トラベルルールとは?仮想通貨の送金で情報通知が必要な理由・個人への影響・対処法を解説

ICHIZEN Capitalのイチ押しポイント!
- トラベルルールは「送金時に送付人・受取人の情報を取引所間で通知する」義務
- マネーロンダリング対策の国際基準(FATF勧告16)を暗号資産に適用したもの
- 日本では2023年6月1日の犯罪収益移転防止法の改正で法的に義務化された
- 個人には「送金の手間と制限」という形で影響する
- 送金時に受取人の情報(本人か第三者か・送付先の取引所名など)の入力を求められる
- 対応する仕組み(TRUST/Sygna)が異なる取引所間では送金できない場合がある(要確認)
- 自己管理ウォレットは原則対象外だが、取引所の判断で断られることも
- MetaMaskなどへの送金は取引所間の移転でないため原則ルール外(取引所により対応が異なる)
- 送金できないときは、送付先が同じ仕組みに対応しているかを事前に確認する
- 取引所が送金記録を保持|無申告は把握されやすい
- 取引所は送付人・受取人情報を保存するため、税務上の無申告は把握されやすい(一般論)
- 暗号資産の利益は原則、雑所得で総合課税・最大約55%
水野 倫太郎「取引所から送金しようとしたら、見慣れない入力を求められた」——その正体がトラベルルールです。忖度なく言うと、これは面倒ですが、暗号資産が社会に受け入れられるために避けて通れない仕組みです。制度の中身と、個人が実際に困りやすいポイント、対処法までを、コンプライアンスと税務の視点で整理します。


監修 水野 倫太郎
株式会社ICHIZEN HOLDINGS 代表取締役
慶應義塾大学経済学部。2017年米国留学時にブロックチェーンと出会い、Web3の業界に足を踏み入れる。2018年には、日本有数の仮想通貨メディアCoinOtakuに入社。2019年には同社のCMOに就任し、2020年に東証二部上場企業とM&Aを行い、様々なクリプト事業を展開する。2022年に現在代表取締役社長を務めるICHIZEN HOLDINGSを立ち上げ様々なWeb3事業を手がける。複数のWeb3系事業に出資を行いながら有識者として活動。
トラベルルールとは?基本情報
トラベルルールとは、暗号資産交換業者が送金を行う際に、送付人と受取人の情報を、送金先の取引所へ通知・共有することを義務づけるルールです。マネーロンダリングやテロ資金供与を防ぐための国際基準であるFATF(金融活動作業部会)の勧告16を、暗号資産の移転に適用したものです。銀行の海外送金で送金人・受取人情報が相手先に伝わるのと同じ考え方を、暗号資産にも広げたものと理解すると分かりやすいでしょう。
FATFの基準では、送付側の取引所が送付人の氏名・ウォレット情報・住所等、受取人の氏名・ウォレット情報などを取得・保存し、受取側の取引所へ伝達します。記録は一定期間(FATF基準で最低5年)保存されます。まずは全体像を押さえましょう。
| 項目 | 内容(2026年7月時点) |
|---|---|
| 目的 | マネロン・テロ資金供与対策(AML/CFT) |
| 国際基準 | FATF勧告16(2018年に暗号資産へ拡張、2025年6月に改訂) |
| 通知される情報 | 送付人・受取人の氏名、ウォレット情報、住所・目的等(厳密な項目は施行規則で要確認) |
| 日本での義務化 | 2023年6月1日施行の改正(犯罪収益移転防止法等)。先行して2022年4月からJVCEA自主規制 |
| 個人への影響 | 送金時の受取人情報の入力、対応取引所どうしでないと送金できない場合など |
なお、FATF基準には「1,000ドル超で完全な情報交換」といった下限(デミニマス)がありますが、これは国際基準の値で、日本国内の運用における対象範囲とは別です。国内の正確なしきい値・対象は法令で定められており、詳細は要確認としておきます。
日本ではいつから?法的な根拠
日本での導入は、段階的に進みました。順を追って整理します。
- 2022年4月1日|自主規制で先行|金融庁の要請を受け、JVCEA(日本暗号資産等取引業協会)の自主規制規則としてトラベルルールが先行導入された
- 2023年6月1日|法的に義務化|改正により、犯罪収益移転防止法などにもとづいて、国内の暗号資産交換業者にトラベルルールの遵守が法的義務となった
制度の骨子は、「利用者の依頼で暗号資産を送付する取引所は、送付依頼人と受取人に関する一定の事項を、受取人側の取引所へ通知しなければならない」というものです。つまり、私たちが取引所から送金するたびに、その裏で取引所どうしが情報をやり取りしている、という状態になっています。この仕組みが、次に説明する「個人への影響」を生みます。
個人ユーザーへの影響|送金の手間と制限
トラベルルールは事業者向けの規制ですが、実際には個人の送金にも影響します。とくに次の3つは、送金前に知っておかないと戸惑うポイントです。
送金時に受取人の情報入力を求められる
国内取引所から暗号資産を送るとき、送付先が自分の口座か第三者か、送付先の取引所名(事業者名)は何か、といった受取人情報の入力を求められます。以前のように送付先アドレスを入れるだけ、とはいかなくなりました。第三者への送金では、相手の氏名などが必要になる場合もあります。
対応する仕組み(TRUST/Sygna)が違うと送金できないことがある
トラベルルールに対応するための主なシステムには「TRUST」と「Sygna」の2つがあり、取引所によって採用しているものが異なります。異なるシステムを採用する取引所どうしでは、直接送金できない場合があります(2026年時点。相互接続の状況は変わり得るため要確認)。国内取引所間の送金でも「送れない組み合わせ」があり得るため、送金前の確認が欠かせません。また、送金できる銘柄が一部に限定されるケースもあります(対象銘柄は随時拡大し得るため要確認)。
自己管理ウォレットへの送金は原則対象外(ただし取引所判断あり)
MetaMaskなどの自己管理ウォレット(プライベートウォレット)への送金は、取引所間の移転ではないため、原則としてトラベルルールの対象外です。ただし、GMOコインの公式説明のように、「送付は可能だが、当社の判断で送付をお断りする場合がある」としている取引所もあります。自己管理ウォレット経由なら常に自由に送れる、とは限らない点に注意しましょう。
送金できないときの対処法
「送金しようとしたら弾かれた・保留になった」という場合、次の順で確認・対処するのが基本です。あくまで一般的な方法で、最終的には各取引所のルールに従ってください。
- 送付先が同じ仕組み(TRUST/Sygna)に対応しているか確認する|対応が揃っていないと直接送金できないことがある
- 対象銘柄・受取人情報の要件を各取引所のヘルプで確認する|銘柄や入力項目の条件を満たしていないと保留・返還される場合がある
- いったん自己管理ウォレットを経由する|システムが異なる取引所間では、自己管理ウォレットを挟む方法もある(ただし手数料・送金回数が増え、取引所判断で断られる可能性もある/要確認)
暗号資産を国内取引所から別の取引所へ移す全体の流れや注意点は海外取引所の出金方法の記事でも解説しています。あわせてご覧ください。
海外取引所への送金はどうなる?
海外取引所とのやり取りにも、トラベルルールは関わってきます。日本の法令では、「通知対象国・地域」に所在する海外の交換業者への送金には対応が必要となり、国内取引所側の対応可否によって送金が制限される場合があります。一方で、通知対象に含まれない海外取引所へは、従来どおり送受金ができるケースもあります。この線引きは取引所や制度の運用によって異なるため、送金前に必ず利用する取引所で確認してください。
実務では、海外取引所から国内取引所へ着金する際に、トラベルルール由来で追加情報の入力を求められ、一時的に保留となる例もあります(取引所により対応は異なります)。加えて、そもそも無登録の海外取引所の利用は自己責任であり、トラベルルールへの対応可否とは別に、出金トラブルなどのリスクがある点も理解しておきましょう。どの取引所を使うかの全体像は海外取引所おすすめランキングもご覧ください。
ICHIZEN Capitalの視点|情報の保持と税務
トラベルルールは送金の話ですが、事業者視点で見ると「税務」とも間接的につながります。ここは誤解のないよう、正確にお伝えします。
トラベルルールと税制に直接の制度的な連動はありません。ただし、取引所が送付人・受取人の情報や取引記録を保持し、当局へ提供し得ることを踏まえると、暗号資産の利益を申告しない「無申告」は把握されやすくなっていると考えるのが自然です。暗号資産の売却・使用による利益は、日本の居住者であれば原則「雑所得」として総合課税され、税率は住民税を含めて最大約55%です。会社員などは、暗号資産を含む雑所得が年20万円を超えると原則確定申告が必要になります。税金の全体像は仮想通貨の税金の記事で詳しく解説しています。
なお税制は変わろうとしています。2026年度の税制改正では、一定の暗号資産取引の利益を申告分離課税(約20%)とする方針が示されました。ただし施行は法改正が前提で、2027年以降の見込みで開始時期は要確認です。現時点では従来どおり、雑所得・総合課税で申告します。トラベルルールで送金の記録が残る時代だからこそ、取引履歴を最初から保存し、正しく申告することが、結局いちばんの安全策です。



トラベルルールで「取引所は誰がどこへ送ったか」を持つ時代になりました。だからこそ、無申告はより一層リスクが高い。利益が出たら、雑所得・総合課税で最大約55%を前提に、納税用の資金を円で確保しておく——この基本を守るのが、長く安心して続けるコツです。判断に迷えば税理士へ。
よくある質問
トラベルルールとは何ですか?
暗号資産交換業者が送金を行う際に、送付人と受取人の情報を送金先の取引所へ通知・共有することを義務づけるルールです。マネーロンダリング対策の国際基準であるFATF勧告16を暗号資産に適用したもので、銀行の海外送金と同じ考え方を暗号資産に広げたものです。
トラベルルールはいつから始まりましたか?
日本では、2022年4月にJVCEA(日本暗号資産等取引業協会)の自主規制として先行導入され、2023年6月1日施行の改正により犯罪収益移転防止法などにもとづいて法的に義務化されました。国際的にはFATFが2018年に暗号資産へ適用を広げています。
トラベルルールで送金できないのはなぜですか?
取引所が採用するトラベルルール対応システム(TRUST/Sygna)が送付先と異なると、直接送金できない場合があるためです。また、対象銘柄でない、受取人情報の要件を満たしていない、といった理由で保留・返還されることもあります。送付先が同じ仕組みに対応しているかを事前に確認しましょう。
TRUSTとSygnaの違いは何ですか?相互に送金できますか?
どちらもトラベルルールに対応するためのシステムで、取引所によって採用が分かれます。2026年時点では、異なるシステムを採用する取引所どうしで直接送金できない場合があるとされています。相互接続の状況は変わり得るため、最新の対応は各取引所で確認してください。
MetaMaskなど自己管理ウォレットへの送金は制限されますか?
自己管理ウォレットへの送金は取引所間の移転ではないため、原則としてトラベルルールの対象外です。ただし取引所によっては「送付は可能だが当社の判断で断る場合がある」としているため、常に自由に送れるとは限りません。利用する取引所のルールを確認しましょう。
海外取引所(Bybit・Binance等)への送金はどうなりますか?
「通知対象国・地域」に所在する海外取引所への送金には対応が必要となり、国内取引所側の対応可否で制限される場合があります。対象に含まれない場合は従来どおり送受金できるケースもあります。線引きは取引所・運用で異なるため、送金前に必ず確認してください。無登録の海外取引所の利用は自己責任です。
トラベルルールは回避できますか?
自己管理ウォレットを経由する方法はありますが、手数料や送金回数が増え、取引所の判断で断られる可能性もあります。ルールそのものを「回避」しようとする行為は、資金洗浄防止の趣旨に反し、口座の利用制限などにつながる恐れもあります。正規の手順で、対応する取引所どうしを使うのが基本です。
トラベルルールがあると、税金の無申告はバレますか?
トラベルルールと税制に直接の連動はありませんが、取引所が送付人・受取人情報や取引記録を保持し当局へ提供し得るため、無申告は把握されやすくなっていると考えるのが自然です。暗号資産の利益は原則、雑所得・総合課税で最大約55%。年20万円超の利益がある会社員などは確定申告が必要です。
まとめ|トラベルルールは「送金の新常識」、事前確認が鍵
トラベルルールは、送金時に送付人・受取人の情報を取引所間で通知するマネロン対策のルールで、日本では2023年6月1日に法的義務化されました。個人には、受取人情報の入力、対応システム(TRUST/Sygna)の違いによる送金制限、自己管理ウォレットの扱いといった形で影響します。
送金でつまずかないコツは、「送付先が同じ仕組みに対応しているか」「対象銘柄か」を事前に確認することです。海外取引所とのやり取りでは制限がかかる場合があり、無登録業者の利用は自己責任です。そして、取引所が送金記録を保持する時代だからこそ、利益は雑所得・総合課税で最大約55%を前提に、取引履歴を残して正しく申告することが安心につながります。制度を正しく理解し、無理のない範囲で暗号資産と付き合っていきましょう。
参考文献
1. JVCEA(日本暗号資産等取引業協会)トラベルルールに関する情報https://jvcea.or.jp/information/main-info/20220301-001/
2. FATF「Best Practices on Travel Rule Supervision」(2025年6月)https://www.fatf-gafi.org/
3. GMOコイン「トラベルルールについて」https://coin.z.com/jp/corp/travelrule/
4. 国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」令和7年12月https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shotoku/kakuteishinkokukankei/kasoutuka/
※本記事は2026年7月時点の情報に基づく一般的な情報提供を目的としており、特定の取引所・サービスを勧誘するものではありません。トラベルルールの対象範囲・しきい値・通知情報項目・対応システム(TRUST/Sygna)の採用状況・送金の可否は、法令や各取引所の運用により異なり、変更される場合があるため、最新情報は必ず各取引所の公式情報および金融庁・JVCEAの情報でご確認ください。無登録の海外業者の利用は自己責任です。税制は今後変更される可能性があり、分離課税化の適用開始時期は要確認です。最終的な判断はご自身の責任で行ってください。









