチの伸びです(2026年9月時点)。
きっかけは、著名なマクロ系アカウントが「オンチェーンのトークン化株式の保有者が過去最高を更新し、記録的なIPO市場と24時間市場への需要が背景にある」と発信したものでした。ただし発信時点の「190万人」という数字は、一次データ(RWA.xyz)ではすでに254万人まで伸びており、この分野の変化の速さがうかがえます。


「保有者の数」は急増、でも「価値」は横ばい|中身を読む
見出しの数字だけを追うと危ういのが、この分野です。保有者が+155%増える一方で、オンチェーンに乗っている資産価値(Distributed Value)は約25.5億ドルで+0.39%とほぼ横ばい。つまり「人数(正確にはウォレットのアドレス数)は爆発的に増えたが、乗っているお金はほとんど増えていない」という状態です。
さらに、月間のアクティブアドレス(実際に動いたウォレット)は約15.2万で、30日前から-89.65%と大きく減っています。保有アドレスの数だけが伸び、実際の売買は細っている——これは、1人が複数のウォレットを持つケースや、少額を配って保有者を増やすキャンペーン(エアドロップ狙いの保有)などが数字を押し上げている可能性を示唆します。急増そのものは事実ですが、「254万人が積極的に株を売買している」という意味ではない点は、投資判断の前提として押さえておきたいところです。
| 指標 | 数値 | 30日前比 |
|---|---|---|
| 保有者(Holders) | 約254万 | +155.19% |
| オンチェーン価値(Distributed Value) | 約25.5億ドル | +0.39% |
| 月間送金額(Transfer Volume) | 約234.8億ドル | +30.66% |
| 月間アクティブアドレス | 約15.2万 | -89.65% |
なぜ今、オンチェーン株が急増しているのか|3つの背景
保有者数の急増には、大きく3つの背景があります。いずれも「株式をブロックチェーンに載せると、従来の株取引にはできなかったことができる」という点に集約されます。
1. 提供プラットフォームの拡大(xStocks・Ondo・Dinari・Robinhood)
最大の要因は、トークン化株式を扱う事業者が一気に増えたことです。Solana上で展開するxStocks(Kraken系)は4か月で100億ドル超の取引を処理し、Solana上のトークン化株取引の95〜99%を占めるとされます。米国では規制に準拠したDinariが2026年8月に724銘柄の米国株トークンを提供開始し、Ondo Global Marketsも米国株トークンを拡大。Robinhoodは自前のブロックチェーン(Robinhood Chain)まで立ち上げました。受け皿が増えれば、保有者が増えるのは自然な流れです。
2. 24時間取引・小口化・DeFi連携という強み
トークン化株式は、オンチェーンでは24時間365日いつでも移転・取引できます。1株を細かく分割できるため、高額な米国株でも数ドルから買えます。さらに、保有したトークンをDeFi(分散型金融)で担保に使ってお金を借りる、といった従来の株式にはない使い方もできます。「取引所が閉まっている時間でも動かせる」「少額で始められる」という利便性が、新しい保有者を呼び込んでいます。
3. SpaceXなど「未上場株」への需要
SpaceX・OpenAI・Anthropicといった、通常は個人が買えない有力な未上場企業への「exposure(値動きへの参加)」を求める需要も背景にあります。記録的なIPO市場のなかで、上場前・上場直後の話題株に少額で触れたいというニーズが、トークン化という形で受け皿を得ました。ただし後述のとおり、これらが「本物の株式」なのかどうかは商品によって大きく異なります。
この流れは今後さらに加速する|取引所も規制当局も動き出した
今回の急増は、一過性のブームでは終わらない可能性が高いとみています。理由は、これまで様子見だった既存の巨大な金融インフラと、各国の規制当局が、同じ方向に動き始めたからです。保有者の「数」の裏で、土台そのものが動いています。
世界有数の取引所も参入|ロンドン証券取引所(LSE)
2026年9月、ロンドン証券取引所(LSE)がKrakenの親会社Paywardと提携し、上場する英国大手100社の株式を、急増を牽引したのと同じxStocksの枠組みでトークン化すると発表しました。さらに専用基盤「LSE 24」を2026年末にテスト開始し、規制当局の承認を前提に2027年の本格的な上場・取引を目指すとしています。これは「取引所そのものが、自社の上場株をオンチェーンに乗せにいく」段階に入ったことを意味します。既存の証券インフラと、急増中のオンチェーン基盤が接続され始めた点で、象徴的な一歩です。
日本の金融庁も「活用」を明記
日本でも、当局が後押しに回り始めています。金融庁は令和9年度の概算要求(過去最大の403億円)で「オンチェーンの金融手法の利活用」を明記しました。2026年7月に閣議決定された「骨太の方針2026」でも、オンチェーン金融の推進が示されています。規制当局が”監視”だけでなく”活用”を掲げ始めたことは、日本でもこの流れが制度に組み込まれていく可能性を示しています。金融庁の概算要求の中身は金融庁が暗号資産の監視強化へ|オンチェーンの金融手法とはで詳しく解説しています。
つまり、保有者数の急増という「数」の裏で、取引所と規制当局という「土台」が同時に動き始めました。この2つがそろうと、流れは一気に加速しやすくなります。だからこそ、短期の数字に一喜一憂するより、インフラと制度が実装されていく中長期の流れとして捉える価値があります。
注意点|「株式そのもの」ではない場合がある
トークン化株式で最も誤解されやすいのが、「トークンを買えば、その会社の株主になれる」という思い込みです。実際には、株主としての権利(議決権・配当請求権など)が無い商品も多くあります。とくに未上場企業のトークンはとくに注意が必要です。
象徴的だったのが、RobinhoodがEUで配布した「OpenAIトークン」「SpaceXトークン」です。これらは実際の株式ではなく、私募のSPV(特別目的会社)が保有する未上場株への間接的なexposureを、ブロックチェーン上で価格連動させたものでした。2026年の急増局面でも同じ構図の商品が出回っています。OpenAIは公式に「我々は関与しておらず、これを承認していない。OpenAIの株式の移転には当社の承認が必要だが、いかなる移転も承認していない」と否認しました(2025年7月)。つまり、発行元企業とは無関係に第三者が作った「値動きを模した商品」であり、株式そのものではないケースがあります。
- 株主の権利が無い場合がある:議決権・配当が無く、値動きに連動するだけの商品もあります。
- 発行元への信頼依存:裏付けの実株を本当に保有しているか、発行体の健全性に価値が左右されます。
- 規制の不透明さ:国によって扱いが異なり、日本を含め居住地で利用が制限されることがあります。
- スマートコントラクト等の技術リスク:ハッキングや不具合、流動性の薄さで想定どおり売れないことがあります。
日本の個人はどう関われるのか(現状)
結論から言うと、日本の個人が海外のトークン化株式を直接買うのは、現状ハードルが高いのが実情です。国内では株式をトークン化したものは有価証券(セキュリティトークン)として金融商品取引法の対象になり、個別株のトークンはまだ本格的には出回っていません。一方、xStocksなど海外プラットフォームは、日本居住者の利用を制限しているケースが多くあります。VPNなどで制限を回避する行為は規約違反やトラブルの原因になるため、本記事では推奨しません。
関連する動きとして、日本でも大手証券・信託が連携し、上場企業の株式を24時間・1円単位で取引できる仕組みづくりが進んでいます。「株の24時間化」という大きな流れの一部として、オンチェーン株の急増を捉えておくとよいでしょう。トークン化株式の仕組み・買い方の詳細や、Hyperliquidなどオンチェーンで米国株に触れる方法は、以下の記事で解説しています。
ICHIZEN Capitalの視点|本命テーマ、ただし今は「数字の質」を見る段階
株式のトークン化は、24時間取引・小口化・DeFi連携という明確な利便性があり、中長期では本命級のテーマだと考えています。ロンドン証券取引所のような既存の巨大インフラや、日本の金融庁まで動き始めた事実は、この方向性が「来る」ことを裏づけています。流れとしては、加速する側だと見ています。
そのうえで、今回の「保有者254万人・+155%」を冷静に読むと、伸びているのは”保有アドレスの数”であって、”資金”や”実取引”ではありません。オンチェーン価値はほぼ横ばい、アクティブアドレスはむしろ大幅減。1人が複数ウォレットを持つ構造や、少額配布による保有者稼ぎが数字を押し上げている可能性が高いとみています。数字のインパクトに引っ張られて「もう主流になった」と早合点せず、価値・取引量・実需が数と一緒に伸びてくるかを次の確認ポイントにしたいところです。話題としては大きいが、投資判断は「数の急増」ではなく「中身の質」で行うべき局面です。
テーマは追いますが、飛びつきはしません。まずは「株そのものか、値動きだけの商品か」を必ず確認します。ここを外すと、株主のつもりが実は何の権利も無かった、が普通に起こります。
よくある質問
オンチェーン株(トークン化株式)の保有者が急増しているのはなぜですか?
xStocks・Ondo・Dinari・Robinhoodなど提供事業者が一気に増えたことが最大の要因です。24時間取引・少額での購入・DeFiとの連携という利便性に加え、SpaceXなど未上場株への需要も重なりました。ただし保有者(アドレス数)の急増ほどには、オンチェーンの資産価値は増えていない点に注意が必要です。
保有者254万人という数字はどこまで信頼できますか?
RWA.xyzという分析サイトが集計した保有アドレス数で、急増自体は事実です。ただし1人が複数のウォレットを持つことや、少額配布で保有者を増やすキャンペーンも数字に含まれます。同時期にオンチェーン価値はほぼ横ばい、アクティブアドレスは減少しており、「254万人が積極的に売買している」という意味ではありません。数字は人数の目安として捉えるのが安全です。
トークン化株式は本物の株式ですか?株主の権利はありますか?
商品によります。実株を1:1で裏付けにするタイプもありますが、議決権や配当が無く、株価に連動するだけの商品も多くあります。とくに未上場企業のトークンは、発行元企業とは無関係に第三者が作った「値動きを模した商品」であることがあり、株主としての権利は得られません。買う前に、その商品が何を裏付けにしているかを必ず確認してください。
RobinhoodのOpenAI・SpaceXトークンとは何ですか?
Robinhoodが配布した、未上場のOpenAI・SpaceXへの間接的なexposureをブロックチェーン上で価格連動させた商品です。私募のSPV(特別目的会社)が保有する株式に紐づく形で、実際の株式ではありません。OpenAIは2025年7月に「関与しておらず承認もしていない」と公式に否認しました。名前に企業名が付いていても、その会社の株式や公認商品とは限らない点に注意が必要です。
トークン化株式は日本の個人でも買えますか?
現状、合法かつ容易に買える経路はほとんどありません。日本では株式トークンは金融商品取引法上の有価証券扱いで、個別株のST(セキュリティトークン)は本格的にはまだ出回っていません。xStocksなど海外プラットフォームも日本居住者の利用を制限しているケースが多く、VPN等での回避は規約違反やトラブルの原因になるため推奨しません。
xStocksやOndoとは何ですか?
いずれもトークン化株式を提供する代表的な事業者です。xStocksはSolana上で米国株・ETFのトークンを提供し、Solana上のトークン化株取引の大半を占めます。Ondo(Ondo Global Markets)は米国株トークンを拡大している事業者です。ほかに米国で規制準拠を掲げるDinariなどもあり、いずれも取扱状況や対象国は変わるため、利用可否は各社公式で確認してください。
トークン化株式にはどんなリスクがありますか?
主なリスクは4つです。株主の権利が無い商品があること、裏付けの実株を本当に保有しているかという発行元への信頼依存、国ごとに扱いが異なる規制の不透明さ、そしてハッキングや流動性の薄さといった技術・市場リスクです。値動きだけを見て「株を持っている」と考えると、想定と実態が食い違う可能性があります。
オンチェーン株の急増は今後も続きますか?
方向性としては、24時間取引・小口化・DeFi連携という利便性があり、大手の参入も続いているため、中長期では拡大が見込まれるテーマです。ただし現状は保有者の「数」が先行し、資産価値や実取引が伴っていません。今後は、価値・取引量・実需が数と一緒に伸びてくるかが、本格普及を見極めるポイントになります。
まとめ
- トークン化株式の保有者が254万人に急増(30日で+155%)
- ただし価値は横ばい・アクティブは減少=数の急増
- LSEも参入・金融庁も明記=流れは加速へ
- 「株式そのもの」でない商品もある(OpenAIは否認)
- 日本の個人が直接買うのは現状ハードルが高い
トークン化株式(オンチェーン株)の保有者が254万人に急増したことは、株式のトークン化が話題の中心に来たことを示しています。24時間取引・小口化・DeFi連携という利便性は本物で、xStocksやOndo、Robinhoodなど大手の参入も続いています。さらにロンドン証券取引所が上場株のトークン化に乗り出し、日本の金融庁も「オンチェーンの金融手法の利活用」を掲げるなど、取引所・規制の両面で土台が動き始めました。中長期で見れば本命級のテーマであり、流れは加速しやすい局面に入っています。
一方で、今回の数字は「保有アドレスの数」の急増であり、資金や実取引の急増ではありません。オンチェーン価値は横ばい、アクティブアドレスは減少しています。さらに、名前に企業名が付いていても株式そのものではない商品があり、OpenAIのように発行元が否認するケースもあります。日本の個人が直接買うのは、現状まだハードルが高い状況です。話題の大きさに引っ張られず、「数」ではなく「中身の質」で判断したいテーマです。
参考:RWA.xyz(Tokenized Stocks)/CNBC:OpenAI says Robinhood’s tokens aren’t equity/LSEG:London Stock Exchange tokenised equity / Payward partnership/CoinDesk:Dinari brings tokenized U.S. stocks
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