オプションのアンワインド(unwind)とは?反対売買・ロールとの違いと出口戦略を忖度なく解説

ICHIZEN Capitalのイチ押しポイント!


  • アンワインドとは、保有ポジションを反対売買で解消すること
    • 「ほどく(unwind)」の語源どおり、建てた建玉を市場で反対売買してゼロに戻す行為
    • 日本取引所グループの正式用語は「反対売買(転売・買戻し)」。アンワインドは市場の慣用語
  • オプションの出口は3つあり、どれを選ぶかで手取りが変わる
    • 満期を待たずに降りられるのはアンワインドだけ。残った時間的価値ごと現金化できる
    • 権利行使は本質的価値しか受け取れず、残存する時間的価値を捨てることになる
  • 暗号資産オプションの出口は、実質アンワインド一択
    • Deribitのオプションはすべてヨーロピアン式で、満期日まで権利行使ができない
    • 株式と違い配当がないため、早期に権利行使する動機がそもそも存在しない
  • 損益はアンワインドした瞬間に確定し、総合課税の対象になる
    • 国税庁FAQ2-12は、暗号資産の証拠金取引を申告分離課税の対象外と明記(※1)
    • FXと同じ金融商品先物取引等に該当しながら20.315%が使えず、最大55%の総合課税
木田 陽介

「アンワインド」を調べると、なぜか円キャリートレードの解説ばかり出てきます。証券会社の用語集がほぼ全部そうなので、オプションの建玉をどう畳むかを知りたい方には正直あまり役に立ちません。ここでは自分の建玉を畳むミクロの話と、市場全体が一斉に畳むマクロの話を、混ざらないように分けて整理します。僕らが毎日のBTC・ゴールド分析で実際に追っている「ヘッジのアンワインド」の読み方まで、忖度なしで書きました。

木田 陽介
(株)ICHIZEN HOLDINGS

代表取締役

この記事の執筆者/監修者

2016年から仮想通貨トレードを開始。2017年に株式会社CoinOtakuを共同で創業。同年CoinOtakuの代表に就任。2020年に東証二部上場企業に6億円でM&A。bitgetの月間取引高で世界4位を獲得。2025年にCoinOtaku代表を退任し、同年5月に株式会社ICHIZEN HOLDINGSの代表取締役に就任。

監修 木田 陽介
株式会社ICHIZEN HOLDINGS 代表取締役

2016年から仮想通貨トレードを開始。2017年に株式会社CoinOtakuを共同で創業。同年CoinOtakuの代表に就任。2020年に東証二部上場企業に6億円でM&A。bitgetの月間取引高で世界4位を獲得。2025年にCoinOtaku代表を退任し、同年5月に株式会社ICHIZEN HOLDINGSの代表取締役に就任。

目次

オプションのアンワインド(unwind)とは?基本情報

アンワインドとは、すでに保有しているポジションを反対売買によって解消し、建玉をゼロに戻すことです。英語の「unwind(ほどく・巻き戻す)」がそのまま市場用語として定着しました。買いから入った建玉は売りで、売りから入った建玉は買い戻しで畳みます。

大和証券の用語集は、アンワインドを「これまでのポジション(持ち高)を解消する動き」と定義しています(※2)。相場の反転が意識された局面や、重要イベントを前にリスクを落としたい局面で増える動きだと説明されています。

オプションの実務ではもう少し具体的です。米国のブローカーであるTradeStationは、ロングコールからアンワインドするならコールを売り、コール売りから入った建玉をアンワインドするならコールを買い戻す、と説明しています(※3)。ポジション全体だけでなく、複数レッグのうち1本だけを畳む場合もアンワインドと呼ばれます。

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項目内容
読み方・英語アンワインド/unwind(「ほどく」「巻き戻す」の意)
意味保有ポジションを反対売買で解消し、建玉をゼロに戻すこと
日本の正式用語反対売買(買い建てなら転売、売り建てなら買戻し)
使われる場面①個人が自分の建玉を畳む(ミクロ)②市場全体の持ち高が一斉に解消される(マクロ)
実行できる時期満期前ならいつでも可能(流動性がある限り)
損益の確定アンワインドした時点で確定。暗号資産デリバティブは総合課税(※1)

ここで先に押さえておきたいのが、同じ「アンワインド」でも主語が2つあるという点です。自分の建玉を畳むミクロの行為と、市場全体の持ち高が崩れるマクロの現象では、話の中身がまったく違います。この記事では前者を中心に扱い、後者は市場全体のアンワインドの章で改めて整理します。

アンワインドと反対売買・権利行使・権利放棄の違い

オプションの出口は3つしかありません。アンワインド(反対売買)・権利行使・権利放棄のどれを選ぶかで、手元に残る金額が変わります。まずこの3分類を押さえると、アンワインドの位置づけが一気にはっきりします。

日本取引所グループは決済方法を整理しており、反対売買を「当初行った取引とは反対の取引を行うことで取引最終日までに決済する方法」と定義しています(※4)。買い建てた投資家は転売、売り建てた投資家は買戻しを行う、という説明です。つまりアンワインドは、JPXの用語でいう反対売買とほぼ同義だと考えて差し支えありません。

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出口いつできるか受け取れるもの時間的価値の扱い
アンワインド(反対売買)満期前ならいつでもその時点の市場価格(プレミアム全額)残っていれば回収できる
権利行使満期日(ヨーロピアン式の場合)本質的価値のみ放棄することになる
権利放棄満期日にOTMの場合なし支払ったプレミアムが損失

3つの違いで最も重要なのが時間的価値の扱いです。満期前のオプション価格は、本質的価値に時間的価値を上乗せした水準で推移します。権利行使で受け取れるのは本質的価値だけなので、上乗せ分を捨てることになるのです。

Options Playbookは、この点を早期権利行使を避けるべき最大の理由として挙げています(※5)。原資産をすぐ手に入れたい場合でも、コールを売却してその代金で原資産を買うほうが安く済むという整理です。ITMだから権利行使、という発想は多くの場面で損になります。

なお、アンワインドと似た言葉に「クローズ(close out)」があります。どちらもポジションを閉じる行為ですが、アンワインドは複数の取引や複数レッグにまたがる複雑な解消に使われる傾向があるとされます(※6)。ただしこれは用語集ベースの慣用的な区別であり、法令や規則で厳密に定義されたものではありません。実務上は同義として扱われる場面も多く見られます。

反対売買そのものの仕組みや損益計算をより詳しく確認したい方は、オプション取引の反対売買とは?仕組み・権利行使との違いも参考になるでしょう。

アンワインドとロールの違い|ロール=アンワインド+新規建て

建玉を畳む場面で必ず比較されるのがロール(ロールオーバー)です。両者の関係は、ロール=アンワインド+新規建てを同時に実行するものと理解すると一気に整理できます。ロールは「畳んで終わり」ではなく、畳んだうえで限月やストライクを変えた建玉を建て直す操作なのです。

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アンワインドロール
操作建玉を解消してそこで終わり建玉を解消し、同時に別の限月・ストライクで建て直す
解消後の建玉ゼロ残る(条件が変わる)
選ぶ場面相場観が崩れた/ロールのコストが高すぎる相場観は維持、時間かストライクの調整だけしたい
リスクそこで損益が確定する負けポジションを引き延ばす危険がある

使い分けの基準は相場観が生きているかどうかです。方向感は変わらず時間だけが足りないならロール、前提そのものが崩れたならアンワインドが基本になります。ロールには限月を先送りするロールアウト、ストライクを下げるロールダウン、上げるロールアップの3類型があります(※7)。

ただしロールには落とし穴があります。負けている建玉をロールで先送りし続けると、損失確定を避けたいだけの延命になりがちです。ロールのコストが積み上がった結果、最初にアンワインドしていれば済んだ損失を大きく上回ることもあります。ロールが正当化されるのは、追加のクレジットが取れるか、相場観に根拠が残っている場合に限られると考えてください。詳しい手順はオプション取引のロールオーバーとは?やり方・コスト・SQとの関係で整理しています。

暗号資産オプションの出口が実質「アンワインド一択」になる理由

ここは株式オプションの常識がそのまま通じない領域です。暗号資産オプションでは、満期前に降りる手段がアンワインドしか存在しません。理由は2つあり、どちらも商品設計に由来します。

1つ目がヨーロピアン式であることです。BTCオプションの主要な取引の場であるDeribitは、自社の解説で「Deribitのオプションはすべてヨーロピアン式であり、アメリカン式と違って満期時にしか権利行使できない」と明記しています(※8)。同時に「ヨーロピアン式でも満期日まで自由に売買できる点は変わらない」とも説明されています。つまり早期権利行使という選択肢が制度上そもそも用意されておらず、満期前の出口はアンワインドだけなのです。

2つ目が配当の不在です。株式オプションで早期権利行使が合理的になる代表例は、配当を受け取りたいITMコールのケースでした(※5)。暗号資産には配当という概念がないため、この例外そのものが成立しません。株式で学んだ「配当前は早期行使を検討する」という定石は、暗号資産オプションでは考える必要がないと言えます。

なおDeribitのオプションは差金決済で、満期時にITMであれば自動的に権利行使され、本質的価値が現金で支払われます(※8)。放置しても勝手に清算されるため、満期まで持つか、その前にアンワインドするかの二択になります。この構造を理解しておくと、出口設計はかなりシンプルになるでしょう。

暗号資産オプションを実際に扱える場所は限られます。国内の暗号資産交換業者ではオプションの取扱いがほとんどなく、板の厚さを求めると海外の取引所が選択肢になるのが実情です。取引所ごとの違いは海外取引所おすすめランキングでも比較しています。

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アンワインドの実務|タイミング・コスト・流動性の壁

この章の内容
  • アンワインドのタイミングは「建てた根拠が残っているか」で判断する
  • コストの本体は手数料よりビッド・アスク・スプレッド
  • ITMかつ満期接近のオプションは流動性が枯れやすい
  • スプレッド戦略はレッグ単位で畳むと危険が増す場面がある

タイミングは「建てた根拠が生きているか」で決める

アンワインドの判断基準は、含み損益の大きさではありません。その建玉を建てたときの根拠が今も成立しているかどうかが基準になります。根拠が崩れたなら、含み益でも含み損でも畳むのが筋です。

逆に根拠が生きているなら、含み損だけを理由に畳む必要はありません。判断を機械的にするなら、建玉を建てる時点で「この条件が崩れたら畳む」という無効化条件を先に決めておく方法が有効でしょう。ポジションを持ってから考え始めると、値動きに引きずられて判断が鈍ります。

コストの本体は手数料ではなくスプレッド

アンワインドのコストは、ブローカー手数料とビッド・アスク・スプレッドで構成されます。このうち効いてくるのは後者です。流動性の薄いオプションでは、広いスプレッドが実効的な清算価格を大きく毀損します(※9)。

たとえば理論値が0.05BTCのオプションでも、ビッドが0.03・アスクが0.07なら、成行で畳んだ瞬間に理論値の4割を失う計算になります。手数料の数ベーシスポイントを気にする一方で、スプレッドで数十パーセントを失っているケースは珍しくありません。

流動性が薄いときは合成ポジションという逃げ道がある

オプションはITMかつ満期が近いときに流動性が枯れやすいという性質があります(※9)。畳みたいときに限って板が薄い、というのは構造的に起きやすい現象なのです。

この場面で使えるのがプット・コール・パリティです。流動性の低いスプレッドでは、合成ポジションを組むことでビッド・アスク・スプレッドを半減でき、執行が大幅に改善するとされています(※9)。畳みたい建玉を直接叩くのではなく、流動性のある別の組み合わせで同じ損益構造を作って相殺する発想です。合成ポジションの組み方はオプション取引の合成ポジション(シンセティック)とは?で解説しています。

スプレッド戦略はレッグ単位の解消に注意する

複数レッグの戦略では、1本だけ畳む部分アンワインドも選択肢になります。段階的に建玉を分割して解消すれば、価格変動リスクを平準化できるという整理もあります(※10)。

ただし注意が必要です。リスクを限定していたレッグを先に外すと、残った建玉が無限損失を抱える裸のポジションに変わることがあります。クレジットスプレッドの買いレッグだけを畳めば、手元に残るのは裸の売りです。レッグ単位で畳むときは、解消後の損益図がどう変わるかを必ず先に確認しましょう。

市場全体の「アンワインド」とは?円キャリーとVolmageddonの教訓

ニュースで見かけるアンワインドは、個人の建玉ではなく市場全体の持ち高を指しています。主語が「自分」ではなく「市場」に変わると、同じ言葉でも意味がまったく違ってきます。検索して用語集にたどり着いた方が混乱しやすいのは、この2つが区別されずに説明されているためです。

円キャリートレードのアンワインド(2024年8月)

野村證券の用語集は、低金利の円を借りて高金利通貨で運用する円キャリートレードを解消する場面を、アンワインドの代表例として挙げています(※11)。市場全体で積み上がった持ち高が一斉に巻き戻される現象です。

実際の破壊力は2024年8月に示されました。2024年8月5日の日経平均株価は前週末比4,451円28銭安の31,458円42銭で取引を終え、下落幅は1987年のブラックマンデー翌日を超える過去最大となりました(※12)。

ただし、ここには忖度なく書いておくべき留保があります。三井住友DSアセットマネジメントのレポートは「キャリー取引は、投機筋などが積極的に手掛けているとされていますが、実際の取引を正確に示すデータは存在していません」と明言しています(※13)。円キャリーの規模を断定的に語る記事は多いものの、運用会社自身がその前提を否定しているのです。規模の数字を見かけたら、何を根拠にした推計かを確認する姿勢が要るでしょう。

ボラティリティ売りのアンワインド(2018年2月・Volmageddon)

オプション・ボラティリティの文脈で最も教材になるのが、2018年2月5日のVolmageddonです。VIXの終値は2月2日の17.31から2月5日には37.32へ急騰し、ボラティリティ売りのETPであるXIVは1日で約97%下落して、その後償還されました(※14)。

CFA Instituteが発行するFinancial Analysts Journalに掲載された研究は、レバレッジ型ETPがVIX先物で大きなシェアを持っていたことがショックを増幅し、リバランス機構が正のフィードバックループを形成したと分析しています(※15)。ボラティリティを売り続けて溜まった持ち高が、一度の急騰で強制的にアンワインドされた事例だと言えます。

IVとHVの差から売り手の優位を測る考え方はオプション取引のVRPとは?で扱っていますが、Volmageddonはその優位が一瞬で反転し得ることを示した事例でもあります。

アンワインドできないポジションこそがリスク(LTCM)

1998年のLTCM(ロング・ターム・キャピタル・マネジメント)は、4か月弱で46億ドルの損失を出して破綻寸前に追い込まれました(※16)。最終的にニューヨーク連銀が仲介し、14の金融機関から36億ドルの救済を受けています(※16)。

LTCMの教訓は、理論の誤りよりも出口の不在にあります。畳もうとしても畳めない規模のポジションを持つこと自体が、リスクの本体でした。個人の建玉でも構図は同じで、板の薄い銘柄で大きく建てれば、畳みたいときに畳めない状態が再現されます。アンワインドは、建てる時点ですでに設計しておくものだと考えてください。

アンワインドのよくある誤解と注意点

やりがちな誤解
  • ITMだから権利行使が得、という思い込み。残った時間的価値を捨てることになる
  • アンワインド=円キャリーの話、という理解。それは市場全体を主語にした別の用法
  • ロールすれば損失を回避できるという発想。実態は損失確定の先送りになりやすい
  • 手数料の安さだけで執行コストを判断すること。本体はスプレッドとスリッページ
  • 含み益なら課税されないから安心、という誤解。アンワインドした年に総合課税で効いてくる
アンワインドを設計に組み込むコツ
  • 建玉を建てる前に「この条件が崩れたら畳む」という無効化条件を決めておく
  • 板の厚い限月・ストライクを選ぶ。出口の確保は入口の選択で決まる
  • 成行で叩かず、指値を挟んで分割して畳む
  • レッグを外す前に、解消後の損益図が裸の売りにならないか確認する
  • 年をまたぐ含み益は、確定させる年を意識して出口を設計する

ICHIZEN Capitalの視点|ヘッジのアンワインドを建玉から読む

ここまでは自分の建玉を畳む話でした。実務でもう一段効いてくるのが、他人のアンワインドを読むという視点です。マーケットメイカーがヘッジを畳む動きは、相場の値幅そのものに影響し得ます。

ICHIZEN Capitalは日次のオプション分析をnoteで公開しており、ヘッジのアンワインドは繰り返し論点になってきました。2026年2月12日の分析では、IVの低下と満期接近に伴うチャーム・バンナ由来のデルタ変動により、ディーラーがヘッジとして保有していたショートポジションの買い戻し(アンワインド)を機械的に迫られ、それが下値を支える要因として機能する可能性があると整理しています(※17)。

逆に、アンワインドされないまま残る建玉が上値を抑える場面もあります。2026年3月19日の分析では、ゴールドETF(GLD)の4月17日限・権利行使価格540のディープITMプットについて、このポジションがアンワインドされずに残っている限り、マーケットメイカーはデルタヘッジのために上方向への先物買いを削り続けることになると指摘しました(※18)。反転シナリオの条件として「540のディープITMプットが完全にアンワインドされ、上値への圧力が消えた時点」を挙げ、確認事項の筆頭にそのOI変化を置いています。

実際の検証手段はシンプルで、該当ストライクのOI(建玉)が減っているかどうかを日次で追うことに尽きます。OIが減っていればアンワインドが進んでいる証拠になります。ただし断定は禁物です。OIの増減だけでは、買い手と売り手のどちらが減らしたのか、ディーラーがロングとショートのどちらを保有していたのかまでは特定できません。読めるのは「建玉が減った」という事実までで、そこから先は確度の異なる推測になります。OIの読み方はオプションのOI(オープンインタレスト・建玉)とは?で詳しく整理しています。

アンワインドには周期性もあります。2026年3月20日の分析では、週間の構造転換を「高値圏でのコール積み上げ→下落局面での段階的アンワインド→OPEX当日の最終清算→次のOPEXに向けた再構築」という流れで整理しました(※19)。OPEX当日には、権利行使価格485〜510のディープITMプット計1万4,750枚が数分間で処理されたことも記録されています。満期に向けて建玉が畳まれ、次の満期に向けて建て直されるサイクルが、実際のフローとして観測できるのです。

ここで忖度なく付け加えておくと、こうしたヘッジフローは相場の方向を決めるものではなく、方向を増幅したり抑制したりし得る要因にとどまります。大口がアンワインドしたから必ず下がる、といった因果で語れるものではありません。GEXやディーラーヘッジの詳細はオプション取引のガンマエクスポージャー(GEX)とは?で扱っています。

アンワインドは「損益を確定させる」課税イベント

見落とされがちですが、アンワインドは税務上のスイッチでもあります。含み益のまま保有していれば課税されませんが、畳んだ瞬間にその年の所得として確定するのです。

ここで多くの方が誤解します。国税庁のFAQ2-12は、暗号資産の証拠金取引について「租税特別措置法に規定する申告分離課税(先物取引に係る雑所得等の課税の特例)の適用はありませんので、総合課税により申告していただくことになります」と明記しています(※1)。

さらに踏み込んだ説明も同FAQにあります。暗号資産の証拠金取引はFXと同様に金融商品取引法上の金融商品先物取引等に該当するものの、租税特別措置法の規定により申告分離課税の対象から除かれている、という整理です(※1)。同じ枠組みの取引でありながら、FXの20.315%は使えず、最大55%の総合課税になるという非対称が残っているのです。この点は2026年7月時点の取扱いであり、有利な誤解をしたまま出口を設計すると手取りが大きく狂います。

なお2025年12月に公表された令和8年度税制改正大綱では、暗号資産デリバティブ取引を含めた申告分離課税化の方針が示されています(※20)。ただし大綱は方針であって成立した法律ではありません。2026年7月時点で適用される税制はあくまで総合課税です。税率や適用開始時期の詳細は仮想通貨の税金はいくらから?で整理しています。

水野 倫太郎

税務の観点では、アンワインドは「いつ損益を確定させるか」を自分で選べる数少ない操作です。総合課税は他の所得と合算されるため、同じ利益でもその年の所得水準で手取りが変わります。含み益を年内に確定させるか翌年に回すかは、税率の階段を見てから決めるのが合理的でしょう。損失が出ている建玉を年内に畳んで通算する判断も含めて、出口は税引後で考えることをおすすめします。

オプションのアンワインドに関するよくある質問

アンワインドとは何ですか?

保有しているポジションを反対売買で解消し、建玉をゼロに戻すことです。英語の「unwind(ほどく・巻き戻す)」が語源で、買い建てなら売り、売り建てなら買い戻して畳みます。大和証券の用語集でも「これまでのポジション(持ち高)を解消する動き」と定義されています。

アンワインドと反対売買は同じ意味ですか?

ほぼ同義と考えて差し支えありません。日本取引所グループの正式用語は「反対売買」で、買い建ての決済を転売、売り建ての決済を買戻しと呼びます。アンワインドは市場の慣用語で、複数レッグや大口の複雑な解消に使われる傾向があるとされますが、法令上の厳密な区別ではありません。

アンワインドと権利行使・権利放棄はどう違いますか?

受け取れるものが違います。アンワインドは満期前でも実行でき、時間的価値を含めた市場価格全額を回収できます。権利行使で受け取れるのは本質的価値だけで、残った時間的価値は放棄することになります。権利放棄は満期にOTMだった場合で、支払ったプレミアムがそのまま損失です。

アンワインドとロールの違いは何ですか?

ロールは「アンワインド+新規建て」を同時に実行する操作です。アンワインドは畳んで終わりですが、ロールは畳んだうえで限月やストライクを変えて建て直します。相場観が生きているなら調整としてのロール、前提が崩れたならアンワインドを選ぶのが基本的な使い分けになります。

オプションは満期まで持つのとアンワインドするのはどちらが得ですか?

時間的価値が残っているならアンワインドが有利になる場面が多いと言えます。満期前のオプション価格は本質的価値に時間的価値を上乗せした水準にあるため、売却すればその上乗せ分も回収できるためです。ただし流動性が薄くスプレッドが広い場合は、回収できるはずの価値を執行コストで失うこともあります。

円キャリートレードのアンワインドとオプションのアンワインドは同じですか?

違います。主語が異なるためです。オプションのアンワインドは個人が自分の建玉を反対売買で畳むミクロな行為を指します。円キャリーのアンワインドは、市場全体で積み上がった持ち高が一斉に解消されるマクロな現象です。証券会社の用語集の多くは後者の文脈だけで説明しているため、混乱の原因になっています。

アンワインドの反対語は何ですか?

明確な定訳は確認できません。実務上は「ポジションの構築」「建玉の積み上げ」がアンワインドの逆の動きにあたります。オプションの文脈では、新規に建玉を建てることを「オープン」、畳むことを「クローズ」と呼び分けるのが一般的です。

流動性が薄くてアンワインドできないときはどうすればいいですか?

分割して指値で畳む方法が基本です。加えて、プット・コール・パリティを使って合成ポジションを組むことでビッド・アスク・スプレッドを圧縮し、執行を改善できる場合があります。根本的には、板の薄い限月やストライクで大きく建てないという入口の設計が有効でしょう。

暗号資産オプションでアンワインドした利益にはどんな税金がかかりますか?

2026年7月時点では総合課税の対象で、雑所得として申告します。国税庁FAQ2-12は、暗号資産の証拠金取引に申告分離課税の適用はないと明記しています。FXと同じ金融商品先物取引等に該当しながら20.315%の分離課税は使えず、他の所得と合算して最大55%の税率になる点に注意が必要です。

ディーラーのヘッジのアンワインドはどこで確認できますか?

該当する権利行使価格のOI(建玉)の増減を日次で追うのが基本です。OIが減っていれば建玉が畳まれたことが分かります。ただしOIの増減だけでは、買い手と売り手のどちらが減らしたのかまでは特定できません。断定せず、あくまで推測の材料として扱うことが大切です。

まとめ

アンワインドとは、保有ポジションを反対売買で解消し、建玉をゼロに戻すことです。日本取引所グループの正式用語でいう反対売買にあたり、オプションの3つの出口のうち唯一、満期を待たずに実行できる手段でもあります。

検索して用語集にたどり着くと円キャリーの解説ばかりが出てきますが、それは市場全体を主語にした別の用法です。自分の建玉を畳むミクロの話と、市場全体の持ち高が崩れるマクロの現象を切り分けて理解することが、この言葉を正しく使う第一歩になります。

実務では3点を押さえておきたいところです。暗号資産オプションはヨーロピアン式で配当もないため、満期前の出口は実質アンワインド一択になります。コストの本体は手数料ではなくスプレッドで、畳みたいときほど板は薄くなりがちです。そして畳んだ瞬間に損益が確定し、2026年7月時点では総合課税の対象になります。

LTCMが示したのは、畳めない規模のポジションを持つこと自体がリスクだという教訓でした。アンワインドは畳むときに考えるものではなく、建てる時点で設計しておくものだと捉えてみてはいかがでしょうか。まずは保有中の建玉について、どの条件が崩れたら畳むのかを1つ書き出すところから始めると、出口の精度は確実に上がると言えます。

参考文献

※1 国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」2-12 暗号資産の証拠金取引(https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/virtual_currency_faq_03.pdf
※2 大和証券「金融・証券用語解説集:アンワインド」(https://www.daiwa.jp/glossary/YST2929.html
※3 TradeStation Help「What is Unwinding a Position?」(https://help.tradestation.com/10_00/eng/tradestationhelp/options_positions/what_unwinding_position.htm
※4 JPX 東証マネ部!「オプション取引の決済方法」(https://money-bu-jpx.com/basic/derivatives/options/settlement/
※5 Options Playbook「Early Options Exercise」(https://www.optionsplaybook.com/managing-positions/early-options-exercise
※6 ClearTax「Unwinding a Position」(https://cleartax.in/glossary/unwinding-a-position
※7 Schaeffer’s Research「Rolling Options Out, Up, and Down」(https://www.schaeffersresearch.com/education/options-basics/options-trading-mechanics/rolling-options-out-up-and-down
※8 Deribit Insights「What is an Options Contract」(https://insights.deribit.com/education/what-is-an-options-contract/
※9 Seeking Alpha「Tracking The Trade: Winding Down A Position Intelligently」(https://seekingalpha.com/article/4045158-tracking-trade-winding-down-position-intelligently
※10 Ventura Securities「What is Unwinding a Position?」(https://www.venturasecurities.com/blog/what-is-unwinding-a-position/
※11 野村證券「証券用語解説集:アンワインド」(https://www.nomura.co.jp/terms/japan/a/A02104.html
※12 日本経済新聞「日経平均、最大の下げ幅4451円安 世界同時株安」2024年8月5日(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB0556M0V00C24A8000000/
※13 三井住友DSアセットマネジメント「市川レポート」2024年8月22日(https://www.smd-am.co.jp/market/ichikawa/2024/08/irepo240822/
※14 Six Figure Investing「What Caused the February 5th, 2018 Volatility Spike?」(https://www.sixfigureinvesting.com/2019/02/what-caused-the-february-5th-2018-volatility-spike-xiv-termination/
※15 CFA Institute / Financial Analysts Journal「Volmageddon and the Failure of Short Volatility Products」Vol.77 No.3, 2021(https://rpc.cfainstitute.org/research/financial-analysts-journal/2021/volmageddon-failure-short-volatility-products
※16 Federal Reserve History「Near Failure of Long-Term Capital Management」(https://www.federalreservehistory.org/essays/ltcm-near-failure
※17 ICHIZEN Capital note「【2月12日】雇用統計が告げた強い米国と0DTE市場のレジーム・チェンジ」(https://note.com/ichizen_capital/n/n0455b8c11663
※18 ICHIZEN Capital note「【3月19日】ガンマフリップ際Opex前での調整下落継続なるか」(https://note.com/ichizen_capital/n/n9488d190cf80
※19 ICHIZEN Capital note「【3月20日】原油100ドルが変えた市場の構造——そしてゴールドが「初めての領域」に踏み込んだ日」(https://note.com/ichizen_capital/n/nd6627ef0d980
※20 長島・大野・常松法律事務所「令和8年度税制改正大綱の概要」2025年12月25日(https://www.nagashima.com/publications/publication20251225-2/)※税制改正大綱は方針であり、2026年7月時点で適用される税制は総合課税

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