インパーマネントロス(変動損失)とは?仕組み・計算式・早見表・対策と手数料の損益分岐を解説

ICHIZEN Capitalのイチ押しポイント!
- インパーマネントロス(変動損失)とは、流動性提供(LP)した方が「そのまま保有(ガチホ)」より価値が減る差額のこと
- DEXに預けた2つの通貨の価格比が動くと発生する、未確定(含み)の損失
- 価格比が元に戻れば消えるため「インパーマネント(一時的)」と呼ばれる
- 発生の正体は「価格の乖離×自動リバランス」。値上がりした側が自動で売られてしまう
- AMM(定数積x×y=k)がプールの比率を保つため、上がった通貨を減らし下がった通貨を増やす
- 引き出す時、単純に持っていた場合との差がインパーマネントロスとして表面化する
- 損失の大きさは価格倍率で決まる。2倍で約-5.7%、5倍で約-25.5%(実計算値)
- 上昇でも下落でも発生し、0.5倍(半値)は2倍と同じ約-5.7%。片方だけ動くほど大きい
- 計算式は IL = 2√k ÷ (1+k) − 1(kは価格倍率)
- 対策は「ペア選び・手数料APRとの損益分岐・価格の戻り待ち」。税金にも注意
- ステーブル同士や相関の高いペアはILが小さく、手数料APRがILを上回れば実質プラス
- LP報酬やスワップで得た利益は、日本では原則「雑所得」で課税の対象
水野 倫太郎インパーマネントロスは「損失」という名前ですが、正体は“LPにせず持っていれば得られたはずの利益との差”です。多くの方が高いAPR(利回り)だけ見て飛び込みますが、大事なのは『手数料収入がこのILを上回るか』。ここを計算せずに始めると、利回りは付いたのに元本ベースでは負けていた、という事態になります。まずは仕組みと早見表で肌感をつかみましょう。


監修 水野 倫太郎
株式会社ICHIZEN HOLDINGS 代表取締役
慶應義塾大学経済学部。2017年米国留学時にブロックチェーンと出会い、Web3の業界に足を踏み入れる。2018年には、日本有数の仮想通貨メディアCoinOtakuに入社。2019年には同社のCMOに就任し、2020年に東証二部上場企業とM&Aを行い、様々なクリプト事業を展開する。2022年に現在代表取締役社長を務めるICHIZEN HOLDINGSを立ち上げ様々なWeb3事業を手がける。複数のWeb3系事業に出資を行いながら有識者として活動。
インパーマネントロス(変動損失)とは?基本情報
インパーマネントロス(Impermanent Loss/変動損失)とは、DEXに流動性提供(LP)した場合に、その2つの通貨を「ただ保有し続けた場合(ガチホ)」と比べて資産価値が目減りする、その差額のことです。預けたペアの価格比が変動するほど大きくなり、日本語では「変動損失」とも呼ばれます。
ポイントは、これが「実際にお金が減った」損失ではなく、あくまで“持っていた方が得だった”という機会損失だという点です。価格比が元の水準に戻れば差額は消えるため「インパーマネント(一時的)」という名が付いています。ただし、価格が戻らないまま引き出せば、その時点で損失は確定します。まずは全体像を押さえましょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | インパーマネントロス(Impermanent Loss/変動損失/IL) |
| 意味 | LPした方が単純保有より価値が減る「差額」(機会損失) |
| 発生する場所 | DEXの流動性プール(AMM型)への流動性提供時 |
| 発生の原因 | 預けたペアの価格比の変動+AMMの自動リバランス |
| 損失の目安 | 価格2倍で約-5.7%/5倍で約-25.5%(上昇・下落どちらでも発生) |
| 「一時的」の理由 | 価格比が元に戻れば損失は消える(引き出すと確定) |
| 主な対策 | 相関の高いペア選び・手数料APRとの損益分岐・価格の戻り待ち |
| 日本での税務 | LP報酬やスワップ益は原則「雑所得」で総合課税 |
次章から、「なぜこの差額が生まれるのか」という仕組みを、AMMの動きに沿ってできるだけ直感的に解説します。そのうえで計算式・早見表・対策・手数料との損益分岐まで順に見ていきます。
なぜインパーマネントロスが発生するのか?仕組みを直感的に理解する
インパーマネントロスを理解する鍵は、DEXが価格を「自動で調整する仕組み(AMM)」で動いている点にあります。ここでは細部よりも、損失が生まれる流れをイメージでつかむことを優先します。AMMそのものの詳しい仕組みはDEX(分散型取引所)の記事やLPトークンの記事で解説しています。
流動性提供(LP)と定数積(x×y=k)の関係
DEXでは、利用者が2つの通貨をペアで預ける「流動性提供(LP)」によって取引の元手(プール)が作られます。多くのAMMは「2つの通貨の数量をかけた値が一定になる(x×y=k)」という数式(定数積モデル)で価格を決めています。たとえばETHとUSDCのプールなら、ETHの枚数×USDCの枚数が常に一定になるよう保たれます。
この仕組みのおかげで相手がいなくても交換が成立しますが、同時に「価格が動くとプール内の通貨の枚数構成が自動で変わる」という性質も生みます。ここがインパーマネントロスの発生源です。
値上がりした通貨が「自動で売られる」から差が出る
片方の通貨(例:ETH)の価格が上がると、外部のトレーダーがプールで安くなったETHを買っていきます。その結果、プール内のETHは減り、USDCが増えます。プールは常にx×y=kを保つため、値上がりした通貨を自動的に手放し、値下がり側を増やす——つまり「高くなったものを売り、安くなったものを買い増す」逆の動きを勝手に行うのです。
もしLPせず2つの通貨をそのまま持っていれば、値上がりしたETHをまるごと保有できました。ところがLPしていると、値上がり分の一部を売らされた状態になります。この「単純保有ならもっと増えていたはず」との差額こそが、引き出す時に見えるインパーマネントロスの正体です。価格が動く方向(上でも下でも)に関係なく発生し、動きが大きいほど差も広がります。
インパーマネントロスの計算式と損失早見表
インパーマネントロスは感覚論ではなく、価格の変動倍率さえ分かれば数式で正確に計算できます。ここでは公式と、実際に計算した損失早見表を示します。数値は当編集部が計算式で算出したものです。
計算式|IL = 2√k ÷ (1+k) − 1
50:50の代表的なプールでは、片方の通貨の価格が「k倍」になったときのインパーマネントロスは、次の式で求められます。
IL = 2 × √k ÷ (1 + k) − 1(k = 価格の変動倍率)
結果はマイナスの割合(単純保有に対してどれだけ資産が減るか)で出ます。重要なのは、この式は「片方の通貨が動いた倍率」だけで決まり、値上がり・値下がりのどちらでも同じ形で損失が出る点です。次の早見表で具体的な数字を確認しましょう。
損失早見表|価格倍率ごとのインパーマネントロス
| 価格の変動倍率 | インパーマネントロス | 補足 |
|---|---|---|
| 1.25倍(または0.8倍) | 約 -0.6% | 小さな変動なら影響は軽微 |
| 1.5倍(または0.67倍) | 約 -2.0% | — |
| 2倍(または0.5倍/半値) | 約 -5.7% | 上昇でも半値でも同じ損失率 |
| 3倍(または0.33倍) | 約 -13.4% | — |
| 4倍(または0.25倍) | 約 -20.0% | — |
| 5倍(または0.2倍) | 約 -25.5% | — |
| 10倍(または0.1倍) | 約 -42.5% | 片方が急騰・暴落すると甚大 |
表からわかる最大のポイントは、損失率が「上がったか下がったか」ではなく「価格比がどれだけズレたか」で決まることです。2倍に上がっても半値に下がっても、インパーマネントロスは同じ約5.7%。そして変動が大きいほど加速度的に損失が膨らむため、値動きの激しい通貨ペアほど注意が必要です。
自分で計算するのが面倒なら計算ツールを使う
実際の運用では、預けた時と現在の価格を入力するだけでインパーマネントロスを自動計算してくれるオンラインの計算ツール(IL calculator)が複数公開されています。手数料収入(APR)も加味して「トータルで得か損か」を試算できるものもあるため、LPを始める前に一度シミュレーションしておくと安心です。
インパーマネントロスの対策・軽減方法
インパーマネントロスはLPにつきまとうリスクですが、ペアの選び方や運用方法でコントロールできます。代表的な対策は次のとおりです。
- 価格が連動しやすいペアを選ぶ(ステーブルコイン同士・同じ資産の派生ペア等)
- 手数料収入(APR)がILを上回るプールを選ぶ(損益分岐で判断)
- 価格が元に戻るまで引き出さない(確定させない)
- 集中流動性など、資本効率の高い新しいAMMを活用する
基本|ステーブルや相関の高いペアを選ぶ
最も確実な対策は、価格比が動きにくいペアを選ぶことです。USDCとUSDTのようなステーブルコイン同士や、ETHとステーキング版ETHのように値動きがほぼ連動するペアであれば、価格比のズレが小さく、インパーマネントロスもごくわずかに抑えられます。DeFi初心者がまず触れるなら、こうした低ボラティリティのペアが無難です。
応用|集中流動性で資本効率を上げる
近年の主要DEXは、流動性を特定の価格帯に集中させて提供する「集中流動性」という仕組みを採用しています。狭い価格帯に絞ることで少ない資金でも多くの手数料を稼げる一方、価格がその帯から外れると効率が落ちるなど、扱いには慣れが必要です。手数料効率を高めてILを相殺しやすくする狙いがありますが、上級者向けの選択肢と捉えておきましょう。
手数料収入との損益分岐|APRがILを上回るかで判断する
ここがインパーマネントロスを語るうえで最も実務的で、多くの解説が抜けているポイントです。LPで得られるのはILだけではありません。取引のたびにスワップ手数料(=LPの報酬)が入ります。つまり、実際の損益は次のバランスで決まります。
実質損益 ≒ 手数料収入(APR) − インパーマネントロス
たとえば価格が2倍に動いてILが約5.7%発生しても、その間に受け取った手数料が資産の8%に達していれば、差し引きではプラスになります。逆に、年利(APR)が高く見えても値動きの激しいペアでILが手数料を食い潰せば、「利回りは付いたのに単純保有より負けていた」という結果になります。APRの数字だけで飛びつかず、想定する価格変動でのILと必ず比較する——これがLPで負けないための最重要の判断軸です。イールドファーミングの利回りの考え方はイールドファーミングの記事もあわせて確認してください。
ICHIZEN Capitalの視点|インパーマネントロスと税金の落とし穴
多くの解説が触れていないのが税金です。インパーマネントロスは含み(未確定)の損失なので、それ自体が直接課税されるわけではありません。しかしLP運用の周辺では、思わぬところで課税イベントが発生します。ここを知らずに始めると、税務で足をすくわれます。
日本では、受け取ったスワップ手数料やLP報酬(ガバナンストークン等)は、取得した時点の時価が原則「雑所得」として課税されます。さらに、流動性提供や引き出しの際に通貨を別の通貨へ交換すれば、その交換時点で損益が確定し、課税対象になり得ます。「日本円に換えていないから非課税」ではない点が、LP運用でとりわけ見落とされがちな落とし穴です。
つまりLP運用は、インパーマネントロス(価格リスク)・手数料収入・税金の3つをセットで見て初めて「本当に得か」が分かります。含み損のILに気を取られて税務を軽視すると、利益に課税される一方でILは損益通算しにくい、という非対称な負担になりかねません。暗号資産の税金の全体像は仮想通貨の税金の記事で解説しています。判断に迷う場合は国税庁の情報や税理士に確認するのが確実です。



実務で怖いのは、ILそのものより「報酬に課税されるのに、ILは含み損で相殺しづらい」というねじれです。利回りだけを見て複雑なペアに預けると、税金と価格リスクの二重の負担になりがち。まずはステーブルの低リスクなペアで、手数料・IL・税金の関係を体感してから規模を上げるのが堅実です。取引の都度、日時と時価を記録しておきましょう。
よくある質問
インパーマネントロスとは何ですか?わかりやすく教えてください
DEXに2つの通貨をペアで預ける流動性提供(LP)をしたとき、そのまま保有していた場合と比べて資産価値が目減りする「差額」のことです。実際にお金が減るというより、「LPせず持っていた方が得だった」という機会損失を指します。
インパーマネントロスはなぜ発生するのですか?
AMMがプールの比率を一定(x×y=k)に保とうとするため、価格が上がった通貨を自動的に売り、下がった通貨を買い増すからです。この自動リバランスにより、単純保有ならまるごと得られたはずの値上がり分の一部を手放した状態になり、差額が生じます。
なぜ「インパーマネント(一時的)」と呼ぶのですか?回避できますか?
価格比が預けた時の水準に戻れば損失が消えるため「一時的」と呼ばれます。したがって、価格が戻るまで引き出さなければ確定を避けられます。ただし戻らないまま引き出すと損失は確定するため、必ず回避できるわけではありません。
インパーマネントロスはどう計算しますか?
50:50のプールでは「IL = 2 × √k ÷ (1+k) − 1」で求められます(kは片方の通貨の価格変動倍率)。手計算が面倒な場合は、価格を入力するだけで算出できるオンラインのIL計算ツールを使うと簡単です。
価格が2倍・5倍になると損失は何%ですか?
価格が2倍になると約5.7%、5倍で約25.5%のインパーマネントロスになります。上昇でも下落でも同じで、半値(0.5倍)も2倍と同じ約5.7%です。価格比のズレが大きいほど加速度的に損失が膨らみます。
インパーマネントロスを避ける・軽減する方法はありますか?
ステーブルコイン同士や値動きが連動するペアを選ぶと、価格比のズレが小さくILを抑えられます。加えて、手数料収入(APR)がILを上回るプールを選ぶ、価格が戻るまで引き出さない、といった対策も有効です。
手数料収入(APR)があればインパーマネントロスは気にしなくていい?
いいえ。実質損益は「手数料収入 − インパーマネントロス」で決まります。APRが高く見えても、値動きの激しいペアでILが手数料を上回れば単純保有に負けます。想定する価格変動でのILとAPRを必ず比較して判断しましょう。
インパーマネントロスに税金はかかりますか?
含み損であるIL自体に直接課税されるわけではありません。ただし、受け取ったスワップ手数料やLP報酬、通貨の交換で得た利益は日本では原則「雑所得」として課税対象です。日本円に換えていなくても課税イベントが発生し得る点に注意が必要です。
まとめ|インパーマネントロスは「手数料・税金とセット」で判断する
インパーマネントロス(変動損失)は、DEXに流動性提供(LP)したときに、単純保有と比べて資産が目減りする差額のことです。AMMが価格を保つために値上がりした通貨を自動で売ってしまうことで生まれ、損失率は価格倍率だけで決まります(2倍で約5.7%、5倍で約25.5%)。上昇でも下落でも発生し、価格比が戻れば消えるため「一時的」と呼ばれます。
ただし、LPで負けないために本当に大切なのは「手数料収入(APR)がインパーマネントロスを上回るか」という損益分岐、そしてLP報酬やスワップに課される税金まで含めて判断することです。ILだけを恐れるのでも、APRだけを追うのでもなく、価格リスク・手数料収入・税金の3点をセットで見る——これがインパーマネントロスと正しく付き合うための結論です。まずは値動きの小さいペアで感覚をつかみ、DeFiの全体像はDeFiの始め方の記事で確認してから規模を広げていきましょう。
参考文献
1. Uniswap 公式ドキュメント(AMM・定数積x×y=k・流動性提供の仕組み)https://docs.uniswap.org/
2. インパーマネントロスの損失早見表の数値は、公式(IL = 2√k ÷ (1+k) − 1)に基づき当編集部が算出
3. 国税庁「暗号資産に関する税務上の取扱い(FAQ)」https://www.nta.go.jp/
※本記事は2026年7月時点の情報に基づく一般的な情報提供を目的としており、特定の暗号資産(仮想通貨)・サービスへの投資や利用を勧誘するものではありません。DeFiの流動性提供にはインパーマネントロスをはじめとする各種リスクが伴い、税務上の取扱いは個々の状況で異なります。最新の情報は各サービスの公式情報および国税庁の情報でご確認いただき、税務の具体的な判断は税理士等の専門家にご相談ください。最終的な判断はご自身の責任で行ってください。









