JPYCが1ドル49円に|公式が一時発行停止・アービトラージは儲かるのか【2026年9月】

1円と連動するはずの通貨が、3円で売られました。2026年9月17日、日本円ステーブルコイン「JPYC」が韓国のUpbitに上場し、1円のはずの値段が最大で4.2倍まで跳ね上がりました。
これをドル円に読み替えると、一時1ドル=49円です。実勢の155.58円に対して、1ドルが3分の1以下の円で買える状態が起きました。
この「1ドル49円」を受けて、X(旧Twitter)では「日本円をJPYCに換えるだけで2〜3倍になる」という趣旨の投稿が相次ぎました。1円で発行したJPYCが市場で2〜3円で売れるなら、たしかに理屈は合います。ただ、本当にそんなに簡単な話なのか——この記事では、そこもチェーンの実データで検証します。
「忙しい人向け」ニュース要約
- 1円のはずのJPYCが最大4.2倍。ドル円換算で一時1ドル49円まで振れた
- 当社のオンチェーン調査で、新規発行は62日間ゼロ・発行体のイーサリアム在庫は2,082枚まで枯渇していた(=供給が止まっていた)
- 公式が同日、イーサリアム(20時34分)とPolygon(22時19分)の発行を一時停止。62日ぶりの大量発行で供給が戻ると価格差は4.23倍→1.32倍へ縮小
- アービトラージ(1円で作って高値で売る)は、”作る”側が発行停止・在庫枯渇で詰まり、価格差は供給が戻るまで残った
木田 陽介上場そのものより、ついた値段を見てください。
1円のはずが2倍です。飛びつくと戻る過程で損をします。
1円のはずのJPYCが、3円で売られた
JPYCは1枚が1円のステーブルコインです。発行体が日本円と1対1で交換するので、値上がりする設計ではありません。
その1円が、2026年9月17日に3円を超える値段で売買されました。Uniswapの画面がこちらです。


注目してほしいのは価格そのものより、下に並ぶ数字です。
- TVL(板の厚み) 1.4万ドル
- 1日の取引量 213.5万ドル
- 52週高値 0.00801ドル(=この日が上場来高値)
板の厚みの150倍が1日で売買されています。これだけ回れば、1円に固定されているはずの通貨でも値段は飛びます。



円が強くなったのではありません。
JPYCという「円の引換券」だけが高く売られました。
JPYC/USDTが示すドル円は、一時1ドル49円だった
「3円」では実感が湧きにくいので、ドル円に読み替えてみます。JPYCは1枚1円ですから、1ドルが何JPYCで買えるかがそのまま市場の付けたドル円になります。
ドル建て(USDT)のペアで当日の推移を追ったものがこちらです。


実勢のドル円は155.58円です。それが取引開始の直後に1ドル48円まで落ちました。1ドルが3分の1以下の円で買える状態です。その後21時38分の新規発行を境に戻り始め、9月18日0時台には140円前後まで回復しています。
もうひとつ見てほしいのが18時より前です。Ethereum側は上場が告知された午前中から120〜140円で揺れています。取引開始を待たず、告知の時点ですでに歪みが始まっていました。
ドル建て(USDT)のプールも見ておきます。こちらはプールごとの開きがさらに大きく出ます。
| チェーン | 版 | プール | ドル円換算 | 24時間の出来高 |
|---|---|---|---|---|
| Polygon | v4 | JPYC/USDT 2.85% | 70.2円 | 162万ドル |
| Polygon | v4 | JPYC/USDT 3.21% | 63.3円 | 94万ドル |
| Polygon | v4 | JPYC/USDT 2.315% | 74.6円 | 23万ドル |
| Ethereum | v4 | JPYC/USDT 5% | 52.0円 | 20万ドル |
| Ethereum | v4 | JPYC/USDT 3% | 139.0円 | 15万ドル |
| Ethereum | v4 | USDT/JPYC 0.3% | 71.8円 | 12万ドル |
同じJPYCなのにプールによって52円から139円まで開いており、ひとつの相場にまとまっていません。
そしてバージョンの欄に注目してください。ぜんぶv4です。
当社がJPYCのプールを全チェーンで洗い出したところ、122件のうちUSDT建ては46件あり、その内訳はこうなっていました。
| チェーン | Uniswapのバージョン | プール数 |
|---|---|---|
| Ethereum | v4 | 19件 |
| Polygon | v4 | 13件 |
| Avalanche | v4 | 10件 |
| Kaia | v3 | 3件 |
| Kaia | v2 | 1件 |
主要3チェーンのUSDT建ては、すべてv4です。v1からv3には1件もありません。残っているのはKaiaのv2とv3だけで、そちらは流動性がほぼゼロです。
理由は手数料の刻みにあります。上の表の手数料を見てください。2.85%・3.21%・2.315%・2.568%と半端な数字が並んでいます。
- v3は手数料が0.01%・0.05%・0.3%・1%の固定刻みだけ
- v4は任意の手数料でプールを作れる
つまりこれらのプールは、上場を受けて当日に作られたものです。当社が作成時刻を調べると、出来高トップのPolygonのプールは19時31分、次点は18時48分に作られていました。取引開始の18時より後です。
統一された大きな市場があるのではありません。上場の当日に、小さな池が20個以上バラバラに立った状態です。値段が52円から139円まで揃わないのは、そのためです。
きっかけは韓国Upbitへの上場
値段が動き出した理由ははっきりしています。2026年9月17日、韓国最大手の取引所UpbitがJPYCの取扱いを始めました。円建てのステーブルコインが韓国の取引所に載るのは初めてです。
9時48分に上場が告知され、取引は18時に始まりました。開始直後に買いが一気に集中し、ウォン建ての値段は理論値の最大4.2倍まで跳ね上がっています。


韓国の経済メディアEBNは見出しに「스테이블코인 가격 이상 과열」(ステーブルコイン価格の異常過熱)と掲げ、急騰の理由を「新規上場直後に取引が集中した影響」と説明しました。上場そのものへの評価というより、買いが一点に集まったことによる需給の偏りという見方です。
ただしUpbitは韓国の居住者向けのサービスです。口座開設には韓国の本人確認と韓国の銀行口座が必要で、日本に住む個人は使えません。この記事でウォン建ての値段を追わないのはそのためです。
見るべきは、誰でもアクセスできるドル建て(USDT)の市場です。そしてそちらにも歪みは広がりました。



韓国の値段は日本から取りにいけません。
追うべきはUniswapのドル建てです。
なぜ1円が3円になったのか|3つが同時に起きた
先に結論を書きます。値段が跳ねただけでは、ここまで続きません。本来なら、高くなった時点で誰かが安く作って売り、差は自然に縮むからです。
それが起きなかったのは、3つのことが同じ日に重なったためです。
| 何が起きたか | 内容 | 当社が確認した事実 |
|---|---|---|
| ① 需要が一点に集中した | Upbit上場で買いが一気に入った | ウォン建ては理論値の最大4.2倍まで上昇 |
| ② 供給がまったく増えなかった | 新しいJPYCが作られなかった | 新規発行は62日間ゼロ。発行体のイーサリアム在庫は2,082枚。当日2チェーンで発行停止 |
| ③ 市場が分裂していた | 受け皿が小さな池に分かれていた | USDT建ては46プール。多くが上場当日に新設。値段は52円〜139円でバラバラ |
ひとつずつ見ると、どれも決定的ではありません。需要が増えるだけなら供給が追いつきます。供給が止まっても需要がなければ値段は動きません。市場が分かれていても、量が十分なら値段は揃います。
ところが3つが同時に起きると、値段を戻す力がどこにも残りません。買いたい人はいる。売るモノは作れない。受け皿は小さく分かれている。この状態で値段が上に外れるのは、むしろ自然な結果です。
- 値段が1円より高くなる
- 誰かがJPYC EXで1円で発行する
- それを高い市場で売る
- 売りが増えて値段が1円へ戻る
この流れの2番目で止まりました。発行できなければ、あとの手順はすべて進みません。



値段を戻すのは「売り」です。
その売りを作る入口が、閉じていました。
ここから先は、この3つを順に確かめていきます。すべてブロックチェーンの公開データで、誰でも同じ手順で再現できます。
上場しても価格は上がらない|代表本人が指摘
ここは誤解されやすいので、先に押さえてください。JPYCは上場しても値上がりを期待する銘柄ではありません。JPYCの岡部代表本人が、上場当日にこの点を指摘しています。
投稿では「ステーブルコインは取引所に上場しても上がりませんよ」と述べ、値が動いている場合はbotの誤認や初期流動性狙いではないかという見方を示しています。
理由は単純です。JPYCは日本円と1対1で交換される設計で、発行体が同じ価値で発行・償還します。1JPYC=1円から離れれば、その差を埋める取引が働きます。値上がりを前提にした設計ではありません。
- 変わる|交換できる場所と通貨が増える(ウォン建てが初)
- 変わる|流通量と認知が広がる
- 変わらない|1JPYC=1円という価値の基準
- 変わらない|値上がり益を狙う対象ではないこと
上場のニュースを見て「買えば上がる」と受け取るのは誤りです。今回の意味は価格ではなく、円のステーブルコインが使える場所が広がったことにあります。
ここまでは「上がらない」という話でした。ただし今回のケースは、ステーブルコインならではのリスクも同時に示しています。
ステーブルコインは本来、連動する資産(JPYCなら1円)にぴたりと張り付くのが前提です。それが今回、需給の偏りだけで一時的に1円から大きく外れました。連動が外れるこの現象を「デペグ」と呼びます。
正確にいうと、ずれたのは二次流通(取引所やUniswapで売買される場面)の価格です。発行体が日本円と交換する1JPYC=1円の基準そのものは動いていません。それでも、実際に売買される値段は需給しだいで大きく振れることが、今回はっきり示されました。
今回は1円のものが高く売れる「上振れ」で、日本の利用者にとっては得する方向でした。しかし市場価格が1円を割る「下振れ」も、同じ理屈で起こり得ます。ステーブルコインでも売買値は動くという事実が、今回のケースで証明された形です。
ただし、ここがJPYCの安心材料です。JPYCは日本円と1対1で償還されるため、市場で1円を割っても、発行体に戻せば1円に戻せます。下振れには「償還という床」があるということです(詳しくは後述の「1円という『床』がある」)。
もっとも、床が効くには前提があります(発行体の信用・本人確認・1回100万円の上限など。詳しくは後述の「1円という『床』がある」)。「ステーブルだから絶対に安全」ではなく、上に飛びつくのは危険、下で拾うのは相対的に低リスクという非対称を理解して使うのが正確です。
ここからは、上で挙げた「3つの原因」をチェーンの生データで裏づける検証です。要点は次の3つで、すべて公開データで確認できます。
- 新規発行は62日間ゼロだった(供給が増えていない)
- 発行体のイーサリアム在庫は2,082枚まで枯渇していた
- 上場当日、公式が2チェーンで発行を一時停止し、その夜の大量発行で復旧した
結論(供給が戻って収束した話)だけでよければ、「その後|供給が入り、価格差は縮んだ」へ飛ぶで構いません。
【検証①】新規発行は62日間ゼロ、そしてこの日に再開した
ここからが本題です。値段が1円から離れたなら、発行体が新しく発行して高い市場で売れば差は埋まります。1円で作れるものが3円で売れるなら、供給を増やすのが自然だからです。
そこで当社は、JPYCのコントラクト(4チェーン共通)にパブリックノードから直接アクセスし、発行(ミント)と償還(バーン)の記録を数えました。
| チェーン | 9月17日の送金 | 新規発行 | 償還 |
|---|---|---|---|
| Ethereum | 11,316件/15.5億JPYC | 0件 | 0件 |
| Polygon | 22,573件 | 0件 | 0件 |
| Avalanche | — | 0件 | 0件 |
| Kaia | 0件 | 0件 | 0件 |
送金は激しいのに、発行だけが1件もありません。Ethereumでは48時間で15.5億JPYCが動いています。Ethereum上にある全JPYC(11.1億)の1.4倍が回転した計算です。
遡って調べると、直近の発行は2026年7月17日にAvalancheで8,000万JPYCを1回きりでした。JPYCは先にまとめて発行して在庫から払い出す方式のため、ミントが0件でも在庫が残っていれば払い出しは続きます。つまり「62日間ミントなし」だけでは、サービスが止まっているとは言い切れません。
そしてその在庫が尽きた夜に、62日ぶりのミントが行われました。当社が確認した時刻と数量は次のとおりです。
| 時刻 | チェーン | 新規発行 | 送り先 |
|---|---|---|---|
| 21時37分59秒 | Ethereum | 5億9,000万JPYC | 発行体の財務ウォレット |
| 21時39分06秒 | Polygon | 13億9,000万JPYC | 同上 |
わずか1分7秒の間に、合計19億8,000万JPYCが新しく作られました。金額にして約19.8億円分です。62日間1枚も作られなかったあとに、これだけの量が一度に発行されています。
【検証②】発行体の在庫は2,082枚まで枯れ、この夜に積み増された
7月17日の発行を受け取ったウォレット(発行体の手元在庫)を追うと、上場当日にイーサリアムの在庫が2,082枚まで払い出されていました。日本円にして約2,082円分、実質ゼロです。
そしてUpbitがJPYCの入出金に対応しているのはイーサリアムだけ——最も歪んだチェーンで、供給の余力が尽きていたわけです(在庫の薄いチェーンほど価格が円高側に振れていました)。その在庫が、21時37分の62日ぶりのミントで一気に積み増されます。
| チェーン | 枯渇時(20時台) | 補充後(9月18日0時台) |
|---|---|---|
| Ethereum | 2,082枚 | 2億1,518万枚 |
| Polygon | 1億8,571万枚 | 10億3,087万枚 |
| Avalanche | 1億5,961万枚 | 1億2,216万枚 |
【検証③】公式が発行を一時停止し、その夜のうちに復旧させた
そして2026年9月17日20時34分、JPYC社の公式アカウントが発表しました。
イーサリアム上のJPYC発行予約が、一時停止されました。状況は「一時停止中(原因調査中)」とされています。
さらに1時間45分後の22時19分、2本目が出ます。
Polygonでの発行予約も停止されました。こちらも「原因調査中」です。主要2チェーンでの発行が、同じ日のうちに止まったことになります。
公式はいずれも理由を「原因調査中」としており、在庫や需要の急増との関係は説明されていません。ただ手元のイーサリアム在庫がほぼゼロになった直後に、主要2チェーンの発行が立て続けに止まったという順序は、チェーン上のデータから確認できます。
これは価格差にとって決定的です。新しくJPYCを作れなければ、高い市場へ供給を届けられません。
ただし停止は長くは続きませんでした。同じ夜のうちに、両方とも復旧しています。
| チェーン | 停止 | 復旧 | 停止していた時間 |
|---|---|---|---|
| Ethereum | 20時34分 | 23時43分 | 約3時間9分 |
| Polygon | 22時19分 | 翌0時22分 | 約2時間3分 |
そして停止していた時間帯のちょうど真ん中、21時37分と21時39分に、前述の62日ぶりの大量発行(19.8億JPYC)が行われています。ここでも、時系列が一致しているという事実だけを記します。



止まったのはイーサリアムとPolygonの2つです。
他チェーンについて公式の告知は出ていません。
その後|供給が入り、価格差は縮んだ
ここまでが9月17日に起きたことです。では供給が戻ったあと、値段はどうなったのか。翌9月18日0時台の数字がこちらです。
| 見るもの | ピーク時(9月17日) | 9月18日0時台 |
|---|---|---|
| Upbitのウォン建て | 理論値の4.23倍 | 1.32倍 |
| Uniswapのドル円 | 1ドル49円 | 1ドル122円 |
| 主要プールの厚み | 約10.3万ドル | 約35.6万ドル |
| 発行体の在庫(Ethereum) | 2,082枚 | 2億1,518万枚 |
供給が入ったとたん、価格差は一気に縮みました。ウォン建ては4.23倍→1.32倍、ドル円は49円→122円、板の厚みも3.4倍になりました。値段が戻ったのは「熱が冷めたから」だけではなく、売るためのJPYCが市場に届いたからです。前半で挙げた3原因のうち②供給不足が解消し、見立てが結果で裏づけられた形です。
ただしまだ実勢の155.58円には戻っていません。9月18日0時台で1ドル122円、実勢の8割弱です。完全に埋まるかは、この先の供給しだいです。
この2日間に起きたこと|時系列でまとめ
上場から値段が戻るまで、およそ15時間の出来事でした。当社が確認したものを時系列で並べます。
| 時刻 | 出来事 | 確認方法 |
|---|---|---|
| 9/17 09時48分 | UpbitがJPYCの上場を告知 | Upbit公式 |
| 10時02分 | イーサリアムにJPYC/USDTプールが新設される | 当社調査 |
| 18時00分 | Upbitで取引開始 | Upbit公式 |
| 18時05分 | ウォン建ての初値18.0ウォン(理論値の2.03倍) | Upbit公開API |
| 18時45分 | Uniswapのドル円が最安 1ドル48円 | 当社調査 |
| 19時20分 | ウォン建てが高値37.6ウォン(4.23倍) | Upbit公開API |
| 18〜20時 | 発行体のイーサリアム在庫が2,082枚まで払い出される | 当社調査 |
| 20時34分 | イーサリアムの発行予約を一時停止 | JPYC公式 |
| 21時38分 | 62日ぶりの新規発行19億8,000万JPYC | 当社調査 |
| 22時19分 | Polygonの発行予約も一時停止 | JPYC公式 |
| 23時43分 | イーサリアムの発行予約が復旧 | JPYC公式 |
| 9/18 00時22分 | Polygonの発行予約が復旧 | JPYC公式 |
| 00時38分 | ウォン建て1.32倍/ドル円122〜140円まで回復 | 当社調査 |
並べると値段の山と、供給が止まっていた時間が重なり、新規発行のあとに戻り始めたことがわかります。ただし公式は理由を「原因調査中」としており、当社が示せるのは時系列が一致しているという事実までです。
JPYCのアービトラージは儲かるのか|3つの関門
ここまで読むと、当然こう思うはずです。「1円で発行して3円で売れば、丸儲けでは?」
これはアービトラージ(裁定取引)と呼ばれる、価格差を取る手法です。理屈のうえでは正しく、しかもこの取引が行われれば価格差は自然に消えます。高いところに売りが出るからです。
実際、すでにJPYCを持つ人が、高くなったUniswapで売る動き自体は活発でした。Uniswapの出来高は板の厚みを大きく上回っています(USDTペアで14倍、一部プールは100倍超)。高いところには、ちゃんと売りが出ていたわけです。
それでも価格差が数時間にわたって開いたままだったのは、差を完全に埋めるには「1円で“新しく作って”売る」を大量に回す必要があり、そこが詰まっていたからです。関門は主に3つでした。
| 関門 | 内容 | 当社が確認した事実 |
|---|---|---|
| 1.「作る」側が詰まっていた | 1円で新しく発行して売れば差は縮むが、その新規発行が増えなかった | 新規発行は62日間ゼロ。発行体のイーサリアム在庫は2,082枚。当日は2チェーンで発行停止 |
| 2. 売り先(Uniswap)の板が薄い | DEXの厚みが足りず、大量に売ると自分で価格を崩す | USDTペアの厚みは3チェーン合計23.8万ドル。24時間の出来高338万ドルは厚みの14倍 |
| 3. 上限・手数料・時間 | 大量・即時には作れず、コストや時間もかかる | 国内発行は1回100万円まで。送金手数料や入金反映の待ち時間もかかる |
決定的なのは1つめです。「1円で新しく作って売る」の“作る”側が、発行停止と在庫枯渇で詰まっていました。チェーン上に新規発行の記録が62日間1件もないのが、その裏づけです。
つまり、既存のJPYCを売る動きはあっても、差を完全に埋めるほど「新しく作って売る」裁定は回らなかったということです。だから価格差は、供給が戻るまで開いたまま残りました。
さらに個人の場合、送金手数料や入金反映の待ち時間、その間に価格差が消えるリスクも重なります。価格差が3倍あっても、手元に利益が残るとは限りません。



買いたい量に対して、新しく作れるJPYCが足りていません。
だから値段が上に外れたまま、戻りにくかったのです。
なお当社の調査でわかるのはミントが起きていないという事実までです。JPYC社が発行を意図的に止めているのか、在庫からの払い出しで足りているのか、イーサリアムへの補充が追いついていないだけなのかは、公開データからは区別できません。この点は断定を避けます。
どこを見れば収束がわかるか
この歪みが解消に向かうかどうかは、次の3つを見ればわかります。いずれも公開データで誰でも確認できます。
| 見るもの | 解消に向かうサイン |
|---|---|
| 新規発行(ミント) | 62日ぶりに再開し、供給が増える |
| 発行体の在庫 | イーサリアムの手元残高が積み増される |
| Uniswapのドル円 | 80円台から155円に近づく |
そもそもJPYCとは|基本情報
今回はじめてJPYCを知った方向けに、前提を整理します。JPYCは日本円と1対1で交換される、円建てのステーブルコインです。暗号資産とは法律上の区分が異なります。
| 発行体 | JPYC株式会社 |
|---|---|
| 価値の基準 | 1JPYC=1円。発行と償還のときに日本円と1対1で交換 |
| 法律上の区分 | 資金決済法上の電子決済手段。暗号資産ではない |
| 登録 | 2025年8月に資金移動業の登録。2025年10月に発行開始 |
| 対応チェーン | Ethereum・Polygon・Avalanche・Kaia |
| 国内の上限 | 発行・償還は1回あたり100万円まで |
ポイントは「値上がりを狙うもの」ではなく「円のまま送金・決済に使うもの」という位置づけです。ビットコインのように価格が動く前提の資産とは、目的がまったく違います。
実際にどう使われているかは、JPYCの活用事例まとめ|事業者と個人のユースケース・企業/自治体の導入例で解説しています。送金・決済・自治体の導入例まで具体的に整理しているので、用途から知りたい場合はこちらが早いです。
また、日本の円ステーブルコインはJPYCだけではありません。SBIが発行するJPYSCとの違いは別記事で整理しています。裏付け資産の運用方法が異なる点が比較の軸になります。
日本に住む人がやることは2つだけ
ここまで韓国の話が続きましたが、前述のとおり日本に住む人にUpbitは関係ありません(口座開設に韓国の本人確認と銀行口座が必要)。
では日本の人は何をすればいいのか。やることは2つだけです。
| やること | どこで | 内容 |
|---|---|---|
| ① 発行を申し込む | JPYC EX(公式サイト) | 日本円を入金して1JPYC=1円で受け取る。逆に日本円へ戻す償還も同じ場所 |
| ② 交換する | Uniswapなどの分散型取引所 | 受け取ったJPYCを他の通貨と交換する。誰でも使える |
海外の取引所に口座を作る必要も、韓国の価格を追いかける必要もありません。発行は公式サイト、交換はUniswap。これで完結します。
ただし2026年9月17日の時点で、イーサリアムとPolygonの発行は止まっています(20時34分と22時19分の公式発表)。いま新しく発行する場合は、この2つが使えません。
- JPYC EXでチェーンを選んで発行する
- Rabbyなどのウォレットに受け取る
- そのままUSDTなどへスワップする
問題はチェーンの選択です。9月17日時点で公式が停止を告知しているのはイーサリアムとPolygonの2つです。残るAvalancheとKaiaについては告知が出ていませんが、動いている保証もありません。
実際に使う前に、JPYC EXの画面と公式アカウントの最新の告知を必ず確認してください。復旧の案内も同じ場所に出ます。
- イーサリアム 発行停止中(20時34分 公式告知)
- Polygon 発行停止中(22時19分 公式告知)
- Avalanche・Kaia 停止の告知なし(動作は要確認)
発行さえできれば、PolygonはJPYCの総供給が37.6億といちばん多く、USDT建てのプールも出来高が最大です。手数料も安いので、復旧後は実務上ここが本線になります。
選択肢として、Polygonが復旧したときの具体的な流れを置いておきます。
| 手順 | やること |
|---|---|
| ① | JPYC EXでPolygonを選んで発行を申し込む |
| ② | Rabbyなどのウォレットで受け取る |
| ③ | UniswapでPolygonのUSDTへスワップする |
これだけで完結します。海外の取引所は一切使いません。ウォレットはRabbyに限らず、Polygonに対応していてUniswapにつながるものであれば何でも構いません。
なおチェーンの選択だけは間違えないでください。発行時に選んだネットワークと、送り先・スワップ先のネットワークは揃える必要があります。取り違えると着金せず、取り戻せない可能性があります。
- Upbitに口座を作る(そもそも作れません)
- 韓国の値段に合わせて売買する
- 高くなったJPYCを買いに行く
1円という「床」がある|下に割れても戻せる設計
ここがJPYCのいちばん大事な性質です。JPYCは発行体が日本円と1対1で償還します。つまり1JPYCはいつでも1円に戻せるという前提で設計されています。
この性質は、値段が下に割れたときに効きます。
| Uniswapでの値段 | 償還すると | 結果 |
|---|---|---|
| 1円より安い(例 0.95円) | 1円で戻せる | 差額が利益になる |
| 1円ちょうど | 1円で戻せる | とんとん |
| 1円より高い(例 3円) | 1円にしかならない | 差額が損になる |
下には償還という床があります。市場で1円を割っても、償還すれば1円です。だから安く買う側にはリスクが小さい設計になっています。
危ないのは上で買うほうです。今回のように3円で買ってしまうと、償還しても1円にしかなりません。床はあっても天井はないということです。



1円より安いときに拾うのは理にかなっています。
1円より高いときに買うのが、いちばん危ない使い方です。
ただし「絶対に損をしない」わけではありません。床が効くのは次の条件がそろったときです。
- 発行体が償還に応じられること(発行体の信用リスクは残ります)
- JPYC EXの口座を持っていること(本人確認が必要です)
- 償還の上限(1回100万円)の範囲に収まること
- 送金手数料を差し引いても差額が残ること
JPYCは日本円の預金と国債で裏付けられていると説明されていますが、裏付け資産そのものの健全性は利用者が直接確認できません。そこは前提として置いたうえで使うものです。
よくある質問
検索で多い疑問に、2026年9月17日時点の事実でお答えします。
JPYCはUpbitに上場したのですか?
はい。2026年9月17日18時に取引が始まりました。KRW・USDTの2市場が動いており、BTC市場は18時6分の時点でまだ約定していません。開始は12時から15時、さらに18時へと二度延期されています。
いつから取引できますか?
2026年9月17日18時に始まりました。当初は12時の予定でしたが、15時、18時へと二度延期されています。同時発表のPYUSDは予定どおり12時に開始していました。
なぜ1円のはずが2倍の値段になっているのですか?
買い手が偏っているためです。2026年9月17日18時36分時点でウォン建ては理論値の3.61倍、ドル建ては1.56倍で、売買代金の差は約73万倍あります。JPYCの価値そのものは1円のままで、発行体が日本円と1対1で償還する設計は変わりません。高値で買っても、その価格で円に戻せるわけではありません。
日本からUpbitでJPYCを買えますか?
Upbitは韓国の取引所で、日本居住者が口座開設して利用できるかは別の問題です。今回の上場は、日本の個人がすぐに使えるようになる話ではありません。
どのネットワークで送金すればいいですか?
イーサリアムのみです。JPYCはPolygon・Avalanche・Kaiaでも流通していますが、Upbitはイーサリアム以外に対応していません。別のチェーンで送ると着金せず取り戻せない可能性があります。
韓国ウォン建てのペアは何が初めてなのですか?
JPYCにとって、韓国ウォンと直接交換される取引市場が設けられるのが初めてです。円のステーブルコインが海外の大手取引所で現地通貨と直接ペアを組む形になります。
JPYCは暗号資産ですか?
暗号資産ではありません。資金決済法上の電子決済手段に分類され、発行と償還の際に日本円と1対1で交換できます。JPYC社は2025年8月に資金移動業の登録を受け、2025年10月に発行を開始しました。
100万円の上限とは何ですか?
国内でのJPYCの発行・償還に適用される1回あたりの上限です。海外の取引所にはこの上限が適用されません。岡部代表はCoinPostの取材で、その点に「大きな可能性を感じる」と述べ、今回の上場が国内の上限を見直すきっかけの一つになれば、という考えを示しています。
一緒に上場したPYUSDとは何ですか?
ペイパルが発行する米ドル建てのステーブルコインです。JPYCと同じKRW・BTC・USDTの3市場で、こちらは予定どおり9月17日12時に取引が始まっています。
取引開始の直後は何に注意すればいいですか?
開始後の約5分間は買い注文と、前日終値より10%以上安い売り注文が制限されます。その後の約2時間は指値注文しか受け付けられません。値動きが荒れやすい時間帯です。
JPYCのドル円が46円というのはどういう意味ですか?
Uniswapで1ドルが約46JPYCで買えた時間帯があったという意味です。JPYCは1枚1円なので、市場が付けたドル円が1ドル46円だったことになります。実勢の155.58円に対して円が3倍以上強い計算ですが、実際の為替が動いたわけではありません。21時時点では80円台まで戻しています。
JPYCの発行は止まっているのですか?
ブロックチェーン上の新規発行(ミント)は、当社が確認した範囲で62日間ありません。直近は2026年7月17日にAvalancheで8,000万JPYCが1回だけです。ただしJPYCは先にまとめて発行して在庫から払い出す方式のため、ミントがなくても利用者への発行は続けられます。サービスとしての発行が止まっているかどうかは、公開データだけでは判断できません。
この価格差はいつ解消しますか?
時期は誰にもわかりませんが、サインは3つあります。新規発行(ミント)の再開、発行体のイーサリアム在庫の積み増し、Uniswapのドル円が155円に近づくことです。いずれもブロックチェーンの公開データで誰でも確認できます。逆に発行が止まったままなら、価格差は残りやすいことになります。
JPYCのアービトラージ(アビトラ)で儲けられますか?
既存のJPYCを高値で売ること自体はできますが、差を「1円で新しく作って売る」で大量に埋めるのは困難でした。当社がチェーンを調べたところ、新規発行は62日間1件もなく、在庫も2,082枚まで枯渇し、当日は発行も一時停止しています。国内発行は1回100万円が上限で、手数料や入金待ちもかかります。価格差が3倍あっても手元に残るとは限りません。本記事は特定の取引を推奨するものではありません。
まとめ|値段は3倍でも、価値は1円のまま
- 9月17日にUpbitがJPYC取扱いを発表
- KRW・BTC・USDTの3市場すべてが稼働
- ウォン建てペアはJPYC初
- 開始は12時→15時→18時と二度延期
- ウォン建ては18時36分に理論値の3.61倍
- Upbitが2つの注意フラグを点灯・画面にも「危険」表示
- Uniswapが示すドル円は一時1ドル46円
- 当社調査で新規発行は62日間ゼロ・発行体のイーサリアム在庫は2,082枚
- 入出金はイーサリアムのみ
2026年9月17日、韓国最大手のUpbitがJPYCの取扱いを始めました。韓国ウォン建てのペアはJPYCにとって初めてです。開始は12時→15時→18時と二度延期され、18時5分にウォン建て、18時7分にビットコイン建てで最初の約定が入りました。
値段は跳ねましたが、上がったのはウォン建てだけです。18時36分で理論値の3.61倍。一方でビットコイン建ての売買代金は約3万2,000円、ドル建ては約7,600円しかありません。実際に取引されているのはウォン建てだけです。
そして1JPYC=1円という基準は動いていません。発行体は日本円と1対1で償還します。32ウォンで買っても、日本円に戻せば1円です。初動の値動きに乗るのは、設計上いちばん危ない使い方です。
日本に住む個人がすぐ使える話ではありませんが、円のステーブルコインが海外市場で値付けされる状態は初めてです。岡部代表が触れた100万円の上限の議論が動けば、国内の使い勝手にも波及します。
取引を考えている場合は、開始したかどうかを公式告知で確認してから動いてください。送金するネットワークがイーサリアムであることも、送る前に必ず確認が必要です。
※1 Upbit公式アカウントの発表(2026年9月17日)https://x.com/Official_Upbit/status/2100393556880105793
※2 取引開始時刻の延期=Upbit公式アカウントの告知https://x.com/Official_Upbit/status/2100462971856318768(18:00へ変更)
※3 岡部代表のコメント=CoinPostの取材(2026年9月17日)https://coinpost.jp/?p=738117
※4 取引の有無・市場の登録状況=Upbit公開API(2026年9月17日17時台に当社取得)
※5 JPYCの区分・登録=資金決済法および報道
※6 岡部代表の投稿(2026年9月17日)https://x.com/noritaka_okabe/status/2100431231167177014
※8 岡部代表のX投稿(2026年9月17日)https://x.com/noritaka_okabe/status/2100424939509784754/https://x.com/noritaka_okabe/status/2100430349943902335
※7 Upbitの規模=CoinGeckoの取引所別24時間売買高(2026年9月17日時点・Upbit 13,123BTC相当/Bithumb 5,628BTC相当)
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※本記事は情報提供を目的としたものであり、投資助言ではありません。
※オンチェーン調査=JPYCコントラクト(0xE7C3D8C9a439feDe00D2600032D5dB0Be71C3c29/Ethereum・Polygon・Avalanche・Kaia共通)に対し、当社がパブリックノードへ直接RPCを送り、Transferイベント(発行=送信元がゼロアドレス/償還=送信先がゼロアドレス)と残高を集計しました。取得できなかった区間は本文に明記しています。
※分散型取引所の価格・流動性・出来高=GeckoTerminal公開データ(2026年9月17日に当社取得)
※実勢のドル円=155.58円(open.er-api.com/2026年9月17日)









