オプション取引の損失が無限大になる理由|売りのリスク・仕組み・回避策を忖度なく解説

ICHIZEN Capitalのイチ押しポイント!


  • オプション取引の「損失無限大」は売り手だけに発生するリスク
    • コール売りは原資産の上昇に伴い損失が理論上無限大、プット売りは原資産がゼロになるまで損失が拡大する
    • 一方、買い手の最大損失は支払ったプレミアム(オプション料)のみに限定される
  • なぜ売りだけ損失無限大なのか?「権利」と「義務」の非対称性
    • 買い手は不利なら権利を放棄できるが、売り手は買い手の権利行使に必ず応じる義務がある
    • 相場急変時には証拠金を大幅に超える損失が発生し、追証や強制決済のリスクもある
  • 損失無限大を回避する方法は確立されている
    • スプレッド戦略(クレジットスプレッド等)を使えば最大損失を事前に確定できる
    • 逆指値注文・ポジションサイズ管理・証拠金の余裕確保が基本のリスク管理手法
  • 暗号資産オプションにも同じリスク構造が存在する
    • BitgetやDeribitなど海外取引所で暗号資産オプションの売り取引が可能だが、ボラティリティが伝統金融より高い分リスクも大きい
    • 初心者は損失限定の「買い」から始めるのが鉄則
木田 陽介

「オプションの売りは損失無限大」と聞くと怖く感じますが、正確に言えば”裸売り”のリスクです。スプレッド戦略を組めば最大損失は確定できますし、暗号資産オプションでも同じ考え方が使えます。仕組みを理解すれば、オプションは強力なリスク管理ツールになります。

木田 陽介
(株)ICHIZEN HOLDINGS

代表取締役

この記事の執筆者/監修者

2016年から仮想通貨トレードを開始。2017年に株式会社CoinOtakuを共同で創業。同年CoinOtakuの代表に就任。2020年に東証二部上場企業に6億円でM&A。bitgetの月間取引高で世界4位を獲得。2025年にCoinOtaku代表を退任し、同年5月に株式会社ICHIZEN HOLDINGSの代表取締役に就任。

監修 木田 陽介
株式会社ICHIZEN HOLDINGS 代表取締役

2016年から仮想通貨トレードを開始。2017年に株式会社CoinOtakuを共同で創業。同年CoinOtakuの代表に就任。2020年に東証二部上場企業に6億円でM&A。bitgetの月間取引高で世界4位を獲得。2025年にCoinOtaku代表を退任し、同年5月に株式会社ICHIZEN HOLDINGSの代表取締役に就任。

目次

オプション取引の「損失無限大」とは?基本をおさらい

オプション取引の「損失無限大」とは、オプションの売り手(ライター)が負う損失に理論上の上限がないことを指します。オプション取引そのものが危険なのではなく、4つの基本形のうち「売り」のポジションだけに生じるリスクです。

オプション取引には、コール(買う権利)とプット(売る権利)の2種類があり、それぞれに「買い」と「売り」の2つのポジションがあります。つまり合計4つの基本形が存在します(※1)。

スクロールできます
ポジション利益最大損失証拠金
コールの買い理論上無限大支払ったプレミアムのみ不要
コールの売り受け取ったプレミアムのみ理論上無限大必要
プットの買い原資産がゼロになるまで支払ったプレミアムのみ不要
プットの売り受け取ったプレミアムのみ原資産がゼロになるまで必要

この表のとおり、買い手の最大損失はプレミアム(オプション料)に限定されるのに対し、売り手の損失には上限がありません。これが「損失無限大」と呼ばれる理由です。オプション取引の基本から知りたい方は「オプション取引とは?」の記事も併せてご覧ください。

なぜオプションの売りは損失が無限大になるのか?仕組みを図解

オプションの売り手の損失が無限大になる根本原因は、「権利」と「義務」の非対称性にあります。買い手は権利を持つ立場であり、不利な状況では権利を放棄できます。一方、売り手は義務を負う立場であり、買い手が権利行使をした場合には必ず応じなければなりません(※2)。

コールオプションの売り:上昇が止まらなければ損失も止まらない

コールオプション(買う権利)の売り手は、買い手に「決められた価格(権利行使価格)で原資産を買う権利」を付与しています。原資産の価格が権利行使価格を超えて上昇すると、売り手はその差額を負担する義務があります。

たとえば、権利行使価格40,000円の日経225コールオプションを1枚(取引単位1,000倍)売ったとします。プレミアム500円を受け取った場合、SQ(特別清算値)が41,000円なら損益は(500円 − 1,000円)× 1,000 = −50万円。SQが45,000円なら(500円 − 5,000円)× 1,000 = −450万円です。原資産に上限がない以上、理論上の損失額にも上限がありません(※3)。

プットオプションの売り:暴落で損失が急拡大する

プットオプション(売る権利)の売り手は、買い手に「決められた価格で原資産を売る権利」を付与しています。原資産の価格が権利行使価格を下回って急落すると、売り手は高い権利行使価格で買い取る義務が生じます。

プット売りの最大損失は「権利行使価格 − プレミアム − 0」× 取引単位です。原資産価格がゼロになるまで損失が拡大しうるため、厳密には「無限大」ではなく「原資産がゼロになるまでの莫大な金額」です。しかし、実際の相場ではコロナショック(2020年3月)や東日本大震災(2011年3月)のような暴落が一夜にして発生するため、プット売りの損失も事実上「無限大に近い」と認識されています(※4)。

木田 陽介

コール売りの損失が理論上「無限大」なのは原資産に上限がないから。プット売りは原資産がゼロ以下にならないので厳密には有限ですが、暴落の速度と規模を考えれば実質的にはどちらも同じ危険度です。「コール売りだけが危ない」という誤解には注意してください。

損失無限大が現実になった事例・大損パターン

オプションの売りで証拠金を大幅に超える損失が発生した事例は、日本市場でも実際に起きています。「理論上の話」で終わらせず、過去の実例からリスクの実態を把握することが重要です。

東日本大震災(2011年3月)のオプション市場

2011年3月11日の震災後、日経平均は3月15日にかけて約2,000円超の暴落を記録しました。プットオプションの売り手はSQ前に巨額の損失を被り、証拠金が一気に不足する事態が多発しました。当時、ファー・アウト・オブ・ザ・マネー(大きく離れた権利行使価格)のプットを売っていた投資家が、想定外の暴落で数百万円〜数千万円規模の損失を出したケースが報告されています(※5)。

証拠金を超える損失の具体例

松井証券の解説によると、権利行使価格15,000円のコールオプション1枚を売り建て、証拠金50万円を預けていたケースで、満期日のSQが16,000円になると損失は約91万円に達します。預けている証拠金50万円を大幅に超え、差額は追証として翌日正午までに追加入金が求められます(※3)。

追証を期限内に入金できなければ強制決済され、なおも不足があれば証券会社への借金(不足金)が発生します。これがオプション売りで「借金を背負う」パターンです。

よくある大損パターン3選

  1. 裸売り(ネイキッド売り)のまま放置:相場急変に対するヘッジがなく、損失がそのまま拡大する最も危険なパターン
  2. 逆指値を入れていない:「ファー・アウトだからまず行使されない」と油断し、損切りラインを設定しないまま暴落・急騰に巻き込まれる
  3. 過大なポジションサイズ:1取引あたりの証拠金を口座資金の大部分に割いており、追証に対応できず強制決済→不足金発生

オプション売りの証拠金制度と追証の仕組み

オプションの売り手は、損失が無限大に膨らむリスクがあるため、証券会社に「証拠金」を差し入れる必要があります。証拠金制度はリスクを完全に防ぐものではなく、あくまで損失の一部を担保する仕組みです。

日本の先物・オプション取引では、日本証券クリアリング機構(JSCC)が定めるVaR方式(ヒストリカルデータから99%カバー水準を算出)で証拠金所要額が計算されます(※6)。つまり、過去の値動きの99%はカバーできる水準ですが、残り1%の極端な相場変動(テールリスク)では証拠金を超える損失が生じ得ます。

証拠金が不足すると「追証(追加証拠金)」が発生し、翌営業日の正午までに不足額を入金する義務があります。入金できなければポジションは強制決済され、それでも足りなければ証券会社への債務(不足金)となります。

損失無限大を回避する5つの方法

この章の内容
  • スプレッド戦略で最大損失を確定させる
  • 逆指値(ストップロス)注文を必ず設定する
  • ポジションサイズを資金の一定割合以内に抑える
  • 証拠金に十分な余裕を持たせる
  • カバードコール・キャッシュセキュアードプットを活用する

①スプレッド戦略で最大損失を確定させる

オプションの売りと同時に、さらにアウト・オブ・ザ・マネーのオプションを買う「スプレッド戦略」は、損失無限大を回避する最も確実な方法です。たとえばコールの売りに対して、より高い権利行使価格のコールを買う「ベア・コール・スプレッド(クレジットスプレッド)」を組めば、最大損失は2つの権利行使価格の差額 − 受取プレミアムに限定されます(※7)。

同様に、プットの売りに対して、より低い権利行使価格のプットを買う「ブル・プット・スプレッド」も損失限定の手法として広く使われています。プレミアム収入は裸売りより減りますが、「想定外の損失」を構造的に排除できる点で初心者にも向いています。スプレッド戦略の詳細は「クレジットスプレッドとは?」の記事で解説しています。

②逆指値(ストップロス)注文を必ず設定する

裸売りを行う場合でも、プレミアムが一定水準まで上昇したら自動的に反対売買(買い戻し)する逆指値注文を必ず設定しましょう。たとえば「受け取ったプレミアムの2倍になったら損切り」というルールを決めておけば、損失は最大でもプレミアムの1倍分に抑えられます。

ただし、相場が急変してギャップ(窓開け)が発生した場合、逆指値が滑る(スリッページ)リスクがある点は理解しておく必要があります。

③ポジションサイズを資金の一定割合以内に抑える

1取引あたりの最大リスクを口座資金の2〜5%以内に抑えるのがリスク管理の基本原則です。仮に口座資金が500万円なら、1ポジションの想定最大損失を10万〜25万円に収める設計にします。これにより、1回の大負けで口座が壊滅するリスクを回避できます。

④証拠金に十分な余裕を持たせる

証拠金はVaR方式で算出される最低所要額を上回って差し入れることが推奨されます。目安として、最低証拠金の2〜3倍の余裕を持たせておくと、相場急変時にも追証が即座に発生する事態を避けやすくなります。余裕がなければ「1ティック動いただけで追証」という綱渡りになり、冷静な判断ができなくなります。

⑤カバードコール・キャッシュセキュアードプットを活用する

原資産を保有した上でコールを売る「カバードコール」や、権利行使価格分の現金を確保した上でプットを売る「キャッシュ・セキュアード・プット(CSP)」は、損失が構造的に限定される売り戦略です。裸売りと比べてリターンは控えめですが、「追証で借金」というリスクを排除できるため、安定運用を重視する投資家に適しています。

注意点|オプションの売りで陥りやすい誤解

よくある誤解
  • 「ファー・アウトなら安全」→ 暴落・急騰は一夜で発生する。距離があっても安全ではない
  • 「勝率90%だから大丈夫」→ 残り10%の1回で全財産を失うリスクがある
  • 「証拠金の範囲が最大損失」→ 証拠金は損失の上限ではない。超過分は借金になる
  • 「プット売りは損失無限大ではない」→ 厳密にはゼロまでだが、暴落の規模次第で事実上破産級
  • 「追証がかかれば証券会社が守ってくれる」→ 追証は追加入金の要求であり、保護ではない

ICHIZEN Capitalの視点|暗号資産オプションでも損失無限大は起きるのか

暗号資産(仮想通貨)のオプション取引でも、売り手の損失が理論上無限大になる構造は伝統金融と同じです。むしろ、暗号資産は伝統金融の原資産よりボラティリティが高く、24時間365日取引されるため、夜間のギャップリスクが大きい点に注意が必要です。

海外取引所のDeribitやBitgetでは暗号資産(BTC・ETH等)のオプション取引が可能です。これらの取引所では証拠金制度が導入されていますが、伝統金融のように翌営業日まで猶予のある追証制度ではなく、リアルタイムで証拠金が不足すると即座にポジションが清算(ロスカット)される仕組みが一般的です。

この即時清算方式は「借金を背負わない」という意味では投資家保護的ですが、急激な価格変動時にはスリッページが発生し、想定以上の損失が出る可能性は残ります。暗号資産オプションの売りに挑戦する場合も、スプレッド戦略による損失限定と、ポジションサイズの管理が必須です。

ICHIZEN Capitalでは、オプション取引はまず買いから始めることを推奨します。買いであればプレミアム以上の損失は発生しません。売り戦略を検討する段階でも、裸売りではなくスプレッド戦略から入るのが堅実です。

よくある質問

オプション取引の損失が無限大になるのはなぜですか?

オプションの売り手は、買い手の権利行使に必ず応じる義務があるからです。コールの売りでは原資産の上昇に上限がないため損失も上限がなく、プットの売りでは原資産がゼロになるまで損失が拡大します。一方、買い手の最大損失は支払ったプレミアムのみに限定されます。

コール売りとプット売り、どちらの損失のほうが大きいですか?

理論上はコール売りの損失が「無限大」、プット売りは「原資産がゼロになるまで」で有限です。しかし実際の相場では暴落のほうが急激かつ大きく動くことが多いため、プット売りの実質的な危険度も非常に高いです。どちらも裸売りは同等のリスクがあると考えてください。

オプション取引の買い手は損失が限定されるのですか?

はい。オプションの買い手の最大損失は、取引時に支払ったプレミアム(オプション料)のみです。権利行使が不利な場合は権利を放棄すればよく、追証や借金が発生することはありません。初心者はこの「損失限定の買い」から始めるのが安全です。

オプション取引で実際に破産した事例はありますか?

公式統計はありませんが、2011年の東日本大震災後にプットオプションの売り手が数百万〜数千万円の損失を被った事例が報告されています。また、楽天証券の解説では「残り1回で全財産を失うこともある」と明記されています。裸売りによる破産リスクは現実のものです。

オプション売りの損失を限定する方法はありますか?

あります。最も確実なのはスプレッド戦略(クレジットスプレッド)です。売りと同時に、さらにアウトのオプションを買うことで最大損失を事前に確定できます。そのほか、逆指値注文・ポジションサイズ管理・カバードコール/CSPも有効な手法です。

日経225オプションの証拠金はいくら必要ですか?

証拠金所要額はVaR方式で日々変動し、銘柄・限月・権利行使価格によって異なります。目安としてオプション1枚あたり数十万円〜100万円超になることもあります。最新の所要額は日本証券クリアリング機構(JSCC)や各証券会社のサイトで確認してください。

追証(おいしょう)が発生するのはどんなときですか?

相場がオプション売り手にとって不利な方向に動き、差し入れている証拠金が所要額を下回ったときに発生します。翌営業日の正午までに不足額を入金する義務があり、入金できなければ強制決済されます。強制決済後もなお不足があれば証券会社への借金となります。

暗号資産のオプション取引でも損失は無限大になりますか?

はい。売り手の損失構造は伝統金融と同じです。ただし、DeribitやBitgetなどの海外取引所ではリアルタイム清算(即時ロスカット)が一般的で、追証方式ではないため「借金を背負う」リスクは低い傾向にあります。とはいえ急激な価格変動時にはスリッページが発生し、想定以上の損失が出る可能性は残ります。

まとめ

オプション取引の「損失無限大」は、売り手(ライター)のみに生じるリスクであり、買い手の損失はプレミアムに限定されます。売り手の損失に上限がない理由は、買い手の権利行使に必ず応じる義務があるという「権利と義務の非対称性」にあります。

東日本大震災やコロナショックのような急変時には、ファー・アウトの売りでも数百万円〜数千万円の損失が実際に発生しています。「勝率が高いから安全」という認識は極めて危険です。

ただし、損失無限大を回避する方法は確立されています。スプレッド戦略で最大損失を確定させる・逆指値を必ず設定する・ポジションサイズを管理する。この3つを徹底すれば、オプションの売りも管理可能なリスクの範囲で運用できます。

暗号資産オプションでも損失構造は同じです。まずは損失限定の「買い」から始め、売り戦略に進む際はスプレッドから入る。これがICHIZEN Capitalの推奨するオプション取引の始め方です。

参考文献

※1 知るぽると(金融広報中央委員会)「オプション取引の損益」https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/deriv/deriv304.html

※2 楽天証券 トウシル「オプション取引の基礎知識(2)オプションの売りがハイリスクの理由とは?」https://media.rakuten-sec.net/articles/-/5339

※3 松井証券「オプション取引のリスクについて」https://www.matsui.co.jp/fop/options/about/risk.html

※4 マネーボイス「東日本大震災後の3月14日、オプション市場で起きていた『想定外』の事態」https://www.mag2.com/p/money/406278

※5 JPX 北浜投資塾「オプション取引初心者は損失限定の『買い』から」https://www.jpx.co.jp/ose-toshijuku/column/derivatives/04.html

※6 日本証券クリアリング機構「先物・オプション取引に係る取引証拠金」https://www.jpx.co.jp/jscc/seisan/sakimono/shokokin_seido/shokokin.html

※7 オプション道場「売りの損失を限定する」https://www.option-dojo.com/le/credit.html

※当サイトの情報は投資判断の参考となる一般的な情報提供を目的としており、特定の暗号資産(仮想通貨)への投資を勧誘するものではありません。暗号資産取引にはリスクが伴います。最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。

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