トランプ大統領の発言でHyperliquidはどう変わる?米国で使えるようになる可能性とCME訴訟をわかりやすく解説

2026年8月19日、ホワイトハウスで開かれた会見でトランプ大統領がHyperliquid(ハイパーリキッド)の名前を挙げ、CFTC(米商品先物取引委員会)のマイク・セリグ委員長が「完全に法令を順守した合法的な形で米国に持ってくる」ために動いていると述べました。発言直後にHYPEは1時間で12.91%上昇しています(当社実測)。ただしCFTCが承認したわけではなく、制度面で決まったことは現時点でひとつもありません。それどころか2026年6月には、米最大手のCME(シカゴ・マーカンタイル取引所)がCFTCとセリグ委員長を提訴しています。本記事では、Hyperliquidが米国から締め出されてきた経緯、この1年で何が動いたのか、そして今どこで止まっているのかを、一次データと報道で整理します。
この記事で伝えたいこと
- 発言したのはセリグ委員長本人ではなくトランプ大統領で、CFTCの正式決定ではありません
- Hyperliquidは現在も米国居住者をブロックしており、2026年8月時点で解除されていません
- 2026年5月29日にCFTCがKalshiのビットコイン無期限先物を承認し、米国で初めて規制下のperpが動き出しました
- 2026年6月、CMEがCFTCとセリグ委員長を提訴し、その承認の無効化を求めています
何が起きたか|ホワイトハウスでの発言とHYPEの反応
2026年8月19日、トランプ大統領は暗号資産業界の経営陣を集めたホワイトハウスの会見で、CFTCのマイク・セリグ委員長について「マイクもHyperliquidを完全に法令を順守した合法的な形で米国に持ってくるべく動いていると理解している」と述べました。会見にはコインベース、ジェミニ、クラーケン、ロビンフッドの経営陣に加え、SECとCFTCのトップも同席しています。大統領はこの場で、議会に対して暗号資産の市場構造法案を可決するよう求めました。
ここで正確にしておきたいのは、発言したのはセリグ委員長本人ではなくトランプ大統領であり、しかも「動いていると理解している」という伝聞の形だという点です。CFTCが何かを承認・発表したわけではありません。ただし方向性そのものは以前から示されており、セリグ委員長は2026年6月のBanklessのインタビューで「オンチェーン市場を米国に持ってくる道筋を作り、何らかの規制に準拠させたい」と述べています。
市場の反応は明確でした。当社がHyperliquidの公開APIで1時間足を実測したところ、発言のあった日本時間8月20日4時台の1時間で、HYPEは12.91%上昇しています。特徴的なのは、同じ1時間に他の銘柄がほとんど動いていないことです。
| 銘柄 | 2026年8月20日4時台(日本時間)の騰落率 |
|---|---|
| HYPE | +12.91% |
| LINK | +1.26% |
| DOGE | +0.55% |
| ETH | +0.48% |
| SOL | +0.10% |
| BTC | +0.05% |
| TRX | +0.02% |
| BNB | -0.08% |
| XRP | -0.14% |
BTCは+0.05%、XRPにいたってはマイナスです。つまりこの1時間の上昇は暗号資産市場全体の動きではなく、Hyperliquidに固有の材料によるものでした。HYPEの出来高はこの1時間で直前の3.7倍に膨らんでいます。

15分足で見ると、この上昇の性格がよく分かります。発言前のHYPEは58ドル台で30時間近く横ばいが続いていました。それが4時台の1本で62.23ドルから67.78ドルまで一気に上昇し、その足だけで出来高が直近30時間の中央値の約37倍まで膨らんでいます。じりじりと買われたのではなく、特定の情報に反応して短時間に注文が集中した形です。
木田 陽介相場が全体で上げた日は「何でも上がった」ように見えますが、時間足まで下ろすと材料の効き先が分かれていることは珍しくありません。今回はBTCが動かない1時間にHYPEだけが13%動いた、かなり分かりやすい例です。
前提|Hyperliquidはなぜ米国から使えないのか
- 商品:中核は無期限先物(perp)。デリバティブなので米国ではCFTCの管轄に入る
- 制度:商品取引所法に、期限のない先物を米国の利用者へ提供する明確な道筋がなかった
- 対応:米国居住者を制限対象者として扱い、IPアドレスによるジオフェンスで遮断(VPN等の回避も規約で禁止)
- 本質:遮断はHyperliquid側の方針ではなく、米国の制度側に受け皿がなかったことが理由
- 影響:年金基金・ヘッジファンド・登録ブローカーは規制外の場所に資金を置けない=合法な受け皿ができれば流入の余地が生まれる
今回のニュースを理解するには、Hyperliquidが置かれてきた立場を押さえる必要があります。Hyperliquidは現在も米国居住者を制限対象者(Restricted Persons)として扱い、IPアドレスによるジオフェンスでアクセスを遮断しています。利用規約はVPNなどによる回避も禁じています。2026年8月時点でこの制限は解除されていません。
理由は制度側にあります。Hyperliquidの中核商品である無期限先物(パーペチュアル)はデリバティブであり、米国ではCFTCの管轄に入ります。ところが商品取引所法の枠組みでは、期限のない先物契約を米国の利用者に提供する明確な道筋がありませんでした。海外の取引所が米国を一律で遮断してきたのはこのためです。Hyperliquid自体は海外で運営されており、技術的にはCFTCの管轄外に位置しています。
この構造が意味するのは、米国の大きな資金は規制の外にある場所には入れられないということです。年金基金やヘッジファンド、登録を受けたブローカーは、規制されていない海外プラットフォームを使えません。合法な受け皿ができれば、これまで物理的に入れなかった資金が入ってくる。市場が反応したのはこの一点です。
重要なのは、この遮断が「Hyperliquid側の方針」ではなく「米国の法制度に受け皿がなかったこと」に起因しているという点です。つまり制度側に合法な受け皿ができれば、遮断を続ける理由はなくなります。2026年8月時点で米国から利用できない状況は変わっていませんが、今回のトランプ大統領の発言は、米国の法律に準拠した形でHyperliquidを利用できるようになる可能性が示唆されたという点で、これまでとは性質が異なります。排除する方向ではなく、合法化して取り込む方向の話が公の場で出たのは今回が初めてです。
Hyperliquidの無期限先物そのものの仕組みについてはHyperliquidのperpとは?無期限先物の仕組み・レバレッジ・資金調達率で、資金調達率の考え方については資金調達率(Funding Rate)とは?で解説しています。
この1年で何が動いたか|規制対応の時系列
米国側の姿勢は、2025年末から段階的に変わってきました。ここが今回のニュースの本体で、トランプ大統領の発言はその延長線上に出てきたものです。時系列で整理します。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2025年7月 | 米下院が暗号資産の市場構造法案を可決 |
| 2025年12月 | マイク・セリグがCFTC委員長に就任。最初の公式発言で、暗号資産の無期限先物を米国内に取り込む方針を明言 |
| 2026年2月 | Hyperliquid Policy Centerがワシントンに設立。暗号資産法務に詳しいJake Chervinsky氏が率いる |
| 2026年4月 | セリグ委員長が下院農業委員会で、分散型の無期限先物市場を規制下に置く計画を説明 |
| 2026年5月29日 | CFTCがKalshiのビットコイン無期限先物を承認。米国の規制下で初のperp。同時にCoinbase Financial Marketsへノーアクションレターを発出 |
| 2026年5月〜6月 | 上院銀行委員会が市場構造法案を可決し、本会議の日程へ |
| 2026年6月 | CMEがCFTCとセリグ委員長をワシントンD.C.連邦地裁に提訴 |
| 2026年8月19日 | トランプ大統領がホワイトハウスでHyperliquidに言及 |
この中で決定的だったのは2026年5月29日です。CFTCはKalshiに対し、規制を受けた米国の取引所として初めてビットコインの無期限先物を上場する承認を出しました。これはCFTC規則40.3の自主的な手続きに基づく初の承認で、今後同種の申請を審査する際の分析枠組みを作ったことになります。同じ日、CoinbaseにはバミューダのグループT会社を経由して米国の顧客を海外の無期限先物・オプション市場につなぐことを認めるノーアクションレターも出されました。
言い換えると、「米国では無期限先物を提供できない」という前提そのものが、2026年5月末に崩れたということです。トランプ大統領の8月の発言は、この流れの中でHyperliquidの名前が初めて公の場で出たという位置づけになります。
最大の障害は規制当局ではなく既存の取引所
ここが今回のニュースで最も見落とされている部分です。2026年6月、CMEグループがCFTCとセリグ委員長をワシントンD.C.の連邦地裁に提訴しました。米国最大のデリバティブ取引所が自らの規制当局を訴えるという、極めて異例の事態です。
- 無期限先物は2010年のドッド・フランク法における「スワップ」に当たり、CFTC自身も以前はその見解を受け入れていた
- それを「先物」として承認したのは恣意的かつ専断的である
- 2026年5月29日のKalshi承認と、同時に出された政策声明を無効にすべきである
- Kalshiやコインベースが個人顧客を奪う形になり、教科書的な競争上の損害を受けている
この訴訟が通れば、5月29日の承認と政策声明そのものが巻き戻る可能性があります。Hyperliquidの米国上陸は、CFTCが敷こうとしている枠組みの上に成り立つ話なので、土台が揺らげば当然その先も止まります。つまり現在の構図は、規制当局が前に進めようとし、既存の取引所が訴訟で止めにいっているという形です。
議会側も一枚岩ではありません。共和党のオースティン・スコット下院議員(ジョージア州)は、Hyperliquidのような規制外のプラットフォームが米国経済に悪影響を与えうると警告しています。民主党側からも、予測市場のあり方をめぐって複数の議員がセリグ委員長を追及しました。加えて、セリグ委員長自身が今回の政策はまだ恒久的なものではないと認めています。



「規制が緩む=好材料」で終わらせると危ないところです。既存の取引所にとっては自分の市場を削られる話なので、抵抗は当然出てきます。
実現した場合に何が変わるか
仮に合法的な米国展開が実現した場合、何が変わるのかを整理します。前提として、現在のHyperliquidの規模を当社の実測値で示します。
| 項目 | 実測値 |
|---|---|
| 無期限先物の未決済建玉(名目) | 約79.4億ドル |
| 24時間の取引高 | 約125.9億ドル |
| 上場銘柄数(メイン市場) | 232銘柄 |
| HYPEの未決済建玉(名目) | 約16.6億ドル |
この規模に対して、米国の個人投資家・暗号資産ファンド・マーケットメイカー・ヘッジファンド・伝統的金融機関が合法的に参加できるようになります。取引所のビジネスは参加者が増えるほど板が厚くなり、板が厚くなるほど大口が入りやすくなるという循環で成り立っているため、規制上の参加制限が外れること自体が構造的な変化になります。
もうひとつの論点がHIP-3です。Hyperliquidは暗号資産だけでなく、米国株・日本株・株価指数・金・原油・為替まで扱う市場を外部のビルダーが立ち上げられる仕組みを持っています。米国側で無期限先物の制度整備が進めば、ビットコインだけでなく株価指数やコモディティの無期限先物も議論の対象になります。この領域まで合法的に展開できるかどうかで、Hyperliquidの位置づけは「暗号資産のDEX」から大きく変わることになります。
HIP-3で実際に何が取引されているかはHyperliquidのtrade.xyzとは?HIP-3で株が取引できる仕組み、日本株の扱いについては日本株はHyperliquidで取引できる?で解説しています。
日本の利用者にとって今回の話は何を意味するか
まず押さえておきたいのは、今回の動きは米国内の制度に関する話であり、日本の規制が変わるわけではないということです。日本の居住者がHyperliquidをどう扱うかという論点は、今回の発言によって何も変わっていません。日本では暗号資産デリバティブの個人向けレバレッジ上限などの規制があり、海外の無登録業者の利用は自己責任の範囲となります。
そのうえで、間接的な影響は考えられます。米国の資金が合法的に入れば板の厚みとスプレッドは改善する方向に働きますし、規制下で運営される部分が生まれれば、プラットフォーム全体の透明性や情報開示の水準にも影響します。一方で、米国版が完全に別の市場として切り出され、板も流動性も分かれる形になれば、日本から使っている既存の市場への波及は限定的になります。どちらになるかは現時点で決まっていません。
Hyperliquidを実際に使う手順についてはHyperliquid(ハイパーリキッド)の入金方法を参照してください。
\板の厚みと取扱銘柄を自分で確かめる/
よくある質問
今回のニュースについて、検索されやすい疑問をまとめました。いずれも2026年8月20日時点の情報です。
Hyperliquidの米国上陸は決まったのですか?
決まっていません。トランプ大統領がCFTCのセリグ委員長について「動いていると理解している」と述べたもので、CFTCの承認や正式発表ではありません。2026年8月20日時点で、時期も具体的な形も公表されていません。
今、米国からHyperliquidは使えますか?
使えません。米国居住者は制限対象者として扱われ、IPアドレスによるジオフェンスで遮断されています。利用規約はVPN等による回避も禁じています。2026年8月時点でこの制限は解除されていません。
Hyperliquidは日本人でも使えますか?
技術的には利用できます。米国居住者のようにジオフェンスで遮断されてはいません。ただしHyperliquidは日本の金融庁の登録を受けた事業者ではないため、日本の法律による利用者保護は期待できません。日本円での入出金もできず、国内取引所を経由して暗号資産を送る必要があります。税務上の扱いも国内取引所とは異なります。今回の米国をめぐる動きによって、日本の規制や利用条件が変わったわけではありません。
日本から使う場合、今回の話で何か変わりますか?
直接的には変わりません。今回の動きは米国内の制度に関するものです。ただし米国の資金が合法的に入るようになれば、板の厚みやスプレッドは改善する方向に働きます。一方で米国版が完全に別の市場として切り出され、板も流動性も分かれる形になれば、日本から使っている既存の市場への波及は限定的になります。どちらになるかは決まっていません。
発言したのはCFTCのセリグ委員長ですか?
いいえ、発言者はトランプ大統領です。大統領が会見の場で、セリグ委員長がそのように動いていると理解している、という伝聞の形で述べました。セリグ委員長自身は2026年6月のインタビューで、オンチェーン市場を米国に持ってくる道筋を作りたいと述べています。
なぜCMEはCFTCを訴えたのですか?
CMEは、無期限先物はドッド・フランク法上の「スワップ」に当たるにもかかわらず「先物」として承認したのは恣意的かつ専断的だとして、2026年6月にワシントンD.C.連邦地裁へ提訴しました。2026年5月29日のKalshi承認と政策声明の無効化を求めています。訴状では、個人顧客を奪われる競争上の損害も主張しています。
米国で無期限先物はもう取引できるのですか?
一部は可能になっています。2026年5月29日にCFTCがKalshiのビットコイン無期限先物を承認し、規制を受けた米国の取引所として初めて上場されました。同日、CoinbaseにもバミューダのグループT会社経由で海外市場につなぐことを認めるノーアクションレターが出されています。ただしCME訴訟の結果によっては、この承認自体が争われる可能性があります。
日本の規制は変わるのですか?
変わりません。今回の動きは米国内の制度に関するものです。日本の暗号資産デリバティブに関する規制や、海外の無登録業者の扱いについて、今回の発言によって変更されたものはありません。
HYPEはどのくらい上がったのですか?
当社がHyperliquidの公開APIで実測したところ、発言のあった日本時間8月20日4時台の1時間で12.91%上昇しました。同じ1時間のBTCは+0.05%、XRPは-0.14%で、市場全体の動きではなくHyperliquid固有の反応でした。24時間では約19%の上昇です(いずれも2026年8月20日時点)。
今後は何を見ておけばよいですか?
最初の分岐点はCME訴訟の行方です。加えて、CFTCの規則案が正式に出るか、上院の市場構造法案が可決されるか、そしてHyperliquidの米国版が既存の板や流動性とつながる形になるかどうかが論点になります。規制の枠組みが固まるまで12〜18か月かかるという見方も出ています。
まとめ
- 2026年8月19日、トランプ大統領がホワイトハウスでHyperliquidに言及。CFTCの承認や正式決定ではない
- Hyperliquidは現在も米国居住者をジオフェンスで遮断しており、制限は解除されていない
- 2026年5月29日のKalshi承認で「米国では無期限先物を出せない」という前提は崩れた
- ただし2026年6月にCMEがCFTCとセリグ委員長を提訴しており、その承認自体が争われている
- 議会にも超党派の慎重論があり、セリグ委員長自身も政策は恒久的でないと認めている
- 今回の動きは米国内の制度の話であり、日本の規制が変わるわけではない
Hyperliquidをめぐる今回の報道は、見出しだけを読むと「米国上陸が決まった」ように受け取れます。ただ実際に動いているのは制度整備の途中経過であり、しかもその土台に対して米国最大のデリバティブ取引所が訴訟を起こしている段階です。決まっているのは方向だけで、時期も形も確定していません。材料の大きさと、確定していないという事実は分けて見ておくのが安全です。
参考・一次ソース
- Hyperliquid 公開API(価格・出来高・未決済建玉・資金調達率/当社取得)
- The Block「HYPE token surges after Trump says CFTC is working to bring Hyperliquid to US in ‘fully compliant fashion’」(2026年8月19日)
- CoinDesk「Inside the CME and CFTC’s battle over onchain perpetual futures」(2026年7月28日)
- Reuters「CME sues US CFTC over letting Kalshi, Coinbase offer perpetual futures」
- CoinDesk「U.S. CFTC opens crypto ‘perp’ door with first approval at regulated firm」(2026年5月28日)
- Decrypt「CFTC Chair Mike Selig Faces Bipartisan Pushback on Prediction Markets, Hyperliquid Perps」
- CFTC 公式サイト Chairman Michael S. Selig ページ
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監修 木田 陽介
株式会社ICHIZEN HOLDINGS 代表取締役
2016年から仮想通貨トレードを開始。2017年に株式会社CoinOtakuを共同で創業。同年CoinOtakuの代表に就任。2020年に東証二部上場企業に6億円でM&A。bitgetの月間取引高で世界4位を獲得。2025年にCoinOtaku代表を退任し、同年5月に株式会社ICHIZEN HOLDINGSの代表取締役に就任。









