第16回 先渡価格を複製で導く ― 第5部の予行演習を確定利付きの世界でやる

第16回 先渡価格を複製で導く ― 第5部の予行演習を確定利付きの世界でやる

位置: 第2部 第16回 / 前提: 第2回、第7回、第15回 / 数学編: なし / この回でできるようになること: 株や商品の先渡価格を金利・配当・保管コストから計算し、先渡契約の途中の価値を求めることができる。実践: 債券1本の価格・最終利回り・デュレーション・コンベキシティを電卓で計算し、金利が1%動いたときの損失額を見積もることができる

目次

0. 物語 ― 先渡価格は将来の価格の予想ではない

今日100円の資産が1年後にいくらになるか、あなたはどう予想しますか。

強気の投資家は「15パーセント上がって115円になる」と見ています。慎重な投資家は「2パーセントがいいところで、102円だろう」と言います。では、この資産を1年後に受け渡す約束を今日結ぶとしたら、売買価格はいくらに設定すべきでしょうか。強気派の115円でしょうか、慎重派の102円でしょうか。

答えは、どちらでもありません。105円です。

この105円は、予想とは無関係に決まります。銀行の金利が年5パーセントだとすると、今日100円を借りて資産を買い、1年間持ち続けたときの返済額がちょうど105円です。1年後に資産を手に入れる方法は「先渡契約で買う」以外にもう一つ、「今日借金して買って持っておく」があります。この二つの方法は1年後の結果が全く同じなので、費用も同じでなければなりません。もし先渡価格が105円より高ければ、先渡を売って現物を買うことで確実に利益が出ます。逆に105円より安ければ、先渡を買って現物を空売りすれば確実に利益が出ます。どちらの場合も、資産が将来いくらになるかには一切関係しません。

強気の投資家が「115円になるはずだから先渡価格は115円が妥当だ」と主張しても、慎重な投資家が「102円だ」と主張しても、どちらも間違いです。予想が当たるかどうかと、先渡価格がいくらであるべきかは、全く別の問題です。先渡価格を決めているのは、今日の価格と金利だけです。

1. 動機 ― 将来の売買価格を今日いくらで約束できるか

この回を読み終えると、株や商品の先渡価格を金利・配当・保管コストから計算し、先渡契約の途中の価値を求めることができます。

予想を一切使わずに先渡価格を決める方法があります。今日の価格と金利だけで、誰もが合意せざるを得ない価格が一意に定まります。道具は第2回で導入した無裁定の原理と、第7回・第15回で使った割引係数だけです。

今回は3つの定理を証明します。最初に配当も保管コストもない最も単純な場合を扱い、次に配当を導入し、最後に先渡契約そのものの途中時点での価値を求めます。いずれも複製で導きます。同じ将来の結果を生み出すポートフォリオを作り、そのコストが先渡価格を決める、という論法です。

この記事で証明すること

  • THM-FW-1(キャリーコストモデル) 保管コストも配当も無い資産の先渡価格は、現在価格を割引係数で割った に一意に定まります。
  • THM-FW-2(配当がある場合) 満期までの確定配当の現在価値 を差し引くと、先渡価格は になります。
  • THM-FW-3(先渡契約の価値) 先渡価格 で結んだ契約の途中時点の価値は であり、契約時点ではゼロです。

2. 設定と仮定 ― 保管コストも配当も無い資産

以下の仮定を置きます。THM-FW-2 以降で一部を緩めます。

  • 原資産は自由に売買でき、空売りもできる。
  • 保管コストと便益は無い。配当は THM-FW-2 で導入する。
  • 金利は確定していて、同一の金利で貸借できる。
  • 取引コスト、税、信用リスクは無い。
  • 数値に単位は付けない。

記号を確認します。 は原資産の現在価格、 は無リスク金利(1期間あたり)、 は満期、 は割引係数です。 は時刻 における先渡価格を表します。

先渡契約とは、将来の時刻 にあらかじめ決めた価格で原資産を売買する約束のことです。この「あらかじめ決めた価格」を先渡価格と呼び、 と書きます。先渡の買い手は満期に を払って原資産を受け取り、ペイオフは です。売り手のペイオフは です。重要な点は、契約時点では金銭の授受が無いことです。先渡価格 は、契約の初期費用がゼロになるように決める価格です。

この節のまとめです。先渡契約は「将来の売買を今日約束する」取引であり、契約時の費用はゼロです。

3. 主張 ― 先渡価格は複製で決まる

定理 THM-FW-1(キャリーコストモデル) 保管コストも配当も無い資産について、無裁定市場では満期 の先渡価格は

に一意に定まる。

定理 THM-FW-2(配当がある場合) 満期までに確定した配当の現在価値を とすると、先渡価格は

となる。

定理 THM-FW-3(先渡契約の価値) 契約時の先渡価格 で結んだ先渡契約の、途中時点 における価値は

に等しい。契約時点では なので である。

3つの定理はいずれも複製によって証明します。「先渡と同じ結果を生み出すポートフォリオが作れるなら、その費用が先渡の公正な値段である」という無裁定の論法です。

この節のまとめです。先渡価格は「将来の期待値」ではなく、複製ポートフォリオのコストから決まります。

証明を読む(読まなくても記事は完結します)

4. 証明 ― 今日買って持ち続ける戦略と比べる

この節は読まなくても記事は完結します。

THM-FW-1 の証明

先渡の買い手のペイオフは満期に です。このペイオフを複製するポートフォリオを構成します。

複製戦略: 時刻0に原資産を1単位買い、購入資金 を金利 で借り入れます。

  • 時刻0のコスト: 原資産の購入に を払い、同額を借りるので、ネットの支出は です。
  • 満期のペイオフ: 原資産の価値は です。借入の返済額は です。したがってネットのペイオフは

先渡の買い手のペイオフは です。(4.1) と比べると、両者が一致するためには

でなければなりません。

一意性の証明: もし市場で取引される先渡価格 がこの値と異なるなら、裁定が生じます。2つの場合を示します。

場合1: のとき。 先渡が割高です。次の取引を行います。

  1. 先渡を売る(満期に を受け取り、原資産を渡す義務を負う)。
  2. 原資産を で買う。
  3. 購入資金 を金利 で借りる。

時刻0のネットの支出は です。満期には、原資産を先渡の買い手に渡して を受け取り、借入 を返済します。利益は

これは確定利益です。 がいくらであっても、この金額は変わりません。原資産を先渡で渡すので、 のリスクは完全に相殺されます。裁定です。

場合2: のとき。 先渡が割安です。逆の取引を行います。

  1. 先渡を買う(満期に を払い、原資産を受け取る)。
  2. 原資産を空売りして を受け取る。
  3. 受け取った を金利 で貸す。

時刻0のネットの支出は です。満期には、貸出から を回収し、先渡の代金 を払って原資産を受け取り、空売りを返済します。利益は

やはり確定利益です。裁定です。

どちらの場合も無裁定に反するので、 以外の先渡価格は存在できません。 ∎

THM-FW-2 の証明

原資産が満期 までの途中時点 に確定した配当 を支払うとします。一般化は容易ですが、まず1回の配当で示します。

先渡の買い手は満期に原資産を受け取りますが、途中の配当は受け取れません。配当は原資産の保有者に支払われるからです。

複製戦略: 時刻0に原資産を1単位買い、購入資金 を借り入れます。

  • 時刻 : 配当 を受け取ります。これを満期まで金利 で運用します。
  • 満期: 原資産の価値は です。借入の返済は です。配当の運用結果は です。ネットのペイオフは

一方、先渡の買い手は満期に を得ます。複製を「先渡の買い手のペイオフ」に一致させるには、余分な配当の運用結果 を取り除く必要があります。そこで、時刻0に配当の現在価値 の分だけ借入を減らします。つまり、借入額を とします。

修正した戦略を整理します。

  • 時刻0: 原資産を で買い、 を借りる。自己資金 を拠出する。
  • 時刻 : 配当 を受け取る。この は自己資金 を まで運用した額 にちょうど等しいので、自己資金の回収と相殺されます。

ここで を使いました。つまり配当収入と自己資金の運用結果がぴったり一致します。

  • 満期: ネットのペイオフは です。

これが に等しいためには

配当が複数回ある場合は、各配当の現在価値の和を とすれば同じ式が成り立ちます。

一意性は THM-FW-1 と同じ裁定の議論で示せます。 が理論値と異なれば、配当を受け取る(あるいは支払う)戦略を組み込んだ裁定が構成できます。 ∎

THM-FW-3 の証明

時刻 に、先渡価格 の先渡契約を保有しています。この契約の価値を求めます。

複製戦略: 時刻 に新たな先渡契約(先渡価格 、同じ満期 )を売ります。新しい先渡の売り手のペイオフは満期に です。

元の契約(買い)と新しい契約(売り)を合わせた満期ペイオフは

が消えました。このポートフォリオは満期に確定額 を受け取ります。リスクが無いので、時刻 の価値は確定キャッシュフロー を割り引いたものです。

新しい先渡は契約時の費用がゼロなので、このポートフォリオの時刻 の価値は元の先渡契約の価値そのものです。

契約時点()を確認します。THM-FW-1 より です。先渡価格 は「契約の初期費用がゼロになるように決める」ので です。したがって

契約時点の価値はゼロです。 ∎

5. 反例 ― 期待収益率を変えても先渡価格は動かない

CEX-FW-1: 先渡価格は将来の予想ではない

先渡価格 は、原資産の将来の期待価格 ではありません。これを数値で確かめます。

原資産の期待収益率を とすると、 です。 を変えて と先渡価格を比較します。

2% 102 105
8% 108 105
15% 115 105

期待収益率をどう置いても、先渡価格は 105 のまま動きません。 は を含まないからです。

なぜこうなるかを直観的に言えば、先渡価格は「複製のコスト」であり、原資産を今日買って金利で借り入れを賄うコストだけで決まるからです。原資産が将来いくらになるかの予想は、この複製の構成に一切関係しません。第45回では、株価の世界でこれと全く同じ現象が起きることを見ます。

この節のまとめです。先渡価格は将来の期待価格ではなく、今日の価格と金利だけで決まります。期待収益率は先渡価格に影響しません。

CEX-FW-2: 空売りができない場合

THM-FW-1 の証明は、2つの裁定を使いました。 のとき(場合1)は「先渡を売り、原資産を買う」。 のとき(場合2)は「先渡を買い、原資産を空売りする」。場合2は原資産の空売りが必要です。

空売りができない市場を考えます。理論値は です。

  • 市場価格 のとき: 場合1の裁定を実行します。先渡を売り、原資産を買い、資金を借ります。空売りは不要なので、利益 を確定できます。この裁定は機能します。
  • 市場価格 のとき: 場合2の裁定を実行するには原資産を空売りする必要がありますが、それができません。したがって、 を是正する力が働きません。

空売りができないと、割安側()の裁定だけがブロックされます。割高側の裁定は空売りなしで実行できるので、 のように理論値を上回る価格は裁定で押し戻され、 が理論値を上回ったまま残ることはありません。一方、 のように理論値を下回る価格は是正されないため、先渡価格は理論値を下回る方向にずれうることになります。

もう少し丁寧に考えます。原資産を既に保有している投資家は、空売りの代わりに手持ちの原資産を売ることで場合2と同等の取引を行えます。しかし全ての市場参加者がそうできるわけではありません。空売りが制限されると、市場全体として割安な先渡を是正する裁定圧力が弱まり、無裁定から言えるのは という片側の不等式だけになります。

この節のまとめです。仮定を外すと片方の裁定だけがブロックされ、先渡価格は理論値から一方向にずれうることがあります。

CEX-FW-3: 保管コストがある場合

原資産の保管に年率 2% のコストがかかるとします。 なので保管コストの現在価値は です(期首に一括で支払うと仮定します)。

THM-FW-1 の複製戦略に保管コストを加えます。原資産を1単位買って満期まで持つには、購入代金 に加えて保管コスト が必要です。借入総額は になり、先渡価格は

保管コストが無い場合の先渡価格 と比べると、差は です。これは保管コスト を満期まで運用した に等しくなっています。保管コストの分だけ、先渡価格は上方にずれます。

直観は明快です。原資産を持ち続けるコストが高いほど、「今日は買わずに将来受け渡しで手に入れる」先渡の方が有利です。その有利さの分だけ、先渡価格は高くなります。

この節のまとめです。保管コストがあると、そのコストの将来価値の分だけ先渡価格は理論値より高くなります。

6. 数値例 ― 100円の資産の1年先渡を作る

、()、 で計算します。割引係数は です。

先渡価格と複製ポートフォリオ

THM-FW-1 より、先渡価格は

複製ポートフォリオは「原資産を1単位買い、100 を借りる」です。

時刻0 満期
原資産(1単位)
借入(100)
合計

合計のペイオフ は、先渡の買い手のペイオフ に一致します。

先渡価格が理論値からずれたときの裁定

市場価格が 108 のとき(割高):

時刻0 満期
先渡を売る
原資産を買う
100 を借りる
合計

確定利益 です。現在価値は です。

市場価格が 102 のとき(割安):

時刻0 満期
先渡を買う
原資産を空売り
100 を貸す
合計

確定利益 です。現在価値は です。

配当がある場合

に確定配当 が出るとします。1年未満の期間は、2節の ではなく単利 で割り引く約束にします(途中時点の契約の価値の計算も同じです)。配当の現在価値は

配当ありの先渡価格は

配当なしの先渡価格 との差は です。配当の現在価値 を満期まで運用した額に近い値です。先渡の買い手は途中の配当を受け取れないため、その分だけ先渡価格が下がります。

先渡契約の途中時点の価値

先渡価格 で契約した先渡を考えます。半年後()に原資産が になったとします。

残存期間の割引係数は です。新しい先渡価格は

先渡契約の価値は

原資産が上がったので、先渡の買い手にとって契約は正の価値を持ちます。

この節のまとめです。先渡価格は で決まり、理論値からずれれば裁定が生じます。配当があれば先渡価格は下がり、途中時点の契約の価値は新旧の先渡価格の差を割り引いた額です。

7. 実践 ― 債券を1本、電卓で丸ごと計算する

第2部で積み上げた割引係数(第7回)、債券価格(第9回)、最終利回り(第10回)、デュレーション(第13回)、コンベキシティ(第14回)を1本の債券に全て使います。この実践を終えると、債券1本の価格・最終利回り・デュレーション・コンベキシティを電卓で計算し、金利が1%動いたときの損失額を見積もることができます。

手順

額面 、クーポン率 (年 円)、残存 年の債券を、利回り で計算します。仮定は次の通りです。

  • 額面100、年1回払いのクーポン、残存年数は整数年。
  • 複利は年1回。金利は期間によらず一定(利回り1本で割り引く)。
  • 信用リスク、途中償還、経過利子は扱わない(利払い直後の時点で計算する)。
  • 使う道具は四則演算と累乗( キー)のある電卓。関数電卓の金融機能は使わない。

ステップ1: キャッシュフローを書き出します。年 から年 まではクーポン 円、年 は 円です。

ステップ2: 割引の表を作ります。利回り で各キャッシュフローを割り引きます。

年 CF 割引係数 現在価値 PV
1 4 0.9524 3.8095
2 4 0.9070 3.6281
3 4 0.8638 3.4554
4 4 0.8227 3.2908
5 104 0.7835 81.4867

合計が債券価格です。 です。

ステップ3: マコーレー・デュレーションを出します。各行の PV に年数 を掛けて合計し、価格で割ります。 年です。

ステップ4: 修正デュレーションを出します。 です。

ステップ5: コンベキシティを出します。各行で を掛けて で割り、合計を価格で割ります。 です。

ステップ6: 金利変動の損益を3通りで見積もります。

  • デュレーション近似:
  • コンベキシティ込み:
  • 厳密な再計算: 新しい利回りで価格を計算し直す。

ステップ7: 市場価格 から最終利回りを二分法で逆算します。下限 、上限 で始め、中点の価格が より高ければ下限を上げ、低ければ上限を下げます。

コード

import numpy as np

face, cpn, n, y = 100, 4, 5, 0.05

# ── 価格 ──
cf = np.array([cpn]*4 + [cpn + face])
t  = np.arange(1, n+1)
df = (1 + y) ** (-t)
pv = cf * df
price = pv.sum()
print(f"価格 = {price:.4f}")

# ── デュレーション・コンベキシティ ──
d_mac = (t * pv).sum() / price
d_mod = d_mac / (1 + y)
cv    = (t*(t+1) * cf * (1+y)**(-(t+2))).sum() / price
print(f"Dmac = {d_mac:.4f}, Dmod = {d_mod:.4f}, Cv = {cv:.4f}")

# ── 金利変動の損益(+1%, -1%, +3%)──
for dy in [0.01, -0.01, 0.03]:
    exact = (cf * (1+y+dy)**(-t)).sum() - price
    dur   = -d_mod * price * dy
    conv  = dur + 0.5 * cv * price * dy**2
    print(f"Δy={dy:+.0%}: 厳密={exact:+.4f}"
          f"  Dur={dur:+.4f}  Dur+Cv={conv:+.4f}")

# ── 二分法で YTM を求める(市場価格 95)──
lo, hi, target = 0.0, 0.20, 95.0
for i in range(20):
    mid = (lo + hi) / 2
    p   = (cf * (1+mid)**(-t)).sum()
    if p > target: lo = mid
    else:          hi = mid
ytm = (lo + hi) / 2
print(f"YTM = {ytm*100:.4f}%  検算価格 = "
      f"{(cf*(1+ytm)**(-t)).sum():.4f}")

このコードを実行すると、電卓で求めた全ての数値と一致します。

結果の読み方

修正デュレーション は「利回りが 動くと価格が約 動く」という意味です。額面 万円分なら約 万円の損益です。ただし、この見積もりは利回りの変化が小さいときだけ正確です。

CEX-PR16-1: デュレーションだけで価格変化を見積もれば十分、という思い込み

利回りが 、、 動いたときの価格変化を3通りで比べます。

利回り変化 デュレーション近似 コンベキシティ込み 厳密値

ではデュレーション近似の誤差は で、 程度です。コンベキシティを入れると誤差は に縮まります。

ところが になると、デュレーション近似の誤差は (約 の過大評価)に膨らみます。コンベキシティを入れても の誤差が残ります。大きな金利変動が見込まれる局面では、コンベキシティを加えるか、厳密に再計算する必要があります。

CEX-PR16-2: 最終利回りの逆算を線形補間1回で打ち切ってよいという理解

市場価格 から最終利回りを逆算するとき、2つの方法を比べます。

線形補間1回: 利回り (価格 )と (価格 )の2点を直線で結び、 を得ます。この利回りで価格を計算すると で、目標の から ずれます。

二分法(20回): 最初の数ステップを示します。

ステップ 下限(%) 上限(%) 中点(%) 中点の価格
1 0.00 20.00 10.00 77.2553
2 0.00 10.00 5.00 95.6705
3 5.00 10.00 7.50 85.8394
7 5.00 5.3125 5.1563 95.0156

7ステップ目で価格が まで近づきます。20回で 、検算価格 です。線形補間1回で打ち切ると の誤差が残りますが、二分法なら電卓でも十分な精度に到達します。

8. 次回へ ― 状態が複数ある世界を扱う言葉

今回は確定利付きの世界で、先渡価格を複製で導きました。原資産の将来価格がいくらになるかは先渡価格に影響しない、という結果は直観に反するかもしれません。しかし複製の論法を追えば、 は最後に必ず相殺されるので、予想が入る余地がないことがわかります。

ここまで第1部・第2部を通じて、確率を一度も使わずに来ました。裁定と複製の原理だけで、債券価格・金利・先渡価格を導きました。しかし次に進むと、状態が複数ある世界を扱う必要が出てきます。そのための言葉を次回から整備します。

この回で、1つ目のマイルストーンに到達しました。

よくある質問

先渡価格は将来の価格の予想ですか

違います。今日の価格と金利だけで決まります。上がると思っていても下がると思っていても同じ値になります。

なぜ予想が入らないのですか

今日買って持ち続ければ、将来その資産を確実に持てるからです。予想を使わずに同じ結果を作れてしまいます。

配当があるとなぜ先渡価格が下がるのですか

先渡で買う人は途中の配当を受け取れないからです。その分だけ安く約束することになります。

参考文献

  1. Hull J. C.、Options Futures and Other Derivatives、第11版、Pearson、2021年
  2. Luenberger D. G.、Investment Science、第2版、Oxford University Press、2013年

数値例は compute.py により有理数演算で検算済み。本文中の小数は4桁で丸めている。

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