CFTCが予測市場を金融デリバティブ(スワップ)に分類する規則案を提示|Polymarket・Kalshiはどう変わるのか

「忙しい人向け」ニュース要約
- 米CFTCが2026年10月9日、予測市場の「イベント契約」を金融デリバティブ(スワップ)に分類する規則案を提示した
- これは提案(NPRM)の段階で、官報掲載から30日のコメント期間を経て最終ルールになって初めて発効する。まだ確定ではない
- 同時に、カジノ型の賭けはスワップから除外する方針も示され、予測市場と賭博(ギャンブル)の線引きが明確になった
- 適用されればCFTC登録の取引所でしか扱えなくなり、Polymarketのような分散型は規制側へ寄る。日本の個人はPolymarketを引き続き利用できない
※相場やニュースの日々の見方は、水野のX(@mizuno_ichizen)で発信中です。
水野 倫太郎予測市場が「賭博」なのか「金融デリバティブ」なのかは、これまで連邦と州のあいだで綱引きが続いてきました。今回CFTCは「これはデリバティブで、自分たちの管轄だ」と線を引きにきた形です。登録済みのKalshiにとっては、州に潰されにくくなるので、むしろ追い風になります。一方で、Polymarketのようなオンチェーンで誰でも参加できる仕組みは、規制の土俵に乗る必要が出てきます。ただし今はまだ提案段階で、確定までには時間があります。日本からPolymarketを使えない点は変わりません。


監修 水野 倫太郎
株式会社ICHIZEN HOLDINGS 代表取締役
慶應義塾大学経済学部。2017年米国留学時にブロックチェーンと出会い、Web3の業界に足を踏み入れる。2018年には、日本有数の仮想通貨メディアCoinOtakuに入社。2019年には同社のCMOに就任し、2020年に東証二部上場企業とM&Aを行い、様々なクリプト事業を展開する。2022年に現在代表取締役社長を務めるICHIZEN HOLDINGSを立ち上げ様々なWeb3事業を手がける。複数のWeb3系事業に出資を行いながら有識者として活動。
何があったのか|CFTCが予測市場を「スワップ」に分類する規則案
- CFTCが2026年10月9日、予測市場の「イベント契約」をデリバティブ(スワップ)に含める規則案を公表
- 同時に、カジノ型のギャンブル商品はスワップから除外する方針も提示
- 予測市場と賭博の線引きを明確にする狙い
米国の商品先物取引委員会(CFTC)は2026年10月9日、予測市場に関する2つの規則を同時に打ち出しました。1つは、予測市場で取引される「イベント契約」を、金融デリバティブの一種である「スワップ」の定義に明確に含めるという規則案です。対象には、スポーツ・政治・文化・天候に関する出来事を扱う契約が挙げられています。
この規則案は「Notice of Proposed Rulemaking(規則制定の提案通知、RIN 3038-AF82)」として公表されたもので、現時点では提案の段階です。CFTC原文では「連邦官報(Federal Register)への掲載から30日」をコメント提出の期限としており、掲載後に意見募集を経て、再検討のうえ最終ルールとして定められて初めて発効します。つまり、今はまだ内容が確定したわけではありません。
もう1つは、カジノ型のギャンブル商品をスワップの定義から除外するルールです。CFTCのセリグ委員長は「カジノ型のギャンブル商品はデリバティブではない」と述べ、州や部族が認可したスポーツブックやカジノの賭けは、スワップには当たらないと整理しました。2つを合わせると、「取引所で扱う予測市場の契約はデリバティブ、カジノ的な賭けはギャンブル」という線引きを明確にする狙いが読み取れます。
(スポーツの結果・政治・文化・天候)
(従来どおりギャンブルとして扱う)
出典:CFTC 規則案(RIN 3038-AF82)・カジノ型除外の暫定最終規則(2026年10月9日)
そもそも予測市場とは|「イベント契約」の仕組み
- 予測市場=「ある出来事が起こるか」に値段を付けて売買する市場
- 売買する契約が「イベント契約」。当たれば満額、外れればゼロで決済
- 代表例はKalshi(米CFTC登録)とPolymarket(暗号資産で決済)
予測市場とは、「ある出来事が起こるかどうか」を対象に、その確率に値段を付けて売買する市場です。たとえば「この選挙で誰が勝つか」「ある指標がいつ発表されるか」といった問いに対して、起こると考える側と起こらないと考える側が契約を売買します。結果が確定すると、当たった契約は1(満額)、外れた契約は0で決済されます。この売買される契約が「イベント契約」です。
代表的な運営会社には、米国でCFTCの登録を受けたKalshiや、暗号資産(ステーブルコインのUSDCなど)で決済するPolymarketがあります。Polymarketはブロックチェーン上で動く仕組みで、世界的に利用が広がりました。こうした市場は、選挙やマクロ指標の「市場の見立て」を数値で示すツールとしても注目される一方、賭博に近いのではないかという指摘も受けてきました。この「賭博か、金融商品か」という位置づけこそが、今回の規則案の背景にある論点です。
なぜ「スワップに分類」が重要なのか|連邦と州の綱引き
- スワップに分類されるとCFTCの排他的な管轄下に入る
- その結果、各州のギャンブル規制で個別に止められにくくなる
- 訴訟が続くなか、連邦として「これはデリバティブだ」と位置づける動き
イベント契約が「スワップ」に分類されることの意味は、管轄の問題にあります。米国の法律では、スワップはCFTCの排他的な管轄に置かれます。つまり、予測市場がスワップだと確定すれば、連邦の規制が優先され、各州のギャンブル規制で個別に営業を止められにくくなります。全米で統一的に運営できる土台ができる、ということです。
この点は、これまでの訴訟の経緯と直結しています。Kalshiは、一部の州から「これは違法な賭博だ」として差し止めを求められ、各地で争ってきました。セリグ委員長は今回の規則について、スポーツ関連のイベント契約がスワップに当たるかを巡る連邦控訴裁判所(第6巡回区・第9巡回区)の判断を踏まえた対応だと説明しています。ニュージャージー州はKalshiに有利な判決の最高裁審理を求めており、第3巡回区では逆の判断も出ています。規則案が出ても、これらの訴訟が自動的に決着するわけではありませんが、連邦として「予測市場はデリバティブだ」という立場を制度の形で固める動きだと言えます。
各者の反応|賛成と反対で割れている
- 賛成=CFTC・Kalshi・Robinhood。連邦のデリバティブとして扱うべきとの立場
- 反対=40超の州・米ゲーミング協会・主要スポーツリーグ。州法の領域だと主張
- 司法の判断も割れ、最高裁の受理待ち。決着はこれから
まず賛成側です。この規則を進めるCFTC自身に加え、KalshiやRobinhoodが「予測市場は連邦規制下の金融商品だ」として、CFTCの排他的管轄を支持しています。セリグ委員長は、予測市場の契約は商品先物取引法(CEA)のもとでCFTCの管轄に入る商品デリバティブであり、排他的な管轄の対象だと説明しています。Polymarketも同様の立場とされますが、今回の提案への個別の声明は確認できていません。
一方の反対側です。最も強く反発しているのが州で、40を超える州の司法長官が「CFTCの権限を超える」「スポーツ賭博は州法の対象で、取引所では扱えない」と主張しています。カジノやスポーツブックを束ねる米ゲーミング協会(AGA)も、取引所に上場したスポーツ賭けをスワップ扱いにすると制度が混乱すると反対しています。MLB・NBA・NFL・MLSなど主要スポーツリーグも、選手の負傷や人事といった「周辺」を賭ける契約に懸念を示してきました。シンクタンクや元当局者からも批判が出ています。
司法の判断も割れています。第3巡回区はKalshiのスポーツ契約がスワップ定義に当たると判断した一方、第6巡回区と第9巡回区は従来の賭けと類似だとしました。連邦裁判所全体では、州のゲーミング法を連邦が上書きすることを否定した判断が多数を占めます。この論点はニュージャージー州の申立てとして最高裁に持ち込まれており(Kalshiの回答期限は11月9日)、受理されるかはまだ決まっていません。つまり今回の規則案は、提案段階であると同時に、司法でも決着がついていない、というのが現状です。
もしこのルールが適用されたら予測市場はどう変わるのか
- 適用されれば連邦管轄で確定し、CFTC登録の取引所でしか扱えなくなる
- 本人確認や報告など、デリバティブとしての義務が加わる
- 正統化が進む一方、オンチェーンで誰でも参加できる形は規制側へ寄る
この規則案はまだ提案の段階ですが、仮に最終ルールとして適用された場合、何が変わるのか。まず、現状とスワップに分類された後の違いを整理します。
| 現状(いま) | スワップに分類されたら |
|---|---|
| 賭博か金融商品か未確定(グレー) | 金融デリバティブとして確定 |
| 州と連邦が綱引き・州が差し止めも | CFTCの排他的管轄・州規制が及びにくい |
| Kalshi・Polymarketが併存 | CFTC登録の取引所に限定(本人確認・報告が前提) |
| カジノ型との線引きが曖昧 | カジノ型は除外・予測市場だけデリバ |
より具体的には、予測市場は次のように変わっていくと考えられます。
- 連邦の管轄に入り、州の規制が及びにくくなる
スワップはCFTCの排他的な管轄です。各州のギャンブル規制で止められにくくなり、全米で統一的に運営しやすくなります。 - CFTC登録の取引所でしか扱えなくなる
本人確認(KYC)や取引監視が前提になります。匿名でオンチェーンに売買する形は、そのままでは成立しにくくなります。 - デリバティブとしての規制コストが加わる
取引データの報告や記録の保持、ポジションの制限など、運営側の負担が増えます。 - 予測市場と賭博の線引きが明確になる
カジノ型やスポーツブックの賭けは除外され、取引所のイベント契約だけがデリバティブとして連邦管轄に入ります。スポーツでも、客観的データで決まる結果は認められやすく、選手の負傷や審判の判定を扱う契約は不利です。 - 正統化が進み、機関投資家が入りやすくなる
会計や税務の扱いが整理され、伝統的な金融機関からの参加や連携がしやすくなります。 - オンチェーン型は規制側へ寄る
Polymarketのような分散型は、CFTC認可の取引所を通じた形へと見直しを迫られます。誰でも自由に参加できる性質は後退します。
Polymarket・Kalshiへの影響|追い風と両刃
- 登録済みのKalshiには、州に止められにくくなるため追い風
- Polymarketには、合法化の反面で規制枠に入り直す必要があり両刃
- すぐに損害が出る話ではなく、対応の時間は残されている
このルールは、予測市場の事業者にとって一方的に不利なものとは限りません。CFTCの登録を受けているKalshiにとっては、「これはデリバティブで連邦の管轄だ」と確定することで、州のギャンブル規制で営業を止められにくくなります。賭博ではなく金融商品として扱われる土台が固まるため、どちらかと言えば守りになる動きです。
一方で、暗号資産で決済し、オンチェーンで世界的に広がったPolymarketにとっては両刃です。米国で合法的に扱える道が開ける半面、CFTCの規制枠組み(登録取引所・本人確認など)に入り直す必要が生じます。Polymarketは米国への再参入に向けて、CFTCの認可を持つ取引所を取得する動きも報じられており、規制に沿った形へと体制を整えつつあります。誰でも自由に参加できるという従来の強みは、その過程で薄まる可能性があります。
重要なのは、これがすぐに損害を生む話ではない点です。規則案は提案の段階で、コメント期間と最終ルール化を経てから発効し、関連する訴訟も続いています。事業者には、意見を提出したり体制を整えたりする時間が残されています。「登録して規制に乗れば守られ、乗らなければ締め出される」という選別の方向性が示された、と捉えるのが実態に近いでしょう。
日本の個人への影響|Polymarketは日本から取引できない
- 今回は米国の制度の話。Polymarketは地域制限で日本の居住者は取引できない
- この点は今回のルールで変わらない。地域制限を回避した利用は避ける
- 予測市場は賭博罪に当たるおそれがあり、国内取引所からの関連送金は口座停止のリスクも(bitbank等)
- 日本の個人は「業界構造のニュース」として押さえておくのが適切
この規則案はあくまで米国の制度に関するものです。Polymarketは地域制限を設けており、日本の居住者はもともと取引できません。今回のルールは米国内の扱いを整理するもので、日本から利用できるようになるという話ではありません。
加えて注意したいのが、国内の暗号資産取引所からの送金です。予測市場での取引は、日本の刑法では賭博罪(185条)に当たるおそれがあると複数の専門家が指摘しています。海外で合法に運営されていても、日本国内から賭ければ利用者本人が問われうる、という整理です。
これを受けて、国内の取引所はギャンブルに関連する送受金を厳しく制限しています。たとえばbitbankは、オンラインカジノやスポーツベッティングなどのギャンブルサイトからの入出金が確認された場合は直ちに口座の停止処置を行うと明記し、停止によって損害が生じても一切の責任を負わないとしています。口座が停止されると、ログインや入出金、日本円の出金、売買のすべてが使えなくなります。予測市場への送金も、賭博に関連する取引とみなされれば、こうした口座停止などのペナルティにつながる可能性があります。
地域制限を回避して無理に利用を試みることは避けるべきです。予測市場の仕組みや日本での賭博罪リスクは、別記事「Polymarketとは」で詳しく解説しています。日本の個人にとっては、直接の取引対象というより、「米国で予測市場がどのように制度化されつつあるか」という業界構造のニュースとして押さえておくのが適切です。
よくある質問(FAQ)
予測市場とは何ですか?
ある出来事が起こるかどうかに値段を付けて売買する市場です。売買される契約を「イベント契約」と呼び、結果が確定すると、当たった契約は満額、外れた契約はゼロで決済されます。選挙やマクロ指標の「市場の見立て」を数値で示すツールとしても使われます。
CFTCは予測市場を禁止するのですか?
禁止ではありません。むしろ「イベント契約は金融デリバティブ(スワップ)だ」と位置づけ、CFTCの管轄下で扱う方向です。カジノ型の賭けはスワップから除外し、予測市場と賭博を分ける整理になっています。
今回の規則はもう決まったのですか?
まだ決まっていません。これは提案(NPRM)の段階です。連邦官報への掲載から30日のコメント期間を経て、再検討のうえ最終ルールとして定められて初めて発効します。内容が変わる、遅れる、撤回されるといった可能性も残っています。
予測市場と賭博(ギャンブル)は何が違うのですか?
今回の規則案では、取引所で扱うイベント契約をデリバティブ(スワップ)とし、カジノ型やスポーツブックの賭けはスワップから除外する線引きが示されました。スポーツでも、リーグ公式データで客観的に決まる結果は認められやすく、選手の負傷や審判の判定を扱う契約は不利に扱われる方向です。
Polymarketは日本から利用できますか?
利用できません。Polymarketは地域制限を設けており、日本の居住者はもともと取引の対象外です。今回の規則は米国内の扱いを整理するもので、日本から使えるようになるという話ではありません。地域制限を回避して利用を試みることは避けてください。
このルールはPolymarketやKalshiに不利ですか?
一方的に不利とは限りません。CFTC登録済みのKalshiにとっては、州に営業を止められにくくなるため追い風の面があります。Polymarketにとっては、合法化される半面、規制の枠組みに入り直す必要があり、両刃です。すぐに損害が出る話ではなく、対応の時間は残されています。
Kalshiとは何ですか?
米国でCFTCの登録を受けて予測市場を運営する会社です。選挙や経済指標などのイベント契約を扱っており、一部の州と「これは賭博か金融商品か」を巡って争ってきました。今回の規則は、その論点に連邦として整理を付ける動きです。
いつから適用されますか?
適用時期は未定です。規則案が連邦官報に掲載され、30日のコメント期間を経てから、CFTCが最終ルールを定めて発効します。カジノ型を除外するルールは掲載時点で効き始める即時型とされますが、「予測市場をデリバティブに分類する」規則案は提案の段階で、確定には至っていません。
日本から予測市場やPolymarketに送金しても大丈夫ですか?
おすすめしません。予測市場での取引は日本の刑法で賭博罪(185条)に当たるおそれがあり、利用者本人が問われうると指摘されています。国内の取引所はギャンブルに関連する入出金を厳しく制限しており、確認された場合は口座の停止処置が取られることがあります(bitbankなど)。停止による損害は補償されない旨も明記されているため、安易な送金は避けてください。
この記事のまとめ
- CFTCが2026年10月9日、予測市場の「イベント契約」を金融デリバティブ(スワップ)に分類する規則案を提示。同時にカジノ型の賭けはスワップから除外。
- これは提案(NPRM)の段階。官報掲載から30日のコメント期間を経て最終ルール化されて初めて発効し、まだ確定ではない。
- スワップに分類されるとCFTCの排他的管轄に入り、州のギャンブル規制で止められにくくなる。登録済みのKalshiには追い風。
- 適用されればCFTC登録の取引所でしか扱えず、本人確認や報告が前提に。Polymarketのようなオンチェーン型は規制側へ寄る。
- Polymarketは地域制限で日本の居住者は取引できず、この点は今回のルールで変わらない。業界構造のニュースとして押さえておきたい。
- 賛成(CFTC・業界)と反対(40超の州・ギャンブル業界)で割れ、司法も最高裁の判断待ち。決着はこれから。


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参考文献
- CFTC 規則制定の提案通知「スワップの定義にイベント契約を含める」(Further Definition of Swap – Inclusions、RIN 3038-AF82、2026年10月9日)
- CFTC 暫定最終規則「スワップの定義からカジノ型ギャンブル商品を除外」およびセリグ委員長の声明(2026年10月9日)
- CoinDesk ほか報道(U.S. CFTC moves to fold event contracts into swaps regulations、2026年10月)
- bitbank「ギャンブルサイトへの取引制限」(2026年9月更新)、警察庁「オンラインカジノを利用した賭博は犯罪です」
- CNBC「44 states say CFTC has no authority over sports prediction markets」、Bloomberg Law、CFTC声明ほか(各者の反応・訴訟の経緯、2026年)
※本記事は公表資料・報道に基づく情報提供を目的としたもので、投資助言ではありません。規則案は提案段階であり、最終ルールの内容・適用時期は今後変わる可能性があります。Polymarketなどの海外サービスは日本の居住者を対象外としており、地域制限を回避しての利用は避けてください。









