NFTとスポーツの活用事例5選|NFTを用いた新たなファン体験の可能性

近年NFTの普及により、スポーツにおけるNFTの活用事例が増えてきています。
選手の写真やチームのロゴ、キャラクターのNFTアートだけでなく、コミュニティの形成やチームの戦績記録に活用する事例もあります。
NFTはまだ実用化されて数年程度の技術であるため伸び代もあり、今後もスポーツ業界における用途は広がっていくことでしょう。
今回の記事では、NFTとスポーツの活用事例5選と、新たなファン体験の可能性や市場規模などを解説していきます。
WEB3コンサルタント水野倫太郎による要約
- NFT✖️スポーツ領域にはこれまでにない新たなファン体験を提供できる
- チームへの愛情・応援の度合いを示すことができる
- スポーツエンタテイメントの「モノ」「コト」「トキ」をデジタル化(NFT化)
- 新しい応援の形をデジタルグッズで実現
- チームのキャラクターやロゴ、ユニフォーム、運営する施設など様々なものをNFT化=販売できる
- 試合に参加したなど、無形のものを有形化できる
- プロチームからアマチュアチームまで様々な活用実績
- 海外のトップチームから日本の地域チームまでNFTを活用し始めている
- 2022年4月時点でのスポーツxNFTの市場規模を1,100億円規模
「NFTはスポーツに新たな楽しみ方を与える」ポテンシャルを持つ。
国を超えて誰もが楽しめるコンテンツの1つであるスポーツ。
そして国境を簡単に超えられる暗号資産・NFT。
日本では基本的に難しいが、世界ではスポーツベッティングの市場規模は12兆円程度と言われている。
NFTやWEB3を活用することで、ありとあらゆるものをベッティングの対象にすることができ、既存の市場規模を考慮しても、NFT等の活用のみならず市場自体の拡大も期待できる。
今回記事内で紹介している事例には、国内を中心に地域のチームによる事例からプロチームまで様々なものを紹介している。中にはスタジアムの1平米オーナー権NFTを販売していたりと、NFTの様々な活用方法が想像できる。
ぜひ、事例をすべてご覧いただき、NFTとスポーツの可能性を考えてもらいたい。

監修 水野 倫太郎
株式会社ICHIZEN HOLDINGS 代表取締役
慶應義塾大学経済学部。2017年米国留学時にブロックチェーンと出会い、Web3の業界に足を踏み入れる。2018年には、日本有数の仮想通貨メディアCoinOtakuに入社。2019年には同社のCMOに就任し、2020年に東証二部上場企業とM&Aを行い、様々なクリプト事業を展開する。2022年に現在代表取締役社長を務めるICHIZEN HOLDINGSを立ち上げ様々なWeb3事業を手がける。複数のWeb3系事業に出資を行いながら有識者として活動。
そもそもNFTとは|スポーツへの活用
NFTとは「Non Fungible Token」の略で、日本語では非代替性トークンと訳されます。
ブロックチェーン上で発行・取引され、他と代替できない唯一性を持つという特徴があります。
NFTではブロックチェーンの技術を用いて唯一性を証明します。
ブロックチェーンは、すべての取引が公開されて、情報の改ざんができない点が特徴です。
NFTに割り振られたウォレットアドレスやトークンIDと、発行されたブロックチェーン上にある情報が一致すると、他にはないオリジナルであることを証明できます。
スポーツ業界においてのNFTの用途は、具体的に以下が挙げられます。
- 新しいチームコンテンツ
- ファンの活動をNFTで可視化することによるファンエンゲージメント向上
- ファンコミュニティ構築=ロイヤリティ向上
- チケットNFT
- チームの歴史の記録
限定イベントを開催、コミュニティへの参加、チームの方針を決めるための投票など、限られた人だけが体験できる機会を提供し、ファンとのエンゲージメントの向上が期待できます。
また、ブロックチェーンには記録された情報は永続的に残せる、という技術的な特徴があります。
今までのファン活動が可視化されることで、チームとのつながりをより実感できるようになるでしょう。
日本国内のスポーツとNFT活用事例5選

私自身ずっとサッカーをやっていたこともあり、サッカーにおけるNFTの活用事例中心になってしまいますが、NFTの使われ方として非常に面白いちょっと変わった事例を5つ紹介します!
- 鎌倉インターナショナルFC
- 船橋FC
- セレッソ大阪
- B.LEAGUE
- スポーツ庁
鎌倉インターナショナルFC
神奈川県社会人1部リーグ所属の「鎌倉インターナショナルFC」は、サッカーグラウンド1平米オーナー制度NFTの「鎌倉スタジアムNFTプロジェクト」を2025年3月より開始しました。
この取り組みは、「1平米オーナーNFT」というスタジアムのグラウンド(102m ✖︎ 64m)の合計6528㎡を対象に6528平米分のNFTを発行しています。
サポーターは「1平米オーナーNFT」を購入することで、デジタル上でスタジアムの1平米を所有できるという体験になっています。
このNFTを購入すると、「SHOOTZONE」というゲームに参加することができます。
NFTに紐づいている一意の位置情報をもとに、その位置で鎌倉インテルがゴールを決めた際にポイントをもらうことができます。(詳細はこちら)
ポイントを貯めて、ランキング上位になると、さまざまな特典を得ることができるようです。



スタジアムの土地を1平米ごとにNFT化して、ちょっとした賭け事風にアレンジするのは非常に良いアイディアですよね。NFTなどは使い方によっては何でもベッティング風に仕立てあげる事ができます。
この取り組みは海外にも逆輸入されたりしないかなと期待しています。
船橋FC
千葉県サッカーリーグ2部に所属する「船橋FC」は、「世界一地域社会に貢献するスポーツクラブになる」というコンセプトのもと、チームオーナー権をNFTにして販売を行いました(初回販売は2024年12月12日〜25年2月28日)
チームの運営にDAOの要素を取り入れており、地域の方々に船橋FCのオーナーになってもらいたいという考えを持っています。NFTを購入し、オーナーなることでDAOにおける投票権を有したり、特別イベントの参加権など様々な特典が与えられます。
船橋FCは、IEOまで考えておりライトペーパーも作成しているほど、地域のサッカーチーム運営にWEB3要素を本気で加えており、Jリーグへの参入を目標に活動しています。



自分の友人も所属しているチームであり、地域のチームとは思えないほど先進的な取り組みに挑戦されています!技術としてもSoneiumが入っていたりと、今後世界的にも注目のプロジェクトかつチームになりそうです。
セレッソ大阪
JリーグのJ1カテゴリーに所属しているセレッソ大阪は株式会社FiNANCiEと提携し、ファンとのエンゲージメント強化を目的に、オリジナルキャラクターのジェネラティブNFTを、2023年11月より販売しています。
ジェネラティブNFTとは、プログラムやアルゴリズムに基づいて自動生成されるNFTで、統一感のあるデザインでありながらパーツや装飾品、背景などが異なることが特徴です。
セレッソ大阪のNFTは「CEREZO OSAKA SUPPORTERS NFT」と呼ばれ、顔のパーツやアクセサリー、ユニフォームの種類や背番号が異なります。
NFTを入手した人には、以下の特典が付与します。
- アートワーク商用利用権
- セレサポNFTがスタジアムに登場
- 派生NFT優先購入権
- グッズやNFTが当たる抽選会への参加
- アウェイ観戦時にも使えるホテルやレストランの割引サービス
- NFTに選手のデジタルサインを刻印(NFT保有2個以上)
- 選手サイン入りセレサポ関連グッズプレゼント(NFT保有2個以上)
- 提携クリプトバーでの優待特典(NFT保有3個以上)
- セレサポNFTユニフォームナンバーカスタム権(NFT保有5個以上)
スタジアムでNFT保有者だけの体験が用意されている、限定グッズプレゼントの抽選を受けられる、NFTを自分好みにカスタマイズできるなど、さまざまな特典が付帯します。
セレッソ大阪ファンは思わずスタジアムに足を運びたくなってしまうような、見逃せない特典が豊富です。
セレッソ大阪のNFTは、2023年11月末から12月にかけて限定数3,000個で販売されました。
現在は二次流通品がCoincheck NFTで取引されています。



このサポーターズNFTを購入すると、たまにスタジアムに自分の絵柄が表示されたりするなど、サポーターにとってはこれまでにない新しい体験が味わえる仕掛けが施されています。
B.LEAGUE
日本のプロバスケットリーグのB.LEAGUEは、ファンにより試合を楽しんでもらうために、2022年4月より「B.LEAGUE PARK」でNFTの提供を開始しています。
NFTはすべて3D加工されていて、種類は動画、カード、アイテムの3つです。
動画にはB.LEAGUEでのお気に入りのワンシーン、カードには迫力のあるプレーシーン、アイテムにはユニフォームやリングなどをモチーフとした作品があります。
NFTの保有者は、作品を通じていつでもB.LEAGUEの試合のシーンを見直すことができます。
動画にはセンタービジョンのイメージ、カードには360度のアリーナ背景が施されており、まるで会場にいるかのような感覚を得られます。
また、お気に入りのチームのアイテムNFTを集めてコレクションするのもいいでしょう。
二次流通品は、LINE NFTのDOSIマーケットで購入できます。



スーパープレーなど、非常に価値のある瞬間はこれまでYoutubeへの無断転載などなど、各チーム・協会は有効に使えていない現実でした。NFTによってそのような形のないものを形づくり、そして価値を与えることができるようになったため、NFTならではのメリットを双方が感じられるようになったかと思います。
スポーツ庁
デロイトトーマツグループは、企業や団体によるNFT活用サービスを支援するため、2024年2月に自社のNFT開発ツールが「Astar zkEVM」に対応したことを発表しました。
Astar zkEVM上には、野球をテーマにしたNFTゲームアプリ「べスログ」のプロトタイプを構築しています。
この取り組みは、同グループが受託した、スポーツ庁による令和5年度 スポーツ産業の成長促進事業「スポーツ×テクノロジー活用推進事業」によるものです。
スポーツ×テクノロジー活用推進事業は、DXやテクノロジーを通じてスポーツの付加価値を高めたり、新たな収入源を見出すための実証実験を目的としています。
NFTゲームアプリのべスログは、テクノロジーを駆使した打撃練習システムの成績によってNFT「エンブレム」を獲得し、アバターを進化させて周囲と競いながら楽しめる設計です。
将来的には、エンブレムの交換やアバターを用いてのチーム対戦などの機能も追加される予定です。



2025年6月現在、プロトタイプなど何かしらのアップデートの情報はないので、鋭意開発中だと推測しています。
スポーツとNFTの相性・出来ること
- 新たなファン体験・応援の形
- 新たなファングッズの展開・応用
実際の活用事例でも紹介してきたように、プロ・アマチュアスポーツ、種目や年代問わずにNFTは利用されています。
ここでは、さまざまなケースがある中で、もっとも効果的で可能性があると考えられる2つを紹介していきます。
新たなファン体験・応援の形
NFTによってファン活動が可視化され、さらなるロイヤリティ化が進むと考えられます。
応援するチームに対していつ、どこで、何をしてきたかがわかり、自身の愛着や熱心さを示す材料としての活用が進む可能性があります。
NFTが取引されるブロックチェーンには、情報が永久的に刻まされるという特徴があります。
限定グッズのプレゼントや、チームの成長と共に応援してきた歴史、イベントへの参加履歴など、スポーツエンタテイメントにおける「モノ」「コト」「トキ」をデジタル化して残し続けることが可能です。
さらに、NFTを保有しているファンだけが参加できるコミュニティを開いたり、選手とコミュニケーションが取れる限定イベントを開催して、ファンとのエンゲージメントを深めることもできます。
NFTを持っていると特別な体験ができる、こうした意識が浸透すると、さらに用途が拡大していくのではないでしょうか。
新たなファングッズの展開・応用
チームのキャラクターやロゴ、ユニフォーム、運営する施設などをNFT化して展開できます。
一定の条件を満たしたファンは貴重アイテムが入手できる、期間限定で配布するなど、種類を分けての運用も可能です。
ファングッズのNFTは、古参ファンや記念すべき試合に参加した証明として価値を持ちます。
単なるグッズ以上の思い出やステータスを手にでき、ファンとチームとのエンゲージメントが深まることでしょう。
また、NFTには転売ができるという特徴もあります。
NFT販売時の収益や二次流通での手数料収益は、チームに利益をもたらし、ファンにとっての新しい応援の形にもなります。
スポーツとNFTの市場規模
総合コンサルファーム「Big4」の1つであるPwCコンサルティング合同会社の調査では、2022年4月時点でのスポーツ関連のNFTの市場規模を1,100億円と算出しています。
この数字は、スポーツNFTと似たトレーディングカード市場の規模1,222億円とほぼ同程度の水準です。
NFTは2017年頃に生まれた比較的新しい技術で、2021年頃から取引量が増え始めました。
2021年1月~6月のスポーツ関連のNFT取引量は約30万件であり、件数は収集を目的としたコレクタブルNFTの約36.7万件に次ぐ2番目の多さです。
アートNFTの約7.5万件やゲームNFTの約7.3万件の数字と比較しても件数が多く、スポーツとNFTの相性がよいことを示しています。
現在スポーツNFTは、集計当時の2021年よりも活用されるケースが増えてきており、さらに大きな取引量となっていると考えられます。
しかし、調査時には回答者全体の3割超が、スポーツNFTの購入場所や手順が分かりにくい点を課題として挙げています。
今後の規模拡大のためには、よりシンプルかつ分かりやすい方法で、新規ユーザーの心理的なハードルを下げることが求められるでしょう。
スポーツとNFT まとめ
- スポーツとNFTは相性が良く取引量も他の分野と比較して多め
- NFTを持っていることが、チームへの愛着を示す指標になる可能性がある
- NFTを通じて新たな体験を提供し、ファンのエンゲージメントを高められる
スポーツとNFTは相性が良く、プロ・アマチュア、種目問わずにさまざまな事例が生まれています。
スポーツ分野でのNFTの活用は、ファンにとって新たな楽しみ方やつながりを提供する一方、チームや選手にとっても新しい収益源やファンとのエンゲージメント強化の手段にもなっています。
スポーツ領域でのNFT活用は、ファンミーティングやリアルイベント、実際の試合などを通してチームを応援するきっかけや、ファンにとっての新たな楽しみ方・体験・価値になっていく可能性があるでしょう。
そのため、今後も多くのチームや団体による、NFTの活用が期待されます。
ご自身の応援するチームでNFTの事例がないか、ぜひ一度チェックしてみてください。