オプション取引の損益計算|4パターンの公式・損益分岐点の求め方を具体例で忖度なく解説

ICHIZEN Capitalのイチ押しポイント!
- オプションの損益は「満期の本質的価値 − 支払/受取プレミアム」で計算できる
- 買い手はプレミアムを引く、売り手はプレミアムに足す発想
- コール・プット×買い・売りの4パターンで公式を押さえる
- 損益分岐点(BEP)=権利行使価格 ± プレミアムで求まる
- コール買いは「行使価格+プレミアム」を超えて初めて利益
- 買いは損失限定・利益は伸びる/売りは利益限定・損失が大きくなり得る
- 実際は手数料や取引単位(倍率)も損益に反映される
- 税金|暗号資産=総合課税最大約55%/国内上場=分離課税20.315%
- 計算上の損益と、課税対象の確定損益は分けて考える
木田 陽介オプションの損益計算は、公式さえ押さえれば決して難しくありません。忖度なく言うと、ここを感覚だけで済ませると「いくらで勝ち・いくらで負けるか」が見えないまま取引することになる。4パターンの公式、損益分岐点、具体例、注意点を整理します。


監修 木田 陽介
株式会社ICHIZEN HOLDINGS 代表取締役
2016年から仮想通貨トレードを開始。2017年に株式会社CoinOtakuを共同で創業。同年CoinOtakuの代表に就任。2020年に東証二部上場企業に6億円でM&A。bitgetの月間取引高で世界4位を獲得。2025年にCoinOtaku代表を退任し、同年5月に株式会社ICHIZEN HOLDINGSの代表取締役に就任。
オプションの損益計算の基本|3つの要素
オプションの損益は、突き詰めると①満期時の本質的価値、②支払った(受け取った)プレミアム、③取引数量・倍率の3つで決まります。まずは1単位あたりで考え、最後に数量・倍率をかける、という順序が基本です。
本質的価値とは「満期時点で権利行使したらいくら得するか」です。コールなら原資産価格 − 権利行使価格(マイナスならゼロ)、プットなら権利行使価格 − 原資産価格(マイナスならゼロ)で求めます。この本質的価値から、最初に支払った(または受け取った)プレミアムを差し引き・足し引きすれば、1単位あたりの損益が出ます。本質的価値やプレミアムの構造はオプションのプレミアムの記事で解説しています。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 本質的価値(コール) | 原資産価格 − 権利行使価格(マイナスは0) |
| 本質的価値(プット) | 権利行使価格 − 原資産価格(マイナスは0) |
| プレミアム | 買い手は支払い(マイナス)、売り手は受取り(プラス) |
| 数量・倍率 | 取引枚数と、1枚あたりの取引単位(例:日経225は1,000倍) |
4パターンの損益計算の公式
コール・プット×買い・売りの4パターンについて、満期時点の1単位あたりの損益は次の公式で計算できます(Sは満期の原資産価格、Kは権利行使価格、Pはプレミアム)。
| ポジション | 満期損益(1単位) | 特徴 |
|---|---|---|
| コール買い | max(S − K, 0) − P | 損失は支払プレミアムP限定、利益は上に伸びる |
| コール売り | P − max(S − K, 0) | 利益は受取Pが上限、損失は上に膨らむ |
| プット買い | max(K − S, 0) − P | 損失は支払プレミアムP限定、下落で利益 |
| プット売り | P − max(K − S, 0) | 利益は受取Pが上限、下落で損失が膨らむ |
ポイントは、買い手はプレミアムを「引く」、売り手はプレミアムを「足す(受け取る)」という点です。買いは最初にコストを払うので損失がプレミアムに限定され、売りは最初に受け取るのでそれが利益の上限になります。損益を図で捉えたい場合は損益図(ペイオフ)の記事もあわせてご覧ください。
損益分岐点(BEP)の計算
損益がちょうどゼロになる原資産価格を損益分岐点(BEP:ブレークイーブンポイント)と呼びます。これは「どこまで動けば元が取れるか」の目安で、次のように求めます。
| ポジション | 損益分岐点(BEP) |
|---|---|
| コール買い/コール売り | 権利行使価格 + プレミアム |
| プット買い/プット売り | 権利行使価格 − プレミアム |
たとえば権利行使価格1,000円のコールをプレミアム50円で買った場合、BEPは1,050円です。満期に原資産が1,050円を超えて初めて利益になり、1,050円以下ならプレミアム分の損失(最大50円)で終わります。「行使価格を超えれば利益」ではなく「行使価格+プレミアムを超えて初めて利益」という点が、初心者が間違えやすいポイントです。
具体例で計算してみる
権利行使価格1,000円のコールオプションを、プレミアム50円で1単位買ったケースで、満期の原資産価格ごとの損益を計算してみましょう(手数料・倍率は考慮しない1単位ベース)。
| 満期の原資産価格 | 本質的価値 | 損益(−プレミアム50) |
|---|---|---|
| 900円 | 0円 | −50円(プレミアム分の損失) |
| 1,000円 | 0円 | −50円 |
| 1,050円(BEP) | 50円 | 0円(損益ゼロ) |
| 1,100円 | 100円 | +50円 |
| 1,200円 | 200円 | +150円 |
このように、下落しても損失はプレミアムの50円で頭打ち、上昇すれば利益は青天井に伸びる——というコール買いの性質が、数字で確認できます。実際の取引では、これに取引単位(倍率)と手数料をかけ合わせて最終的な損益を出します。日経225オプションなら1ポイント=1,000円換算など、商品ごとの倍率に注意が必要です。
損益計算で見落としやすいポイント(忖度なし)
- まず1単位で計算し、最後に数量と倍率をかける
- 買いはプレミアムを引く、売りは足す、を徹底する
- 「利益が出る価格」ではなく損益分岐点(BEP)で判断する
- 手数料・スプレッドも実際の損益に含めて考える
- 権利行使価格を超えれば利益、と勘違いする(実際はBEPが基準)
- 倍率を忘れ、損益を実際の数分の一に見誤る
- 売りの損失が「限定」だと誤解する(コール売りは損失が大きくなり得る)
- 満期前の途中決済では時間的価値が残るため、上の公式と結果がずれる
ICHIZEN Capitalの視点|損益計算は「戦略の設計図」
自社で日々オプション市場を観測しているレポートでも、戦略を組む前段として損益計算——とくに損益分岐点(ブレークイーブン)の把握を重視しています。
たとえば自社レポートでは、あるショートプット戦略について「この水準が大口にとっての利益のブレークイーブンポイントとして機能してきた」という形で、特定の価格が損益分岐点として相場の節目になり得ることを分析しています。損益分岐点は、単に自分の勝ち負けの境目であるだけでなく、多くの参加者が意識する価格帯=相場が反応しやすい節目にもなり得るわけです。損益計算を「自分の勝敗の線引き」で終わらせず、戦略の設計図として使う——これが実務的な向き合い方です。
損益計算は地味ですが、忖度なく言うと、ここを飛ばす人ほど「なんとなく」でエントリーして負けます。買う前に「どこで損益ゼロ・最大いくら損・いくら得か」を数字で出す。それだけで無謀なトレードはかなり減ります。特に売りは損失が限定されない点を絶対に忘れないこと。なお相場全体のヘッジフローは価格を増幅・抑制し得ますが、「誰かが支配している」といった断定は禁物です。
損益計算と税金
ここで計算した損益は、あくまで取引の勝ち負けを測るための計算上の損益です。税金の対象になるのは、実際に決済して確定した損益で、扱いは商品で分かれます。
暗号資産(ビットコイン等)のオプション・デリバティブの利益は、原則として雑所得の総合課税(他の所得と合算、住民税込みで最大約55%)、日経225オプションなど国内の上場オプションは申告分離課税(税率20.315%)です。同じ利益額でも、税引後の手取りは商品によって大きく変わります。暗号資産の分離課税化は議論されていますが本記事作成時点では予定・未施行であり、適用時期・対象は要確認です。
計算上の損益と、税引後の手取りは別物です。国内上場(分離20.315%)と暗号資産(総合最大約55%)では手残りが大きく違うので、勝敗だけでなく税引後で考える癖を。取引履歴はこまめに残し、判断に迷えば税理士へ相談してください。
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よくある質問
- オプションの損益はどう計算しますか?
-
基本は「満期の本質的価値 −(または+)プレミアム」です。コール買いなら max(原資産価格−行使価格, 0) − 支払プレミアム、で1単位あたりの損益が出ます。最後に取引数量と倍率をかけて実際の損益を求めます。
- 損益分岐点(BEP)はどう求めますか?
-
コールは「権利行使価格+プレミアム」、プットは「権利行使価格−プレミアム」です。たとえば行使価格1,000円のコールをプレミアム50円で買えばBEPは1,050円で、満期にこれを超えて初めて利益になります。
- コール買いの最大損失はいくらですか?
-
支払ったプレミアムに限定されます。原資産がどれだけ下がっても、権利を行使しなければよいだけなので、損失は最初に払ったプレミアム分で頭打ちです。一方、利益は原資産の上昇に応じて理論上は青天井に伸びます。
- オプション売りの損益計算はどうなりますか?
-
売りは「受取プレミアム − 満期の本質的価値」です。利益は受け取ったプレミアムが上限ですが、コール売りは原資産が上がるほど損失が膨らみ、限定されません。売りは利益限定・損失拡大になり得る点に十分注意してください。
- 損益計算で倍率(取引単位)はなぜ重要ですか?
-
1単位あたりの損益に取引単位(倍率)をかけて初めて実際の金額になるためです。たとえば日経225オプションは1ポイント=1,000円換算のように倍率が設定されており、これを忘れると損益を実際の数分の一に見誤ります。
- 満期前に決済する場合も同じ計算ですか?
-
いいえ。ここで示した公式は満期時点の損益です。満期前に反対売買で決済する場合は、まだ時間的価値が残っているため、本質的価値だけの計算とは結果がずれます。途中決済ではそのときの市場価格(プレミアム)で損益が決まります。
- 損益計算にツールは使えますか?
-
使えます。取引所のシミュレーション機能や表計算ソフトで、公式を組めば自動計算できます。複数ポジションの合成損益も、各ポジションの損益を足し合わせれば求められます。まずは手計算で公式を理解してからツールを使うのがおすすめです。
- 計算上の利益に税金はどうかかりますか?
-
課税されるのは計算上の含み益ではなく、決済して確定した損益です。暗号資産のオプションは総合課税(最大約55%)、国内上場オプションは分離課税(20.315%)で、税引後の手取りは商品で大きく変わります。詳細は税理士に確認してください。
まとめ|損益計算は「4パターンの公式」で攻略できる
オプションの損益計算は、「満期の本質的価値 −(または+)プレミアム」という基本式と、コール・プット×買い・売りの4パターンの公式を押さえれば攻略できます。損益分岐点は「権利行使価格 ± プレミアム」で求まり、行使価格そのものではなくBEPが利益の基準です。実際には取引単位(倍率)と手数料をかけ合わせ、途中決済では時間的価値も加味します。計算上の損益と税引後の手取り(暗号資産は総合課税、国内上場は分離課税)は別物である点にも注意して、エントリー前に必ず「最大損失・最大利益・損益分岐点」を数字で確認する習慣をつけましょう。
最後にもう一度。損益計算は勝つための技術ではなく、負けを管理するための技術です。買う前に最大損失・最大利益・損益分岐点を数字で出すこと。売りは損失が限定されないこと。そして倍率と税引後を忘れないこと。この基本を守るだけで、無謀なトレードは確実に減ります。
参考文献
1. 日本取引所グループ(JPX)「日経225オプションの取引ルール」https://www.jpx.co.jp/derivatives/products/domestic/225options/
2. 楽天証券「オプション取引の損益」https://www.rakuten-sec.co.jp/web/fop/special/option_guide/
3. 国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて」令和7年12月https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shotoku/kakuteishinkokukankei/kasoutuka/
4. 国税庁 タックスアンサー No.1522(先物取引に係る雑所得等の課税の特例)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1522.htm
※本記事は2026年7月時点の情報に基づく一般的な情報提供を目的としており、特定の取引・銘柄への投資を勧誘するものではありません。数値例は説明のための例示で、手数料・取引単位(倍率)は考慮していません。実際の損益は倍率・手数料・決済タイミング・時間的価値により異なります。税制(暗号資産の分離課税化の適用時期・対象)は変更される場合があり、記載には要確認の事項を含みます。最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。








