Fetch.ai(FET)とは?ASI統合の現在地・国内で唯一買える取引所・将来性を忖度なく解説

ICHIZEN Capitalのイチ押しポイント!
- Fetch.aiはAIエージェントの経済圏を作る2017年発のプロジェクト
- 英国ケンブリッジ発。AI同士が自律的に交渉・取引する仕組みを目指す
- 価格は約0.16ドル・時価総額約3.6億ドル(2026年7月時点)
- ティッカーは今も「FET」。ASIへの変更は保留中
- 3社統合でASIアライアンスを結成したが、名称変更の最終段階は未完了
- 2025年10月にOcean Protocolが脱退し、集団訴訟にまで発展している
- 国内ではBinance Japan1社のみ取扱い。「買えない」は誤り
- FETはJVCEAの取扱暗号資産一覧に掲載済み(取扱会員数1社)
- Coincheck・bitFlyer・bitbank・GMOコインには取扱いがない
- 発行上限2.71億枚は「変更可能」で、供給は3年で約2倍
- ガバナンス投票の3分の2の合意で上限を変えられる仕組み
- 最高値から約95%下落。複数チェーンに存在し誤送付リスクもある
木田 陽介FETは日本語の解説記事が最も追いついていない銘柄の1つです。「国内では買えない」と書いてある記事をよく見かけますが、2025年12月にBinance Japanが上場して以降、それは事実ではなくなりました。忖度なく言えば、AIナラティブへの依存度が高く値動きは荒い。一方で日本の自主規制団体が付帯条件まで付けて上場を認めた銘柄でもあります。事実ベースで整理します。


監修 木田 陽介
株式会社ICHIZEN HOLDINGS 代表取締役
2016年から仮想通貨トレードを開始。2017年に株式会社CoinOtakuを共同で創業。同年CoinOtakuの代表に就任。2020年に東証二部上場企業に6億円でM&A。bitgetの月間取引高で世界4位を獲得。2025年にCoinOtaku代表を退任し、同年5月に株式会社ICHIZEN HOLDINGSの代表取締役に就任。
Fetch.ai(FET)とは?基本情報
Fetch.ai(フェッチエーアイ)は、AIエージェントが人間に代わって自律的に交渉・取引を行う経済圏を作ることを目指す、2017年発のブロックチェーンプロジェクトです。そのネットワーク上で使われる暗号資産のティッカーが「FET」になります。
現在のFETを理解するうえで欠かせないのが、2024年に発足した「ASIアライアンス(Artificial Superintelligence Alliance)」という統合プロジェクトの存在です。CoinGeckoやCoinMarketCapで検索すると銘柄名が「Artificial Superintelligence Alliance」と表示されるのはこのためで、Fetch.aiは統合後のベーストークンを担っています。この統合が今どうなっているのかは、後の章で詳しく検証します。
| 項目 | 内容(2026年7月時点) |
|---|---|
| 名称/ティッカー | Artificial Superintelligence Alliance(旧Fetch.ai)/FET |
| 設立 | 2017年8月・英国ケンブリッジ |
| 創設者 | Humayun Sheikh氏(CEO)、Toby Simpson氏、Thomas Hain氏 |
| 発行主体 | Fetch.ai Foundation(非営利財団/オランダ) |
| 発行開始 | 2019年3月 ERC-20/2020年3月 Fetch.aiネットワーク |
| コンセンサス | Delegated Proof of Stake(DPoS) |
| 存在するチェーン | Fetch.aiネイティブ/Ethereum/Cardano/Osmosis/BNBチェーン |
| 価格 | 約0.162ドル(約26円) |
| 時価総額 | 約3.6億ドル(ランキング121位/CoinGecko基準) |
| 循環供給量 | 約22.4億FET |
| 発行可能数 | 約27.1億FET(※ガバナンス投票で変更可能) |
| 過去最高値(ATH) | 3.45ドル(2024年3月28日) |
| 日本での購入 | Binance Japanのみ取扱い(国内で唯一) |
| 法的性格 | 資金決済法第2条第14項第1号/ユーティリティトークン |
価格・時価総額は日々変動します(CoinGecko、2026年7月時点/※1)。時価総額ランキングは集計元により93位〜121位と差が出るため、この記事ではCoinGecko基準の数値を採用しています。基本情報のうち発行主体・コンセンサス・発行可能数は、日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)が公開する暗号資産概要説明書に基づいています(※2)。
ASIアライアンス統合の現在地|ティッカーは今も「FET」のまま
「FETはASIに名前が変わったのか」という疑問は、この銘柄で最も検索されている論点の1つです。結論から言うと、2026年7月時点でティッカーは「FET」のままで、ASIへの変更は完了していません。公式サイトも、$FETをASIティッカーへ移行する最終段階は「保留中(pending)」と明記しています(※3)。
- 3つのAIプロジェクトが統合した経緯と交換レート
- Ocean Protocolの脱退と、CEOによる集団訴訟
- FET→ASIのティッカー変更が宙吊りになっている理由
ASIアライアンスとは|AI系3プロジェクトの統合
ASIアライアンスは、分散型AIの分野で中央集権的な巨大テック企業に対抗することを掲げ、2024年3月に発表された統合プロジェクトです。発足時の参加プロジェクトは、Fetch.ai(FET)・SingularityNET(AGIX)・Ocean Protocol(OCEAN)の3者でした。その後、計算資源を提供するCUDOSが加わっています。
統合の実務は、各トークンを一定レートでFETに交換して1つのトークンに集約するという形で進みました。2024年6月13日にトークン統合がローンチし、FETがベーストークンとなります。公式に示されている交換レートは次のとおりです(※3)。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2024年3月 | ASIアライアンス発表(Fetch.ai+SingularityNET+Ocean Protocol) |
| 2024年6月13日 | トークン統合ローンチ。FETがベーストークンに |
| 2024年7月1日 | Phase 1完了(AGIX→FETの交換/1 AGIX=0.433350 ASI) |
| 2024年後半 | CUDOSが計算資源の提供者として参画 |
| 2025年10月10日 | Ocean Protocol Foundationが脱退を表明 |
| 2025年12月12日 | Binance JapanがFETを上場(国内初) |
| Phase 2(時期未定) | FET→ASIへのティッカー変更・ネットワーク移行 |
ここで押さえておきたいのが、交換レートが「1 FET=1 ASI」である点です。つまりFETを保有している方にとって、将来ASIへ移行しても保有枚数の価値が目減りする設計にはなっていません。OCEANは1 OCEAN=0.433226 FET、CUDOSは118.344 CUDOS=1 ASIというレートが公式に示されています。
Ocean Protocolの脱退と集団訴訟|統合リスクが現実になった
統合の物語に亀裂が入ったのが、2025年10月10日のOcean Protocol Foundationによる脱退表明です。同財団は理由として「独立したガバナンスへの回帰」「データエコノミー基盤への集中」を挙げました(※4)。この発表を受け、OCEANが30%超上昇する一方でFETは約7%下落したと報じられています。
問題はここで終わりませんでした。Fetch.aiのCEOであるHumayun Sheikh氏が、私財を投じて3つ以上の法域でOcean Protocolに対する集団訴訟を提起したと報じられています(※5)。争点は、循環供給の10%を超える規模のFETがコミュニティに無断で売却された疑惑です。Sheikh氏は情報提供に25万ドルのバウンティまで提示しました。
なお、訴訟の対象となっているトークン数は報道により2.63億FETと2.86億FETで数値が分かれており、記事執筆時点で確定的な数字は確認できていません。和解交渉についてはOcean側が一定枚数を返還すれば法的請求を取り下げるという提案が報じられていますが、2026年7月時点で決着したことを示す一次情報は確認できていません。



ここは投資判断に直結する部分です。「3プロジェクト統合でスケールする」という当初のストーリーは、1社が抜けて訴訟にまで発展した時点で前提が変わりました。統合の話をポジティブ材料としてだけ紹介している記事は、2025年10月以降の動きを追えていないと考えていいでしょう。
ティッカー変更(Phase 2)はいつか|時期は未定
FET→ASIのティッカー変更は、統合計画の最終段階(Phase 2)と位置づけられています。しかし公式サイトが「pending」と記載しているとおり、実施時期は公表されていません。AGIX→FETのPhase 1が2024年7月に完了してから2年が経過しても動いていない状態です。
遅延の理由については、主要取引所がバックエンドのコントラクト移行に対応できていないためとする報道もあります。ただしこれは二次情報にとどまり、一次ソースでは確認できていないため、断定は避けるべきでしょう。投資家として重要なのは、理由よりも「移行が実際に起きるとき、保有場所によって対応が必要になる可能性がある」という事実のほうです。
この点は日本の自主規制団体も問題視しており、FETを取り扱う国内業者には「ティッカーコード変更に関するスケジュールや影響等を把握し、利用者へ適宜情報提供を行うこと」が条件として課されています(※2)。詳細は後述の「ICHIZEN Capitalの視点」で扱います。
FETの価格推移|最高値から約95%下落している
FETの値動きは、AIナラティブの盛り上がりと減衰にほぼ連動してきたのが実情です。2024年3月のAIブームのピークで最高値を付け、そこから長い下落局面が続いています。
| 時点 | 価格 | 備考 |
|---|---|---|
| 2020年3月13日 | 約0.0082ドル | 上場来最安値(ATL) |
| 2024年3月28日 | 3.45ドル | 過去最高値(ATH)/AIブームのピーク |
| 2026年7月時点 | 約0.162ドル | ATHから約95%下落 |
2026年7月時点の価格は約0.162ドル(約26円)で、過去最高値の3.45ドルから約95.3%下落しています。直近1年に限っても約76.6%のマイナスです(※1)。時価総額は約3.6億ドルで、CoinGecko基準のランキングは121位となっています。
この下落をどう読むかが重要です。Fetch.aiは開発を止めたわけではなく、この間もASI:ChainやAgentverseといったプロダクトを前進させています。つまり下落の主因は開発の停滞ではなく、2024年初頭のAI相場が織り込んだ期待値が大きすぎたことの反動と見るのが妥当でしょう。加えて、後述する供給増加と統合の亀裂が重しになっています。
Fetch.aiは何を作っているのか|AIエージェントの経済圏
FETを評価するには、このプロジェクトが何を作ろうとしているかを押さえる必要があります。中核にあるのがAEA(Autonomous Economic Agents/自律経済エージェント)という考え方です。
AEAとは、ユーザーに代わって自律的に判断し、他のエージェントと交渉・取引まで行うソフトウェアを指します。たとえば「最安の電力プランを探して契約する」「駐車場の空きを見つけて予約と支払いまで済ませる」といった処理を、人間の逐次的な操作なしに完結させる世界観です。CEOのSheikh氏はこれを「the agentic web(エージェントのウェブ)」と表現しています。
ブロックチェーンを使う理由は、エージェント同士が信頼関係のない状態で価値をやり取りするには、決済と記録の共通基盤が必要になるからです。FETはその基盤上で、エージェントの運用・ステーキング・手数料の支払いに使われるトークンと位置づけられています(※2)。
主要プロダクトの現在地
ASIアライアンスとして開発が進むプロダクトは複数あります。どれも構想段階ではなく稼働・開発が進んでいる一方、本命とされるチェーンはまだメインネットに到達していません。
| プロダクト | 内容 | 状況(2026年7月時点) |
|---|---|---|
| Agentverse | AIエージェントのオープンディレクトリ | 200万超のエージェントが登録 |
| ASI:Cloud | CUDOS基盤の分散型の計算層 | 稼働中。LLaMA・Qwen等をホスト |
| ASI:One/ASI-1 Mini | Web3ネイティブのLLM | 提供中 |
| ASI:Create | エージェント作成ツール | 2026年6月にクローズドベータ |
| ASI:Chain | AI特化のL1ブロックチェーン | DevNet段階。メインネットは2026年後半〜2027年初頭目標 |
ASI:Chainのメインネット稼働が2026年後半以降の目標である点は、投資判断上の重要な情報です。ロードマップの中心にあるチェーンが未完成であるということは、現在の時価総額は実績ではなく将来の実装に対する期待で説明される部分が大きいことを意味します。なお各プロダクトの進捗は変動するため、最新状況は公式サイトでの確認をおすすめします。
FETの買い方|国内で買えるのはBinance Japanの1社だけ
ここが、この記事で最も訂正しておきたい論点です。「FETは国内の取引所では買えない」と書いている日本語記事が多数ありますが、2026年7月時点でこれは事実ではありません。FETはJVCEAの取扱暗号資産一覧に掲載されており、Binance Japanが国内で唯一取り扱っています(※2)。
国内取引所の取扱い状況|一次データで確認した
この点は伝聞では危ういため、JVCEAが公開している「取扱暗号資産及び暗号資産概要説明書」(2026年7月15日更新版)の原本を取得し、FETの行を直接確認しました。結果は、取扱会員数「1」、該当する会員番号は1016=Binance Japan株式会社のみです(※2)。
| 取引所 | FETの取扱い |
|---|---|
| Binance Japan | ○(国内で唯一) |
| Coincheck | × |
| bitFlyer | × |
| bitbank | × |
| GMOコイン | × |
| SBI VCトレード | × |
Binance JapanがFETを上場したのは2025年12月12日で、国内では初の取扱いでした(※6)。取引ペアはFET/BTCとFET/BNBで、対応ネットワークはFetch.aiネイティブとEthereum(ERC20)です。なお日本円建てペアの有無は公式情報で確認できなかったため、円から直接FETを買えるかは各自でご確認ください。円建てペアがない場合は、BTCやBNBを経由する形になります。
なぜ取扱いが1社だけなのか
国内の暗号資産交換業者が新しい銘柄を扱うには、JVCEAの枠組みに沿った審査を経る必要があります。FETはこの審査を通過していますが、後述するとおりティッカー変更・プロジェクト脱退・集団訴訟といった条件が付されており、業者側の情報提供義務が重い銘柄です。
取扱いが1社にとどまっている事実は、他の国内業者がこの銘柄をまだ扱いにくいと判断している可能性を示唆します。ただし各社が取り扱わない理由を公表しているわけではないため、断定はできません。取扱いが1社のみということは、その1社に何かあれば国内での取引手段が実質的に失われるという集中リスクも伴います。
FETを買う2つのルート
選択肢は国内完結と海外取引所経由の2つです。どちらを選ぶかで、確定申告時の手間が大きく変わります。
- 国内完結ルート|Binance Japanで口座開設し、日本円を入金してFETを購入する。国内業者のため年間取引報告書が得られ、損益計算の負担が軽い
- 海外取引所ルート|国内取引所でBTC等を購入し、海外取引所へ送金してFETに交換する。取扱ペアや銘柄の選択肢は広いが、送金と損益計算の手間が増える
海外取引所を使う場合、FETはBinance・Coinbase・BTCCなど複数の取引所で取引されています(※1)。取引所ごとに出来高の差が大きく、CoinGeckoの出来高上位には無名の取引所も並びます。板の薄い取引所では想定より不利な価格で約定する可能性があるため、出来高と運営の実績を確認したうえで選ぶことが重要です。選び方の詳細は海外取引所おすすめランキングもあわせてご覧ください。


\AI銘柄も狙える総合力No.1/
送金時のネットワーク選択に要注意|誤送付で資産を失う
FET特有のリスクとして、必ず理解しておきたいのがこれです。FETはFetch.aiネイティブチェーン・Ethereum・Cardano・Osmosis・BNBチェーンという複数の環境に存在しています。同じ「FET」でも中身のチェーンが違うため、送金元と送金先で対応ネットワークが一致していないと資産が届かず、取り戻せなくなる可能性があります。
この危険性は、JVCEAが取扱業者に対する付言として明示的に警告している事項でもあります。「FETが存在する複数の環境間の移転の可否、誤送付が起きる危険性等をあらかじめ伝える必要があり、当社ではどの環境の暗号資産を取扱っているのかについて、明確にわかりやすく提示すること」と定められています(※2)。送金前には必ず、取引所が対応しているネットワークを確認し、初回は少額でテスト送金することをおすすめします。
FETのリスク・注意点(忖度なし)
FETは「AI×ブロックチェーンの代表格」として語られやすい銘柄ですが、数字と一次情報で見ると無視できない弱点が複数あります。ポジティブな側面だけを並べても投資判断の役には立たないため、リスクを構造から整理します。
- AIナラティブ依存|最高値から約95%下落、直近1年も約77%安
- 統合の亀裂|Ocean Protocolが脱退し、集団訴訟に発展
- 供給の希薄化|3年で発行量が約2倍に増加している
- 上限が可変|発行可能数はガバナンス投票で変更できる
- ティッカー変更が宙吊り|Phase 2の時期が未定のまま
- 誤送付リスク|5つの環境に同名トークンが存在する
- 監査の不在|発行業務の監査は「不明」、価値移転の管理監査は「なし」
- 国内は1社のみ|取扱いがBinance Japanに集中している
発行上限「約27.1億枚」は実質的な上限ではない
多くの解説記事が「FETの最大供給量は約27.1億枚」と紹介して終わっています。しかしJVCEAの概要説明書には、発行可能数の「変更可否」が明確に「可」と記載されています。変更方法はガバナンス投票で、3分の2以上の合意があれば上限そのものを動かせる設計です(※2)。
これはビットコインの2,100万枚のような、プロトコルとして動かしがたい上限とは性質が違います。「上限があるから希少性が担保される」という前提でFETを評価すると、判断を誤る可能性があります。実際に上限変更が提案された事実は確認していませんが、制度上それが可能であること自体がリスク要因と言えるでしょう。
供給は3年で約2倍に増えている
希薄化の圧力は、すでに数字として現れています。JVCEAの概要説明書に記載された過去3年間の発行状況は次のとおりです(※2)。
| 時点 | 発行量 | 増加 |
|---|---|---|
| 2022年10月 | 11.52億FET | — |
| 2025年10月 | 23.71億FET | +12.19億FET(約2.06倍) |
増加の主因はブロック報酬とステーキング報酬です。3年で枚数が約2倍になったということは、価格が横ばいでも時価総額は2倍に膨らむ計算になります。逆に言えば、1枚あたりの価格を維持するには、供給増を吸収するだけの新規需要が継続的に必要ということです。
なお2024年には「Earn and Burn」プログラムとして5,000万ドル規模の買い戻しが行われ、約0.5億FETが償却されています(※2)。ただし同期間の発行増12.19億FETと比べれば、償却規模は1割にも届きません。バーンがあるという事実だけを取り上げてデフレ的と評価するのは、実態に合わないでしょう。
ステーキング利回りは5〜7%が実勢
FETはDPoSを採用しており、ステーキングが可能です。各種サービスで示されている利回りは概ね年5〜7%の水準にあります(2026年7月時点/※7)。「数十%」「数百%」といった利回りを掲げるサイトも検索上位に見られますが、実勢と乖離しており根拠も不明です。この種の数字は鵜呑みにせず、取引所やステーキングサービスの公式表示を確認しましょう。
また、ステーキングにはスラッシングという仕組みがあります。ダブル署名など悪意ある挙動をしたバリデータは、預けたFETが没収される対象です(※2)。委任先のバリデータに問題があれば、委任者の資産にも影響が及ぶ可能性がある点は理解しておく必要があります。
ICHIZEN Capitalの視点|日本の自主規制団体がFETに付けた「条件」を読む
FETを扱う日本語記事を複数調べましたが、JVCEAの暗号資産概要説明書に踏み込んだものは見当たりませんでした。これは大きな機会損失です。日本の自主規制団体が、この銘柄のどこを危険と見て、業者に何を義務づけたのか——これ以上に信頼できるリスクの一次情報はありません。実際に原本を取得して読み解きます。
2026年7月、編集部がJVCEA公開の「取扱暗号資産及び暗号資産概要説明書」(2026年7月15日更新版)を取得し、FETの取扱会員数・会員名・概要説明書(更新日2025年12月2日)の記載内容を直接確認しています。価格・時価総額はCoinGeckoで同月に取得しました。
FETに課された「付帯条件」2項目
JVCEAはFETを取り扱う業者に対し、次の2つを付帯条件として課しています(※2)。原文のまま引用します。
- ①ティッカーコード変更に関するスケジュールや影響等を把握し、利用者へ適宜情報提供を行うこと
- ②Artificial Superintelligence Allianceは複数のプロジェクトにより統合されており、今後も新規プロジェクトの追加や既存プロジェクトの脱退が発生し、これらの変化に伴いプロジェクト全体の信頼性やFETの価値に影響が生じる可能性がある旨を利用者に情報提供すること
注目すべきは、この2項目がまさにこの記事で扱ってきた「ティッカー変更の宙吊り」と「プロジェクトの脱退」を名指ししている点です。日本の自主規制団体は、FETの上場を認めるにあたってこの2つを「利用者に必ず伝えるべきリスク」として制度的に位置づけたことになります。一般論としてのリスク注意ではなく、銘柄固有の弱点をピンポイントで条件化している点に重みがあります。
さらに5項目の「付言」|訴訟とAI誤作動まで
付帯条件に加えて、5項目の付言も付されています(※2)。要点を整理すると次のとおりです。
| 付言 | 内容の要点 |
|---|---|
| ① | 複数の環境上に存在する銘柄であることの詳しい説明を行うこと |
| ② | 環境間の移転の可否・誤送付の危険性を事前に伝え、どの環境のFETを扱うか明示すること |
| ③ | 別の環境のFETを扱う場合は追加の申請を行うこと |
| ④ | Fetch.ai等によるOcean Protocolへの集団訴訟の情報を把握し、必要に応じ利用者へ情報提供すること |
| ⑤ | AIモデル・AIエージェントの誤作動や不正行為が生じた場合、信頼性低下により価値が下がる可能性を情報提供すること |
④で集団訴訟が明記されている点は特筆に値します。国内の業者は、この訴訟の動向を把握する義務を負っているということです。そして⑤は、AI銘柄という性質そのものに踏み込んだ指摘と言えるでしょう。AIエージェントが誤作動すればトークンの価値が下がりうる、という因果を規制側が明示しているのは珍しいことです。
もう1点、投資判断上見落とせない記載があります。概要説明書では、発行者の行う発行業務に対する監査の有無が「不明」、価値移転の管理状況に対する監査の有無が「なし」とされています(※2)。非営利財団が発行主体でありながら、発行業務が第三者監査を受けているか確認できないという事実は、リスクとして認識しておく価値があります。
税金|国内取引所で買えることの実務的な意味
税務の観点では、FETが国内取引所で買えるようになったことに実務的な意味があります。日本の居住者がFETで得た利益は、原則として雑所得に区分され、総合課税の対象です(※8)。所得税5〜45%に住民税10%を加え、最大で約55%の税率に達します。
ここで効いてくるのが購入ルートの違いです。Binance Japanは国内の暗号資産交換業者であるため、年間取引報告書が交付され、損益計算の負担が大幅に軽くなります。一方、海外取引所ルートではBTCを買う→送金する→USDTに替える→FETを買う、という工程のそれぞれで損益計算が必要になり、履歴を自力で集計する手間が生じます。
また、ステーキング報酬を受け取った場合は、受領時点の時価で所得として認識するのが原則です。値上がりを待って保有し続けた結果、報酬受領時より価格が下がっていても、課税の基準は受領時の時価から動きません。FETのようにボラティリティの高い銘柄では、この差が実損として効いてくる場面があります。詳細は仮想通貨の税金の記事で解説しています。
海外取引所を使う場合でも、課税の判定は取引所の所在地ではなく、取引した方が日本の居住者かどうかで決まります。「海外だから申告不要」は成立しません。海外取引所での申告実務は海外取引所の確定申告の記事、AI・DePIN系銘柄の全体像はDePINとはもあわせてご覧ください。



FETのように国内と海外の両方で買える銘柄では、「どこで買ったか」が翌年の申告作業量を決めます。国内業者なら年間取引報告書が出るぶん計算は楽ですが、海外取引所を挟むと交換のたびに損益が発生し、履歴の集計だけで消耗します。ステーキング報酬の受領時課税も見落としが多い論点です。判断に迷う場合は税理士へご相談ください。
よくある質問
Fetch.ai(FET)とは何ですか?
AIエージェントが自律的に交渉・取引を行う経済圏の構築を目指す、2017年に英国ケンブリッジで設立されたブロックチェーンプロジェクトです。FETはそのネットワークで使われる暗号資産で、エージェントの運用・ステーキング・手数料の支払いに用いられます。2024年にSingularityNET・Ocean Protocolと統合してASIアライアンスを結成し、CoinGecko等では「Artificial Superintelligence Alliance」と表示されます。
FETは日本の取引所で買えますか?
買えます。2026年7月時点で、Binance Japanが国内で唯一FETを取り扱っています。JVCEAが公開する取扱暗号資産一覧でも、FETの取扱会員数は1社(Binance Japan株式会社)と記載されています。「国内では買えない」と説明している記事は、2025年12月のBinance Japan上場より前の情報にもとづく古い内容です。
FETはCoincheckやbitFlyerで買えますか?
買えません。2026年7月時点で、Coincheck・bitFlyer・bitbank・GMOコイン・SBI VCトレードのいずれもFETを取り扱っていません。国内で取扱いがあるのはBinance Japanのみです。他社が今後取り扱うかどうかについて、公式なアナウンスは確認できていません。
FETのティッカーはASIに変わったのですか?
まだ変わっていません。2026年7月時点でティッカーは「FET」のままです。FETを正式なASIティッカーへ移行する工程は統合計画のPhase 2にあたりますが、公式サイトは「保留中(pending)」と記載しており、実施時期は公表されていません。CoinGeckoやCoinMarketCapでも銘柄名は「Artificial Superintelligence Alliance」ですが、ティッカー表記はFETです。
FETとASIは同じ通貨ですか?
同じトークンを指しており、交換レートは1 FET=1 ASIです。ASIはFetch.ai・SingularityNET・Ocean Protocolが統合したASIアライアンスの統一トークンの名称で、FETがそのベーストークンになっています。ティッカーがASIへ切り替わる予定ですが時期は未定で、現時点で保有枚数が変動する設計にはなっていません。
FETはなぜ下落したのですか/なぜ上がらないのですか?
主因は、2024年初頭のAI相場が織り込んだ期待値の反動です。過去最高値3.45ドルは2024年3月28日で、AIブームのピークと重なります。加えて発行量が3年で約2倍に増えた希薄化圧力、2025年10月のOcean Protocol脱退と集団訴訟による統合ストーリーの毀損も重しです。開発自体は継続しており、下落の主因は開発停滞ではありません。
FETの発行上限はいくつですか?
約27.1億FETとされていますが、これは固定された上限ではありません。JVCEAの概要説明書では発行可能数の変更可否が「可」と記載され、ガバナンス投票で3分の2以上の合意があれば上限を変更できる仕組みです。ビットコインの2,100万枚のような不変の上限とは性質が異なる点に注意が必要です。
FETはステーキングできますか?利回りはどのくらいですか?
できます。FETはDelegated Proof of Stake(DPoS)を採用しており、バリデータへの委任が可能です。各種サービスで示される利回りは2026年7月時点で概ね年5〜7%の水準です。数十%以上の利回りを掲げるサイトは実勢と乖離しており、根拠を確認すべきでしょう。委任先が不正を行うとスラッシングでFETが没収される点にも留意が必要です。
Ocean Protocolが脱退したのはなぜですか?FETへの影響は?
Ocean Protocol Foundationは2025年10月10日に脱退を表明し、理由として独立したガバナンスへの回帰とデータエコノミー基盤への集中を挙げました。発表後、OCEANが30%超上昇する一方でFETは約7%下落したと報じられています。その後Fetch.aiのCEOが集団訴訟を提起し、2026年7月時点で決着を示す一次情報は確認できていません。
FETを送金するときネットワークはどれを選べばいいですか?
送金元と送金先の取引所・ウォレットが対応しているネットワークを必ず一致させてください。FETはFetch.aiネイティブ・Ethereum・Cardano・Osmosis・BNBチェーンの複数環境に存在し、不一致だと資金が届かず回収できない可能性があります。JVCEAも誤送付の危険性を事前に伝えるよう業者に求めています。初回は少額のテスト送金をおすすめします。
FETの過去最高値はいくらですか?
2024年3月28日に記録した3.45ドルが過去最高値です。2026年7月時点の価格は約0.162ドルで、最高値から約95.3%下落しています。直近1年でも約76.6%のマイナスです。なお上場来最安値は2020年3月13日の約0.0082ドルでした(CoinGecko基準)。
AGIXやOCEANを持っていた場合、今どうなっていますか?
統合により、いずれもFETへ交換する形になっています。公式に示されたレートは1 AGIX=0.433350 ASI、1 OCEAN=0.433226 FETです。AGIXの交換(Phase 1)は2024年7月1日に完了しました。OCEANについてはOcean Protocol脱退後もブリッジは稼働していると報じられていますが、扱いが変わる可能性があるため公式情報の確認をおすすめします。
まとめ|FETは「国内で買えない銘柄」ではなくなった
Fetch.ai(FET)は、AIエージェントの経済圏を作ることを目指す2017年発のプロジェクトで、現在はSingularityNET等と統合したASIアライアンスのベーストークンです。ティッカーは2026年7月時点でも「FET」のままで、ASIへの変更は保留中となっています。
この記事で最も伝えたい訂正は購入方法です。多くの日本語記事が「国内では買えない」と説明していますが、2025年12月のBinance Japan上場により、FETは国内で購入できる銘柄になりました。JVCEAの一次データで確認したところ、取扱会員は1社のみで、Coincheck・bitFlyer・bitbank・GMOコインには取扱いがありません。国内業者を使えば年間取引報告書が得られ、確定申告の負担は軽くなります。
一方でリスクは率直に見ておく必要があります。価格は最高値3.45ドルから約95%下落し、発行量は3年で約2倍に増加。発行上限もガバナンス投票で変更可能な設計です。2025年10月にはOcean Protocolが脱退し、集団訴訟にまで発展しました。日本の自主規制団体自身が、ティッカー変更・プロジェクト脱退・集団訴訟・誤送付・AI誤作動を業者への条件や付言として名指ししているという事実は、この銘柄の性格を何より正直に示しているでしょう。
検討するのであれば、AIというテーマへの期待に賭けている自覚を持ち、送金時のネットワーク選択に注意し、余剰資金の範囲にとどめることが前提になります。ASI:Chainのメインネットが2026年後半以降の目標である以上、実装の進捗を見極める時間はまだ残されていると言えるのではないでしょうか。
参考文献
1. CoinGecko「Artificial Superintelligence Alliance (FET)」(価格・時価総額・最高値・供給量は2026年7月取得)https://www.coingecko.com/en/coins/artificial-superintelligence-alliance
2. 日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)「取扱暗号資産及び暗号資産概要説明書」(2026年7月15日更新版/FETの概要書更新日は2025年12月2日)https://jvcea.or.jp/statistics/document/assets/
3. ASI Alliance公式「ASI Token (FET)」https://superintelligence.io/asi-token-fet/
4. Ocean Protocol「Ocean Protocol Foundation withdraws from the Artificial Superintelligence Alliance」(2025年10月10日)https://blog.oceanprotocol.com/
5. CryptoSlate「Crypto’s flagship AI pact fractures: Fetch sues Ocean over 263M FET community sales」(訴訟の対象枚数は報道により差異あり)https://cryptoslate.com/
6. あたらしい経済「バイナンスジャパン、フェッチエーアイ(FET)の取扱いを開始」(2025年12月12日)https://www.neweconomy.jp/posts/528072
7. StakingRewards「Fetch.ai (FET)」(利回りは2026年7月時点・変動するため要確認)https://www.stakingrewards.com/asset/fetch-ai
8. 国税庁「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」https://www.nta.go.jp/
※本記事は2026年7月時点の情報に基づく一般的な情報提供を目的としており、特定の暗号資産(仮想通貨)・取引所への投資を勧誘するものではありません。価格・時価総額・取引所の取扱い状況・ステーキング利回りは変動するため、最新の情報は各公式サイトでご確認ください。暗号資産は価格変動が大きく、投資元本を大きく毀損する可能性があります。税務の具体的な判断は税理士等の専門家にご相談ください。暗号資産取引にはリスクが伴い、最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。








