マイニングにかかる電気代は?最新機器で収益性シミュレーション!

ビットコインのマイニングに挑戦してみたいが、電気代は一体いくらかかるのだろうか?

2025年現在、暗号資産(仮想通貨)への関心が再び高まる中、このような疑問を持つ方は少なくないでしょう。
かつては「一攫千金」の夢があったマイニングですが、その様相は大きく変化しています。

特に、収益を大きく左右する電気代は、世界的なエネルギー価格の高騰と日本の電力事情を背景に、無視できないコストとなっています。

この記事では、2025年11月時点の最新情報に基づき、マイニングにかかる電気代と収益性を徹底的にシミュレーションします。

目次

マイニングにかかる電気代は月額いくら?最新機種でシミュレーション

まず結論から言うと、2025年11月現在、最新の高性能マシンを使っても、日本の一般的な家庭用電力でマイニングを行うと月額約78,000円の電気代がかかります。

これは、一般的なPCを24時間つけっぱなしにした場合の電気代(月額数千円)とは比較にならない、まさに「次元が違う」コストです。

この計算の根拠を、具体的なシミュレーションを通して見ていきましょう。

マイニング専用マシン「ASIC」とは?

現在のビットコインマイニングは、ASIC(エーシック:Application Specific Integrated Circuit)と呼ばれる、特定の暗号資産のマイニング計算のためだけに設計された専用のマシンで行うのが主流です。

かつては高性能なゲーミングPC(GPU)でも採掘できましたが、現在は世界中の計算競争(ハッシュレート)が激化しすぎており、汎用的なPCでは1円たりとも稼ぐことはできません。
ASICは、いわば「爆音で熱風を出し続ける計算機」であり、その稼働には相応のコストと環境が求められます。

最新モデル「Antminer S21」を用いたシミュレーション

今回は、マイニングマシン最大手であるBitmain社が製造する最新・最高性能モデルの一つ「Antminer S21」を例に、1ヶ月間の電気代と収益を計算します。

【シミュレーション条件】

  • 使用マシン:Antminer S21(ハッシュレート: 200TH/s, 消費電力: 3,500W)
  • 電気料金単価:31円/kWh (2025年11月時点の日本の平均的な単価)
  • 稼働時間:24時間365日
  • BTC価格:1BTC = 1,500万円(2025年11月想定レート)

【電気代の計算】

  1. 1時間の消費電力:3,500W = 3.5kWh
  2. 1ヶ月の総消費電力:3.5kWh × 24時間 × 30日 = 2,520kWh
  3. 1ヶ月の電気代:2,520kWh × 31円/kWh = 78,120円

【収益の計算】

次に、同期間に得られる収益を計算します。
ビットコイン価格を1,500万円とした場合、Antminer S21 (200TH/s) の期待収益は以下のようになります。

  1. 1日の収益:約1,270円(BTC価格上昇分を加味して試算)
  2. 1ヶ月の収益:1,270円/日 × 30日 = 38,100円

【結論】

  • 月間収益:38,100円
  • 月間電気代:78,120円
  • 月間純損益:38,100円 – 78,120円 = -40,020円

このシミュレーションが示す通り、1BTC=1,500万円という高値圏であっても、日本の環境で稼働させると毎月約4万円の赤字が発生するというのが、2025年現在の厳しい現実です。

【結論】マイニングは日本では儲からない!

シミュレーション結果は明確ですが、なぜこれほどまでに収益性が悪化してしまったのでしょうか。

その背景には、ビットコイン価格だけでは測れない、マイニング特有の2つの要因が存在します。

BTC価格は上がったが「難易度」も過去最高

ビットコインの価格は過去最高水準にありますが、それ以上に「マイニング難易度(Difficulty)」が歴史的な高水準で推移しています。

マイニング難易度とは、ビットコインのブロックを生成(=マイニングに成功)する計算の難しさを示す指標であり、ネットワーク全体の計算能力(ハッシュレート)が上がるほど、難易度も自動的に上昇する仕組みになっています。

  • 1BTCあたりの採掘コスト:私たちの計算では、Antminer S21を使って1BTCを採掘するためにかかる電気代だけで、実に約2,059万円にも上ります。これは、現在のBTC価格(約1,500万円)を優に超えます。
  • 損益分岐点:他のコストを一切考慮しなくても、BTC価格が約2,060万円を超えなければ、電気代すら賄えない計算になります。

世界中の企業が巨額の投資を行い、より高性能なマシンを大量に投入し続けているため、個人のマシン1台で太刀打ちするのは極めて困難な状況なのです。

初期投資は90万円|回収は「不可能」

さらに、収益性を圧迫するのが高額な初期投資です。
シミュレーションで用いたAntminer S21の本体価格は、約80万円です。

  • 初期セットアップ費用:本体価格に加え、適切な電源設備、冷却設備、防音対策などを施すと、初期投資は100万円を超えることも珍しくありません。
  • 投資回収期間:前述の通り、月々の収支が赤字であるため、現在の状況が続く限り、初期投資の回収は不可能です。むしろ、稼働させればさせるほど、毎月4万円ずつ損失が膨らんでいくことになります。

それでもマイニングしたい人が電気代を節約する方法

厳しい現実はあるものの、「それでもマイニングに挑戦したい」と考える方もいるかもしれません。
その場合、収益性を少しでも改善するためには、コストの大部分を占める電気代の節約が絶対的な鍵となります。

マイニングしたい人向け:電気代の節約方法
  • 使用電力量の「見える化」と専用回線の確保
  • 電力会社・プランの徹底的な見直し
  • 法人化して電気代を経費計上する
  • 【究極手段】電気代の安い海外へ移住・委託

使用電力量の「見える化」と専用回線の確保

まずは「ワットモニター」「スマートプラグ」などを導入し、リアルタイムの電力消費量を正確に把握することが重要です。

また、ASICのような高消費電力機器(3500W)は家庭用コンセントでは容量不足や火災のリスクがあるため、200Vの専用回線を設置することが安全上の必須条件となります。

電力会社・プランの徹底的な見直し

契約している電力会社や料金プランを見直しましょう。

大手電力会社の従量電灯プランはマイニングに最も不向きです。
「市場連動型プラン」で電力価格が安い時間帯のみ稼働させる、「時間帯別料金プラン」で夜間電力を使うなどの工夫が考えられますが、頻繁なON/OFFは機器寿命を縮めるリスクも伴います。

法人化して電気代を経費計上する

個人事業主として開業するか、法人を設立すれば、マイニングにかかった電気代や設備投資費を経費として計上できます。

これにより、他の事業で得た利益と損益通算し、法人税等を圧縮できる可能性があります。
これは「マイニングで儲ける」のではなく「節税対策としてマイニングを利用する」という高度なアプローチです。

【究極手段】電気代の安い海外へ移住・委託

マイニングを日本で戦うこと自体が非常に不利です。

これは最もハードルが高い選択肢ですが、電気代が1kWhあたり数円という国(中東、中央アジア、南米の一部など)に移住するか、現地のマイニングファームにマシンの運用を委託(ホスティング)する方法もあります。

実際に、世界のマイニング事業者の多くは、こうした格安の電力を求めて世界中に拠点を分散させています。

個人がリスクを抑えてマイニングに参加する方法

個人が単独でマイニングを行う「ソロマイニング」は、前述の通り、電気代すらも賄うことができませんし、自分一人でブロックを掘り当てるのは宝くじに当たるのを待つようなもので、現実的な選択肢ではありません。

しかし、個人がマイニングに参加する方法は他にも存在します。

マイニングプールの活用

「マイニングプール」とは、世界中のマイナーが自身の計算能力を提供し合い、協力してマイニングを行う仕組みです。

プール全体でマイニングに成功した場合、提供した計算能力(貢献度)に応じて報酬が分配されます。
これにより、ソロマイニングに比べて遥かに安定的かつ定期的に報酬を得ることが可能になります。

クラウドマイニングの現状と注意点

「クラウドマイニング」は、自身でマシンを保有・管理することなく、事業者が運営するマイニングファームの計算能力(ハッシュレート)を購入し、その対価として報酬を受け取るサービスです。

手軽に始められる反面、2025年現在、その収益性は極めて低くなっています。
また、過去には詐欺的なプロジェクトが横行した歴史もあり、サービス選定には細心の注意が必要です。

信頼できる大手事業者(例:Bitdeer)を選ぶことはもちろん、投資額に対して見込まれるリターンが、電気代や管理費用を差し引いてもプラスになるのかを冷静に計算する必要があります。

マイニングの電気代Q&A

世界でマイニングが最も盛んな国は?

2021年に中国がマイニングを全面禁止して以降、そのシェアはアメリカに大きく移りました。

現在では、安価な電力を求めてカザフスタン、ロシア、カナダなどにも拠点が分散しています。
興味深いことに、2025年現在、禁止されているはずの中国国内でも、アンダーグラウンドな形でマイニング活動が復活していると報告されています。

マイニングは電気代の無駄?勿体無い?

これは非常に難しい問題です。
ビットコインのマイニングは、その取引記録を検証・承認し、ネットワークのセキュリティを維持するために不可欠なプロセスであり、その対価として電力が消費されています。
一方で、その電力消費量は一国のそれに匹敵するとも言われ、環境負荷の観点から批判されることも事実です。

マイニングと現物投資どっちが良い?

2025年現在の日本においては、投資目的であれば、現物投資の方が圧倒的に合理的と言えます。
マイニングは、高額な初期投資、高騰する電気代、常に変動する難易度といった複数の不確実な要素を管理する必要があり、専門的な知識とリスク許容度が求められます。

一方、現物投資は取引所でアカウントを開設すれば誰でも少額から始めることができ、コスト構造もシンプルです。

環境問題とマイニングの関係は?

マイニングの環境負荷を低減するため、水力、太陽光、地熱といった再生可能エネルギーを利用する「グリーンマイニング」の動きが世界的に加速しています。

また、ビットコインが採用するPoW(Proof of Work)というコンセンサスアルゴリズム自体が大量の電力を消費するため、より電力効率の良いPoS(Proof of Stake)を採用する暗号資産(イーサリアムなど)も増えており、業界全体の大きなトレンドとなっています。

マイニングの電気代 まとめ

この記事では、ビットコインマイニングにかかる電気代と収益性について詳細に解説しました。

結論として、現在の日本において、個人が投資目的でマイニングを行い、利益を出すことは極めて困難です。
最新の高性能マシンを導入しても、月々の電気代だけで赤字となり、90万円以上もの高額な初期投資を回収する見込みは立ちません。

これは、単に電気代が高いというだけでなく、世界的な競争の激化によるマイニング難易度の高騰が大きな要因です。もはやマイニングは、個人が手軽に参加して利益を得られる「金のなる木」ではなく、国家レベルのエネルギー戦略や巨額の設備投資が求められる、巨大な産業へと変貌を遂げたのです。

もし純粋な投資として暗号資産に魅力を感じているのであれば、マイニングに固執するのではなく、現物取引や、PoS通貨のステーキングといった、より現実的でリスク管理のしやすい手法を検討することをお勧めします。

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