オプション取引のエクセル活用術|ブラックショールズ式・損益計算・グリークスの作り方を初心者向けに解説

ICHIZEN Capitalのイチ押しポイント!
- エクセルでオプション価格を自力計算できる|BS式は5つの関数で組める
- EXP・LN・SQRT・NORM.S.DISTの4関数でブラックショールズ式を再現可能
- JPXの無料計算ツールとの使い分けで、自分だけのシミュレーション環境が作れる
- 損益図・グリークス(デルタ/ガンマ/セータ/ベガ)もエクセルで計算できる
- コール/プットの損益グラフはMAX関数で数行、グリークスはBS式の偏微分で導出
- ポジション管理シートを自作すれば、証券会社ツールに依存しないリスク管理が可能
- 暗号資産オプションにもエクセル管理は有効|税金計算の味方にもなる
- Bitgetなど海外取引所のオプション損益もエクセルで一元管理すると確定申告が楽
- 暗号資産の利益は雑所得(総合課税)、記録を残す仕組みが重要
木田 陽介エクセルでオプション計算を自作すると「なぜこの価格になるのか」が体感で分かります。証券会社のツール頼みだと、ブラックボックスのまま。自分で式を組んだ経験は、相場の急変時にも冷静に判断できる下地になります。


監修 木田 陽介
株式会社ICHIZEN HOLDINGS 代表取締役
2016年から仮想通貨トレードを開始。2017年に株式会社CoinOtakuを共同で創業。同年CoinOtakuの代表に就任。2020年に東証二部上場企業に6億円でM&A。bitgetの月間取引高で世界4位を獲得。2025年にCoinOtaku代表を退任し、同年5月に株式会社ICHIZEN HOLDINGSの代表取締役に就任。
オプション取引でエクセルを使うメリットとは?
オプション取引でエクセル(Excel)を使う最大のメリットは、理論価格・損益・リスク指標を自分の手で計算し、仕組みを根本から理解できることです。証券会社が提供するツールは便利ですが、計算の中身がブラックボックスになりがちで、相場急変時に「なぜこの価格なのか」を即座に判断できません。
エクセルなら、ブラックショールズ式(BS式)を自分で組み、パラメータを自由に変えてシミュレーションできます。入力値を変えた瞬間に結果が変わるため、ボラティリティや残存期間がオプション価格にどう影響するかを体感的に学べます。さらに、ポジション管理や損益計算のシートを自作すれば、証券会社のツールに依存しない独自のリスク管理体制が構築できます。
| 比較項目 | エクセル自作 | 証券会社ツール | JPX計算ツール |
|---|---|---|---|
| 理論価格の計算 | ◎(BS式を自由に組める) | ○(自動表示) | ○(ブラウザで即計算) |
| パラメータの自由度 | ◎(全変数を自由に変更) | △(変更範囲に制限あり) | ○(主要パラメータは変更可) |
| 損益シミュレーション | ◎(複数ポジション対応可) | ○(対応銘柄に限定) | △(単体計算のみ) |
| グリークス計算 | ◎(全指標を自作可能) | ○(自動表示) | ○(デルタ等を表示) |
| コスト | 無料(Excel/Sheets) | 口座開設が必要 | 無料 |
| 学習効果 | ◎(計算の中身を理解) | △(ブラックボックス) | △(結果のみ) |
日本取引所グループ(JPX)は無料の「オプション価格計算ツール」を公開しており、日経225オプションやかぶオプの理論価格をブラウザ上で計算できます(※1)。ただし、複数ポジションの合算損益や、独自のパラメータ調整には対応していません。JPXツールで概算を掴み、エクセルで詳細シミュレーションを行う使い分けが実務的です。
ブラックショールズ式をエクセルで計算する方法
ブラックショールズ式(BS式)は、オプションの理論価格を算出する最も基本的な数理モデルで、エクセルの標準関数だけで計算できます。一見複雑に見えますが、使う関数はEXP・LN・SQRT・NORM.S.DISTの4種類だけです。
BS式に必要な5つの入力パラメータ
BS式でオプションの理論価格を計算するには、以下の5つのパラメータが必要です。
| パラメータ | 記号 | 意味 | 入手先の例 |
|---|---|---|---|
| 原資産価格 | S | 現在の株価・指数の値 | 証券会社・JPXリアルタイム情報 |
| 権利行使価格 | K | オプションの行使価格 | 注文画面・銘柄一覧 |
| 残存期間 | T | 満期までの年数(日数÷365) | 限月から逆算 |
| 無リスク金利 | r | 安全資産の利回り(年率) | 短期国債利回り等 |
| ボラティリティ | σ | 原資産の予想変動率(年率) | IV(インプライドボラティリティ)を使用 |
ボラティリティにはヒストリカルボラティリティ(HV:過去の実績値)とインプライドボラティリティ(IV:市場が織り込んでいる将来の変動率)の2種類があります。BS式で「市場価格に近い理論値」を出したい場合はIVを使います。IVの詳細は「オプション取引のIV(インプライド・ボラティリティ)とは?」を参照してください。
エクセルでの具体的な計算手順(コールオプション)
BS式のコールオプション理論価格は、以下の式で表されます。
C = S × N(d1) − K × e^(−rT) × N(d2)
d1とd2は中間変数で、以下のとおりです。
d1 = [LN(S/K) + (r + σ²/2) × T] ÷ (σ × √T)
d2 = d1 − σ × √T
エクセルのセルにパラメータを入力し、以下のように数式を組みます。S=セルB2、K=B3、T=B4、r=B5、σ=B6と仮定した場合の設定例です。
| セル | 項目 | エクセル数式 |
|---|---|---|
| B8 | d1 | =(LN(B2/B3)+(B5+B6^2/2)*B4)/(B6*SQRT(B4)) |
| B9 | d2 | =B8-B6*SQRT(B4) |
| B10 | N(d1) | =NORM.S.DIST(B8,TRUE) |
| B11 | N(d2) | =NORM.S.DIST(B9,TRUE) |
| B12 | コール理論価格 | =B2*B10-B3*EXP(-B5*B4)*B11 |
NORM.S.DIST関数は標準正規分布の累積分布関数で、第2引数をTRUEにすると累積分布値を返します。古いバージョンのExcelではNORMSDIST関数を使ってください。プットオプションの理論価格は、プット・コール・パリティ(P = C − S + K × e^(−rT))から算出できます。
プットオプションの計算式
プットオプションの理論価格は以下の式で計算します。
P = K × e^(−rT) × N(−d2) − S × N(−d1)
エクセルでは、コール計算で求めたd1・d2をそのまま流用できます。具体的には「=B3*EXP(-B5*B4)*NORM.S.DIST(-B9,TRUE)-B2*NORM.S.DIST(-B8,TRUE)」で算出可能です。コールとプットを並べてシートに組めば、行使価格やボラティリティを変えるだけで両方の理論価格が瞬時に更新されます。
グリークス(デルタ・ガンマ・セータ・ベガ)をエクセルで計算する方法
- グリークス4指標(デルタ・ガンマ・セータ・ベガ)の意味とエクセル計算式
- NORM.S.DIST関数を応用したグリークス計算の実装方法
- リスク管理にグリークスが必要な理由
グリークス(ギリシャ指標)は、オプション価格が各パラメータの変化にどれだけ感応するかを示す指標で、リスク管理の基盤です。BS式を組めるなら、グリークスもエクセルで計算できます。詳しい解説は「オプション取引とは?仕組み・4つの基本形・リスクと始め方を解説」も参考にしてください。
グリークス計算では、NORM.S.DIST関数に加えて、標準正規分布の確率密度関数(PDF)が必要です。エクセルではNORM.S.DIST(x, FALSE)で確率密度を取得できます。以下ではこれをn(d1)と表記します。
| グリークス | 意味 | コールのエクセル計算式 |
|---|---|---|
| デルタ(Δ) | 原資産が1単位動いた時のオプション価格変化 | =NORM.S.DIST(B8,TRUE) |
| ガンマ(Γ) | 原資産が1単位動いた時のデルタ変化 | =NORM.S.DIST(B8,FALSE)/(B2*B6*SQRT(B4)) |
| セータ(Θ) | 1日経過によるオプション価格の減少 | =(-B2*NORM.S.DIST(B8,FALSE)*B6/(2*SQRT(B4))-B5*B3*EXP(-B5*B4)*NORM.S.DIST(B9,TRUE))/365 |
| ベガ(V) | ボラティリティが1%動いた時のオプション価格変化 | =B2*SQRT(B4)*NORM.S.DIST(B8,FALSE)/100 |
デルタはコールで0〜1、プットで−1〜0の範囲をとり、ATM(アットザマネー)付近で約0.5(コール)です。ガンマはATM付近で最大になり、満期が近づくほど急峻に変化します。セータは時間の経過によるプレミアムの減少(タイムディケイ)を表し、オプションの買い手にとってはマイナスに作用します。ベガはボラティリティの変化に対する感応度で、IV(インプライドボラティリティ)が上昇すればオプション価格も上がることを示しています。
プットのデルタは「=NORM.S.DIST(B8,TRUE)-1」、プットのセータはコールのセータ計算式のN(d2)部分を「N(-d2)」に置き換えて算出します。ガンマとベガはコール・プット共通です。
エクセルでオプションの損益計算・損益図を作る方法
オプション取引の損益グラフ(ペイオフ図)は、エクセルのMAX関数とグラフ機能で簡単に作成できます。満期時の損益を視覚化することで、戦略のリスクとリターンを直感的に把握できます。
コール・プットの満期損益計算式
満期時の損益は以下のMAX関数で計算できます。行使価格をK(セルB3)、支払プレミアムをP(セルB13)、原資産価格をA列に連番で入力したと仮定します。
| ポジション | エクセル損益計算式 |
|---|---|
| コール買い | =MAX(A2-$B$3,0)-$B$13 |
| コール売り | =$B$13-MAX(A2-$B$3,0) |
| プット買い | =MAX($B$3-A2,0)-$B$14 |
| プット売り | =$B$14-MAX($B$3-A2,0) |
A列に原資産価格の範囲(例:日経225なら30,000〜45,000を500刻み)を入力し、B列に上記の損益式を入れて折れ線グラフを作成すれば、ペイオフ図が完成します。
複合ポジション(スプレッド)の損益図
ブルコールスプレッドやストラドルなどの複合戦略も、各レグの損益を同じ行に並べて合算するだけで作れます。例えばブルコールスプレッド(低い行使価格のコール買い+高い行使価格のコール売り)なら、2列の損益をSUM関数で合算し、1つのグラフにまとめます。
複数の戦略を1つのシートに並べておけば、原資産価格の変動に対する各戦略の損益を一目で比較できます。これは証券会社ツールでは難しい、エクセルならではの強みです。オプション戦略の基本形は「オプション取引の4つの基本形」で解説しています。
エクセルでオプション取引を行う際の注意点
- BS式は「ヨーロピアン型」前提。アメリカン型オプションには別モデルが必要
- IVは市場で変動するため、エクセルの固定値だけでは実際の価格と乖離する場合がある
- 配当のある原資産ではBS式に配当利回りの修正が必要
- エクセルのリアルタイムデータ連携にはRSS等の外部接続が必要(無料では限界あり)
- 計算式の入力ミスが損益判断の誤りに直結するため、必ず検証する
BS式は「満期時にのみ権利行使できるヨーロピアン型」を前提にしたモデルです。日経225オプションはヨーロピアン型なのでBS式が適合しますが、米国の個別株オプション(アメリカン型)では早期行使の可能性を考慮した二項モデル等が必要になります。
もう1つの落とし穴は、ボラティリティの扱いです。BS式では全行使価格で同じIVを仮定しますが、実際の市場ではOTM(アウトオブザマネー)のIVがATMより高い「ボラティリティスマイル」が発生します。エクセルで精度を上げるなら、行使価格ごとに異なるIVを入力する工夫が必要です。
リアルタイムの価格データをエクセルに取り込むには、楽天証券のマーケットスピードRSSや岡三オンラインのOPTICK関数を利用する方法があります。ただし、いずれも各証券会社の口座開設が前提です。リアルタイム連携が不要であれば、JPXの公開データを手入力またはCSVダウンロードする方法でも十分に活用できます。
ICHIZEN Capitalの視点|暗号資産オプションとエクセル管理
オプション取引のエクセル活用は、日経225や米国株オプションだけの話ではありません。暗号資産(仮想通貨)のオプション取引でも、エクセルによるポジション管理・損益計算は実務的に重要です。
Bitgetなどの海外取引所では暗号資産オプション(ビットコインやイーサリアムのコール/プット)を取引できますが、取引所側の損益レポートだけでは確定申告に必要な情報が揃わないケースがあります。エクセルで取引日時・銘柄・行使価格・プレミアム・決済損益を記録しておけば、年末の確定申告時に慌てずに済みます。
暗号資産のオプション利益は日本では「雑所得」として総合課税の対象です。会社員の場合、年間20万円を超える利益があれば原則として確定申告が必要になります。日経225オプション(申告分離課税・税率一律約20.315%)とは税制が異なるため、エクセルで暗号資産と伝統的オプションの損益を分けて管理することが重要です。税制の詳細は「仮想通貨の税金はいくらから?」を参照してください。



暗号資産オプションは24時間365日動く市場なので、取引回数が増えがちです。後から履歴を追うのは大変なので、取引のたびにエクセルに1行ずつ記録する習慣をつけるのが最善策です。
よくある質問
オプション取引の計算にエクセルは必要ですか?
必須ではありません。JPXの無料計算ツールや証券会社の損益シミュレーターでも基本的な計算は可能です。ただし、パラメータを自由に変えたシミュレーションや複数ポジションの合算損益を計算したい場合は、エクセルが最も柔軟です。
エクセルでブラックショールズ式を計算するのに必要な関数は?
主に4つです。EXP(指数関数)、LN(自然対数)、SQRT(平方根)、NORM.S.DIST(標準正規分布の累積分布)を使います。古いExcelではNORM.S.DISTの代わりにNORMSDISTを使ってください。
エクセルでオプションの損益図(ペイオフ図)を作るにはどうすればいい?
原資産価格の範囲をA列に入力し、MAX関数で各価格での損益を計算、折れ線グラフにすれば完成です。コール買いなら「=MAX(原資産価格-行使価格,0)-プレミアム」で1列分の計算式を組みます。
Googleスプレッドシートでもオプション計算はできますか?
できます。NORM.S.DIST、EXP、LN、SQRT等の関数はGoogleスプレッドシートにも実装されているため、本記事で紹介したBS式やグリークスの計算はそのまま使えます。無料で利用でき、クラウド保存される点もメリットです。
エクセルにリアルタイムのオプション価格を取り込む方法は?
楽天証券のマーケットスピードRSSや岡三オンラインのOPTICK関数を使えば、エクセルにリアルタイムの日経225オプション価格を取り込めます。いずれも各証券会社の口座開設が必要です。リアルタイム不要なら、JPXの公開データをCSVで取得する方法もあります。
グリークス(デルタ・ガンマ・セータ・ベガ)はエクセルで計算できますか?
できます。BS式で使ったd1の値を流用し、NORM.S.DIST関数の第2引数をFALSE(確率密度関数)にすることで各グリークスを算出できます。本記事の計算式テーブルを参照してください。
日経225オプション用のエクセルテンプレートは無料で手に入りますか?
個人ブロガーが公開しているExcelシート(例:TopT_01など)や、証券会社のサンプルシートが存在します。ただし、第三者作成のマクロ付きファイルにはセキュリティリスクがあるため、信頼できるソースから入手し、マクロの内容を確認してから使用することを推奨します。
暗号資産(仮想通貨)のオプション損益もエクセルで管理できますか?
できます。Bitgetなど海外取引所の暗号資産オプション取引も、取引日時・銘柄・行使価格・プレミアム・決済損益をエクセルに記録すれば損益管理が可能です。暗号資産の利益は雑所得(総合課税)で、日経225オプション(申告分離課税)とは税制が異なるため、分けて管理することが重要です。
まとめ
オプション取引にエクセルを活用すれば、ブラックショールズ式による理論価格の計算、グリークスによるリスク管理、損益図の作成まで自力で行えます。使う関数はEXP・LN・SQRT・NORM.S.DISTの4種類が中心で、Googleスプレッドシートでも同様の計算が可能です。
エクセルの最大の価値は、計算の中身を理解しながらシミュレーションできる点です。証券会社ツールやJPXの無料計算ツールと併用しつつ、自分だけの計算シートを育てていくのが実務的なアプローチです。暗号資産オプションを含めた取引記録の管理にも活用でき、確定申告の負担軽減にもつながります。
参考文献
1. 日本取引所グループ「オプション価格計算ツール」https://www.jpx.co.jp/markets/derivatives/options-calculator/index.html
2. 日本取引所グループ「リスクパラメータ入門」https://www.jpx.co.jp/ose-toshijuku/column/option-trading/01.html
3. シグマインベストメントスクール「ブラック・ショールズ・モデル(BS式)」https://www.sigmabase.co.jp/useful/keyword/h/bs_model.html
4. 国税庁「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/virtual_currency_faq_03.pdf
※当サイトの情報は投資判断の参考となる一般的な情報提供を目的としており、特定の暗号資産(仮想通貨)への投資を勧誘するものではありません。暗号資産取引にはリスクが伴います。最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。








