オプション取引の両建てとは?ストラドル・ストラングルの仕組み・やり方・証拠金・税金まで忖度なく解説

ICHIZEN Capitalのイチ押しポイント!
- オプション取引の両建て=同じ原資産のコールとプットを同時に保有する戦略
- 代表的な戦略はロングストラドル(同一権利行使価格でコール買い+プット買い)とロングストラングル(異なる権利行使価格で組む)
- 相場が「上がるか下がるか」ではなく「大きく動くかどうか」で勝負するのが最大の特徴
- メリット:損失限定+方向を当てなくてよい
- 買い両建ての最大損失は支払ったプレミアム合計に限定、利益は理論上無限大
- IV(インプライドボラティリティ)が低い時に仕込むと、プレミアムが安くコスパが良い
- 注意点:コスト二重・タイムディケイ・証拠金
- コールとプット両方のプレミアムを払うため、損益分岐点が遠くなりやすい
- 売り両建て(ショートストラドル)は損失無限大のリスクがあり、証拠金も高額になる
- 税金:申告分離課税20.315%、先物・オプション間で損益通算可能
- 株式や投資信託とは損益通算不可、損失は3年間繰越控除が可能
- 仮想通貨オプションの両建ては海外取引所(Bybit・Deribit等)で対応
木田 陽介オプションの両建ては「方向を読まなくていい」のが最大の強みですが、その分プレミアムが二重にかかります。IV(インプライドボラティリティ)が低い時期に仕込めるかどうかがカギ。やみくもに組むとタイムディケイで削られるので、エントリータイミングの見極めが勝敗を分けます。


監修 木田 陽介
株式会社ICHIZEN HOLDINGS 代表取締役
2016年から仮想通貨トレードを開始。2017年に株式会社CoinOtakuを共同で創業。同年CoinOtakuの代表に就任。2020年に東証二部上場企業に6億円でM&A。bitgetの月間取引高で世界4位を獲得。2025年にCoinOtaku代表を退任し、同年5月に株式会社ICHIZEN HOLDINGSの代表取締役に就任。
オプション取引の両建てとは?基本情報
オプション取引の両建てとは、同じ原資産に対してコール(買う権利)とプット(売る権利)のオプションを同時に保有する戦略の総称です。株式や先物の両建て(同一銘柄のロングとショートを同時に持つ)とは仕組みが大きく異なり、オプション特有の「権利の組み合わせ」で損益構造を設計できる点が特徴です。
代表的な戦略としてロングストラドル(同一権利行使価格でコール買い+プット買い)とロングストラングル(異なる権利行使価格でコール買い+プット買い)があります。いずれも「相場の方向は分からないが、大きく動きそうだ」と予想する局面で使われます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 定義 | 同一原資産のコールとプットを同時に保有する戦略 |
| 代表的な戦略 | ロングストラドル/ロングストラングル(買い両建て)、ショートストラドル/ショートストラングル(売り両建て) |
| 狙い | 相場の「方向」ではなく「値幅(ボラティリティ)」で利益を取る |
| 最大損失(買い側) | 支払ったプレミアム合計に限定 |
| 最大利益(買い側) | 理論上無限大(原資産が大きく動くほど利益拡大) |
| 対象市場 | 日経225オプション、米国株オプション、仮想通貨オプション(Deribit・Bybit等) |
| 税区分(日本) | 先物取引に係る雑所得等(申告分離課税20.315%) |
ロングストラドルとロングストラングルの仕組み
オプションの両建て戦略は「買い両建て」と「売り両建て」に大別されます。ここでは個人投資家が使いやすい買い両建て(ロングストラドル・ロングストラングル)の仕組みを中心に解説します。
ロングストラドルの仕組み
ロングストラドルは、同一の権利行使価格・同一の限月でコールオプションとプットオプションを同時に買う戦略です。ATM(アット・ザ・マネー=現在の原資産価格に最も近い権利行使価格)付近で組むのが基本となります。
相場が上がればコールの価値が上昇し、下がればプットの価値が上昇します。どちらの方向に動いても、支払ったプレミアム合計を超える値動きがあれば利益が出る構造です。逆に、相場がほとんど動かなかった場合は、コール・プット両方のプレミアムを失います。
損益分岐点は「権利行使価格 ± プレミアム合計」の2点です。たとえば権利行使価格40,000円、コールのプレミアムが500円、プットのプレミアムが400円の場合、損益分岐点は39,100円と40,900円になります。SQ値がこの範囲の外側にあれば利益、範囲内なら損失です。
ロングストラングルの仕組み
ロングストラングルは、異なる権利行使価格のコール(OTM=アウト・オブ・ザ・マネー)とプット(OTM)を同時に買う戦略です。ストラドルと比べてプレミアムが安く済む代わりに、損益分岐点までの距離が遠くなります。
「動くとは思うが、どちらに動くか分からない。ただしコストは抑えたい」という場面で使います。大きなイベント(決算発表・SQ週・金融政策決定など)の前に仕込むケースが典型的です。ストラドルより利益を出すにはさらに大きな値動きが必要ですが、その分だけ投下コストが小さい点がメリットです。
売り両建て(ショートストラドル・ショートストラングル)のリスク
買い両建ての逆、つまりコールとプットを同時に売る戦略もあります。相場が動かなければプレミアムを丸ごと受け取れますが、大きく動いた場合の損失は理論上無限大です。証拠金も高額になり、個人投資家には推奨されにくい戦略です。
売り両建てを使うのは、IVが極端に高い局面でプレミアムの割高感を収益化したいプロやセミプロが中心です。個人が使う場合は、必ずOTMに寄せたストラングル(損失をやや限定)にし、さらにロスカットラインを厳格に決めてから取り組むべきでしょう。
オプション取引の両建てのやり方|実践手順
ここではロングストラドルを例に、日経225オプションでの具体的な手順を解説します。米国株オプションや仮想通貨オプションでも基本の考え方は同じです。
- 証券口座を開設し、先物・オプション取引口座を追加する(SBI証券・楽天証券・松井証券・マネックス証券などが日経225オプションに対応)
- 原資産と限月を決める(日経225オプションの場合、SQ日は毎月第2金曜日。直近限月が流動性が高い)
- IV(インプライドボラティリティ)の水準を確認する(日経平均VI指数を参考に、IV Rankが低い=割安なタイミングが買い両建ての好機)
- 権利行使価格を選ぶ(ストラドルならATM付近の同一行使価格、ストラングルならOTMのコールとプットをそれぞれ選択)
- コール買い・プット買いの注文を同時に出す(指値で片方ずつ発注することも可能だが、スリッページに注意)
- 損益分岐点を計算し、利確・損切りラインを決める(権利行使価格 ± プレミアム合計が損益分岐点。SQ前に反対売買で利確するのが一般的)
- SQ日までに反対売買、またはSQ決済で決着(SQ値が損益分岐点の外側なら利益確定)



実際にやるとわかりますが、ストラドルは「仕込むタイミング」が一番難しい。IVが低い時期に仕込んで、イベント通過で一気にIVが膨らむ——この流れをつかめるかが勝率を左右します。IVが既に高い場面でストラドルを買うのはプレミアムが割高で不利になりやすいので注意です。
両建てのメリット・デメリット
- 相場の方向を予測しなくてよい(上下どちらに動いても利益の可能性がある)
- 最大損失が支払ったプレミアム合計に限定される(リスクが事前に確定する)
- 大きなイベント前のポジション構築に適している(決算・金融政策・SQ等)
- IVが低い時期に安く仕込めば、IV上昇だけでも含み益が出る
- 日経225オプションなら流動性があり、約定しやすい
- コールとプット両方のプレミアムを支払うため、コストが二重にかかる
- タイムディケイ(時間的価値の減少)がダブルで効くため、SQまでに動かないと損失拡大
- IVが既に高い局面で組むとプレミアムが割高で、損益分岐点が遠くなる
- ストラングルの場合、損益分岐点までの距離がさらに遠い
- 売り両建て(ショートストラドル等)は損失無限大のリスクがあり、上級者向け
買い両建ての最大のリスクは「相場が動かないこと」です。時間経過とともにコール・プット両方のプレミアムがタイムディケイで削られ、SQ時点で原資産価格が権利行使価格付近のままだと、支払ったプレミアム全額が損失になります。「大きく動く」と確信できる局面でだけ使うのが鉄則です。
両建てと証拠金|コストはいくらかかる?
買い両建て(ロングストラドル・ストラングル)の場合、証拠金は不要です。コール買い・プット買いはどちらも「権利を買う」側なので、証拠金ではなくプレミアム(オプション料)を支払うだけで済みます。
一方、売り両建て(ショートストラドル・ストラングル)の場合は、コール売り・プット売りそれぞれに証拠金が必要です。日経225オプションの場合、SPAN証拠金に基づいて算出され、相場のボラティリティが高いほど証拠金も増加します。売り両建ては証拠金負担が非常に大きくなるため、資金管理に十分な余裕が必要です。
| 戦略 | コスト・証拠金 | 最大損失 | 最大利益 |
|---|---|---|---|
| ロングストラドル(買い) | プレミアム合計のみ(証拠金不要) | プレミアム合計 | 理論上無限大 |
| ロングストラングル(買い) | プレミアム合計のみ(証拠金不要・ストラドルより安い) | プレミアム合計 | 理論上無限大 |
| ショートストラドル(売り) | SPAN証拠金(高額) | 理論上無限大 | 受取プレミアム合計 |
| ショートストラングル(売り) | SPAN証拠金(高額) | 理論上無限大 | 受取プレミアム合計 |
日経225オプションの取引単位はオプション価格×1,000円です。たとえばプレミアムが500円のコールを1枚買うと50万円、400円のプットを1枚買うと40万円で、ロングストラドル1組あたり合計90万円のコストとなります。日経225ミニオプションならオプション価格×100円で、その10分の1(合計9万円程度)から取り組めます(※1)。
両建てが有効な場面とIV(インプライドボラティリティ)の見方
オプションの両建て(特に買い両建て)は、どんな相場環境でも使えるわけではありません。IVが低い局面で仕込み、その後IVが急上昇する展開を狙うのが基本です。
IVが低い=オプションが「割安」な状態
IV(インプライドボラティリティ)はオプション価格に織り込まれた「将来の値動きの予想幅」です。IVが低い時期はオプションのプレミアムが安くなり、買い両建てのコストが下がります。日経平均VIが15〜18あたりの低水準であれば、買い両建てに好都合と言えるでしょう。
逆にIVが高い(日経平均VIが30を超えるような局面)では、既にプレミアムが割高になっています。この状態で買い両建てを組むと、「大きく動いたのに利益が出ない(プレミアム代が高すぎた)」という事態に陥りやすくなります。
両建てが有効な典型的シナリオ
大きなイベントの前でIVがまだ上昇していない局面が理想的です。具体的には、重要経済指標の発表前、日銀金融政策決定会合の前、米FOMC前、企業決算シーズン前などが挙げられます。相場参加者の多くがまだ「様子見」でIVが低いタイミングに仕込み、イベント通過で大きく動けば利益を取れます。
一方で、イベントが市場の予想通りに着地し、相場がほとんど動かなかった場合はプレミアム分がそのまま損失になることも忘れてはなりません。「動くかどうか分からない」ではなく、「何らかの要因で動く可能性が高い」と判断できる時に限って組むべきです。
両建ての税金|損益通算と確定申告
日経225オプション取引の損益は「先物取引に係る雑所得等」として申告分離課税(税率20.315%)の対象です(※2)。これは所得金額にかかわらず一律で、給与所得などとは別に計算されます。
先物取引・FX・CFDなど他の「先物取引に係る雑所得等」同士であれば損益通算が可能です。たとえばロングストラドルで損失が出ても、日経225先物やFXの利益と相殺できます。ただし、株式や投資信託の損益とは通算できません(※3)。
損失が出た年に控除しきれなかった金額は、確定申告をすれば翌年以降3年間の繰越控除が可能です。両建て戦略はコストが二重にかかる分、損失も出やすいので、繰越控除の仕組みを知っておくことは重要です。
なお、仮想通貨オプション(海外取引所)の損益は「雑所得」として総合課税されるケースが大半で、先物取引の申告分離課税とは扱いが異なります。仮想通貨オプションでの両建てを行う場合は、税務処理に一層の注意が必要です。
ICHIZEN Capitalの視点|オプション両建てを使いこなすために
オプションの両建ては「方向を読まなくてよい」という一見シンプルな構造を持つ反面、実際に継続的に利益を出すのは簡単ではありません。以下は、実際にオプション取引を行っている立場からの率直な見解です。
第一に、ロングストラドルは「コスト負け」しやすい戦略です。コールとプットの両方を買うためプレミアムが二重にかかり、タイムディケイも二重に効きます。「何となく動きそうだから」で組むと、結局動かずプレミアムを失うパターンが最も多い失敗例です。「IVが低い」かつ「大きく動くトリガーが明確」という2条件が揃った時だけ仕掛けるべきでしょう。
第二に、仮想通貨オプションの両建ては日本国内ではまだ選択肢が限られます。DeribitやBybitなどの海外取引所ではBTC・ETHのオプション取引が可能で、ストラドル・ストラングルも組めます。ただし海外取引所は金融庁の登録を受けておらず、利用は自己責任です。仮想通貨はボラティリティが大きい分、両建て戦略と相性は良いものの、流動性やスプレッドの面で日経225オプションほどの安定感はありません。
第三に、両建ては「保険」としても使える点を見逃さないことです。たとえば現物株のポートフォリオを持ちながらプットオプションでヘッジし、さらに上昇の可能性も捨てたくないならコールも追加する——これはポートフォリオ全体の防衛策としての両建てであり、単なる投機とは性質が異なります。目的を明確にしてポジションを組むことが最も重要です。
よくある質問
オプション取引の両建てとストラドルは同じ意味ですか?
厳密には同じではありません。「両建て」はコールとプットを同時に保有する行為の総称であり、ストラドル(同一行使価格)やストラングル(異なる行使価格)はその具体的な戦略名です。両建てという言葉は先物やFXの「売りと買いを同時に持つ」意味でも使われるため、オプションでは「ストラドル」「ストラングル」と明示するのが正確です。
両建てのメリットは何ですか?
最大のメリットは、相場の方向を予測する必要がない点です。買い両建て(ロングストラドル等)なら、上下どちらに大きく動いても利益が出る可能性があり、最大損失も支払ったプレミアム合計に限定されます。方向感がつかめないがボラティリティの拡大が見込める場面で有効です。
両建てに必要な証拠金はいくらですか?
買い両建て(ロングストラドル・ストラングル)に証拠金は不要で、コール買い+プット買いのプレミアム代のみで済みます。売り両建て(ショートストラドル等)の場合はSPAN証拠金が必要で、相場のボラティリティによって変動します。日経225ミニオプションなら通常オプションの10分の1のコストから始められます。
両建ての損益分岐点はどう計算しますか?
ロングストラドルの場合、損益分岐点は「権利行使価格 ± コールのプレミアム+プットのプレミアム」の2点です。SQ値がこの2点の外側にあれば利益、内側なら損失になります。ストラングルの場合は、上側の損益分岐点=コールの行使価格+プレミアム合計、下側=プットの行使価格−プレミアム合計で計算します。
IVが低い時に両建てすべきと聞きましたが、なぜですか?
IV(インプライドボラティリティ)が低い時はオプションのプレミアムが割安になるため、買い両建てのコストが抑えられます。さらに、IV低下後は上昇に転じやすい傾向があり、IVの上昇だけでもオプション価格が上がって含み益になることがあります。逆にIVが高い時に買うとプレミアムが割高で、利益を出すハードルが上がります。
オプションの両建てと先物の両建ては何が違いますか?
先物の両建ては同じ銘柄の買いと売りを同時に持つもので、値動きが相殺されるため実質的に利益も損失も出にくい構造です。一方、オプションの両建てはコール(買う権利)とプット(売る権利)という異なる性質の商品を組み合わせるため、ボラティリティの変動で利益を狙える点が本質的に異なります。
仮想通貨のオプション取引でも両建てはできますか?
できます。DeribitやBybitなどの海外取引所ではBTC・ETHのオプション取引が可能で、ストラドル・ストラングルも組めます。ただし、これらは日本の金融庁に登録されていない海外取引所であり、利用は自己責任です。また、日本の国内取引所では仮想通貨オプション取引を提供しているところはほぼありません。
両建てで出た利益・損失の税金はどう計算しますか?
日経225オプションの損益は「先物取引に係る雑所得等」として申告分離課税(一律20.315%)が適用されます。先物やFXとの損益通算が可能ですが、株式や投資信託とは通算できません。損失が出た場合、確定申告をすれば最大3年間の繰越控除が認められています。
まとめ|オプション取引の両建てはタイミングが命
オプション取引の両建て(ストラドル・ストラングル)は、相場の方向を予測せずにボラティリティの拡大で利益を狙える、オプション特有の戦略です。買い両建てなら最大損失がプレミアム合計に限定され、理論上の利益は無限大という魅力的な損益構造を持っています。
ただし「方向を読まなくてよい」とはいえ、IVの水準やイベントの有無を見極める力は不可欠です。コストが二重にかかりタイムディケイも二重に効くため、適切なタイミングで仕掛けなければプレミアムを失い続けることになります。オプション取引に関心がある方は、まずはストラドルの詳細解説やコール・プットの基本を押さえたうえで、少額から試してみてください。
参考文献
1. 日本取引所グループ「日経225ミニオプション|商品概要」https://www.jpx.co.jp/derivatives/products/domestic/225mini-options/index.html
2. 国税庁「No.1522 先物取引に係る雑所得等の課税の特例」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1522.htm
3. 楽天証券「先物・オプション取引の確定申告ガイド」https://www.rakuten-sec.co.jp/web/fop/tax-returns/
4. 大阪取引所 北浜投資塾「ロングストラドル・ロングストラングル」https://www.jpx.co.jp/ose-toshijuku/column/putoption/07.html
※本記事は2026年7月時点の情報に基づく一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品への投資を勧誘するものではありません。オプション取引にはリスクが伴い、元本を超える損失が発生する可能性があります。最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。








