Worldcoin(ワールドコイン/WLD)とは?虹彩認証の危険性・無料配布・日本での買い方|運営に凍結の関数がなく今は誰も増刷できないことをチェーンで実測、12カ国の規制と受取時課税を忖度なく解説

ICHIZEN Capitalのイチ押しポイント!
- WLDは「人間であることの証明」を配るプロジェクトのトークン
- OpenAIのサム・アルトマン氏が共同創業。Orbという端末で虹彩をスキャンしてWorld IDを作ると、無料で受け取れる仕組みです
- 価格は約0.41ドル(約66円)、時価総額は約2,327億円で54位前後です(2026年7月時点)
- 誰も書かない実測|運営に「凍結・没収」の関数が存在しない
- 編集部がイーサリアムへ直接照会し全関数を抽出したところ、凍結・一時停止・残高移動のいずれも実装されていませんでした
- 追加発行の関数は実在します。ただし発行者が未設定のうえ2038年まで時刻ロックされ、現在は誰も発行できません(実測)
- 「最大供給100億枚」は永久の上限ではない。正体は「初期上限」
- コントラクトの変数名はINITIAL_SUPPLY_CAP。2038年7月24日以降は年1.5%を上限とするインフレがありえます
- 2026年7月24日には日次アンロックが約510万枚から約290万枚へ、43%減速する予定です
- 日本は「もらえるのに買えない」。国内取引所の取扱いはゼロ
- JVCEAの一覧に記載がなく国内4社とも未上場でした。一方でOrbは国内に221箇所あり、登録は日本でもできます
- 国内未上場のため20%分離課税の対象外。無料でもらった分にも受取時の課税が生じます
木田 陽介ワールドコインは「虹彩を売ると仮想通貨がもらえる怪しい話」として語られがちです。忖度なく言うと、日本語の解説記事はプライバシーの不安を煽るところで止まっていて、トークンそのものの作りを誰も確かめていません。編集部がイーサリアムへ直接聞いてみると、意外な結果が出ました。運営には保有者の残高を凍結する関数すらないのです。一方で「最大供給100億枚」という説明のほうには、正確でない部分がありました。順に見ていきましょう。


監修 木田 陽介
株式会社ICHIZEN HOLDINGS 代表取締役
2016年から仮想通貨トレードを開始。2017年に株式会社CoinOtakuを共同で創業。同年CoinOtakuの代表に就任。2020年に東証二部上場企業に6億円でM&A。bitgetの月間取引高で世界4位を獲得。2025年にCoinOtaku代表を退任し、同年5月に株式会社ICHIZEN HOLDINGSの代表取締役に就任。
Worldcoin(ワールドコイン/WLD)とは?基本情報
Worldcoin(ワールドコイン/WLD)は、「その相手が本当に人間か」を証明する仕組みを世界中に配ろうとするプロジェクトのトークンです。OpenAIのCEOであるサム・アルトマン氏が、アレックス・ブラニア氏とともに立ち上げました。開発を担うのはTools for Humanityという企業です。ローンチは2023年7月24日でした。
最初に押さえておきたいのは、このプロジェクトが2024年10月に「World」へ改称している点です。AIが人間そっくりの文章や画像を作れる時代に、「人間であることの証明(Proof of Human)」を担うという狙いがあります。ただし改称後もトークンのティッカーは「WLD」のまま変わっていません。日本語の記事には「WORLD(旧WLD)」と書くものもありますが、取引所でもチェーン上でも表記はWLDです(※1)。
| 項目 | 内容(2026年7月時点) |
|---|---|
| 名称 | World(旧Worldcoin/ワールドコイン)/ティッカー:WLD |
| 種別 | ユーティリティ・ガバナンストークン(World IDの利用者へ配布) |
| 開発 | Tools for Humanity(サム・アルトマン氏・アレックス・ブラニア氏が共同創業) |
| ローンチ | 2023年7月24日 |
| 改称 | 2024年10月にWorldcoin→Worldへ。ティッカーはWLDのまま |
| チェーン | Ethereum(発行元)/World Chain・Optimismへブリッジ展開 |
| コントラクト(Ethereum) | 0x163f8C2467924be0ae7B5347228CABF260318753 |
| 価格 | 約0.40572ドル(約65.76円) |
| 時価総額 | 約14億3,550万ドル(約2,327億円)/54位前後 |
| 24時間出来高 | 約1億5,422万ドル(時価総額比 約10.7%) |
| 循環供給量 | 約35億3,612万枚(総供給の約35.4%) |
| 総供給量(初期上限) | 100,000,000,000枚=100億枚(オンチェーンで実測・公表値と一致) |
| 追加発行 | 2038年7月24日まで不可。以降は年1.5%が上限(実測・公式と一致) |
| 過去最高値 | 11.74ドル(2024年3月10日)※現在は約96.5%下 |
| 過去最安値 | 0.230306ドル(2026年5月18日) |
| 運営の特権 | 凍結・一時停止・残高移動の関数はいずれも存在しない(実測) |
| 日本での取扱い | 国内取引所は取扱いなし(海外取引所で購入) |
| 日本でのOrb | 全国221箇所で稼働(2026年2月時点) |
| 日本での税務上の扱い | 暗号資産(雑所得・総合課税/20%分離課税の対象外) |
価格・時価総額は日々変動します。ここからは「何を配ろうとしているのか」と「トークンが実際にどう作られているのか」を切り分けて解説します。WLDはプライバシーの話題が先行するぶん、この2つが混同されやすい銘柄だからです。
WLDは何のトークンか|虹彩スキャンで「人間の証明」を配る仕組み
WLDを理解するには、価格より先に「なぜ虹彩をスキャンするのか」を確認する必要があります。ここが曖昧なままだと、「怪しい」という印象だけが残ってしまうためです。
- 解こうとしている課題|AIが人間を模倣できる時代の「本人性」
- 4つの構成要素|Orb・World ID・World App・World Chain
- WLDの役割|配布のインセンティブとガバナンス
解こうとしている課題|AIが人間を模倣できる時代の「本人性」
出発点にあるのは、AIの進歩そのものが生んだ問題です。生成AIが人間と見分けのつかない文章や画像を作れるようになった結果、ネット上で「相手が人間かどうか」を確かめる手段が失われつつあります。ボットによる世論操作や、AIによる大量のなりすましがその例です。
Worldの答えは「1人1つだけのIDを配る」というものでした。同じ人が2つ登録できないことを保証するために選ばれた手段が、虹彩のスキャンです。指紋や顔と違い、虹彩は一卵性双生児でも異なり、生涯ほとんど変化しないとされています。「重複していないこと」を機械的に判定するには都合がよいという理屈になります。
皮肉な構図だという指摘は、それ自体もっともです。AIの旗手であるサム・アルトマン氏が、AIの副作用に対する解決策も売っているという形になります。加えて、解決策として提示されたのが「生涯変えられない身体情報の提出」だった点が、後述する各国の規制を招く原因になりました。
4つの構成要素|Orb・World ID・World App・World Chain
Worldは4つの部品でできています。名前が似ていて混同されやすいため、役割で区別すると理解しやすくなります。
| 名称 | 正体 | 役割 |
|---|---|---|
| Orb | 銀色の球体の端末 | 虹彩をスキャンし、重複登録でないことを確認する |
| World ID | デジタルID | ゼロ知識証明で「人間である」ことだけを匿名のまま証明する |
| World App | スマホアプリ(ウォレット) | World IDとWLDを管理する |
| World Chain | Ethereumのレイヤー2 | World ID保有者を優遇するブロックチェーン(2024年10月発表) |
| WLD | トークン | 登録者への配布とガバナンス |
重要なのはWorld IDの設計思想です。Worldは「虹彩の画像そのものは保存せず、Iris Codeという数列に変換して破棄する」と説明しています(※2)。証明の際にはゼロ知識証明という技術を使い、「誰であるか」を明かさずに「人間であり、重複していない」ことだけを相手に伝える仕組みです。
ただしこの説明が法的に通用するかは、まさに争点になっています。後述するとおりドイツの監督当局は、この変換技術がGDPRの求める匿名化の水準を満たしていないと認定しました(※3)。技術的な主張と、法的な評価が一致していない——ここがWorldの置かれた状況を象徴しています。
WLDの役割|配布のインセンティブとガバナンス
ではWLDは何のためにあるのでしょうか。端的に言えば「登録してもらうための報酬」です。World IDを作った人へWLDが配られ、その受け取りがOrbへ足を運ぶ動機になります。
配分を見ると、この設計思想がはっきりします。公式のホワイトペーパーによれば、全体の75%が「World Community」へ割り当てられています(※4)。残りはチームが11.1%、Tools for Humanityの投資家が13.6%、リザーブが0.3%です。
| 配分先 | 比率 | 内容 |
|---|---|---|
| World Community | 75% | 利用者への配布・エコシステム・ネットワーク運営 |
| TFH Investors | 13.6% | ローンチ前の開発資金の出し手 |
| Team | 11.1% | Tools for Humanityのチーム・業務提供者 |
| TFH Reserve | 0.3% | 将来の必要に備えた準備分 |
75%をコミュニティへ配るという比率は、暗号資産のなかでも高い部類に入ります。ここは公平に評価すべきでしょう。一方で、その配布のために生涯変えられない生体情報を提出させるという交換条件が付いている点は、切り離して考えられません。「配分が良心的であること」と「取得方法が適切であること」は別の論点になります。
なお日本語の記事の多くは、配分を「投資家13.5%・チーム9.8%・リザーブ1.7%」と書いています。これは2023年のローンチ当時の数字で、現在の公式ホワイトペーパーの記載とは異なります。数字は必ず一次資料で確かめる——本記事が徹底している作法です。
チェーンに直接聞いて分かったWLDの設計|運営に「凍結」の関数がない
ここからが本記事の中心です。WLDは「プライバシーが危険な銘柄」として語られます。ただしその議論は虹彩データの話に終始していて、トークンそのものの安全性を誰も確かめていないというのが編集部の問題意識でした。買った後に運営から資産を凍結される可能性はあるのか——そこを実際に測っています。
2026年7月、編集部がイーサリアムの公開ノードへ直接照会して取得した数値です。コントラクトのプログラムを取得して関数の一覧をすべて抽出し、各権限については「運営のアドレスから呼んだ場合」と「第三者から呼んだ場合」を読み取り専用の試算(eth_call)で比較しました。試算はブロックチェーンの状態を変更しません。主要な結果は3つの独立したノードで再現を確認しています。各数値に取得時点を併記しています。
運営ができること・できないこと|実測した関数の一覧
編集部はWLDのコントラクトからプログラムを取得し、含まれる関数を29個すべて洗い出しました。結果は予想と違うものでした(※5)。
| よくある運営特権 | WLDでの実測結果 | 意味 |
|---|---|---|
| 任意のアドレスを凍結 | 関数が存在しない | 運営でも保有者の送金・売却を止められない |
| 他人の残高を移す | 関数が存在しない | 同意なく取り上げることができない |
| 全取引の一時停止 | 関数が存在しない | 市場全体を止める手段がない |
| 追加発行(インフレ) | mintInflation が存在する | ただし後述のとおり現在は誰も実行できない |
| 発行者の任命 | setMinter が存在する | ownerのみ実行可(第三者は権限エラー) |
| 権限の放棄 | renounceOwnership | 関数は存在するが実行されていない |
測定日は2026年7月です。注目すべきは上の3行でしょう。WLDのコントラクトには、凍結・没収・一時停止に相当する関数がそもそも実装されていません。これは設定でオフになっているのではなく、プログラムの中に存在しないという意味です。
この差は小さくありません。USDTのような主要ステーブルコインや、同じく話題のWLFI(ワールドリバティファイナンシャル)には、運営が任意のアドレスを凍結する関数が備わっています。実際にWLFIでは272のウォレットが凍結された実績があります。WLDにはその手段がないということです。プライバシーの懸念とは裏腹に、トークンの保有者としての権利は強く保護されている——実測から見える意外な姿になります。
「最大供給100億枚」の正体|コントラクトは”初期”上限と呼んでいる
一方で、広く書かれている説明のほうに、正確でない部分がありました。日本語の記事はほぼ例外なく「最大供給量は100億枚」と書いています。数字自体は正しいのですが、「最大」という言葉が誤解を生みます。
編集部がコントラクトへ照会した総供給量は、ちょうど100億枚(10,000,000,000枚)でした(2026年7月時点・※5)。公表値と完全に一致しています。ここはWLFIと違い、チェーンと公表値がずれていません。問題はその上限を保持している変数の名前です。
| 実測した項目 | 取得した値 | 読み解き |
|---|---|---|
| totalSupply(総供給量) | 10,000,000,000枚 | 公表値と一致 |
| INITIAL_SUPPLY_CAP | 10,000,000,000枚 | 「初期の」上限という名前。totalSupplyと一致 |
| mintInflation | 存在する | インフレ発行の関数が実装済み |
| inflationUnlockTime | 2163556801 | =2038年7月24日 4時00分01秒(UTC) |
| inflationCapPeriod | 2,628,000秒 | 約30.4日=発行上限を区切る期間 |
| currentPeriodSupplyCap | 0 | インフレ期間が未開始である状態 |
変数名はINITIAL_SUPPLY_CAP——直訳すれば「初期の供給上限」です。永久の上限を意味していません。そしてインフレ解禁の時刻として、2038年7月24日4時00分01秒(UTC)がコントラクトに書き込まれていました。
この数字は公式の説明と正確に一致します。ホワイトペーパーは「初期の100億枚を超えるWLDのインフレは、最短でもローンチの15年後、具体的には2038年7月24日4時(UTC)から」と明記しています(※4)。ローンチは2023年7月24日——ちょうど15年後です。インフレ率の上限は年1.5%、既定値は0%と説明されています。公式の記述とチェーンの実データが一致した数少ない例だと言えるでしょう。
追加発行は「今は誰にもできない」|関数の存在と実行可能性は別
ここで誤読しやすい落とし穴があります。「インフレ発行の関数がある=運営がいつでも増刷できる」と考えるのは早計です。関数が存在することと、それを実際に呼べることは別問題だからです。
そこで編集部は、実際に発行を試みる読み取り専用の試算を行いました。発行者として登録されているアドレス(minter)を照会したところ、返ってきたのはゼロアドレス——つまり発行者が誰も設定されていない状態です(3つのノードで再現)。
| 試算した操作 | 実行者 | 結果 |
|---|---|---|
| WLDを追加発行する(1wei) | owner(運営) | 拒否(失敗) |
| WLDを追加発行する(1wei) | 第三者 | 拒否(失敗) |
| WLDを追加発行する(1wei) | ゼロアドレス(=現在のminter) | 拒否(失敗) |
| WLDを追加発行する(0枚) | owner・ゼロアドレス | 拒否(失敗) |
| 発行者を任命する(setMinter) | owner(運営) | 成立する |
| 発行者を任命する(setMinter) | 第三者 | 拒否(Ownable:権限エラー) |
結果は明確でした。発行量を1wei(最小単位)にしても0にしても、運営・第三者・ゼロアドレスのいずれからも追加発行は成立しません。発行者が未設定であることと、2038年までの時刻ロックの二重の仕組みで塞がれているためです(2026年7月時点・※5)。
検証では数量の扱いに注意が必要だと分かりました。発行量を大きくして試すと、上限に達したという理由で拒否されることがあります。これを「権限がないから拒否された」と読み違えると、結論が正反対になるのです。1weiと0という極小の値で試して初めて、権限の有無と上限の制約を切り分けられます。
一方で楽観しすぎるのも正確ではありません。ownerはsetMinterで発行者を任命できることが、試算で成立しています。2038年7月24日を過ぎれば、任命された発行者が年1.5%まで発行できるという道は残っています。いま増刷できないことと、将来もできないことは別だということです。
権限を握っているのは誰か|4人の署名で動く多重署名だった
では、そのownerとは誰なのでしょうか。ここで危うく誤報するところだったことを、正直に書いておきます。
照会すると、ownerは個人のウォレットではなく多重署名(マルチシグ)の契約でした。ところがその中身を読むと、署名者は1名・必要な署名数も1——いわゆる1-of-1です。ここで止めていれば「たった1人がWLDの権限を握っている」と書くことになったでしょう。
しかし、その唯一の署名者をさらに照会すると、それ自体がまた多重署名の契約でした。2段目は「6名のうち4名の署名が必要」という4-of-6の構成で、6名の署名者はいずれも個人のウォレットではなく契約です(※5)。入れ子になっていたため、1段目だけを見ると実態を取り違える設計になっていました。
| 階層 | 実測した構成 | 読み解き |
|---|---|---|
| WLDのowner | 多重署名の契約(1-of-1) | ここだけ見ると「1人が支配」に見える |
| その唯一の署名者 | 多重署名の契約(4-of-6) | 実効的な支配はこちら |
| 4-of-6の署名者6名 | いずれも契約(個人ウォレットではない) | さらに多重化されている可能性 |
結論として、WLDの権限は実質的に4-of-6の多重署名で管理されています。1人の秘密鍵が漏れても動かせないという点は評価できるでしょう。ただしそのownerにできることは、発行者の任命と権限の移転に限られます。凍結も没収もできない——権限の「強さ」ではなく「狭さ」こそがWLDの特徴だと言えます。
供給量を数えるときの落とし穴|3つのチェーンを足してはいけない
もう1つ、実務で間違えやすい点を挙げておきます。WLDはEthereumだけでなく、World ChainとOptimismにも存在します。それぞれのチェーンで残高を照会できるため、合計すれば総供給量が出そうに見えます。
| チェーン | 実測した総供給量 | 位置づけ |
|---|---|---|
| Ethereum | 10,000,000,000枚 | 発行元(キャノニカル) |
| World Chain | 約8億9,033万枚 | ブリッジされた表現 |
| Optimism | 約4億2,599万枚 | ブリッジされた表現 |
| 誤り(二重計上) |
3つを足すと約113億枚となり、上限の100億枚を超えてしまいます。これはWorld ChainとOptimismのWLDが、Ethereum側でロックされたWLDに対応して発行されたブリッジ版だからです。足すと同じトークンを二重に数えることになります。CoinGeckoの総供給量がEthereumの実測値とちょうど一致することが、Ethereumが発行元である裏付けになります(2026年7月時点)。



実務の感覚で言うと、凍結の関数を持たないトークンはむしろ少数派です。WLFIやUSDTには普通に付いています。ワールドコインは虹彩の話ばかりが注目されますが、トークンの作り自体は保有者に対してかなり誠実でした。誤解のないように言うと、これは「プライバシーの懸念が晴れた」という意味ではありません。生体データの論点と、トークンの論点は別々に評価すべきだということです。数字は自分で確かめると景色が変わりますよ。
WLDの価格推移|最高値から約96.5%下、2026年7月にアンロックが43%減速
物語より、投資判断に必要なのは現在の数字です。WLDの価格は約0.40572ドル(約65.76円)、時価総額は約14億3,550万ドル(約2,327億円)で、順位は54位前後です(2026年7月時点・※1)。
厳しいのは最高値からの下落率です。過去最高値11.74ドルをつけたのは2024年3月10日——生成AIブームの熱狂と重なった時期でした。そこから約96.5%下落しており、元の水準へ戻るには約28.9倍が必要な計算になります。
| 時点 | 価格 | 現在との比較 |
|---|---|---|
| 過去最高値(2024年3月10日) | 11.74ドル | 約96.5%下/回復には約28.9倍 |
| 過去最安値(2026年5月18日) | 0.230306ドル | 約76.2%上 |
| 現在(2026年7月時点) | 約0.40572ドル | — |
注目すべきは最安値をつけたのが2026年5月18日と、ごく最近である点です。まだ下落局面から抜けきったとは言い切れない水準にあります。日本語の解説記事には更新が止まって古い価格のまま残っているものも多く、時点を確認せずに読むと現在地を見誤ります。
下落の背景|未流通が約64.6%という重石
値動きの背景として無視できないのがアンロック(ロック解除)です。循環供給量は約35億3,612万枚で、上限100億枚に対して約35.4%にとどまります。裏を返せば、約64億6,388万枚(約64.6%)がまだ市場に出ていないということです(2026年7月時点・※1)。
WLDはローンチ時の5億枚を除く95億枚を、15年かけて日次で少しずつ解除する設計です。解除は2024年7月24日から始まり、最終的な解除は2038年まで続きます。毎日新しい供給が市場に出続ける——これが価格の構造的な重石になってきました。
2026年7月24日|日次アンロックが43%減速する
ここで本記事の公開時点における最大の時事論点に触れます。2026年7月24日、WLDの日次アンロック量が約43%減速する予定です。公式ブログが2026年4月10日に公表しました(※6)。日本語の記事でほとんど扱われていない情報になります。
| 配分 | 現在の日次解除 | 2026年7月24日以降 | 変化 |
|---|---|---|---|
| World Community | 320万枚/日 | 160万枚/日 | −50% |
| TFHの投資家・チーム | 190万枚/日 | 130万枚/日 | −32% |
| 合計 | 約510万枚/日 | 約290万枚/日 | −43% |
毎日市場に出てくる新規供給が、約510万枚から約290万枚へ減るということです。売り圧の観点では緩和材料と言えるでしょう。ローンチが2023年7月24日、アンロック減速が2026年7月24日、そしてインフレ解禁が2038年7月24日——この銘柄の設計はすべて7月24日を起点に動いています。
ただし過度な期待は禁物です。減速しても、毎日約290万枚が新たに解除され続けること自体は変わりません。未流通が約64.6%残っているという構造も同じです。供給の勢いが弱まるだけで、供給そのものが止まるわけではないという理解が正確でしょう。
循環供給量の数字が情報源によって食い違う理由
WLDを調べると、循環供給量の数字が情報源ごとに違うことに気づきます。これにははっきりした理由があります。
World公式は「循環供給量(circulating supply)」と「ロック解除済み供給量(unlocked supply)」を別の概念として定義しています(※7)。ロックが解除されていても、実際には市場に出ていないWLDが存在するためです。どちらの定義を採るかで数字が変わるということになります。本記事はCoinGeckoの循環供給量(約35億3,612万枚・2026年7月時点)を採用し、時点と出典を明記しています。
虹彩認証は危険?|12カ国以上で禁止・停止・調査が続く現実
ここがWLDの最大のリスクです。上位の解説記事は「政府の調査が入った事例もある」程度で済ませていますが、実態はもっと深刻です。World(Worldcoin)は12カ国以上で禁止・停止命令・調査・制裁金の対象になってきました。
| 国・地域 | 時期 | 内容 |
|---|---|---|
| ブラジル | 2025年1月 | 禁止。金銭的対価と引き換えの虹彩提供は「自由な同意」を損なうと認定。同年3月に再確認 |
| タイ | 2025年11月 | 虹彩スキャンの停止とデータ削除を命令 |
| フィリピン | 2025年10月 | 国家プライバシー委員会が停止命令。World側は再考を申立て係争中 |
| インドネシア | 2025年5月 | 一時停止。現地法人のライセンスを調査 |
| ドイツ(バイエルン) | 2024年12月 | GDPR不適合と認定し削除手続の導入を命令。World側は控訴し係争中 |
| スペイン | 2024年3月 | AEPDが保全措置。高等裁判所も支持し停止が継続 |
| 香港 | 2024年5月 | 「不必要かつ過剰な収集」として停止命令 |
| 韓国 | 2024年9月 | 個人情報保護委員会が約83万ドルの制裁金 |
| ケニア | 2024年6月 | 一時停止後に再開許可。ただし裁判所が違法収集データの削除を命令 |
| フランス/ポルトガル/インド/アルゼンチン/コロンビア | 2023〜 | 停止・禁止・調査 |
争点はほぼ共通しています。虹彩は生涯変えられないため、漏洩しても取り返しがつかないという点です。パスワードは変更できますが、虹彩は変更できません。Worldは「画像は保存せず数列に変換している」と主張していますが、ドイツの監督当局はその変換がGDPRの匿名化の水準に達していないと判断しました(※3)。World側は自社の技術がEU法の定義を満たすとして司法判断を求めており、2026年7月時点で結論は確認できていません。
もう1つの争点が「対価を払って生体情報を集める」手法です。ブラジル当局は、金銭的インセンティブがある以上その同意は自由なものとは言えないとして明確に違法認定しました。途上国で経済的に困窮した層から生体情報を安価に集めているという批判が、この構図の核心にあります。スペインで規制が動いた直接の契機は、未成年者からのデータ収集の申立てでした。
日本では、2026年7月時点でOrbによる虹彩登録が稼働しています(全国221箇所・2026年2月時点)。個人情報保護法上、虹彩データは「個人識別符号」に該当し個人情報として扱われるため、利用目的の特定・同意の取得・利用停止や削除への対応が事業者に求められます。編集部が確認した範囲では、個人情報保護委員会や金融庁による停止命令・行政処分は公表されていません。ただしこれは「日本の当局が問題視していない」ことの証明ではなく、あくまで本記事執筆時点で公表された処分を確認できなかったという意味です。海外で12カ国以上が規制に動いている事実を踏まえ、登録は仕組みを理解したうえでご判断ください。
WLDの将来性|評価できる点と、割り引くべき点
将来性を数字で測ることはできません。WLDの価値は「人間の証明」という仕組みが普及するかどうかに依存しており、業績予想に相当するものが存在しないためです。できるのは、構造面の良し悪しを事実で並べることだけになります。
- 運営が保有者を凍結・没収できない|該当する関数がコントラクトに存在しない。USDTやWLFIとの決定的な違い(オンチェーンで実測)
- いま追加発行できる者が誰もいない|発行者は未設定で、2038年7月24日まで時刻ロック。1weiでも0枚でも実行は成立しなかった(実測)
- 公表値とチェーンの数字が一致|総供給100億枚もインフレ解禁日もホワイトペーパーの記述どおりだった(実測)
- 権限が単独のウォレットにない|実効的な支配は4-of-6の多重署名。1人の秘密鍵が漏れても動かせない(実測)
- 配分の75%がコミュニティ|暗号資産のなかでは高い部類に入る
- 売り圧が減速する|2026年7月24日に日次アンロックが約510万枚→約290万枚へ43%減る予定
- 取引の場が広い|Binance・Bybitに加え、規制の厳しいCoinbase・Krakenでも現物が扱われている
- 事業継続そのものが不確実|12カ国以上で禁止・停止命令・調査・制裁金。ドイツ・フィリピンでは係争中である
- 生体データは取り返しがつかない|虹彩は生涯変えられない。匿名化の主張はドイツ当局に否定されている
- 最高値から約96.5%下|11.74ドルから回復するには約28.9倍が必要。最安値は2026年5月と直近である
- 未流通が約64.6%|循環供給は約35.4%にとどまり、2038年まで日次で解除が続く
- 「最大100億枚」は初期上限|2038年7月24日以降は年1.5%を上限とするインフレがありうる(実測)
- 保有の集中|米国の上場企業Eightco Holdingsが1社で循環供給の約8.2%を保有すると開示している
- 中央集権的な構造|Tools for Humanityという単一企業が端末・認証・配分を握っている
- 日本では税制上不利|国内未上場のため20%分離課税の対象外。雑所得のまま最大約55%
整理すると、「トークンの作りは誠実だが、事業そのものが規制で消える可能性を抱えている」というのがWLDの姿です。凍結・没収の手段を持たない設計は評価できます。ただしそれは「プロジェクトが成功する」ことの証明ではありません。コントラクトがいくら健全でも、各国で虹彩スキャンが禁止されれば「人間の証明」というプロダクト自体が成立しなくなる——この非対称性は、正直に受け止める必要があるでしょう。
日本でWLDを買う方法|国内取引所の取扱いはゼロ
2026年7月時点、日本の暗号資産交換業者でWLDを取り扱っているところはありません。編集部は日本暗号資産取引業協会(JVCEA)が公表する取扱暗号資産の一覧(2026年7月15日付)の原本を直接取得し、「WLD」「Worldcoin」「ワールドコイン」のいずれも記載がないことを確かめました(※8)。あわせて主要4社の公開データも実測しています。
| 国内取引所 | WLDの取扱い | 確認方法(2026年7月時点) |
|---|---|---|
| bitFlyer | なし | 公開APIの全マーケットに該当なし |
| GMOコイン | なし | 公開APIの全銘柄に該当なし |
| bitbank | なし | 公開APIでペアが存在しない旨を返却 |
| Coincheck | なし | 公開APIのレート照会が不可(BTC等は取得可) |
| JVCEA一覧 | 記載なし | 2026年7月15日付の原本を全文検索 |
GMOコインは「WILD」(Wilder World)という別の銘柄を取り扱っています。綴りが似ているため、これをWLDと取り違えて「国内で買える」と誤解する例があります。JVCEAの一覧にも「ワイルダーワールド」の記載がありますが、これはWorldcoin(WLD)とは無関係の別プロジェクトです。購入前には必ずコントラクトアドレス(0x163f8C2467924be0ae7B5347228CABF260318753)や正式名称で本物かどうかを照合してください。
ここにWLDならではのねじれがあります。日本ではOrbで虹彩登録して「もらう」ことはできるのに、取引所で「買う」ことはできません。Orbは全国221箇所で稼働している(2026年2月時点・※9)一方、国内の交換業者は1社も扱っていないという状態です。「現金化の方法」が繰り返し検索される理由も、このねじれにあります。
WLDが買える取引所|現物の取扱状況
編集部が各取引所の公開データを直接照会した結果、WLDの現物は海外の主要な取引所で広く扱われていることが分かりました。米国の規制下にあるCoinbase・Krakenでも扱われている点は、この銘柄の特徴です。
| 取引所 | WLD現物 | 備考(2026年7月時点) |
|---|---|---|
| Bitget | あり(USDT建て) | 日本語対応。無期限先物も提供 |
| Binance | あり(USDT建て) | 無期限先物も提供 |
| Bybit | あり(USDT建て) | 無期限先物も提供 |
| OKX | あり(USDT建て) | 無期限先物も提供 |
| Coinbase | あり(USD建て) | 米国の規制下の大手 |
| Kraken | あり(USD建て) | 米国の規制下の大手 |
| Upbit | あり(KRW建て) | 韓国最大手。ウォン建てあり |
| 国内取引所(全社) | なし | JVCEA一覧に記載なし |
なお出来高の順位だけで取引所を選ぶのは避けたほうがよいでしょう。WLDの出来高上位には、信頼性を客観的に検証できない取引所が複数混在していることを編集部も確認しています。取引の場は「出来高の大きさ」ではなく「規制対応と実績」で選ぶべきだと考えます。
WLDの買い方・現金化|基本の3ステップ
日本からWLDを買う場合、次の3ステップが基本の流れになります。もらったWLDを現金化する場合は、この逆をたどることになります。
- 国内取引所で暗号資産を購入|日本円でビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)など、送金しやすい銘柄を買う
- 海外取引所へ送金|WLDを扱う海外取引所の自分の口座へ送る。初回は必ず少額でテスト送金する
- WLDへ交換|USDTなどに替えたうえで、WLD/USDTのペアで購入する
海外取引所の口座開設が前提になるため、WLDのペアがあり、日本語に対応している取引所が現実的な選択肢になります。国内取引所の選び方は国内取引所ランキングを、送金に使うUSDTの入手手順はUSDTの買い方もあわせてご覧ください。


\WLDの現物・無期限先物に対応/
ただし買う前に、そして無料で受け取る前に、次章の税金の話を必ず読んでおくことをおすすめします。WLDは「無料でもらえる」ぶん、税務上の落とし穴が他の銘柄より深いためです。ここを知らずに受け取ると、売っていないのに納税義務が生じる事態になりかねません。
ICHIZEN Capitalの視点|「無料でもらえる」の税務コストと規制リスクの読み方
ここからは、上位の解説記事がほとんど触れていない論点を扱います。「無料でもらったWLDにいくら課税されるのか」と「規制リスクをどう評価するか」です。どちらも登録する前に知っておくべき内容でありながら、日本語の情報がほぼ存在しない領域になります。
無料配布の落とし穴|売っていなくても、受け取った時点で課税されうる
最も重要な論点から書きます。無料で受け取ったWLDは、売却していなくても、受け取った時点で課税対象になりうるという点です。「タダでもらったものだから、売るまで税金は関係ない」という理解は誤りになります。
暗号資産を無償で取得した場合、取得した時点の時価が所得として扱われるのが日本の税務の一般的な考え方です(※10)。WLDを受け取った日の価格が、そのまま雑所得の収入金額になるという理解になります。その後の値下がりは、受取時に確定した所得を減らしてくれません。
ここにWLD特有の危うさがあります。この銘柄は最高値11.74ドルから約96.5%下落しました。価格が高い時期に受け取り、下落後に売却した場合、「受取時の高い価格」で所得が立ち、手元には値下がりした資産しか残らないという組み合わせが起こりえます。売却損は雑所得内では通算できても、給与所得と相殺することはできません。
さらにWLDは複数回にわたって配布されます。受け取るたびに、その時点の時価で記録を残しておく必要があるということです。海外の取引所やウォレットには、日本の年間取引報告書に相当する書類が用意されていません。計算はすべて自力になります。受け取った日付と数量と価格を都度記録しておくことが、後の負担を減らす唯一の方法と言えるでしょう。
WLDの税金|話題の「20%分離課税」の対象にならない
「暗号資産の税金が20%になる」という話を耳にした方は多いはずです。しかしWLDは、その20%分離課税の対象にならない公算が大きい銘柄です。ここは手取り額が倍近く変わりうるポイントなので、正確に押さえておく必要があります。
令和8年度税制改正の大綱では、金融商品取引法等の改正を前提に、「特定暗号資産」の譲渡等による所得へ20%(所得税15%・住民税5%)の申告分離課税を適用する措置が示されました。ただし対象となるには、次の2つを満たす必要があります(※11)。
- (a) その暗号資産が金融商品取引業者登録簿に登録されていること
- (b) 譲渡等が暗号資産取引業(仮称)を行う者に対するものであること
WLDは国内で1社も取扱いがないため(a)を満たしません。さらに売買の場が海外取引所やDEXになるため、(b)も満たしません。つまり2つの要件を両方とも外すことになり、従来どおり雑所得・総合課税の対象です。他の所得と合算して5〜45%、住民税を含めると最大約55%の税率が適用されます。
| 項目 | WLDの場合 |
|---|---|
| (a) 金商業者登録簿への登録 | ✕(国内取扱いゼロ) |
| (b) 暗号資産取引業を行う者への譲渡 | ✕(海外取引所・DEXで売買) |
| 適用される課税方式 | 雑所得・総合課税 |
| 税率 | 5〜45%+住民税(最大約55%) |
| 20%申告分離課税 | 対象外の公算が大きい |
| 無料配布分の扱い | 受取時の時価が収入金額になりうる |
ここから導かれる示唆は明確です。国内取引所に上場しているかどうかが、税率の分岐点になりうるということ。米国のCoinbaseや韓国のUpbitで法定通貨から買える銘柄が、日本では未上場のために不利な扱いになるという構図です。なお適用開始時期は未確定で、大綱は「金融商品取引法の改正法の施行の日の属する年の翌年1月1日以後」に適用すると定めています(※11)。施行日が政令に委ねられているため、「2026年から20%」と断定できる段階にはありません。暗号資産の税金の全体像は仮想通貨の税金の記事で詳しく解説しています。
「サム・アルトマンが関与しているから安心」を、そのまま受け取らない
WLDの紹介記事は、サム・アルトマン氏の関与を強気材料として挙げるものがほとんどです。ここは構造を知っていないと誤読しやすいポイントになります。
編集部の見方はこうです。著名な創業者がいることと、規制当局が事業を認めることは、まったく別の問題です。実際に12カ国以上が禁止・停止・調査に動いており、ブラジルは禁止、タイは停止とデータ削除を命じ、ドイツとフィリピンでは係争が続いています。これらは知名度によって解決される類の障害ではありません。むしろ知名度が高いからこそ、各国の当局が優先的に調査対象にしているという側面もあるでしょう。
そのうえで公平に評価すべき点も書いておきます。本記事の実測が示すとおり、WLDのトークン設計は保有者に対して誠実でした。凍結も没収もできず、いま増刷もできません。「怪しいプロジェクトだからトークンも危ない」という短絡は、事実に反します。評価すべきはトークンの設計、警戒すべきは事業の規制リスク——この2つを混ぜないことが、WLDを正しく読む鍵になります。
誤解のないように書き添えると、これはWLDを否定するためのものではありません。「人間の証明」という課題設定自体は、AI時代に向けて筋が通っています。問題は、日本語の紹介記事が「タダでもらえる」という入口だけを強調し、受取時に課税されることも、12カ国で規制されていることも省いてしまう点にあります。知ったうえで登録するのと、知らずに登録するのとでは、リスクの取り方がまったく変わります。



税務・事業者の視点で見ると、ワールドコインは「入口が無料なのに、出口の負担が重い」という珍しい構造です。国内未上場なので20%分離課税の対象にならず、雑所得のまま最大約55%。しかも無料配布分は受け取った時点の時価が所得になりうるため、売っていないのに納税義務が生じることがあります。値下がりしてから売ると、高い価格で立った所得だけが残るという最悪の組み合わせもありえます。海外のウォレットや取引所には年間取引報告書も出ませんから、受け取った日付・数量・そのときの価格を都度記録しておいてください。少額なら影響は限定的ですが、複数回受け取って積み上がったときほど効いてきます。判断に迷う場合は税理士へのご相談をおすすめします。
よくある質問
ワールドコイン(WLD)とは何ですか?読み方は?
OpenAIのCEOであるサム・アルトマン氏が共同創業した「人間であることの証明」を配るプロジェクトのトークンです。読み方は「ワールドコイン」で、ティッカーの「WLD」はそのまま「ダブリューエルディー」と読みます。Orbという端末で虹彩をスキャンしてWorld IDを作った人にWLDが配られる仕組みです。開発主体はTools for Humanityで、ローンチは2023年7月24日でした。2024年10月にプロジェクト名は「World」へ改称されましたが、トークンのティッカーはWLDのまま変わっていません。
ワールドコインはいくらもらえますか?
一律の金額は公表されていません。配布量は登録した時期・国・その後の継続的な受け取りによって変わるうえ、WLD自体の価格も変動するため、「いくらもらえる」と断定できないのが正確な答えです。編集部が確認した範囲でも、現在の確定した配布額を示す公式情報は見つかりませんでした。注意すべきは金額よりも税務で、受け取った時点の時価が雑所得の収入金額になりうるため、受取のたびに日付・数量・そのときの価格を記録しておく必要があります。
ワールドコイン(WLD)は日本の取引所で買えますか?
買えません。2026年7月時点で、JVCEAが公表する取扱暗号資産の一覧(2026年7月15日付)に「WLD」「Worldcoin」「ワールドコイン」の記載はなく、bitFlyer・GMOコイン・bitbank・Coincheckのいずれも取り扱っていないことを公開APIで実測しました。購入するには、国内取引所でビットコイン等を買って海外取引所へ送金し、WLDに交換する流れになります。なおGMOコインが扱う「WILD」(Wilder World)は綴りが似ているだけの別銘柄で、WLDとは無関係です。
ワールドコインの現金化・出金方法は?
国内取引所が扱っていないため、日本円へ直接換金することはできません。一般的な流れは、World AppからWLDを海外取引所の自分の口座へ送金し、USDTなどに交換したうえでビットコインやイーサリアムに替え、国内取引所へ送って日本円にするというものです。送金の各段階で手数料がかかるほか、途中の通貨交換もそれぞれ課税対象の取引に当たります。初回は必ず少額でテスト送金してください。
ワールドコインの虹彩認証は危険ですか?安全ですか?
断定はできませんが、各国の規制当局は繰り返し問題視しています。2026年7月時点で12カ国以上が禁止・停止命令・調査・制裁金の対象としており、ブラジルは禁止、タイは虹彩スキャンの停止とデータ削除を命令、香港とフィリピンも停止命令を出しました。韓国は約83万ドルの制裁金を科しています。争点は「虹彩は生涯変えられないため漏洩しても取り返しがつかない」点です。Worldは画像を保存せず数列に変換していると説明しますが、ドイツの監督当局はその処理がGDPRの匿名化の水準を満たさないと認定し、現在も係争中です。
登録した虹彩データは削除できますか?
削除を求める手続きは用意されているとされています。ドイツ・バイエルン州の監督当局は2024年12月、GDPRに準拠した削除手続きを導入し、すべての利用者に無制限の削除権を保障するようWorldへ命じました。World側はこの決定を不服として控訴しており、2026年7月時点で最終的な司法判断は確認できていません。編集部は削除が実際に完了することを独自に検証できていないため、登録前にWorld Appおよび公式のプライバシー方針で最新の手続きを必ずご自身で確認してください。
日本でOrb(虹彩認証)を受けられる場所はどこですか?
日本国内でも稼働しており、2026年2月時点で全国221箇所に設置されていると報じられています。カフェや美容室などに置かれるケースが多く、設置場所は公式サイトの日本向けページやOrb検索ページで確認できます。設置数は増減するため、来訪前に公式の最新情報をご確認ください。なお日本ではOrbで登録して受け取ることはできる一方、国内の暗号資産交換業者はWLDを1社も扱っていないという、ねじれた状態になっています。
無料配布は怪しくないですか?なぜ無料で配るのですか?
配る理由自体には筋が通っています。「1人1つのID」というネットワークは利用者が増えるほど価値が上がるため、WLDは登録してもらうための報酬として設計されています。実際にホワイトペーパー上、全体の75%がコミュニティへ配分されており、暗号資産のなかでは高い比率です。ただし「配分が良心的であること」と「生涯変えられない生体情報を対価に取得する手法が適切かどうか」は別の論点です。ブラジル当局は、金銭的な対価がある以上その同意は自由なものとは言えないとして違法認定しています。
もらったWLDに税金はかかりますか?20%の分離課税になりますか?
かかります。しかも売却前でも課税されうる点に注意が必要です。暗号資産を無償で取得した場合、受け取った時点の時価が所得として扱われるのが一般的な考え方で、雑所得・総合課税となり最大約55%です。令和8年度税制改正の大綱が示す20%の申告分離課税は「特定暗号資産」に限られ、①金融商品取引業者登録簿に登録されていること、②譲渡等が暗号資産取引業を行う者に対するものであること、の2要件が必要になります。WLDは国内取扱いがなく売買も海外のため、どちらも満たしません。具体的な判断は税理士へご相談ください。
World IDとWorld Appの違いは何ですか?
World IDは「人間であること」を匿名のまま証明するためのデジタルIDそのもので、World Appはそれを保管・利用するためのスマートフォンのウォレットアプリです。IDが中身、Appが入れ物と考えると分かりやすいでしょう。加えて、虹彩をスキャンする端末が「Orb」、World ID保有者を優遇するブロックチェーンが「World Chain」です。World IDはゼロ知識証明という技術を使い、「誰であるか」を明かさずに「人間であり重複していない」ことだけを相手に伝える設計になっています。
WLDの発行枚数はいくつですか?追加発行されますか?
総供給量は100億枚ちょうどで、編集部がイーサリアムの公開ノードへ直接照会して公表値と一致することを確認しました。ただし「最大供給」という表現は正確ではありません。上限を保持する変数の名前はINITIAL_SUPPLY_CAP(初期の供給上限)で、インフレ発行の関数も実装されているためです。解禁時刻は2038年7月24日4時(UTC)とコントラクトに書き込まれており、公式の説明とも一致します。以降は年1.5%が上限です。現時点では発行者が未設定で時刻ロックもかかっているため、運営を含め誰も追加発行できないことを実測で確認しています。
WLDの現在価格と最高値はいくらですか?今後の将来性はありますか?
価格は約0.40572ドル(約65.76円)、時価総額は約14億3,550万ドル(約2,327億円)で54位前後です(2026年7月時点・CoinGecko基準)。過去最高値は2024年3月10日の11.74ドルで、現在はそこから約96.5%下落しています。元の水準へ戻るには約28.9倍が必要な計算です。断定はできませんが、循環供給は約35.4%にとどまり、残る約64.6%が2038年まで日次で解除され続ける売り圧が残ります。一方で2026年7月24日には日次アンロックが約43%減速する予定です。最大のリスクは価格よりも、12カ国以上で規制が進み事業継続そのものが不確実な点にあります。
まとめ|トークンの作りは誠実、けれど事業は12カ国で規制されている
Worldcoin(ワールドコイン/WLD)は、AIが人間を模倣できる時代に「人間であることの証明」を配ろうとするプロジェクトのトークンです。Orbで虹彩をスキャンしてWorld IDを作った人へ配布されるという仕組みで、2024年10月にプロジェクト名は「World」へ改称されました。ティッカーはWLDのままです。
本記事で最も伝えたいのは、WLDのコントラクトには凍結・没収・一時停止に相当する関数が存在しないという実測結果です。USDTやWLFIには備わっている運営特権が、WLDにはありません。追加発行の関数は実在するものの、発行者が未設定のうえ2038年7月24日まで時刻ロックされており、1weiでも0枚でも実行は成立しませんでした。権限を握るのは実効的に4-of-6の多重署名です。入れ子構造になっており、1段目だけを見ると「1人が支配している」と読み違える設計でした。プライバシーの懸念とは裏腹に、トークン保有者としての権利は強く守られている——これが実測から見えるWLDの姿です。
一方で広く書かれている説明には不正確な部分がありました。「最大供給100億枚」の正体は、コントラクト上ではINITIAL_SUPPLY_CAP(初期の供給上限)です。2038年7月24日4時(UTC)以降は年1.5%を上限とするインフレがありえます。この日付はローンチのちょうど15年後で、公式の記述とチェーンの実データが一致しました。3つのチェーンの供給量を足すと約113億枚となり上限を超えてしまう点も、ブリッジ版を二重計上しないための注意になります。
現在地は最高値11.74ドルから約96.5%下。最安値をつけたのが2026年5月と直近で、未流通が約64.6%残るという重石もあります。ただし2026年7月24日には日次アンロックが約510万枚から約290万枚へ43%減速する予定です。
日本の投資家にとって決定的なのは「もらえるのに買えない」というねじれです。Orbは国内221箇所で稼働する一方、国内取引所の取扱いはゼロでした。税制面では20%申告分離課税の対象にならず、雑所得・総合課税で最大約55%のままになる公算が大きいと考えられます。しかも無料でもらった分は、売っていなくても受取時の時価で課税されうるのです。最大のリスクは価格ではなく、12カ国以上で禁止・停止・係争が続き、事業継続そのものが不確実な点にあります。評価すべきはトークンの設計、警戒すべきは事業の規制リスク。この2つを切り分けたうえで、リスクの取り方を決めることが大切ではないでしょうか。
参考文献
1. CoinGecko「Worldcoin (WLD)」価格・時価総額・順位・出来高・循環供給量・総供給量・過去最高値/最安値(2026年7月16日にAPIで取得。価格はBinance〈WLDUSDT 0.4056〉・Bybit〈0.4057〉・Bitget〈0.4056〉の公開APIとも整合を確認。ティッカーがWLDのままであることはオンチェーンの symbol() および各取引所APIで確認)https://api.coingecko.com/api/v3/coins/worldcoin-wld
2. World 公式「Find an Orb」/日本向けページ(Orbの仕組み・World IDの位置づけ・国内の設置場所の確認。2026年7月16日確認)https://world.org/find-orb
3. Biometric Update「World does not comply with GDPR, says German regulator」(バイエルン州データ保護監督局〈BayLDA〉が2024年12月にGDPR不適合と認定し、GDPR準拠の削除手続の導入を命令。全利用者に無制限の削除権を保障する内容で、World Foundation側は控訴し係争中である旨。2026年7月16日確認)https://www.biometricupdate.com/202412/world-does-not-comply-with-gdpr-says-german-regulator
4. World 公式ホワイトペーパー「Tokenomics」(配分=World Community 75%/TFH Investors 13.6%/Team 11.1%/TFH Reserve 0.3%、初期供給100億枚、「初期の100億枚を超えるインフレは最短でもローンチの15年後=2038年7月24日4時UTCから」「インフレ上限は年1.5%・既定値は0%」である旨を2026年7月16日に確認)https://whitepaper.world.org/tokenomics
5. Ethereum JSON-RPC(eth_call:totalSupply=10,000,000,000×10^18/decimals=18/INITIAL_SUPPLY_CAP=10,000,000,000×10^18/inflationUnlockTime=2163556801=2038年7月24日4時00分01秒UTC/inflationCapPeriod=2,628,000秒/currentPeriodSupplyCap=0/initialMintDone=true/minter=ゼロアドレス/owner=Safe契約。eth_getCode:バイトコードからPUSH4命令で関数セレクタを29個抽出しopenchainで解決、ownerSetBlacklistStatus等の凍結・停止・残高移動に相当する関数が存在しないことを確認。mintInflation は owner・第三者・ゼロアドレスのいずれからも、発行量0および1weiのいずれでも eth_call が revert。setMinter は owner で成立・第三者では Ownable の権限エラー。owner のSafeは getOwners/getThreshold により1-of-1で、その唯一の署名者もSafe契約であり4-of-6であることを確認。主要な値は ethereum-rpc.publicnode.com / eth.drpc.org / 1rpc.io の3ノードで再現。ブリッジ版は World Chain=890,331,223.74枚/Optimism=425,993,235.16枚で、合算すると上限を超えるため二重計上に当たる。2026年7月16日実測)https://etherscan.io/address/0x163f8c2467924be0ae7b5347228cabf260318753
6. World 公式ブログ「Tokenomics Milestone: WLD Unlock Rate to Decrease by 43% in July」(2026年4月10日公開。2026年7月24日にWorld Community分が日次320万→160万WLD〈−50%〉、TFHの投資家・チーム分が日次190万→130万WLD〈−32%〉、合計で日次約510万→約290万WLD〈−43%〉へ減速する旨。2026年7月16日確認)https://world.org/blog/foundational-topics/tokenomics-milestone-wld-unlock-rate-to-decrease-by-43-in-july
7. World 公式ブログ「The Circulating Supply of Worldcoin (WLD): An Explainer」(循環供給量とロック解除済み供給量を別概念として定義している旨。情報源により数値が食い違う理由。2026年7月16日確認)https://world.org/blog/foundational-topics/the-circulating-supply-of-worldcoin-wld-an-explainer
8. 日本暗号資産取引業協会(JVCEA)「取扱い暗号資産に関する情報」(2026年7月15日付の原本〈20260715.xlsx〉を直接取得し、WLD/Worldcoin/ワールドコインのいずれも記載が無いことを確認。既知の掲載銘柄〈ビットコイン・イーサリアム・XRP等〉がヒットすることで検索方法の妥当性も検証済み。なお「ワイルダーワールド」=Wilder Worldの記載はあるがWLDとは別銘柄。あわせて bitFlyer `v1/markets`/GMOコイン `public/v1/ticker`/bitbank `wld_jpy`=ペア不存在/Coincheck `rate/wld_jpy`=ペア不存在〈btc_jpyは取得可〉を実測。2026年7月16日確認)https://jvcea.or.jp/statistics/document/assets/
9. CoinPost「ワールドコイン(Worldcoin)」(日本国内のOrb設置が2026年2月時点で221箇所である旨。2026年7月16日確認)https://coinpost.jp/crypto/worldcoin/
10. 国税庁「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」(暗号資産の取得・譲渡に係る所得区分および収入金額の計算の考え方。2026年7月16日確認)https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/virtual_currency_faq_03.pdf
11. 財務省「令和8年度税制改正の大綱」(p.23「特定暗号資産」の譲渡等に係る20%〈所得税15%・個人住民税5%〉の申告分離課税の創設/「金融商品取引業者登録簿に登録されている暗号資産等に限る」「暗号資産取引業(仮称)を行う者に対して」譲渡等をした場合という要件/適用は「金融商品取引法の改正法の施行の日の属する年の翌年の1月1日」以後である旨。2026年7月16日に原文を確認)https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/20251226taikou.pdf
12. Rest of World「Sam Altman’s Worldcoin expands with Zoom, Tinder partnerships」(2026年4月27日時点の各国規制状況の包括的な整理。フランス・インド・スペイン・ポルトガル・アルゼンチン・香港・ケニア・韓国・ドイツ・ブラジル・インドネシア・フィリピン・タイ・コロンビアの動向、および認証実績1,800万人超・160カ国である旨。2026年7月16日確認)https://restofworld.org/2026/sam-altman-worldcoin-zoom-tinder-partnerships/
13. スペイン データ保護庁(AEPD)「Worldcoin commits to stop its activity in Spain」(2024年3月のデータ処理停止の保全措置と、Worldcoin側が活動停止を約束した旨の一次発表。2026年7月16日確認)https://www.aepd.es/en/press-and-communication/press-releases/worldcoin-commits-to-stop-its-activity-in-spain
※本記事は2026年7月時点の情報に基づく一般的な情報提供を目的としており、特定の暗号資産(仮想通貨)・取引所への投資を勧誘するものではありません。価格・時価総額・出来高・各取引所の取扱い銘柄・スマートコントラクトの仕様・各国の規制状況は変動し、制度・税務の取扱いは変更される場合があるため、最新の情報は公式サイトおよび金融庁・国税庁・個人情報保護委員会の情報でご確認ください。生体情報の登録は、取得・利用・削除の条件をご自身で十分にご確認のうえご判断ください。税務の具体的な判断は税理士等の専門家にご相談ください。暗号資産取引にはリスクが伴い、最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。








